物流業界の現場で深刻化する「人材不足」。求人を出しても応募が来ず、既存のベテラン層は高齢化していくという負のスパイラルの中、旧態依然とした採用手法はもはや限界を迎えています。こうした中、LNEWS(メディアビズ主催)は5月13日、現場の維持・運営に直結する課題解決に向けたオンラインセミナー「即戦力を確保し、現場を回す。─物流人材不足の具体策」を開催します。
本セミナーの最大の注目点は、人材不足を「現場の採用担当者が抱える悩み」としてではなく、「経営の構造課題」として再定義している点です。登壇するのは、外国人材活用による「物流DX(ダイバーシティ・トランスフォーメーション)」を提唱するDYDと、物流テック大手として新たに人材紹介事業「Hacobu Career」を立ち上げたHacobuの2社です。
2026年の物流総合効率化法(物効法)の本格施行や、2027年に控える特定技能の対象分野拡大を前に、企業はどのような「処方箋」を持つべきなのか。本記事では、セミナーのハイライトを整理するとともに、物流業界が直面する人材格差の実態と、企業が明日から取り組むべき生存戦略を独自の視点から徹底解説します。
物流人材不足の構造的課題に切り込むセミナーの全貌
物流現場の生命線である「人」の確保が困難を極める今、単なる人手の穴埋めではなく、組織そのものを変革する視点が不可欠です。まずは、本セミナーの開催概要と各社のセッション内容を整理します。
「即戦力を確保し、現場を回す」セミナー開催概要
本セミナーはオンライン形式で実施され、物流企業の経営層や現場責任者に向けて、最新の動向と具体的なマネジメント手法が短時間で提供される構成となっています。
| 項目 | 詳細内容 | 補足情報 |
|---|---|---|
| 開催日時 | 5月13日(水)13:30~14:10予定 | オンライン配信。事前申込必須 |
| 主催 | メディアビズ(LNEWS) | 参加費は無料 |
| 登壇企業① | DYD | テーマは「物流DX(ダイバーシティ・トランスフォーメーション)」 |
| 登壇企業② | Hacobu | テーマは「物流人材の採用格差とその処方箋」 |
DYDが提唱する「物流DX(ダイバーシティ・トランスフォーメーション)」
前半のセッションでは、DYDのMarketing & Sales Div. 執行役員である結城 聡氏が登壇します。結城氏は、上場企業でのグロース経験と起業家精神を武器に新規事業を牽引してきた実績を持ちます。
本講演で結城氏が提唱するのは、人口激減という「静かな有事」に対抗するための新戦略「物流DX(ダイバーシティ・トランスフォーメーション)」です。2027年に予定されている特定技能(外国人材)の受け入れ拡大を見据え、国籍を問わず誰もが成果を出せる「多国籍チーム」の構築手法を解説します。具体的には、属人的なスキルに依存しない業務の標準化や、研修の言語化を通じたマネジメントの高度化について、大手から中小企業までの幅広い導入事例を交えて語られます。
Hacobuが解き明かす「採用格差」とCLO義務化への対応
後半のセッションでは、物流SaaS「MOVO」を展開するHacobuから、執行役員本部長の横井 直樹氏が登壇します。横井氏は、日本通運との合弁会社であるMeeTruckの代表として中堅中小運送会社向けのTMSを展開した実績を持ち、物流の現場課題を深く理解する人物です。
横井氏の講演では、なぜテクノロジー企業であるHacobuが人材紹介事業「Hacobu Career」を立ち上げたのか、その真の狙いが語られます。物流業界における人材不足は、もはや現場の課題ではなく、CLO(物流統括管理者)の義務化やDX人材の不在といった経営判断を左右する構造課題となっています。業界が直面する壁を突破するためのカギとして、「完璧な人材を待つ」という従来の発想の転換と、AIを活用した人材育成の新しい方程式が提示されます。
業界各プレイヤーに与えるパラダイムシフトと影響
本セミナーで提示される「ダイバーシティ」と「テクノロジー」という2つのアプローチは、運送事業者や荷主企業といったサプライチェーンの全プレイヤーに対し、従来の人材戦略の抜本的な見直しを迫るものです。
運送事業者における「残業代依存モデル」からの脱却と採用戦略
Hacobuが過去に実施したトラックドライバー実態調査によれば、働き方改革による労働時間の短縮が進む一方で、約6割のドライバーが「賃上げを実感していない」と回答しています。残業代に依存してきた給与モデルが限界を迎える中、労働環境の改善が遅れた企業からは容赦なく人材が流出する「従業員退職型倒産」が急増しています。
運送事業者は、歩合給や残業代に依存しない固定給のベースアップを図ると同時に、未経験者や外国人材といった「多様な人材」が早期に活躍できる標準化された教育システムを導入しなければ、この採用格差を埋めることはできません。
参考記事: 外国人ドライバー100人の現実と物流の5年後|人手不足解決への導入戦略
荷主企業における受入体制の再設計とCLOの役割
荷主企業にとっても、委託先の運送会社が人材不足に陥れば、自社の製品を運ぶ手段が物理的に消滅します。2026年に本格施行される物流総合効率化法により、一定規模の荷主にはCLO(物流統括管理者)の設置が義務付けられます。
CLOは、単なるコスト削減の責任者ではなく、サプライチェーン全体を持続可能にするための最高責任者です。運送会社に対して無理な待機や付帯作業を強いることなく、「選ばれる物流拠点」を構築するためのシステム投資や、周辺環境の整備といった経営判断を下すことが強く求められます。
参考記事: CLOが担う「物流の経営課題化」と組織改革のステップ【2026年04月版】
LogiShiftの視点|選ばれる企業になるための2つの新常識
「変わる企業には着実に人が集まり始めている」というHacobu横井氏の指摘は、現在の物流業界における最大の真理を突いています。LogiShiftの独自の視点から、企業が「選ばれる側」に回るために取り組むべき2つの新常識を考察します。
外国人材活用を前提とした「業務の言語化と標準化」
DYDが提唱する「ダイバーシティ・トランスフォーメーション」の本質は、外国人材を単なる安い労働力として扱うのではなく、彼らを受け入れる過程で「組織の仕組み自体を強靭化する」ことにあります。
これまで日本の物流現場は、「あうんの呼吸」や「見て覚える」といったハイコンテクストな文化に依存してきました。しかし、特定技能制度の拡大により多国籍化が進む現場では、こうした属人的なオペレーションは致命的なミスや事故を引き起こします。業務の手順を明確に言語化し、動画マニュアルや翻訳ツールを用いて「誰がやっても同じ品質が出せる標準化」を達成することは、結果的に日本人スタッフの負担軽減や定着率の向上にも直結します。多様性を受け入れる準備こそが、企業の生産性を引き上げる最強のDX投資となるのです。
参考記事: 特定技能「物流倉庫」追加決定|航空グラハン含む新制度の影響と対策
AIとデータを駆使した「評価・育成プロセス」の透明化
もう一つの新常識は、Hacobu Careerが提示するような「データに基づく客観的な人材育成と評価」の導入です。
従来の物流現場では、ドライバーや倉庫作業員のスキル評価が現場のリーダーの主観に依存しがちでした。これが「頑張っても評価されない」という不満を生み、離職の大きな原因となってきました。しかし、動態管理システムやWMS(倉庫管理システム)のデータ、そしてAIを活用することで、「誰がどのルートを効率よく回ったか」「安全運転を遵守しているか」を客観的な数値として可視化することが可能になります。
「完璧な人材」を市場で探し回るのではなく、未経験者を採用し、データを基にした透明性の高い評価とAIを用いた効率的な育成プログラムによって「自社で完璧な人材に育て上げる」システムを持つ企業だけが、採用格差を勝ち抜くことができます。
まとめ|明日から取り組むべき人材戦略のステップ
5月13日に開催されるLNEWS主催のセミナーは、人材不足に悩む経営層や物流責任者にとって、表面的な採用テクニックではなく、組織の在り方そのものを問い直す貴重な機会となります。
本記事の解説を踏まえ、企業が明日から直ちに着手すべきアクションは以下の3点です。
- 現場業務の徹底的な棚卸しと標準化
「特定の個人にしかできない業務」を洗い出し、マニュアル化やシステムの導入によって属人性を排除する。 - 外国人材受け入れに向けた環境整備
2027年の特定技能拡大を見据え、言葉の壁を乗り越えるための多言語対応ツールや、メンタルケアを含むサポート体制の構築を始める。 - CLOを中心とした経営直轄の採用・育成プロジェクトの立ち上げ
人材確保を現場任せにせず、AIや客観的データを活用した透明性の高い評価制度と育成プログラムを経営主導で導入する。
人口減少という「静かな有事」はすでに始まっています。危機を成長の糧に変え、変化を恐れずに次世代の物流ネットワークを構築する企業だけが、これからの厳しい時代を生き抜くことができるでしょう。
出典: LNEWS
出典: 株式会社Hacobu


