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サプライチェーン 2026年4月8日

スバルに学ぶ!CLOを動かし物流サイロ化を打破する現場改善3ステップ

スバルに学ぶ!CLOを動かし物流サイロ化を打破する現場改善3ステップ

物流倉庫の最前線で働く実務担当者や管理者の皆様なら、一度はこのような経験があるのではないでしょうか。
夕方になって突然、営業部門から「顧客から急ぎの要望が入ったので、今日中に特急便で出してほしい」と指示が飛んでくる。
現場は慌ててピッキングと検品を行い、高額なチャーター便を手配する。
どんなに倉庫内で作業効率を上げても、他部署からのイレギュラーな要求によって、現場の努力が水の泡になってしまうのです。

現場の努力を無にする「サイロ化」の壁と限界

これまで多くの企業では、物流部門は単なる「コストセンター」として扱われてきました。
営業部門は売上を最大化するために、顧客の細かい要望や過剰なサービスレベルを安易に約束してしまいます。
生産部門や調達部門も、自部署の稼働率や在庫リスクだけを優先し、物流現場のキャパシティを考慮しません。

たとえば、営業が「今日中に納品してほしい」と要求すると、現場は予定していたピッキング順序を急遽変更せざるを得ません。
このイレギュラー対応が現場の集中力を削ぎ、誤出荷やピッキングミスの温床となります。
後工程でどれだけバーコード検品を徹底しても、人間が焦って作業する環境がある限り、ミスを完全に防ぐことは不可能です。

このような部門ごとの「部分最適」が進行した状態を、組織のサイロ化と呼びます。
サイロ化が進んだ企業では、物流現場がどれだけパレット化を推進し、WMS(倉庫管理システム)で動線を最適化しても、根本的なコスト削減には至りません。
現場の力だけでは、他部署の商慣行や顧客との契約条件という「聖域」に踏み込むことができないからです。

解決策:スバル、三菱食品が挑む物流起点の経営改革 「CLO」が会社を動かす時代 – 日経ビジネスの手法

この構造的な限界を打破するための鍵が、経営層を巻き込んだ全社的なアプローチです。
その代表例が、「スバル、三菱食品が挑む物流起点の経営改革 「CLO」が会社を動かす時代 – 日経ビジネス」で取り上げられているような、物流統括管理者(CLO)主導の改革です。

経営層の権限を活用した全社横断プロジェクトの立ち上げ

CLO(Chief Logistics Officer)とは、物流部門だけでなく、営業や生産を含むサプライチェーン全体を統括する役員クラスの責任者です。
国土交通省が主導する「改正物流総合効率化法」により、2026年4月から一定規模以上の特定荷主に対して、このCLOの選任が法的に義務付けられます。

スバルや三菱食品といった先進企業は、法規制に先駆けてCLOに強大な権限を与え、物流を起点とした経営改革に挑んでいます。
物流管理責任者が現場の実務を回す役割であるのに対し、CLOは数億規模のシステム投資を決断し、他部門との利害対立を調整する役割を担います。
現場の担当者がCLOという「経営の盾」を活用することで、これまで不可能だった営業部門や顧客との交渉が可能になり、全社的な意識改革を引き起こすことができるのです。

参考記事: 【徹底解説】物流統括管理者(CLO)の選任が4月から義務化|荷主企業が直面する経営変革と対策

現場主導でCLOを動かす実践プロセス3ステップ

経営トップがCLOに就任したからといって、自動的に現場が楽になるわけではありません。
現場の担当者が正確なデータを武器にして、CLOに適切な意思決定を促す必要があります。
ここでは、現場から改革の火種を作るための具体的な3つのステップを解説します。

ステップ1:ファクトに基づく物流データの共通言語化

最初のステップは、感情的な対立を排除し、事実に基づくデータを用意することです。
「営業の無茶な指示が多くて困っている」という言葉ではなく、定量的な数値でCLOに報告します。

単に手作業で集計するだけでなく、BIツールや最新の物流DXソリューションを活用することが推奨されます。
拠点ごとの出荷データや、運送会社のシステムに散在しているデータを一元化し、経営層がスマートフォンからでも状況を確認できる「物流ダッシュボード」を構築します。
「今月の追加配送料が全体の利益率を何%押し下げている」といった具体的なファクトを提示することで、CLOの迅速な意思決定を引き出します。

ステップ2:物流コストの他部署への配賦とKPI再設定

データが揃ったら、次はコストの責任の所在を明確にします。
多くの場合、特急便やチャーター便の費用は、全社一括で物流部門の経費として処理されています。
これを、特急便を発生させた営業部門や各事業部のコストとして直接配賦するルールに変更します。

特急便を使えば使うほど自部署の利益が減るという仕組みになれば、営業担当者は安易な即日配送の約束を控えるようになります。
このルール変更は現場の権限では実行できないため、ステップ1で集めたデータをもとにCLOに決断を仰ぐのが正攻法です。

ステップ3:納品条件の緩和と計画的な出荷体制の構築

最後のステップは、顧客を巻き込んだ商慣行の見直しです。
これまで「受注の翌日納品(D+1)」が当たり前だったルールを、CLOのトップダウン指示のもとで「翌々日納品(D+2)」へと変更します。

リードタイムに余裕が生まれれば、物流現場はトラックの配車組みを効率化でき、積載率を劇的に高めることが可能です。
さらに、自社単独での改革にとどまらず、同業他社との共同配送を視野に入れることも重要です。
他社とトラックや倉庫のスペースをシェアする枠組みを超えた交渉も、CLOという経営トップが直接対話することで初めて実現します。

以下の表は、各ステップにおいて現場が取るべき具体的なアクションをまとめたものです。

実践ステップ 担当部門 必要なアクション 活用するデータ
データの共通言語化 物流部門 現場の数値を経営層へ客観的に報告 WMSの出荷・残業データ
コストの部署別配賦 経営層(CLO) 営業部へ特急便コストを直接請求 TMSの運賃・配車データ
納品条件の再設計 営業・物流部門 顧客との納品リードタイム見直し 顧客別の配送頻度データ

参考記事: CLOが担う「物流の経営課題化」と組織改革のステップ【2026年04月版】

CLO主導の改革による定量的・定性的な組織変化

これらのステップを確実に実行することで、物流現場には劇的な変化が訪れます。
単なるコスト削減にとどまらず、現場の作業品質やモチベーションの向上にまで波及します。

トラック積載率の向上と物流費20%削減の実現

リードタイムが緩和され、発注ロットが大型化することで、トラックの平均積載率は40%台から70%以上へと向上するケースが多く見られます。
これにより、車両のチャーター台数が減少し、全体的な物流コストを20%以上削減することも夢ではありません。

また、空気を運んでいたトラックのスペースが埋まることで、運送会社にとっても「一度に多くの荷物を運べる」というメリットが生まれます。
これは単なるコストカットではなく、運送会社との強固なパートナーシップを築き、持続可能な輸送網を確保するための重要な投資となります。

現場の待機時間削減と誤出荷の完全防止

特急便や突発的なオーダーが減少することで、現場は計画通りにピッキングと検品を進めることができます。
慌ただしい作業環境がなくなるため、人的ミスが激減し、誤出荷の防止に直結します。
また、トラックの到着時刻が分散されるため、バースでの待機時間も国土交通省が推奨する「原則1時間以内」を達成しやすくなります。

改革の前後で現場がどう変わるか、以下の表で比較します。

改善項目 導入前(Before) 導入後(After) 期待される効果
特急便の手配 営業の指示で毎日発生 システムによる事前申請制 輸送コストの20%削減
出荷の波動 月末に物量が極端に集中 全社的な出荷量の平準化 残業時間の半減と誤出荷ゼロ
納品リードタイム 受注の翌日納品(D+1) 原則として翌々日納品(D+2) 積載率が40%から70%へ向上
現場の待機時間 トラック到着時間が不明確 バース予約システムでの管理 待機時間の原則1時間以内達成

参考記事: 【国交省公表】物流統括管理者(CLO)提言|荷主に迫る経営変革と現場への影響

成功の秘訣:現場の声とデータがCLOを突き動かす

物流起点の経営改革を成功させる最大の秘訣は、「名ばかりCLO」を作らないことです。
役員に肩書きを与えただけで、現場の実態を把握していなければ、組織は何も変わりません。

現場の管理者は、自らの業務を「倉庫内の作業指示」だけに限定せず、サプライチェーン全体を見渡す視点を持つことが重要です。
そして、日々の業務で得られるリアルな数値データを武器にして、CLOへ積極的に改善を提案し続けてください。

物流現場からのボトムアップの提案と、CLOによるトップダウンの決断が噛み合ったとき、企業は真の変革を遂げることができます。
「運べなくなる未来」を回避し、物流を自社の強力な競争力へと変えるための第一歩を、今日から踏み出しましょう。

監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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