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輸配送・TMS 2026年6月23日

国土交通省2026年3月内航輸送1.9%減で迫るモーダルシフト再定義の急務

国土交通省2026年3月内航輸送1.9%減で迫るモーダルシフト再定義の急務

1. 【速報】2026年3月の内航船舶輸送統計が示す「明暗」とサプライチェーンへの衝撃

物流業界の「2024年問題」に続き、法的なサプライチェーン効率化の義務化が目前に迫る「2026年問題」の解決策として、トラックからの切り替え先である「モーダルシフト」への期待はかつてなく高まっています。しかし、その受け皿となるべき海上輸送の現場では、極めて深刻な構造変化と需給のミスマッチが進行しています。

国土交通省が2026年6月23日に公表した「2026年3月分の内航船舶輸送統計月報」によると、総輸送量は2508万3000トン(前年同月比1.9%減)、125億2700万トンキロ(4.7%減)となり、微減傾向を示しました。

一見すると緩やかな減少に思えるこの数字ですが、品目別に解剖すると極端な「明暗」が浮き彫りになります。特に顕著なのが、カーボンニュートラルへの移行加速や国内エネルギー需要のシフトを背景とした液体バルク輸送の急激な落ち込みです。原油がトンベースで24.9%減、化学薬品が13.8%減と大幅に下落した一方、石炭(15.1%増)や鉄鋼(7.2%増)は堅調な伸びを見せました。

さらに、トン数以上の落ち込みを見せたトンキロベース(4.7%減)の減少は、長距離帯での輸送手段の選択変化や、輸送距離の短縮が進行している可能性を強く示唆しています。輸送効率の合計も39.6%と、40%を割り込む深刻な低水準に留まっており、貨物船の40.6%に対し、液体バルクを担う油送船は37.6%とさらに深刻です。

物流効率化が叫ばれる中、この積載効率の低さと品目ごとの極端な需給ギャップは、単なる需要の波ではなく、内航海運が抱える供給力の限界とマッチングの構造的課題を表しています。経営層やSCM(サプライチェーンマネジメント)推進者は、単なる統計数値の変動としてではなく、エネルギー転換に伴う荷動きの激変と、自社のサプライチェーンにおける「船舶活用の再定義」を真剣に検討すべきフェーズに突入しています。

2. 2026年3月内航船舶輸送統計の事実関係と品目別データの整理

国土交通省が発表した2026年3月分の統計データについて、5W1Hの観点から要点を整理します。

  • Who(発表主体):国土交通省
  • When(発表日・対象期):2026年6月23日公表(2026年3月分の実績値)
  • What(対象):日本国内を航行する内航船舶による貨物輸送量
  • Where(範囲):日本全国の沿岸海域および港湾
  • Why(背景):カーボンニュートラル投資や産業構造の変化、2024年・2026年問題に伴うモーダルシフトの影響
  • How much(主な実績):総輸送量2508万3000トン(前年同月比1.9%減)、125億2700万トンキロ(前年同月比4.7%減)

この統計データの要点を以下のテーブル(表)に整理しました。

表1:2026年3月 内航船舶輸送の基本指標

指標名 2026年3月実績実績 前年同月比(トン) 前年同月比(トンキロ)
総輸送量(トンベース) 2508万3000トン 98.1% ーー
総輸送量(トンキロベース) 125億2700万トンキロ ーー 95.3%
コンテナ輸送量 190万1000トン ーー ーー
シャーシ扱い輸送量 78万7000トン ーー ーー

表2:主要10品目の輸送量増減率(前年同月比)

品目名 トンベース増減率 トンキロベース増減率 特徴と変動要因
砂利・砂・石材 3.8%減 9.9%減 公共工事や建築需要の減退、中長距離帯の縮小。
石灰石 9.3%減 13.4%減 内需の鉄鋼・セメント生産量の調整に伴う減少。
セメント 10.0%減 15.0%減 建設業界の労務不足による工事進捗遅れの影響。
鉄鋼 7.2%増 4.0%増 工場向け出荷が復調。中距離帯での輸送が堅調。
石炭 15.1%増 8.8%減 発電用需要の一時的増。長距離から短距離シフト。
原油 24.9%減 23.8%減 国内精製能力の削減とエネルギー転換の加速。
重油 10.0%減 3.5%減 工業用燃料の転換。長距離輸送は踏みとどまる。
揮発油 4.9%減 1.5%減 ハイブリッド車普及や移動需要の構造変化。
その他石油・石油製品 3.1%減 4.4%減 石油化学プラントの稼働率に連動した微減。
化学薬品 13.8%減 16.6%減 原料調達の見直しや一部プラントの休廃止。

表3:用途別の輸送効率(積載効率)

用途区分 2026年3月 輸送効率 構造的課題と現場の実態
全体合計 39.6% 依然として40%を切る低水準。空船回送の多さが露呈。
貨物船(バラ・コンテナ等) 40.6% 共同配送やパレット標準化が進むも、復路の確保が課題。
油送船(タンカー) 37.6% 液体バルクの片道ピストン輸送。効率向上が極めて困難。

統計を細かく見ると、原油、重油、揮発油、化学薬品などの「液体バルク(液体輸送)」にかかる品目が一斉にダウンしているのに対し、石炭や鉄鋼など一部の固形バルクや産業資材は増勢を保っています。この極端な乖離は、内航海運における船種(貨物船と油送船)ごとの需要バランスの崩壊をダイレクトに招いており、全体の輸送効率の低迷(39.6%)に直結しています。

3. プレイヤー別に見る、内航海運の機能不全とサプライチェーンへの影響

内航海運の総輸送量が微減し、特に特定のエネルギー関連物資が激減している事態は、日本の物流を構成する様々なプレイヤーに異なる角度から打撃を与えています。

参考記事: 内航海運とは?基礎知識から2024年問題解決に向けた実務ポイントまで徹底解説

3.1. 運送事業者(トラック・ドレージ事業者):ミスマッチの露呈と混載促進の余地

トラックドライバーの労働規制に対応すべく、長距離幹線輸送を陸送から海運へ切り替えようとする運送事業者にとって、現状の内航海運の「39.6%という低い輸送効率」は、一見すると乗り換えを躊躇させるコスト増要因に見えます。往路は確保できても、復路が空船に近い状態であれば、それだけ一回あたりの輸送単価にコストが上乗せされるためです。

しかし、これは同時に、デジタル技術を活用した「共同配送」や「混載(マッチング)」の恩恵を最も享受できる領域であることも示しています。

  • 中継輸送・ドレージ確保の壁:幹線を船にシフトできても、港湾(発着港)でのドレージトラック(シャーシの牽引)が不足していれば、結局は港で荷物が滞留してリードタイムが延びてしまいます。
  • ラウンドユース(往復利用)の設計:片道だけで走る空車シャーシを撲滅するため、同業他社や異業種の荷主を巻き込み、往路と復路で荷主をスイッチする連携体制の再設計が求められます。

3.2. SaaS・テクノロジーベンダー:液体・固形バルクの「動態管理」と「共同配送」というブルーオーシャン

ITやデジタルツールを提供するベンダーにとって、輸送効率が40%を下回る内航海運市場は、DX(デジタルトランスフォーメーション)が最も高い付加価値を生み出す未開拓のフロンティアです。

  • 液体バルク輸送のデジタル・マッチング:特に油送船(輸送効率37.6%)における積載効率の低さは、これまで「個社最適な配船」が行われてきた証左です。化学薬品や石油製品の出荷時期、配船スケジュール、タンク空き容量をプラットフォーム上で共有・可視化できれば、競合間での共同配船や混載による劇的な効率化が可能です。
  • 海陸一貫のAPIデータ連携:荷主のWMS(倉庫管理システム)と、船舶の運航管理システム、陸送のTMS(輸配送管理システム)をAPIでシームレスに接続し、悪天候による遅延や欠航リスクをリアルタイムで検知・迂回ルートを提示する動態管理が、今後のシステム要件として重視されます。

3.3. 行政・規制当局:脱炭素時代に即した、化石燃料からコンテナ・シャーシ化への支援シフト

国土交通省をはじめとする規制当局は、「原油が24.9%減」という統計が意味する構造的変化を正確に捉えなければなりません。これは一時的な景気後退ではなく、脱炭素に向けたエネルギー転換が進んでいることの証明です。

  • 支援策のパラダイムシフト:これまでの重厚長大な化石燃料・バルク輸送(タンカー等)を中心とした支援・港湾整備から、一般消費財や工業製品を機動的に運べる「コンテナ・シャーシ(RORO船等)の普及促進」へと政策の舵を切る必要があります。
  • 物流効率化法改正に伴うインセンティブの強化:法改正によって特定荷主に物流効率化が義務付けられる中、単に規制を強めるだけでなく、鉄道や内航海運へのモーダルシフト時に発生する一時的な在庫保管コストや設備改修(標準パレットの導入など)に対する補助金、税制優遇の拡充が強く求められます。

4. LogiShiftの視点(独自考察):モーダルシフトの再定義と2026年以降のロードマップ

単に「トラックが走れないから、同じ荷姿で船に載せる」という安易なアプローチは、受け皿である内航海運自身の供給力や構造的な課題によって、すでに崩壊しつつあります。今回の輸送統計が示す減少は、日本が「化石燃料・バルク輸送中心の産業構造」から、「脱炭素・高付加価値型、および小口・一般雑貨型輸送」への過渡期にあることを示しています。

参考記事: 2025年12月内航海運輸送動向:モーダルシフトの課題と企業が取るべき次世代物流戦略

4.1. バルク輸送の「不可避な縮小」と一般貨物の「コンテナ・シャーシ化」

これまで内航海運の輸送量を下支えしてきた原油、重油、セメント、砂利といったバルク貨物は、長期的には日本の産業構造の変化(インフラ整備の一巡や脱炭素)により確実に減少していきます。今回の原油24.9%減という急激な下落は、その地殻変動が始まっていることを物語っています。

これに対して、2024年問題や2026年問題で悲鳴を上げているのは、一般消費財、食品、アパレルといった「一般雑貨」の領域です。

  • 貨物船・コンテナ・シャーシ(RORO船)へのシフト加速:統計内でも、コンテナ(190万1000トン)やシャーシ扱い(78万7000トン)は一定の規模を維持しています。バルク船から、これらの汎用的な一般貨物対応船へと船隊のバランスを切り替えていくことが不可欠です。
  • 空船回送の撲滅と輸送密度の最大化:39.6%という低効率の原因である「行きは良いが良い、帰りは空」というピストン輸送からの脱却。これを克服するには、海運会社と陸運会社の枠を超え、デジタルプラットフォームによる往路・復路のマッチングが絶対に避けられないフェーズに入っています。

参考記事: モーダルシフト完全ガイド|導入メリットと補助金・成功事例まで徹底解説

4.2. 物流2026年問題に適合するための、海陸連携を軸とした3ステップ・ロードマップ

荷主企業や3PL事業者は、迫り来る「改正物流効率化法(2026年問題)」に備え、自社のサプライチェーンに内航海運を組み込むためのアクションを即座に開始すべきです。

参考記事: 物流2026年問題とは?2024年問題との違いや法改正、実務で必要な対策を徹底解説

  1. ステップ1:商品マスタのデータクレンジングと標準パレット(T11型)の導入
    • システム障害やイレギュラーに対応できない最大の原因は、商品マスタの「外寸・重量(M3寸法)」の不正確さです。まず自社のマスターデータを整備し、自動配車や3D積載計算ができる下地を作ります。
  2. ステップ2:バッファを持たせた安全在庫ポリシーの再構築
    • 海運モーダルシフトによるリードタイムの「+1〜2日の遅延」を吸収できるよう、倉庫管理システム(WMS)の在庫ルールを改修。営業部門や納品先顧客に対して、環境付加価値(Scope3のCO2削減)を訴求しながらリードタイム延長への合意(S&OPの適正化)を取り付けます。
  3. ステップ3:協調領域における同業他社との「共同配送プラットフォーム」への参画
    • 自社単独での1コンテナ・1船の満載化に固執せず、帰り荷を補完し合える異業種や競合他社とのマッチングネットワークを構築。港湾部でのシャーシプール共有(ラウンドユース)を標準運用化します。

5. まとめ:明日から意識すべきこと

2026年3月の内航船舶輸送統計が明かした事実は、「トラックが使えなくなっても、そのまま船へ逃げることはできない」という冷酷な現実です。受け皿となる内航海運もまた、船員の高齢化や、化石燃料依存の産業構造から脱炭素型産業構造へのシフトという激しい痛みを伴う移行期の真っ只中にあります。

物流に関わる経営層、現場リーダーの皆様が、明日から取り組むべきアクションは以下の通りです。

【荷主企業・SCM部門】

  • 自社の長距離(500km以上)輸送ルートを洗い出し、化石燃料系のバルク素材調達があれば、その長期的な荷動き縮小リスクを織り込んだ調達計画の見直しを行う。
  • 海運モーダルシフトを成功させるため、「翌日着」の営業要件を強制的に解除し、WMS内の安全在庫設定を再計算してリードタイムを延長する。

【物流事業者・配車担当】

  • 港湾をハブとした「ショート・ミドルホールのドレージ(中短距離陸送)」へ運行体制をシフトし、ドライバーを日帰り勤務に戻す。
  • 空車での走行やシャーシの無駄な滞留を避けるため、港湾周辺での「同業他社とのラウンドユース」の協議を開始する。

自前主義、個社最適に固執し続ける企業から、サプライチェーンの維持が困難になり市場を退場せざるを得ない時代です。今回の輸送量「微減」の裏にある産業構造の変化をチャンスと捉え、デジタルと協調による「新時代のモーダルシフト」へ一歩踏み出しましょう。


出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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