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事例・インタビュー 2026年4月14日

日本ハムがスマートパレット導入!食肉物流の2024年問題を打破する3つの波及効果

日本ハムがスマートパレット導入!食肉物流の2024年問題を打破する3つの波及効果

物流業界を揺るがす「2024年問題」が本格化する中、大手食品メーカーによる物流インフラの根本的な改革が急加速しています。日本ハムは、ユーピーアール(upr)が提供するクラウド型パレット管理システム「スマートパレット」を導入し、2024年2月16日より、産地工場から物流センター、販売会社に至るサプライチェーン全体での「一貫パレチゼーション」を順次スタートさせました。

これまで長距離輸送の最大の障壁となっていた「バラ積み」による手荷役を解消し、アクティブRFIDタグによる完全自動管理を実現するこの取り組みは、単なる資材の変更にとどまりません。本記事では、日本ハムの決断がもたらす業界への衝撃と、物流現場にもたらす具体的な波及効果を徹底解説します。

日本ハムが挑む一貫パレチゼーションの背景と全貌

今回のスマートパレット導入の背景には、食肉物流特有の厳しい現場の現実と、旧態依然とした管理手法の限界がありました。まずは、ニュースの事実関係と導入の全体像を整理します。

評価項目 導入の概要 従来の手法が抱えていた課題 スマートパレット導入後の変化
対象の範囲 産地工場から販売会社に至るサプライチェーン全体 産地工場から物流センター間はバラ積み輸送が主流だった 積み替えなしの「一貫パレチゼーション」へ移行
導入システム uprのクラウド型システム「スマートパレット」 各拠点でのパレットの動きや滞留状況がブラックボックス化 クラウド上で広範囲のパレット循環をリアルタイムに可視化
主要テクノロジー アクティブRFIDタグの内蔵 作業員による目視確認やシステムへの手入力が必須 ゲート通過のみで「いつ・どこへ・何枚」を完全自動記録
解決される課題 ドライバーの負担軽減と長距離輸送網の維持 手荷役による長時間拘束と肉体的疲労から車両確保が困難に 荷役時間の大幅短縮により2024年問題への強力な対策を実現

食肉物流特有の課題と「バラ積み」の限界

食肉物流は厳格な温度管理が求められるチルド・フローズン帯での輸送が中心となります。これまで、日本ハムの物流において下流(物流センターから販売会社)はパレット化が進んでいましたが、上流である産地の食肉工場から物流センターへの納品は、長らく「バラ積み(手作業での積み下ろし)」が主流でした。

バラ積みによる荷役は、大型トラック1台あたり2〜3時間もの長時間の荷待ちや作業時間を発生させます。これはドライバーに過酷な肉体的負担を強いるだけでなく、トラックの扉を開放している時間が長引くことによる庫内温度の変化など、品質管理上の潜在的なリスクも孕んでいました。昨今の深刻な人手不足の中、過重労働を伴う長距離輸送車両の確保は年々困難になっており、物流網の維持そのものが危ぶまれる状況に陥っていたのです。

一貫パレチゼーションを阻む「管理の壁」と自動化の必要性

この危機を打破する有効な手段が、産地から最終拠点まで荷物をパレットに載せたまま輸送する「一貫パレチゼーション」です。しかし、これを実現するためには、広範囲のサプライチェーンを循環するパレットを正確にトラッキングする仕組みが必要不可欠です。

特に、日本ハムの主要拠点である日本物流センター(川崎市)は、販売店への納品が夜間や早朝に集中し、24時間体制で常時稼働しています。このような過酷な現場で、パレットが移動するたびに現場の作業員が目視で枚数を確認し、出荷のたびに管理システムへ手入力を行うことは、オペレーションの遅延と崩壊を招くため極めて非現実的でした。

アクティブRFIDが実現する完全自動の入出庫記録

この「管理の壁」を鮮やかに突破するために採用されたのが、uprの「スマートパレット」です。通常のバーコードやパッシブ型(受動型)RFIDタグとは異なり、スマートパレットには自ら電波を発信する「アクティブRFIDタグ」が搭載されています。

これにより、フォークリフトに載せたパレットが専用ゲートを通過するだけで、数十メートル離れた場所からでも複数枚のパレット情報を一括かつ高精度に自動取得することが可能になります。現場の作業員は「スキャンする」「帳票に記入する」といった一切の追加作業を行うことなく、正確な入出庫情報が自動で記録されます。日本ハムは、この「人手を介さない精緻な動態管理」に強く着目し、導入を決断しました。

業界各プレイヤーへの具体的な波及効果

この一貫パレチゼーションの実現は、単なる一企業の業務改善にとどまらず、サプライチェーンを構成する運送、倉庫、メーカーの各プレイヤーに極めて大きな実利をもたらします。

運送事業者|過重労働からの解放と車両回転率の劇的向上

バラ積みからパレット輸送への転換は、運送業界にとってまさに「救済措置」となります。手作業による過酷な荷役が、フォークリフトによる機械荷役に置き換わることで、これまで数時間かかっていた積み下ろし作業がわずか15〜30分程度にまで劇的に短縮されます。

これにより、ドライバーの拘束時間が大幅に削減され、2024年問題の中核である時間外労働の上限規制(年960時間)をクリアする強力な推進力となります。さらに、荷待ち時間が解消されることで、1日あたりのトラックの運行回数(回転率)を増やすことが可能になり、運送事業者の収益性向上にも直結します。女性や高齢のドライバーでも乗務しやすくなるため、深刻な採用難に対する有効なアプローチにもなります。

倉庫・物流センター|検品レス化と24時間体制での圧倒的な省人化

物流センター側においては、RFIDを活用したスマートパレットの導入が「究極の省人化」をもたらします。トラックがバースに接車し、荷降ろしを開始した瞬間にシステム側で入庫データが自動生成されるため、これまで入庫検品場で行っていた手書きの受払票の作成や、ハンディターミナルでの一つひとつのバーコードスキャン作業が完全に消滅します。

深夜帯などの人手が薄い時間帯でも、機械が自動で正確な資産管理を維持できる点は、センター運営において極めて強力な武器となります。ヒューマンエラーによるパレットのカウント漏れがなくなり、月末の棚卸し作業の工数も劇的に削減されます。

メーカーおよび小売業|サプライチェーン全体の可視化と将来の拡張性

メーカーである日本ハムにとって最大の財務的メリットは、広域に分散する物流資産(パレット)のブラックボックス化を防ぎ、紛失や滞留による莫大な流出コストを根本から絶つことができる点です。クラウド上で「どの拠点に、何枚の空パレットが滞留しているか」がリアルタイムに可視化されるため、適正なタイミングでの回収指示や再配置が可能になります。

さらに日本ハムは、今回の産地から物流センター間の運用を足掛かりに、関係各社との連携をより一層強化し、将来的には量販店など小売業のバックヤードに至るまでパレット輸送の範囲を広げる計画を掲げています。これは、日本の食品流通全体を巻き込んだ壮大なデジタルインフラ構築への布石と言えます。

参考記事: パレット標準化とは?導入メリットから現場の課題・解決策まで徹底解説

LogiShiftの視点|「デジタル管理」が拓く次世代のロジスティクス戦略

今回のニュースから、物流現場を預かる経営層やリーダーが汲み取るべき戦略的な示唆は何でしょうか。業界の構造転換を見据え、独自の視点で考察します。

「所有から利用へ」パレットプールの活用が切り拓く全体最適

LogiShiftが最も注目するのは、日本ハムが自社専用のパレットを新規に大量製造して抱え込むのではなく、uprというパレットレンタル大手のプラットフォーム基盤を活用した点です。

自社でパレットを所有(保有)する場合、繁忙期と閑散期の物量変動に伴う余剰在庫のリスクや、経年劣化によるメンテナンス費用、さらには空パレットを回収するための専用の「空車回送コスト」が重くのしかかります。uprのようなプール(共同利用)システムを利用することで、企業はこれらの固定費を変動費化し、回収ネットワークをアウトソースすることができます。これは、日本の物流が「個社最適」から、リソースをシェアする「全体最適」へとシフトしていくための模範的なアプローチです。

「2026年問題」を見据えた高度なデータ連携への布石

2024年の労働時間規制の先には、トラックの積載効率向上や多重下請け構造の是正を国が強く迫る「改正物流2法」の施行(いわゆる物流2026年問題)が控えています。

RFIDタグによって取得された「パレットの動き」のデータは、単なる資材管理にとどまるものではありません。将来的に、パレットのIDと納品される商品データ(ASNデータ等)をAPIなどで紐付けることができれば、「どの商品のロットが、現在どのトラックに載って、どこを走っているのか」という極めて高度なトレーサビリティ基盤へと進化するポテンシャルを秘めています。今後、運送会社や卸売業、量販店がこのデータ基盤にシームレスに接続できるようになれば、検品の完全自動化や他社商材との共同配送など、サプライチェーン全体の飛躍的な効率化が実現するでしょう。

荷主主導の改革が迫る「選ばれる物流企業」への条件

食品メーカーのトップランナーである日本ハムが、産地から販売会社まで一貫したデジタルパレット網を敷くことは、その商流に乗るすべての運送会社や倉庫事業者に「標準化への適応」を促す強力なメッセージとなります。

今後、こうしたデジタルインフラに対応した荷役体制を持たない物流事業者は、優良な荷主からの仕事を受注できなくなるリスクが高まります。荷主が主導するインフラのアップデートに対して、物流事業者側がいかに迅速に現場の運用を適応させられるかが、今後の生存競争を分ける鍵となります。

参考記事: 物流2026年問題とは?2024年問題との違いや法改正、実務で必要な対策を徹底解説

まとめ|明日から物流現場が意識すべき3つのアクション

日本ハムによる「スマートパレット」の導入は、日本の食肉物流における「脱バラ積み」の決定打となる画期的なマイルストーンです。このニュースを受けて、荷主企業や物流事業者が明日から意識すべきアクションは以下の通りです。

  • 自社の荷役実態とボトルネックの徹底的な棚卸し
    自社のサプライチェーンの上流から下流までを見渡し、どこに「バラ積み」による荷待ちや非効率が潜んでいるかを可視化する。
  • パレット管理のデジタル化に向けたPoC(実証実験)の開始
    紛失や滞留を防ぐため、RFIDやクラウドシステムを活用した「人手に頼らない資産管理」の導入を検討し、まずは小規模なルートでテスト運用を始める。
  • シェアリングエコノミーを活用した共同インフラへの参加
    一社単独でのパレット運用を脱却し、パレットレンタル・プールシステムを活用した他社との共同利用の枠組みへ積極的にシフトする。

物流インフラのデジタル化と標準化は、もはや様子見が許されない喫緊の経営課題です。先進企業の果敢な決断を道標とし、自社のサプライチェーンを次世代へと引き上げる改革の一歩を踏み出しましょう。


出典: LOGI-BIZ online
出典: 日本ハム、食肉物流の生産性向上を目的にuprの「スマートパレット®」を導入 – upr プレスリリース

監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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