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事例・インタビュー 2026年6月4日

ケース品90%自動化を果たす東電物流に学ぶ倉庫省人化の必須対応

ケース品90%自動化を果たす東電物流に学ぶ倉庫省人化の必須対応

1. 現場の課題:腰痛と人手不足に喘ぐ「ケースピッキング」の限界

物流倉庫の現場において、日々頭を悩ませるのが「重量物(ケース品)の取り扱い」です。

飲料、日用品、産業資材などの重いケース品を、パレットから降ろす作業は過酷を極めます。

1日に何千回と積み下ろしを繰り返すため、作業員の身体には、常に大きな負荷がかかります。

その結果、現場では作業員の腰痛問題や疲労が常態化しています。

慢性的な人手不足が深刻化する「物流2024年・2026年問題」の真っただ中、このような過酷な現場には人が集まりません。

せっかくパートやアルバイトを採用しても、早期に離職してしまう悪循環が続いています。

また、従来の自動化アプローチにも大きな壁がありました。

従来の産業用ロボットは、あらかじめ決められたサイズや形状の段ボールしか扱えないことが一般的でした。

そのため、サイズや荷姿が多種多様な「多品種少量」の現場では、導入が困難でした。

少しでも荷姿が変わるとエラーが起きるため、結局は人海戦術に頼るしかありませんでした。

この「重労働」と「自動化の限界」のジレンマを打ち破る手段として、今「知能ロボット」が大きな注目を集めています。

2. 解決策の提示:東電物流がMujinロボットで実現したケース品90%自動化とは

こうした現場の限界を解決したのが、東電物流の取り組みです。

同社はMujin(ムジン)の知能ロボットを導入し、ケース品の自動化率90%を達成しました。

東電物流が扱う資材は、サイズや重量が極めて不揃いで、ロボットにとって難易度の高い商材でした。

しかし、Mujinのシステムは、この不揃いな荷姿を驚異的な精度で自動化することに成功しました。

この成功の裏には、従来のロボットとは異なる2つの技術的特徴があります。

ロボットに自律的な「脳」を与える知能化技術

従来のロボットは、人間が事前のプログラミング(ティーチング)を行うことで動いていました。

しかし、Mujinの知能ロボットは、ロボット自身が「見て、考えて、動く」ことができます。

3Dビジョンシステムにより、パレットに積まれたケース品のサイズや位置をリアルタイムに認識します。

そして、高度な制御ソフトウェア(脳)が、最適な「掴み方」と「移動ルート」を瞬時に計算します。

このアプローチは、海外で注目される既存ロボットの「脳」を進化させるアプローチとも合致しています。

参考記事: 人型は不要。米新興AIロボの750億円調達が示す、物流設備を「賢くする」現実解

ティーチングレスによる多品種少量への適応

Mujinのロボットは、新商品が追加されるたびに作業を止めてプログラムを書き換える必要がありません。

3Dカメラと独自のアルゴリズムにより、未知の荷物であっても自律的に形状を判断します。

この「ティーチングレス技術」により、多品種少量かつ頻繁な仕様変更が起きる現場でも、稼働を止めずに自動化を維持できます。

既存の設備を総入れ替えせず、頭脳を賢くすることで、投資回収リスク(ROI)を最小限に抑えられます。

3. 実践プロセス:知能ロボットを現場へ導入する3つのステップ

東電物流のような劇的な自動化を、自社の倉庫で実践するためには、どのようなプロセスが必要でしょうか。

知能ロボットを現場に定着させるための、現実的な3つのステップを解説します。

ステップ1:ケース品の「物理データ」の標準化とマスタ整備

知能ロボットの導入において、最も重要となるのが商品マスタの整備です。

ロボットがケース品を安全に掴み、運ぶためには、正確な物理データが必要になります。

商品の寸法・重量データの精緻な登録

知能ロボットがケースを掴む際、三辺のサイズや重量データは不可欠です。

特にWMS(倉庫管理システム)のマスタ情報と連動させる必要があります。

事前に正確なデータを登録しておくことで、吸着エラーを防ぎます。

梱包資材の材質と劣化たわみの検証

実務で落とし穴となるのが、段ボールの劣化や、表面の滑りやすさです。

吸着パッドが正常に機能するか、事前に資材の物理的強度を検証します。

これらを把握することが、稼働後のトラブルを減らす鍵です。

ステップ2:デジタルツインを用いた高精度なシミュレーション

ロボットの実機を導入する前に、仮想空間上で倉庫のレイアウトやロボットの動作を完全に再現します。

この「デジタルツイン」上で、実際の物量や荷姿データを用いて、徹底的な検証(シミュレーション)を行います。

仮想空間での干渉チェックと動線最適化

デジタルツインを活用し、ロボットアームの可動範囲や動線をシミュレーションします。

周辺の棚や、WMS連携したコンベアとロボットアームが接触しないか、事前に検証します。

手戻りのないシステム構築が、低コストでの導入を可能にします。

事前のスループット計算とROIの確定

仮想空間に実際の出荷履歴データを流し、1時間あたりの処理量(スループット)を計算します。

これにより、導入前に正確な投資対効果(ROI)を確定させることができます。

経営層を説得するための強力なデータとなります。

参考記事: ファナック×NVIDIA連携!デジタルツインで導入を劇的短縮する物流AIの3戦略

ステップ3:スモールスタートと「人間介在型」の運用設計

自動化を検討する際、多くの現場管理者が「100%の完全無人化」を目指そうとします。

しかし、それがプロジェクトを挫折させる最大の罠です。

東電物流の事例が示す自動化率「90%」は、極めて現実的で賢い設計です。

残りの10%は、機械が判断に迷うほどの例外的な損傷箱や、極端なイレギュラーとして処理します。

100%を追わない例外許容のシステム設計

知能ロボットであっても、潰れた段ボールや反射の強いビニールなどのイレギュラーに対応しきれない場合があります。

そこで、100%の完全自動化ではなく、90%という現実的な目標を設定します。

例外処理は人間が担う前提で、現場の運用フローを設計します。

遠隔サポートや現場でのエラー復旧フロー

ロボットが判断に迷った際、現場の作業員が速やかに復旧指示を出せる体制を作ります。

あるいは、遠隔地からカメラ映像を見て指示を出す仕組みを構築します。

人とロボットが協働する「人間介在型(Human-in-the-loop)」が、稼働率99.9%を支えます。

参考記事: ピッキング20億回!米AIロボット企業に学ぶ「人間介在型」自動化3つの成功法則

4. 期待される効果:ロボット導入がもたらすBefore / After

知能ロボットを現場に導入し、ケース品の90%自動化を達成した後の変化を整理します。

導入前後での現場の劇的な変化を、以下のテーブルで比較します。

項目 導入前(Before) 導入後(After) 主な効果
作業員の身体的負荷 重いケース品の積み下ろしで腰痛や疲労が常態化 ロボットが重量物を代替し負担が劇的に軽減 労災リスク削減と職場定着率の向上
倉庫の処理スピード 疲労や人員不足により時間帯や曜日で波動が発生 24時間稼働可能なロボットにより常に一定速 出荷能力の平準化とリードタイム短縮
必要な現場スタッフ 多数 de ピッカーが必要で採用費や人件費が高騰 例外処理や管理業務のみの最小限の人員で運営 人的コストの削減と付加価値業務への移行
誤出荷エラーの発生率 似姿段ボールの目視見落としなどで誤出荷が発生 ロボットアームの正確なセンサー認識でミス防止 出荷精度の極小化と顧客信頼の獲得

この表が示すように、導入後は現場のオペレーションが根底から変化します。

具体的な定量効果と定性効果について、さらに詳しく解説します。

定量的な導入メリット:コスト削減と出荷スピードの平準化

自動化率が90%に達することで、現場の作業員を大幅に削減できます。

これにより、月々の採用費や派遣人件費を劇的に削減することが可能になります。

また、ロボットは疲労を知りません。

そのため、24時間365日、常に均一なスピードでケース品のピッキングを継続できます。

繁忙期や夜間でも、出荷スピードが低下せず、物流全体のリードタイムを安定して短縮できます。

定性的な導入メリット:3K現場からの脱却と「活人化」の実現

作業員の身体的負荷が激減することで、現場の安全性が劇的に向上します。

「きつい・汚い・危険」の3K現場から脱却することは、離職率の低下に直結します。

また、これまで単純な積み下ろし作業に縛られていたベテランスタッフを、より高付加価値な業務へ再配置できます。

ロボットのフリート管理や、品質チェックといった、人間にしかできない創造的な業務へシフトする「活人化」が実現します。

参考記事: ダイフク「東京Lab」開設!AI・ロボットでマテハン高度化と完全無人化の衝撃

5. まとめ:成功の秘訣は「ソフトウェア主導」の柔軟な自動化設計

東電物流が、Mujinロボットによってケース品90%の自動化に成功した最大の要因。

それは、「完璧なハードウェアの完成を待つのではなく、賢い脳(AIソフトウェア)を現場に後付けする」という発想にあります。

従来の日本の物流自動化は、ソーターや自動倉庫といった、巨大な固定設備(ハードウェア)の導入が前提でした。

しかし、これらの設備は一度建てるとレイアウト変更が困難で、多額の初期投資というリスクを伴いました。

これからの物流DXにおいては、ハードウェアの形状に縛られず、アップデートによって「賢くなるソフトウェア」に投資する視点が不可欠です。

完全無人化という幻想を追い求めるのではなく、人と機械が互いの弱点を補い合う、柔軟な協調体制を構築する。

これこそが、労働力不足という深刻な危機を乗り越え、次世代の持続可能なサプライチェーンを構築するための最短ルートとなります。

まずは自社の現場に眠る「データ」の整理から、自動化に向けた最初の一歩を踏み出してみませんか。

参考記事: 自己進化ロボがピッキングを自動化!中国SynapX80億円調達と3つの教訓

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監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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