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事例・インタビュー 2026年4月9日

横持ちゼロでCO2削減!光陽社の倉庫業参入がもたらす3つの衝撃とScope3対策

横持ちゼロでCO2削減!光陽社の倉庫業参入がもたらす3つの衝撃とScope3対策

物流業界の構造的な変化と環境対応が急務となる中、異業種からの先進的な物流ビジネス参入が新たなトレンドを生み出しています。総合印刷会社の株式会社光陽社が、埼玉県飯能市の生産拠点「飯能プリンティングセンターBASE」において、倉庫業法に基づく「倉庫業免許」を取得し、物流事業への本格参入を果たしたというニュースは、サプライチェーンのあり方に一石を投じる象徴的な事例と言えるでしょう。

なぜ、印刷会社が極めて取得ハードルの高い倉庫業免許をわざわざ取得し、自ら物流ハブを構築する決断を下したのでしょうか。その背景にあるのは、深刻化する「物流2024年問題」による輸送力の枯渇や、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラル(温室効果ガス削減)への強烈な社会的要請です。

「印刷物の製造」と「保管・発送」は、これまで別々の拠点や異なる事業者によって分断されて行われるのが一般的でした。しかし、この分断こそが、無駄な横持ち輸送(拠点間移動)やリードタイムの長期化、余分なCO2排出を生み出す根本原因でもありました。光陽社はこれらを同一拠点内で完結させる「サステナブル・ロジスティクス」を提唱し、製造工場を単なる生産拠点から高機能な物流ディストリビューションセンター(DC)へと進化させました。

本記事では、このニュースが物流業界にどのような衝撃を与えるのか、そして荷主企業や物流事業者が今後意識すべき戦略的アプローチについて、一次情報のクロスチェックと独自の専門的視点から徹底的に解説します。

飯能プリンティングセンターBASEにおける物流事業の全容

今回の光陽社による物流事業参入について、公式発表および関連ニュースから読み取れる事実関係を以下のテーブルに整理します。

倉庫業免許取得と事業展開の基本情報

項目 詳細内容
事業主体 株式会社光陽社(総合印刷会社・本社:東京都文京区)
該当拠点 埼玉県飯能市「飯能プリンティングセンターBASE」
主要な取り組み 倉庫業法に基づく倉庫業免許の取得、および自社拠点での物流事業本格開始
提供サービス 環境配慮型印刷の製造から、製品の保管、資材管理、最終エンドユーザーへの発送までのワンストップ化

この取り組みにおける最大のポイントは、自社の空きスペースを用いた単なる「荷物預かり(スペース貸し)」ではなく、国土交通省が定める厳格な施設基準をクリアし、他者の貨物を有償で預かる責任を負う「営業倉庫」としての正式な認可を得ている点です。

提唱する「サステナブル・ロジスティクス」の核心機能

光陽社が目指すのは、印刷品質の追求と効率的な物流オペレーションを高度に融合させた持続可能なモデルです。その中核となる機能と外部ツールとの連携状況を整理します。

導入機能・連携システム 期待される効果と現場の目的
拠点機能のワンストップ統合 製造工場から外部倉庫への横持ち輸送(トラック輸送)を物理的にゼロにし、GHG排出量を劇的に削減
EC自動出荷システム「LOGILESS」導入 WMS(倉庫管理システム)やOMS(受注管理システム)との自動連携による受注から出荷までのシームレス化
庫内オペレーションのDX化 ハンディターミナル等を活用したピッキングの生産性向上、誤出荷の極小化、および完全ペーパーレス化の実現
統合的サプライチェーン管理 横持ち輸送の排除とシステム連携によるトータルリードタイムの短縮と、管理コスト全体の低減

従来の印刷・出版業界のロジスティクスでは、完成した大量の印刷物をパレットに乗せ、トラックで荷主が指定する外部のDC(在庫型センター)やTC(通過型センター)へ一度納品し、そこで改めてピッキングや梱包作業が行われるのが常識でした。光陽社はこの常識を覆し、工場自体をDC化・FC(フルフィルメントセンター)化することで、物理的な移動距離を極限まで圧縮したのです。

業界への具体的な影響と波及効果

この「製造拠点の物流ハブ化」という戦略は、荷主企業のみならず、物流事業者やトラック運送業界など、さまざまなステークホルダーに対して多角的な影響を及ぼします。

Scope3削減を牽引する荷主企業への絶大なメリット

最も直接的な恩恵を受けるのは、カタログ、ダイレクトメール、販促POPなどの印刷物を大量に扱うメーカーや小売業、EC事業者などの荷主企業です。
昨今、上場企業を中心にサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量である「Scope 3」の削減が強く求められています。特にカテゴリー4(上流の輸送・配送)やカテゴリー9(下流の輸送・配送)における排出削減は至上命題です。製造元でそのまま在庫を保管し、必要に応じて店舗やエンドユーザーへ直送できる体制が整えば、荷主は自社で手配していた拠点間の輸送トラックを削減でき、CO2排出量を直接的にカットできます。また、自社で確保していた外部の倉庫スペースや家賃(固定費)の削減にも直結します。

既存の3PL・倉庫会社に迫る競争と協業のパラダイムシフト

既存の物流事業者(3PL企業や倉庫会社)にとっては、「非物流企業からの強力な競合モデルの出現」を意味します。これまで「製造」と「物流」の境界線上で発生していた輸配送業務や、倉庫での流通加工(ラベル貼りやアソート組みなど)の利益源が、製造メーカー側の内部に丸ごと取り込まれてしまうためです。
しかし、これは同時に新たな協業のチャンスでもあります。物流事業者は、自社が運営するPC(プロセスセンター)の中に3Dプリンターやオンデマンド印刷機を導入して「物流施設内で製造を行う」といった逆のアプローチを仕掛けるなど、相互に機能を取り込む戦略的な事業展開が加速するでしょう。

運送業界の「2024年問題」緩和への寄与

トラックドライバーの時間外労働上限規制に伴う「物流2024年問題」の核心は、輸送能力の絶対的な不足です。拠点間の横持ち輸送は、ドライバーの長時間にわたる荷待ち・荷役作業を生み出す温床となっていました。光陽社のように製造と保管を同一拠点で行うモデルが他業界にも波及すれば、不必要な中距離輸送が物理的に消滅します。結果として、運送業界は限られた貴重なドライバーリソースを、より付加価値の高い長距離の幹線輸送や、最終顧客へのラストワンマイル配送に集中させることが可能になります。

LogiShiftの視点(独自考察)

ここからは、物流の最前線を知る専門的視点から、今回の光陽社の戦略に潜む真の価値と、今後の業界トレンドについて深く考察します。

既存工場の「営業倉庫化」に潜む極めて高い法的ハードル

自社の工場や空きスペースで他社の荷物を預かり、ピッキングや発送業務を請け負う場合、実質的な「寄託契約」とみなされ、倉庫業法に基づく営業倉庫の登録が必須となります。しかし、既存の生産拠点を営業倉庫へ転用・認可取得することは、物流不動産のプロから見ても極めて難易度の高いプロジェクトです。

第一に「ハード(施設基準)の壁」です。建築基準法や消防法において、工場と倉庫では求められる用途要件が異なります。さらに倉庫業法を満たすためには、1平方メートルあたり3,900N(約390kg)以上の荷重に耐えられる強固な床の強度証明や、厳格な防水・防湿構造、耐火性能が求められます。既存建物をこれらの基準に適合させるための改修や行政との折衝には、多大なコストと時間がかかります。
第二に「ソフト(人的要件)の壁」です。現場の総責任者として、国家資格に準ずる「倉庫管理主任者」を選任し、厳格な防火管理や労務管理体制を敷く義務が生じます。

光陽社が飯能プリンティングセンターBASEにおいてこの高いハードルを乗り越え、正式に免許を取得したという事実は、同社がコンプライアンスを徹底し、物流ビジネスを単なる付帯サービスではなく「中核事業」として本気で推進していくという強力な意志の表れです。

BtoBからBtoCへ。LOGILESS導入が示すフルフィルメント化

外部システムである「LOGILESS」の導入も見逃せない戦略的判断です。印刷工場は本来、パレット単位での大ロット納品(BtoB)に特化した施設です。しかし、EC特化型のOMS/WMS一体型システムであるLOGILESSと連携することで、ピース単位での細かいピッキングや、EC注文に応じた個別配送(BtoC向けフルフィルメント)への対応力が劇的に向上します。

これは、飯能の拠点が単なる在庫のバッファ地点(DC)にとどまらず、エンドユーザーへ直接価値を届けるFC(フルフィルメントセンター)としての機能まで内包し始めていることを意味します。製造現場で培われた緻密な品質管理手法と、最新の物流DXツールが融合することで、歩留まりが高く極めて誤出荷の少ない、最高品質の物流オペレーションが実現するでしょう。

「運ばない物流」こそが最強の持続可能性(サステナビリティ)

「サステナブル・ロジスティクス」の究極の形とは、皮肉なことですが「モノを物理的に動かさないこと」に他なりません。どれだけEV(電気自動車)トラックを導入し、AIで配送ルートを最適化したとしても、拠点間の移動が発生する限り環境負荷やコストはゼロにはなりません。

製造拠点のすぐ隣に最新鋭の物流拠点を併設し、データ(情報)だけを行き来させて物理的な横持ちを完全に排除する光陽社のアプローチは、2024年問題や今後の労働力不足に対する最も本質的で強靭(レジリエント)な解決策です。今後、アパレル、化粧品、精密部品など、他の製造セクターにおいても、自社工場の一部を適法に営業倉庫化し、物流機能を内製化・高度化する「ファクトリー・ロジスティクス(製造・物流の一体化)」の動きが確実に加速していくと予測されます。

まとめ:明日から企業が意識すべき戦略的アクション

株式会社光陽社による飯能プリンティングセンターBASEでの倉庫業免許取得と物流事業の本格開始は、単なる一企業の事業拡大にとどまらず、サプライチェーンの構造転換を象徴する重要なニュースです。

この潮流を受け、経営層や現場リーダーが明日から意識し、実行に移すべき3つのアクションを提言します。

  1. サプライチェーンの分断ポイントを再評価する
    自社の製造から最終エンドユーザーへの出荷までのフローにおいて、不必要な横持ち輸送や外部倉庫での滞留が発生していないかを可視化し、商流と物流の接点を根本から見直す必要があります。
  2. コンプライアンスを担保した拠点戦略の構築
    自社の空きスペースを活用したフルフィルメント業務の内製化を検討する際は、無許可営業のリスクを排除するため、倉庫業法や建築基準法(用途変更)などの法規制を正確に把握し、適法な事業展開のロードマップを描くことが不可欠です。
  3. 異業種とのシナジーによる新たな付加価値の創出
    物流専業、あるいは製造専業という枠組みに固執するのではなく、互いの機能(製造、保管、システム連携)を補完し合うアライアンスを模索し、Scope 3の削減という荷主の巨大な経営課題を直接解決できる提案力を磨くことが求められます。

【印刷×物流】のシナジーが鮮やかに示したように、これからのビジネスの勝敗は「業界の境界線をどう溶かし、全体最適化するか」に懸かっています。持続可能なサプライチェーンの構築に向けた、次世代の挑戦はすでに始まっています。


参考記事:
– 倉庫業法完全ガイド|無登録リスクから施設基準・DX対応まで徹底解説
– 建築基準法(倉庫規定)完全ガイド|実務担当者が知るべき基礎知識と2025年法改正への対策

出典:
– LOGI-BIZ online
– PR TIMES(株式会社光陽社 プレスリリース情報)

監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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