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事例・インタビュー 2026年6月10日

サンゲツが推進する荷待ち時間2時間以内と積載率20%向上の必須対応

サンゲツが推進する荷待ち時間2時間以内と積載率20%向上の必須対応

「重くて長い壁紙や床材は、トラックに積みにくく輸送効率が悪い」
「配送先の建築現場で何時間も待たされ、ドライバーから敬遠される」
インテリア建材や部材を扱う倉庫管理者や実務担当者の皆様は、このような特有の悩みを抱えていませんか。

壁紙、ロールカーペット、床タイルといったインテリア建材は、長さや重さが極端に不揃いな荷姿が特徴です。
パレット化や倉庫の自動化(ピッキング、自動検品など)が進めにくく、人海戦術の属人的なオペレーションに頼りがちです。
さらに、配送先が内装施工や建設現場であることが多く、指定時間に行っても激しい荷待ち時間が発生しています。

このままでは、ドライバーの残業時間上限規制である「物流2024年問題」や、労働力不足がさらに進行する「物流2026年問題」を乗り切ることはできません。
最悪の場合、運送事業者から「運べない荷主」として敬遠され、製品を顧客に届ける手段を失うという経営危機に直面します。

参考記事: 物流2026年問題とは?2024年問題との違いや法改正、実務で必要な対策を徹底解説

本記事では、この建材物流の難題に対し、インテリア業界最大手・サンゲツでロジスティクス部門を率いる内藤弦氏の挑戦を徹底解剖します。
LOGISTICS TODAYでも大きく注目された「業界の持続性を問う物流設計」の具体的な手法を、明日から自社の現場で実践できる3つのステップとして詳しく解説します。

建材・インテリア物流の現場を蝕む「3つの限界」(Before)

インテリア建材や部材の物流現場は、他の産業と比較してデジタル化(DX)や標準化が最も遅れている領域の一つです。
現場が直面している具体的な課題を以下のテーブルに整理しました。

建材・インテリア物流における現状の課題

課題の分類 具体的な実態 現場への物理的な影響 運送事業者への影響
荷姿の不揃い 長尺の壁紙、重量のある床タイル、不揃いな副資材が混在 パレット化や自動検品が困難 積載効率が著しく低下し空気を運ぶ無駄が発生
過酷な荷役 現場での手下ろしやバラ積みが常態化 庫内作業員やドライバーの身体的負荷が増大 拘束時間が延びてドライバーの離職率が高まる
配送先の制約 施工現場での厳格な時間指定と多頻度小口配送 朝一番のラッシュで現場周辺が大渋滞 長時間の荷待ち(待機)が日常的に発生

日本のサプライチェーン構造において、これまでは「運送会社に丸投げ」することでこの非効率を乗り切ってきました。
しかし、2026年4月には「改正物流効率化法」が施行されます。
これにより、荷主企業(発・着荷主)には「荷待ち時間の原則2時間以内への短縮」や「積載率向上」といった明確な法的義務と罰則が課せられます。
個社ごとの属人的な努力に依存した「部分最適」は、すでに限界を迎えています。

参考記事: 2026年施行!改正物流効率化法で発・着荷主が負う3大義務と罰則回避 of 必須対策

サンゲツ内藤氏が提唱する「業界の持続性を問う物流設計」(What)

この厳しい法改正と輸送力不足を背景に、サンゲツの内藤弦氏が挑むのが「業界の持続性を問う物流設計」です。
これは、物流を単なるコスト削減の対象(コストセンター)として買い叩くのではなく、企業の生き残りをかけた「戦略的インフラ(バリューセンター)」へと再定義する試みです。

内藤氏が目指す物流設計の核心は、以下の3つのパラダイムシフトに集約されます。

1. 物流ガバナンスの確立とCLO(物流統括管理者)体制の構築

仕入れや営業の都合による「無理な即日配送」や「過剰な小ロット多頻度納品」に対し、物流部門がトップダウンで介入できる体制を整えます。
経営層に強力な「物流改善命令権」を持つ役員をCLOとして据え、社内のセクショナリズムを打破する組織設計を行います。

参考記事: 【第3回CLO協議会】輸送力不足が足元へ浸透|特定荷主の届出義務とCLOの重要性

2. 「競争領域」から「協調領域」への大転換

自社専用の配送網を囲い込んで競合他社を出し抜く「自前主義」から完全に脱却します。
非競争領域である「配送インフラ」は、同業他社や異業種と徹底的にシェア(アセット共有)し、社会インフラとしての流通網を維持します。

3. 着荷主(内装施工業者・現場)を含めたサプライチェーンの再構築

これまで物流改革の枠組みから外れがちだった「荷物を受け取る側(着荷主)」の商慣習にメスを入れます。
納品条件の標準化や、デジタルデータを活用した事前出荷情報(ASN)の連携により、現場での検品レス(ノー検品)化を推進します。

持続可能な物流設計を現場へ導入する「3ステップ」(How)

サンゲツが挑む高度な物流設計を、自社の倉庫や配送管理の現場に落とし込み、持続可能な体制へと再構築するための3つの実践プロセスを解説します。

【ステップ1:荷姿・物量のデータ標準化】
   ▼(WMSへの正確なマスター登録と容積計算の自動化)
【ステップ2:施工現場との連携による荷待ち削減】
   ▼(バース予約システム導入とASNデータ連携による検品レス化)
【ステップ3:競合・他業界との共同配送の開始】
   ▼(帰り荷(帰り便)の有効活用と積載率の極大化)

ステップ1:荷姿・物量データの徹底的な可視化と標準化

建材物流の自動化や配車計画の最適化を阻む最大の要因は、「自社の商品のサイズや重量を正確にシステムが把握していない」ことにあります。

  • 三辺寸法と容積重量(Volume Weight)のデータベース化
    不揃いな商材の一つひとつについて、パッケージを含めた「梱包サイズ」と「重量」を計測し、WMS(倉庫管理システム)に正確にマスタ登録します。
  • 配車・積載計画のシステム自動計算化
    勘や経験に頼っていた積載計画を廃止します。
    マスタデータに基づき、トラックの荷台スペースに無駄なく不揃いな荷物を組み合わせる「自動配車システム(TMS)」を導入します。

参考記事: 共同調達とは?物流コスト削減を実現する仕組みと導入の進め方

ステップ2:着荷主(施工現場)を巻き込んだ「荷待ち・荷役」の撲滅

配送先の建築現場や倉庫での待機時間を劇的に削減するため、デジタルツールと商慣習の適正化を掛け合わせます。

  • バース予約システムの導入と運用ルールの徹底
    中継拠点や自社倉庫、さらには主要な納品先に対して、トラックが到着する時間帯を事前に予約するシステムを導入します。
    現場で発生する「構内待機」を極限までゼロに近づけます。
  • ASN(事前出荷情報)データを活用した検品レス(ノー検品)の導入
    出荷元のWMSから、納品先(着荷主)へ事前に正確な出荷データを送信します。
    現場では、ITFコード(集合包装用バーコード)などを一括スキャンするだけで荷受けを完了させ、手書きの受領書や目視検品による無駄な時間を削減します。

ステップ3:競合他社や他業界との「共同配送・帰り便活用」の推進

自社の物量だけでトラックの積載率を高めることには限界があります。
競合関係にある同業他社や、物流ルートが重なる異業種と連携します。

  • 共同配送コンソーシアムへの参画
    同一エリア(特に配送が非効率になりやすい地方部や都心渋滞エリア)に向かう複数企業の荷物を1台のトラックにまとめて運ぶ共同配送網を構築します。
  • 帰り荷(帰り便)の相互融通(ラウンド輸送)
    行き便(自社便)の納品を完了した後、近隣にある競合他社や異業種の倉庫から荷物を積み込み、自社の出発地へ戻る「帰り便」として活用します。
    これにより、車両の実車率と稼働率を劇的に高めます。

参考記事: 共同配送とは?仕組みやメリット・デメリット、導入成功のポイントを徹底解説

業界の持続性を問う物流設計がもたらす「劇的な効果」(After)

サンゲツ内藤氏が挑む物流設計の手法を自社の現場へ導入することで、コスト削減とコンプライアンス遵守、そしてドライバーの労働環境改善を両立させることができます。

導入前後(Before/After)の劇的な変化を、以下のテーブルに整理しました。

物流設計の導入による効果サマリー

評価指標 導入前(Before) 導入後(After) 定量・定性的な効果
トラック積載率 自社便での部分最適により、平均50%以下と低迷 共同配送と自動配車により、積載率が20%以上向上 運行便数を削減し輸送コストを大幅に抑制
現場の荷待ち時間 早朝ラッシュや施工現場での無秩序な到着で2時間超 バース予約とデータ連携により、原則15分以内に短縮 改正物流効率化法の罰則・社名公表リスクを完全回避
ドライバー定着率 長時間の過酷な手作業と待機により採用難・離職増 拘束時間の削減と日帰り運行の実現により定着 運送会社から「選ばれる荷主」としての強固な関係
物流の経営基盤化 営業の要求に振り回される「コストセンター」 CLOを中心とした「全体最適」の意思決定が確立 景気変動や物量波動に左右されない強靭なサプライチェーン

参考記事: 「物流2024年問題」の先にある勝機 自動化と共同配送が切り開く新・産業構造|担当者必見の対策ガイド

まとめ:成功の秘訣は「競争から協働へ」のマインドシフト

サンゲツの内藤氏が挑む、インテリア・建材業界の持続可能性を問う物流設計。
その取り組みは、一社のコスト削減活動という矮小なレベルを超え、崩壊の危機に瀕する日本の物理的な輸送インフラを全員で維持するという高次元の経営戦略(ESG/BCP)に直結しています。

本気で現場改善とサプライチェーンの強靭化を目指す倉庫管理者や実務担当者が、明日から意識し、実行すべき成功の秘訣は以下の3点です。

  • 物流の「丸投げ」を完全に脱却し、自社でデータを持つこと
    自社の貨物取扱量や荷待ち時間、不揃いな荷姿のサイズデータを正確に把握しない限り、法改正への対応も、運送会社との適正な運賃交渉も不可能です。まずはWMSやTMSを統合し、データ収集基盤を確立してください。
  • 営業や調達を巻き込んだ「全体最適」の組織改革を推進すること
    「名ばかりCLO」を生まれさせず、取締役会直属の「物流改善命令権」を明文化するなど、営業部門の無理な要求(即日配送や過剰なサービスなど)を調整できる体制を構築すべきです。
  • 競合他社を「敵」ではなく「物流インフラの共同維持パートナー」と捉えること
    物流はもはや競争領域ではなく、協調領域です。
    同業者や異業種の壁を越えて手を取り合い、共同配送や帰り荷活用に一歩踏み出すマインドシフトこそが、今後の市場における企業の生存確率を決定づけます。

「運べなくなるリスク」は、もはや目前に迫った現実です。
サンゲツの挑戦をロールモデルに、自社の物流体制を「持続可能なインフラ」へと今すぐアップデートしていきましょう。


出典: LOGISTICS TODAY

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監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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