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事例・インタビュー 2026年6月30日

生活協同組合コープさっぽろの1日1便化に学ぶ荷量平準化が持続可能な配送を加速

生活協同組合コープさっぽろの1日1便化に学ぶ荷量平準化が持続可能な配送を加速

「1日複数便の店舗配送を続けているが、トラックの手配がつかない」
「ドライバーの拘束時間が減らず、残業上限規制をクリアできない」
「燃料費や人件費が高騰し、物流コストが利益を圧迫している」

物流現場のリーダーや経営層の皆様は、このような深刻な悩みに直面していませんか。
特に厳格な温度管理や賞味期限管理が求められる食品物流の現場では、多頻度小口配送による非効率が極限に達しています。

この未曾有の物流危機に対し、極めて革新的なアプローチで構造改革を成し遂げた企業があります。
それが、北海道を拠点とする生活協同組合「コープさっぽろ」です。

コープさっぽろ、北海道ロジサービス、エース、札幌軽量急送の4者による共同プロジェクトは、2026年6月に発表された「第1回日本物流大賞」を受賞しました。

彼らが実現したのは、AI需要予測(AI demand forecasting)を用いた「荷量の平準化」と、配送を1日2便から「1日1便」へと統合・削減する食品バリューチェーンの最適化です。

本記事では、コープさっぽろ、日本物流大賞受賞の「荷量の平準化」を支えた食品バリューチェーン最適化の全貌を徹底解説します。
自社の物流現場における業務効率化やコスト削減、持続可能なサプライチェーン再構築に向けた具体的なヒントを掴みましょう。

基礎知識:コープさっぽろの物流構造改革と「荷量の平準化」とは何か?

コープさっぽろらが成し遂げ、日本物流大賞の栄冠に輝いた「『DX×匠の現場力』による物流構造改革」とは、どのような取り組みなのでしょうか。
その仕組みを分かりやすく整理します。

「1日2便」を「1日1便」へ集約した配送統合

小売業やスーパーマーケットの店舗配送において、従来は「1日2便」の体制が常識とされてきました。
これは、店舗側の「品揃えを維持したい」「品出し作業の時間を分散させたい」という営業都合(店舗都合)を優先していたためです。

しかし、この配送モデルはトラックの積載率を低下させ、ドライバーの拘束時間を長時間化させる大きな要因となっていました。
コープさっぽろは、この「営業の聖域」に切り込みました。

従来の店舗配送を「1日1便」へと統合・削減することに成功したのです。

AI需要予測が支えた「荷量の平準化」のメカニズム

店舗配送を1便に集約するにあたり、最も懸念されたのが「一度に大量の荷物が届くことによる店舗オペレーションの混乱」や「一時的な欠品リスク」でした。
この課題を解決したのが、最先端の「AI需要予測システム」です。

AI需要予測を用いることで、各店舗における日々の販売動向や客数、天候データを精緻に分析。
「いつ、どの商品が、どれだけ売れるか」を事前に高い精度で予測します。

この予測データに基づき、倉庫からの出荷量や配送ダイヤを事前にコントロールする「荷量の平準化」を実行しました。
荷量が均等に慣らされたことで、1便化しても店舗側の作業負担を増やすことなく、安定した品揃えを維持できるバリューチェーンを構築したのです。

浮いたリソースを地域で共有する「地域シェアリングモデル」

このプロジェクトの真の革新性は、1便化によって自社内で「浮いた」リソースの活用法にあります。
配送効率が向上したことで、トラックの台数や人員、運行時間に余剰(空きリソース)が生じます。

多くの企業は、この余剰リソースを自社内だけで抱え込みがちです。
しかし、コープさっぽろらはこのアセットを地域全体に開放しました。

地域の他の事業者とトラックやドライバーを共有する「地域シェアリングモデル」を構築したのです。
これにより、自社の固定費を削減するだけでなく、地域物流の維持という多大な社会的価値を創出しました。

参考記事: コープさっぽろが配送を1日1便に削減し共同配送を加速させる

なぜ今重要なのか:2026年問題と改正物流効率化法(CLO選任義務化)

コープさっぽろ、日本物流大賞受賞の「荷量の平準化」を支えた食品バリューチェーン最適化の取り組みが、今まさに業界で強く注目されている背景には、深刻な外的要因が存在します。

トラックが物理的に「運べなくなる」2024年・2030年の供給限界

2024年4月から施行されたドライバーの時間外労働上限規制(年960時間)により、長距離輸送のみならず、都市部の店舗配送においてもドライバー不足が深刻化しています。
政府有識者検討会の試算によれば、2030年度には国内の輸送能力が約34パーセントも不足すると警告されており、従来の個別配送モデルは完全に崩壊の危機にあります。

運送会社は、待機時間が長い、手荷役が多いといった不合理な取引を強いる荷主との契約を打ち切り始めています。
効率的な運行環境を整えなければ、自社の商品を運んでもらえない「物流難民」へと転落してしまうのです。

2026年本格施行「改正物流効率化法」のインパクト

さらに、2026年度には「改正物流効率化法」が本格施行を迎えています。
この法改正により、一定規模以上の輸送量を持つ「特定荷主」に対して、以下の義務が課されます。

  • 役員クラスで物流全般を統括管理する「最高物流責任者(CLO)」の選任
  • ドライバーの荷待ち時間・荷役時間を原則2時間以内に収めるルールの遵守
  • 中長期的な物流効率化計画(中長期計画)の策定と定期報告

取り組みが不十分な場合、行政からの是正勧告や社名公表、最大100万円の罰則が科されるリスクがあります。
つまり、物流の効率化はもはや「現場のコスト削減活動」ではなく、重大な「経営コンプライアンス」そのものになったのです。

コープさっぽろ事例が示す「CLOの理想像」

多くの企業において、営業部門や調達部門、店舗運営部門などの利害が対立し、物流部門がどれだけ効率化を訴えても「品切れを防ぐために即即納品を続けろ」と押し切られるサイロ化が起きています。

コープさっぽろの事例は、AI需要予測のデータ裏付けの元、店舗都合の配送頻度(1日2便)を見直し、全社最適の視点で「1日1便化」を断行した好例です。
これこそが、改正法が求める「役員クラスのCLO(物流統括管理者)が強い権限を持ち、部門間の壁を壊してバリューチェーンを再設計する」というあるべき姿そのものです。

参考記事: 【2026年義務化】CLO(物流統括管理者)設置で企業価値を高める 3つの対策

メリット・効果:コープさっぽろが実現した驚異的な3つの変化

食品バリューチェーン全体の最適化と荷量の平準化に取り組むことで、企業には定量・定性の双方で劇的なメリットがもたらされます。
コープさっぽろらが体現した具体的な効果を見ていきましょう。

1. ドライバーの拘束時間削減と労働環境の適正化

従来の1日2便体制では、トラックは1日に同じ配送ルートを2往復する必要がありました。
これに伴い、店舗や物流センターでの深刻な「荷待ち時間(待機時間)」や、繰り返し発生する荷役作業がドライバーを疲弊させていました。

1日1便に集約したことで、ドライバーの往復回数や待機時間が大幅に削減されました。
これは労働時間の大幅な短縮につながり、改正改善基準告示の厳しい拘束時間規制をクリアするための強力な解決策となります。

2. 積載率の飛躍的向上と配送コストの低減

国土交通省のデータによると、日本の営業用トラックの平均積載率は「約38%台」にとどまっています。
これは、荷台の約6割が空いたまま走行している「空気輸送」が常態化していることを意味します。

コープさっぽろは、AI需要予測に基づいて荷量をあらかじめ均等化(平準化)した上で、1回の便にまとめて積載しました。
これにより、トラック1台あたりの積載効率を極限まで引き上げ、車両台数そのものを大幅に削減することに成功。
高騰し続ける運賃の上昇圧力を相殺し、配送コストを劇的に抑制しました。

3. 地域シェアリングによる資産効率の最大化とESG経営の実現

1日1便化によって生まれたトラックや人員の「余剰リソース」を地域の他社貨物の混載や共同配送に外販・シェアすることで、アセットの稼働率を最大化させました。
これは自社の物流費を「変動費化」するだけでなく、地域の共同インフラとしての新たな収益源となります。

さらに、運行台数と回数が減ったことで、年間で大幅なCO2排出量を削減。
ESG(環境・社会・ガバナンス)評価の向上に直結し、企業の社会的価値を劇的に高めています。

従来の配送体制とコープさっぽろ型最適化モデルの比較

評価項目 従来の1日2便配送 コープさっぽろの1日1便配送 期待される具体的な効果
積載率と配送効率 午前と午後で荷量が分散。積載率は低水準にとどまる。 AI需要予測を基に、荷量を事前に平準化して1回で配送。 車両台数と運行回数の削減。積載効率を極限まで向上。
ドライバーの労働環境 1日に2回往復。待機時間や拘束時間が長く、残業が増交。 配送回数が1回になり、拘束時間や待機時間が大幅に短縮。 改正改善基準告示をクリア。労働負荷を劇的に低減。
余剰リソースの活用 トラックや人員を個社で抱え込む。非稼働時のコストが発生。 1便化で生じた余剰リソースを、地域の他社へ外販・シェア。 地域全体のサステナブルな共同配送網(地域シェアリング)の構築。
環境負荷(二酸化炭素) 個別の非効率な運行が続き、CO2排出量が多く、改正法への対応も困難。 運行台数の削減により環境負荷を低減。 年間約8.0から10トンの排出量削減を実証。

参考記事: 積載率38%台を脱却する三菱食品らの共同配送は2026年必須対応

実践・導入のポイント:失敗しないための3つのステップ

「コープさっぽろのような大手コープだから実現できたのではないか」と考える必要はありません。
ここで用いられている「データを共有し、荷台の隙間を埋め、他者とアセットを分け合う」という本質は、中堅・中小企業でも十分に実践可能なものです。
失敗しないための導入プロセスを3つのステップで紹介します。

ステップ1:CLOを中心とした「部門間サイロ」の完全な破壊

最も重要な第1歩は、経営トップやCLOが強いリーダーシップを発揮し、社内の古い商慣習を疑うことです。
営業部門や店舗運営部門が掲げる「即日納品」「多頻度配送」「時間指定」などのSLA(サービスレベル合意)が、どれだけ現場の積載率を低下させ、コストを押し上げているかを客観的データとして可視化しましょう。
「物流を維持するために、顧客や店舗側が受け入れられる緩和条件(リードタイム延長や便数削減など)」を他部門と粘り強く調整することが、プロジェクト成功の絶対条件です。

ステップ2:自社データの可視化と「AI需要予測」による平準化

現場の経験や勘、属人化された配車指示(配車マンの頭の中の暗黙知)から脱却し、デジタルデータを活用した「データ駆動型経営」へ移行します。
WMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)を導入し、以下の重要KPIを正確な数値で把握しましょう。

  • トラック1運行ごとの実質的な積載率
  • 配送ルートごとの走行距離と空車率
  • 出荷データのJANコード適正管理

精緻なデータを蓄積することで、初めてAI需要予測ツールを用いた「荷量の平準化」が可能になり、無駄のない1日1便化への運行ダイヤが策定できます。

ステップ3:他社とアライアンスを組むための「標準化」

自社単独での効率化に限界を感じたら、他社と連携する「協調領域」へ踏み出します。
いつでも他社の配送網やシェアリングプラットフォームと接続できるよう、以下の「標準化」を急ピッチで進めてください。

  • JIS規格である「T11型パレット」への統一
  • 伝票やASN(事前出荷情報)の電子データフォーマット化
  • 独自のローカルルールや商品コードの廃止

システムと荷姿の標準化こそが、共同配送やアセットの相互利用という次世代の共有物流(フィジカルインターネット)に相乗りするための「パスポート」となります。

参考記事: AI需要予測とは?仕組みから導入メリット・失敗しない選び方まで徹底解説

まとめ:今すぐ自社の「バリューチェーン」を見直す一歩を

コープさっぽろの日本物流大賞受賞プロジェクトは、日本の物流が「自社利益の追求」を競う時代を終え、業界や地域の枠を超えて「社会インフラとして共同で守り抜く協調領域」へ移行したことを象徴する出来事です。

これまでの成功体験にしがみつき、自前主義による個別最適な物流にこだわり続けることは、近い将来に「運べないリスク(物流難民化)」に直面する最大の経営リスクとなります。

まずは明日から、以下の3つのアクションから始めてみませんか。

    1. 自社の配送リードタイムや店舗配送頻度(SLA)を全社で疑う
    1. トラックが運んでいる「空気の割合(積載率)」を正確な数値で可視化する
    1. 競合であれ異業種であれ、同じルート・配送エリアを持つ「協調パートナー」を模索する

異なる業界や近隣のパートナーと信頼関係を結び、データを共有してお互いの隙間を埋め合う。
この迅速な意思決定と、現場に寄り添ったDXの実装こそが、2030年の物流危機を生き抜き、強靭なサステナブルロジスティクスを築くための唯一の羅針盤となるでしょう。

参考記事: 共同配送コンソーシアムCODEで効率20%増を実現し物流維持に直結


出典: LogiShift

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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