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輸配送・TMS 2026年4月20日

国交省が内航海運の価格転嫁を要請!迫る物流危機と荷主が取るべき3つの対策

国交省が内航海運の価格転嫁を要請!迫る物流危機と荷主が取るべき3つの対策

日本の物流インフラを支える大動脈に、また一つ歴史的な転換点が訪れました。国土交通省は、内航海運業界における深刻なコスト高騰を受け、荷主企業に対して運賃や料金の「価格転嫁」に向けた誠実な協議に応じるよう異例の要請を行いました。

これまで「物流2024年問題」の文脈では、主にトラック運送事業者と荷主の間での運賃交渉や「トラックGメン」の活動が注目を集めてきました。しかし、今回の要請は、トラックの受け皿として期待される「船」の輸送においても、コスト負担の限界が臨界点に達していることを示しています。本記事では、国交省が新建ハウジング等でも報じられたこの要請に踏み切った背景と、運送・倉庫・メーカーなどサプライチェーン全体に波及する影響、そして企業が明日から取るべき生存戦略を徹底解説します。

なぜ今、海運なのか?価格転嫁要請の背景と事実関係

トラックドライバーの残業規制が本格化する中、長距離輸送をフェリーやRORO船に切り替える「モーダルシフト」は、国を挙げた解決策として推進されてきました。しかし、その受け皿となるべき内航海運業界自体が、今まさに存亡の危機に立たされています。

トラックから船へ波及する「誠実な協議」の義務化

今回の国交省による要請は、燃料費(バンカーオイル等)の劇的な高騰や、船員の人件費上昇といった外部要因を、内航海運事業者の自助努力だけで吸収することはもはや不可能であるという強い危機感に基づいています。

項目 詳細内容 背景と目的
要請主体 国土交通省 トラック偏重からの脱却と海運の持続可能性確保
対象者 荷主企業および内航海運事業者 立場が弱い海運業者を保護し適正なコスト負担を促す
要請内容 燃料費や労務費の価格転嫁に向けた誠実な協議 基本運賃の引き上げや燃料サーチャージの導入
期待される効果 船員の待遇改善と安定的な海上輸送網の維持 物流2024年問題の受け皿となるモーダルシフトの推進

国は荷主企業に対し、海運事業者から運賃改定の申し出があった場合、これを不当に拒絶することなく「誠実な協議」のテーブルに着くことを強く求めています。これは、下請法や独占禁止法上の優越的地位の濫用を防ぐための明確な牽制でもあります。

船員不足と燃料高騰が引き起こす構造的危機

内航海運が価格転嫁を急ぐ裏には、統計データが示す深刻な実態があります。LogiShiftの過去の分析によれば、内航船舶輸送量は大幅な落ち込みを記録しており、決して順風満帆にモーダルシフトが進んでいるわけではありません。

その最大のボトルネックとなっているのが以下の3点です。

  1. 極端な船員不足と高齢化
    カボタージュ制度により外国人船員の乗船が制限される中、既存船員の高齢化と退職が進み、船を動かす人材そのものが枯渇しています。待遇改善のための労務費引き上げ(賃上げ原資の確保)は待ったなしの状況です。
  2. 環境対応コストの膨張
    カーボンニュートラルに向けたESG投資の要請から、老朽船の退役と代替燃料対応エンジンを搭載した新造船への投資が迫られています。しかし、鋼材価格の高騰により建造費が跳ね上がり、巨額の設備投資コストが事業者を圧迫しています。
  3. 燃料価格の高止まり
    世界的な地政学リスクや為替変動の影響をダイレクトに受ける船舶燃料費の高騰は、運航コストの大部分を占め、利益を激しく削り取っています。

これらのコスト増を運賃に転嫁できなければ、内航海運事業者は配船スケジュールを減便せざるを得ず、結果として日本の海上輸送網は崩壊に向かいます。

サプライチェーン各プレイヤーへの具体的な影響

「海運の価格転嫁」という新たな波は、海運業者だけでなく、港湾を利用する陸上運送業者や、商品を預ける荷主企業に連鎖的なパラダイムシフトを引き起こします。

プレイヤー 想定される影響 求められる対応
荷主企業(メーカー等) 海上輸送コストの上昇、協議拒否による法令違反リスク 物流予算の柔軟な見直しと、データに基づく誠実な協議
内航海運事業者 燃料費・労務費の適正な転嫁による収益性の改善 どんぶり勘定からの脱却と、客観的な原価(エビデンス)の提示
港湾・陸上運送業者 ドレージ輸送や港湾荷役における連鎖的な価格適正化 海陸連携による待機時間削減やシャーシのラウンドユース推進

荷主企業:モーダルシフト=コスト削減の終焉と予算見直し

多くの荷主企業(メーカー、商社、建設業など)はこれまで、「トラック運賃が高騰したから、安い船に切り替えよう」というコスト削減の文脈でモーダルシフトを捉えてきました。しかし、今回の要請により、「船に切り替えれば安く済む」という幻想は終わりを告げます。

荷主企業の物流部門や調達部門は、海上運賃の値上げ要請に対して「予算がない」と突き返すことは許されなくなります。コンプライアンスリスクを回避するためには、燃料価格の変動に連動する燃料サーチャージの導入や、年次での運賃見直しを前提とした柔軟な予算編成プロセスを社内に構築することが急務です。

内航海運・運送業者:データに基づく論理的な運賃交渉の本格化

内航海運事業者や、港湾でコンテナを牽引するドレージ輸送業者は、国のお墨付きを得たことで強気に交渉へ臨むことが可能になります。ただし、単に「苦しいから上げてくれ」というお願い営業(感情論)では荷主の稟議は通りません。

燃料費の増加分、船員やドライバーの労務費増加分、そして港湾での荷待ち時間にかかる逸失利益などを、客観的なデータ(エビデンス)として切り分け、論理的に提示する「データ駆動型交渉(データドリブン・ネゴシエーション)」のスキルが必須となります。

LogiShiftの視点:値上げ受容にとどまらない次世代の生存戦略

ここからは、今回のニュースを単なる「コンプライアンス対応」として終わらせず、物流危機を乗り越えるための競争優位性に変えるためのLogiShift独自の考察と提言を展開します。

輸送キャパシティの崩壊を防ぐ「適正運賃」という投資

荷主企業は、運賃の引き上げを「コストの悪化」と捉えるマインドセットを根本から変える必要があります。

内航海運のキャパシティ(船腹量や運航頻度)はすでに限界を迎えています。適正な運賃を支払い、海運事業者に十分な利益と船員確保の原資を提供しなければ、遠からず「お金を払っても船のスペースが予約できない」という致命的な「運べないリスク」が顕在化します。適正運賃の支払いは、自社のサプライチェーンを止めず、確実に商品を市場へ届けるための「事業継続計画(BCP)への投資」に他なりません。

港湾ハブを中心とした「海陸連携」と共同輸配送の推進

運賃が上がる以上、サプライチェーン全体の総物流コストを抑制するための「協調領域」の開拓が不可欠です。海運事業者と荷主が協議すべきは、単なる運賃単価の綱引きではなく、以下のような抜本的な効率化策です。

海陸の結節点における待機時間の撲滅

港湾ターミナルでのドレージトラックの待機(デマレージ)は、陸上運送業者の利益を奪うだけでなく、船の回転率を著しく低下させます。港湾の予約システム導入や、事前出荷情報(ASN)のデータ連携により、海陸の結節点をスムーズにするインフラ投資が求められます。

シャーシのラウンドユースと共同配送

片道しか荷物を積まない空のシャーシを港に持ち帰る「空走ロス」は、海上輸送のコストを押し上げる最大の要因です。競合するメーカー同士がシステムを連携し、往路はA社の荷物、復路はB社の荷物を積載する「ラウンドユース(往復利用)」の仕組みを構築することが、最も効果的なコスト吸収策となります。

参考記事: 2025年12月内航海運輸送動向:モーダルシフトの課題と企業が取るべき次世代物流戦略

まとめ:明日から実行すべき3つの対策

国交省による内航海運の価格転嫁要請は、トラック業界で進んできた運賃適正化の波が、いよいよ海上輸送ルートにも本格的に到達したことを意味します。この変革期において、企業が生き残るために明日から意識し、実行すべき3つの対策は以下の通りです。

  1. 自社の「真の物流原価」と公的指標のギャップ分析
    運送・海運事業者は、どんぶり勘定を捨て、燃料費や労務費の高騰分を客観的な指標に基づいて算出し、荷主に提示できるデータ(エビデンス)の準備を直ちに開始する。
  2. 荷主社内における「誠実な協議」のフロー構築
    荷主企業の物流・調達担当者は、値上げ要請を不当に拒絶しないよう、社内の決裁ルートと柔軟な予算枠を再整備し、法令違反リスクを完全に排除する。
  3. 「値上げ交渉」から「効率化の共同プロジェクト」への転換
    価格改定の協議の場を単なる金額交渉で終わらせず、パレットの標準化、リードタイムの緩和、港湾でのラウンドユースなど、互いのムダを削るサプライチェーン最適化の議論へと昇華させる。

参考記事: 労務費100%転嫁を実現!統計と自動計算で運賃交渉を成功させる3つのデータ活用術

「モノが運べなくなる時代」において、適正な対価を支払い、データを共有して協力し合える企業だけが、強靭な物流網を維持し、市場での競争を勝ち抜くことができるのです。

出典: 新建ハウジング
出典: 国土交通省

監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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