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事例・インタビュー 2026年6月16日

既存カゴ車の自動化でシーオスが貢献、0℃〜10℃の低温現場で省人化が加速

既存カゴ車の自動化でシーオスが貢献、0℃〜10℃の低温現場で省人化が加速

1. 導入:低温物流DXの新たな突破口となる「既存資産」のロボット化

日本のサプライチェーンを支える物流現場は今、2024年問題に端を発する深刻な人手不足と、労働環境の抜本的な改善という二大潮流の狭間で、かつてない変革を迫られています。特に食品物流を担うチルド・冷凍などのコールドチェーンにおいては、徹底した温度管理が必要とされる一方で、極限の低温環境下での作業負担が極めて大きく、人材の確保と定着は長年の経営課題となっていました。

このような状況下において、2024年6月16日、物流ロボティクスとシステムインテグレーションを手掛けるシーオス株式会社は、日本の低温物流を牽引するニチレイロジグループの中核企業である株式会社ロジスティクス・ネットワークが運営する「川崎ファズ共配センター」に、自律型搬送ロボット「TUGBOT2(ツグボット2)」を納入したと発表しました。

このニュースが業界に与えた最大の衝撃は、単に「物流ロボットが導入された」という事実ではありません。現場で既に広く普及している「既存のカゴ車(ロールボックスパレット)」を一切変更することなく、そのまま自動搬送ロボットの対象として活用できるという「レトロフィット(後付け・既存資産活用)型自動化」を極めて高いレベルで実用化した点にあります。

ロボットを導入するために倉庫のインフラを作り変えたり、高額な専用什器を買い揃えたりする時代は終わりを告げつつあります。既存の現場環境や保有資材をそのまま生かし、最小限の投資で最大の省人化効果を生み出すシーオスの取り組みは、日本のブラウンフィールド(既存施設)における物流DXの現実的かつ強力な最適解として、業界全体の注目を集めています。

2. ニュースの背景と詳細:川崎ファズ共配センターにおける「TUGBOT2」導入の全貌

今回、「TUGBOT2」が導入されたのは、ロジスティクス・ネットワークが運営するチルド食品配送の基幹拠点「川崎ファズ共配センター」です。本センターは高度な食品共同配送のハブとして機能していますが、チルド帯(0℃〜10℃)などの厳しい温度管理下でのピッキング・搬送作業は、作業員の身体的疲労を伴いやすく、省人化へのアプローチが不可欠でした。

導入された「TUGBOT2」の最も特徴的な機能は、業界初となる「自動連結・切り離し(フッキング/アンフッキング)機能」です。従来の搬送ロボット(AGVやAMR)の多くは、ロボットの背面に専用の架台を載せるか、専用のパレットやカゴ車をあらかじめ用意し、ロボットがその下に潜り込んで持ち上げるタイプが主流でした。しかしこれでは、現場に数千台規模で存在する既存のカゴ車をすべて廃棄・更新しなければならず、導入コストが跳ね上がる要因となっていました。

TUGBOT2は、既存のカゴ車に対してロボット側が自律的に接近し、人の手を一切介さずに自動で連結(フッキング)を行います。目的地まで搬送を終えた後は、自動で切り離し(アンフッキング)を実行し、次のタスクへと移行します。この一連の自律走行プロセスにより、夜間の無人搬送や日中の省人化がシームレスに実現可能となりました。

以下に、今回の導入プロジェクトに関する概要と事実関係を整理します。

項目 詳細な内容 物流現場における意義
発表日・導入先 2024年6月16日発表。ロジスティクス・ネットワーク「川崎ファズ共配センター」に導入。 低温共同配送の重要拠点で実戦運用。
導入機器 自律型搬送ロボット(AMR)「TUGBOT2(ツグボット2)」 高度な自律走行技術と環境適応力を備えた最新鋭機。
コア技術・機能 自動連結・切り離し(フッキング/アンフッキング)機能。 既存のカゴ車をそのまま活用可能。人手を介さない自動化。
導入効果・狙い 低温現場の作業環境改善。省人化・無人化による生産性向上。柔軟な人員配置。 身体的負荷の大きい長距離搬送をロボットに代替。

3. 業界への具体的な影響:各プレイヤーが受ける恩恵と変化

この「既存のカゴ車をそのまま牽引できる」というTUGBOT2の導入事例は、物流を構成するさまざまなプレイヤーに、以下のような具体的かつ多大な影響を及ぼします。

倉庫事業者・3PL:設備更新費用(CAPEX)を最小化するレトロフィット自動化の恩恵

日本の多くの物流倉庫、特に3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業者にとって、自動化の最大の障壁は「初期投資額の大きさ(ROIの回収期間の長さ)」でした。最新鋭の自動倉庫やGTP(Goods to Person:商品が作業者の元に届く仕組み)を導入するには、数億円から数十億円の設備資金が必要であり、荷主との契約期間(通常3〜5年)内に投資を回収することは極めて困難でした。

しかし、TUGBOT2のようなレトロフィット型の自動化であれば、現場に既に数千台存在する既存のカゴ車をそのままアセットとして活用できます。カゴ車を買い換えるコスト、処分するコストを一切発生させず、必要なルートにロボットをアドオン(後付け)するだけで自動化をスモールスタートできます。これは、投資の柔軟性を高めると同時に、驚異的な短期間で搬送業務の効率化と労働環境の改善を実現できることを意味しています。

参考記事: かご車(ロールボックスパレット)とは?基礎知識から2024年問題対策・最新DXまで徹底解説

倉庫内作業員:過酷なチルド環境における「身体的負荷の劇的軽減」

チルド(0℃〜10℃)などの低温物流現場におけるフォークリフト乗務やカゴ車の長距離押し引きは、作業員の体温を急速に奪い、筋肉の硬直による関節痛や、防寒装備による動きづらさなど、身体的な負荷が常温エリアの比ではありません。特に重いチルド商品を満載したカゴ車を、滑りやすい低温床面で人力で搬送することは、転倒や腰痛の原因となっていました。

TUGBOT2がこれらの長距離搬送を代替することで、人間は「過酷な環境での移動」という肉体労働から完全に解放されます。人間は常温エリアに近い作業バースでの検品や品質管理、あるいは安全なシステム監視・操作などの高付加価値業務に専念することが可能となり、これは単なる「省人化」を超えた「活人化(従業員を付加価値の高い業務へ配置すること)」へとつながります。労働環境の改善は、作業員の定着率向上と、離職率の低下に劇的な効果をもたらすでしょう。

参考記事: コールドチェーンとは?基礎知識から現場の課題・最新システムまで徹底解説

SaaS・テクノロジーベンダー:アタッチメント&ソフトウェア重視へのパラダイムシフト

今回のシーオスの事例は、物流ロボティクスの開発企業やSIer(システムインテグレーター)にとっても、今後の開発戦略を左右する重要なマイルストーンとなります。

これまでは「ロボットのために、倉庫の床を平滑にし、磁気テープを貼り、特殊なパレットを導入する」というように、ロボット主導で環境を整えるアプローチが一般的でした。しかし、これからは「既存の物理資産や人間用のレイアウト(カゴ車など)に、ロボットの側がいかに適応するか」という現場適応型のテクノロジーが競争力の源泉となります。

既存の物理アセットとロボットを物理的に結びつける「高度なアタッチメント技術(自動フッキングなど)」と、それを周囲の障害物を避けながら自律誘導する「SLAM技術(ソフトウェア)」の重要性が増しており、今後さらにこうしたレトロフィット型自動化ニーズは市場に拡大していくと予測されます。

4. LogiShiftの視点(独自考察):ブラウンフィールドの自動化と「コールドチェーンの強靭化」

単なる「最新ロボットの納入」という事実から一歩踏み込み、日本の物流DXやサプライチェーン全体の構築という大局的な観点から、このニュースがもたらす構造的な変化をLogiShift独自の視点で考察します。

「ロボットに現場を合せる」から「現場にロボットが合せる」時代への完全な移行

日本の物流施設の約7割以上は、柱の間隔が狭く、天井が低く、床に段差や傾斜が点在する「ブラウンフィールド(既存施設)」です。こうした施設で、大規模なマテハン機器やコンベア、AGV用の固定インフラを設置することは不可能です。

今回のTUGBOT2の強みは、既存のカゴ車対応だけでなく、「省スペースでの活用」「変動しやすいレイアウトへの適応」を可能にする自律走行技術にあります。磁気テープなどを必要としない「SLAM(自己位置推定と環境地図作成)技術」は、レイアウト変更が日常茶飯事である共同配送センターにおいて極めて有効です。ヨーロッパなどでも、既存倉庫のレイアウトを活かしたまま Visual SLAM などの高度なセンサー技術でロボットを自律走行させるアプローチが主流となっています。

現場の制約を言い訳に自動化を諦める時代は終わり、テクノロジーの側が既存施設に柔軟に「アドオン」する形で、局所的なスモールスタートから徐々に自動化範囲を拡大していく手法が、今後の日本国内のDX標準となるでしょう。

参考記事: AMR(自律走行搬送ロボット)完全ガイド|AGVとの違いと失敗しない導入手順

ニチレイロジグループが描く、一貫した自動化ロードマップとレジリエンス

低温物流の最大手であるニチレイロジグループが、今回のロジスティクス・ネットワークの川崎ファズ共配センターでTUGBOT2を導入したことは、同グループが一貫して進める「先進テクノロジーによるコールドチェーンの自動化・レジリエンス強化」のパズルのピースが、また一つはまったことを意味しています。

ニチレイロジグループは、過酷な極低温環境(マイナス20度以下)に対応した「冷凍AMR」の実証実験を株式会社ピーエムティーと進めるなど、環境が最も過酷なエリアにおけるインフラレス自動化の検証を重ねてきました(参考記事3)。また、グループ内では、サプライチェーンリスク管理プラットフォーム「Resilire」を活用し、調達から配送に至るサプライチェーンの「n次可視化」によるBCP(事業継続計画)の強靭化も本格稼働させています(参考記事7)。

このように、上流のサプライチェーン可視化と、下流の物理搬送の高度なロボティクス(自動化)を「点」ではなく「面」で同時に進化させている同グループの戦略は、競合他社に対する圧倒的な優位性をもたらします。一時的な人手不足の補填ではなく、「持続可能で止まらない食品流通網」を構築するためのデジタル・トランスフォーメーションが具現化されています。

参考記事: ニチレイロジGとピーエムティーの冷凍AMR実証!インフラレス自動化3つの変革

部分最適から全体最適へ:手待ち時間を考慮した「人とロボットのオーケストレーション」

シーオスの発表内容の中に「手待ち時間も考慮した人とロボットの連携体制を構築する」という一節があります。これは、物流DXが今まさに直面している、最重要のソフトウェア的課題を指摘しています。

ロボット単体の速度がどれほど速くとも、人間のピッキング作業やトラックからの荷下ろし作業と連携が取れていなければ、ロボットは現場で「手待ち(アイドル)」になり、結果として倉庫全体の処理能力(スループット)は向上しません。

今後、倉庫事業者にとって重要な競争優位性となるのは、WMS(倉庫管理システム)やWES(倉庫実行システム)などの上位システムとロボット群を連携させ、リアルタイムの稼働状況や人間の作業進捗を統合して制御する「ソフトウェアによる全体最適(オーケストレーション)」の構築です。人とロボットが交差するハイブリッドな現場において、動的に指示やタスクを最適配分することこそが、次世代のコールドチェーンに不可欠なインテリジェンスとなります。

参考記事: 【ニチレイ】SCRM「Resilire」本格運用へ|食品物流のBCPを変えるn次可視化

5. まとめ:低温物流の未来を拓くために明日から意識すべき3つのアクション

シーオスによるニチレイロジグループ川崎ファズ共配センターへの「TUGBOT2」導入は、日本の物流業界、特に過酷な労働環境に喘ぐコールドチェーン事業者にとって、自動化への道筋を大きく平易にする先駆的なマイルストーンです。この変革の波を受け、経営層や現場リーダーが明日から現場で意識し、取り組むべきアクションは以下の3点に集約されます。

  1. 既存の物流資材(アセット)を活かした「レトロフィット自動化」の可能性を再検討する
  2. 「自動倉庫を新設する予算はない」「うちは古いカゴ車ばかりだから無理だ」という固定観念を捨て、既存の資産に後付けで対応できるAMRやフッキングロボットの導入といった局所的な自動化をベンチマークし、投資のハードルを下げてください。
  3. 過酷なチルド・冷凍環境への投資を「従業員の定着(ウェルビーイング)投資」と再定義する
  4. ロボット導入を単なる「人件費削減(省人化)」としてコスト換算するのではなく、従業員を過酷な重労働から解放して定着率を高める「活人化」の視点から、中長期的な採用コスト・事業継続性のリターンとして評価する評価基準を社内に設けてください。
  5. ハード(ロボット)の導入にとどまらず、システム間の「データ連携」を前提としたITインフラを整備する
  6. 複数台のロボットや人間との協調を最適化するためには、WMSやWESを通じたシームレスな制御データの一元化が不可欠です。まずは現場のアナログな運行ルールをクレンジングし、データ連携に即した現場プロセスの見直し(リデザイン)に着手してください。

テクノロジーは、人間を過酷な肉体労働から解放し、持続可能で強靭なサプライチェーンを構築するために急速な進化を遂げています。今回のシーオスとニチレイロジグループによる先進事例は、その未来がすでに手の届く現実であることを証明しています。自社の物流基盤を今一度見つめ直し、次世代型へとアップデートするための「最初の一歩」を、今日から踏み出していきましょう。

6. 出典

出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS

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監修者プロフィール
近本 京

近本 京

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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