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輸配送・TMS 2026年6月25日

適正原価制度に対応!アセンド株式会社の7月6日開講講座が事業存続の鍵

適正原価制度に対応!アセンド株式会社の7月6日開講講座が事業存続の鍵

長年、トラック運送業界で常態化していた「運賃コミコミのどんぶり勘定」が、いよいよ完全な終わりを告げようとしています。

運送事業者のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するアセンド株式会社(東京都新宿区)は、2024年7月6日から11月にかけて、運送事業者を対象とした「原価計算・活用」連続講座(全10回)をオンラインおよびオフラインのハイブリッド形式で開催することを発表しました。

現在、物流業界は燃料費や車両価格の高騰に加え、労働規制強化に伴う「2024年問題」、さらには多重下請け構造による低運賃など、極めて厳しい経営環境に置かれています。こうした中、改正貨物自動車運送事業法により「適正原価制度」の導入が決定したことで、各事業者には精緻な原価把握とそれに基づく採算管理への対応が法的にも強く求められるようになりました。

本講座は、単なる計算手法の習得に留まらず、荷主別・コース別採算管理、Excelを活用した原価計算、そして最も重要となる「運賃交渉資料の作成方法」までを体系的に網羅しています。延べ3,000人以上のセミナー参加実績を持つ同社が、運送現場のリアルなデータをどう武器に変え、荷主との対等な交渉に臨むべきか、実践的な手法を伝授します。

本記事では、この連続講座の概要と開催の背景にある法改正の動向、そして各プレイヤーに与える影響と、これからの時代を生き抜くための「データ駆動型交渉(データドリブン・ネゴシエーション)」の実践プロセスを徹底的に解説します。

アセンド「原価計算・活用」連続講座の全体像とマクロ背景

まずは、今回発表された連続講座の5W1Hと、なぜ今このタイミングで「原価計算」を体系的に学ぶ必要があるのか、そのマクロ的な背景を整理します。

「原価計算・活用」連続講座の実施概要

本講座は、隔週のオンライン開催を基本としながら、重要回ではオフラインでの受講者交流の機会を設けることで、事業者同士の横のつながりや実務のノウハウ共有も促進する設計となっています。

項目 詳細な事実関係と講座の仕様
主催・発表主体 アセンド株式会社(東京都新宿区)
開講期間 2024年7月6日(土)から11月まで。全10回のプログラム。
対象者 運送事業者の経営者。経営企画担当者。営業所長クラスなど。
開催形式 原則として隔週のオンライン形式。第6回と第10回はオフライン開催を予定。
受講費用 参加費無料。
主なカリキュラム 荷主別コース別採算管理。日次月次年次の原価管理。Excelを活用した計算。運賃交渉資料の作成。KPI設計。車両収支管理。組織運営など。

改正貨物自動車運送事業法「適正原価制度」がもたらす激震

運送業界において、原価計算は「できればやった方がいい努力目標」から「生存のための必須要件」へと変化しました。その最大の引き金が、改正貨物自動車運送事業法で導入が決定した「適正原価制度」です。

これまで多くの中小運送会社は、1運行あたりの人件費、燃料費、車両償却費、さらには荷待ち(待機)時間に伴うロスなどを正確に計算せず、業界の「相場」や荷主からの「言い値」で運賃を設定してきました。しかし、国が主導する「適正原価制度」は、運送事業者が自社の適正なコスト(原価)をベースに運賃を設定し、これを荷主と合意することを強く求める制度です。

さらに、時間外労働の上限規制(年960時間)が適用される「2024年問題」により、ドライバーの稼働時間が制限される中、運送会社は限られた時間内で最大の利益を確保しなければ、ドライバーの給与を維持できず、壊滅的な人材流出を招くことになります。

参考記事: 働き方改革関連法(物流)を徹底解説|2024年問題と現場の実務対応

こうした背景から、国土交通省は2024年4月に「標準的な運賃」を平均約8%引き上げる改定を告示し、さらに「標準貨物自動車運送約款」を改正して、運賃と料金(待機時間料・荷役作業費など)の別建て収受のルールを明確に打ち出しました。本講座は、これらの公的な法制度を自社の実務に落とし込み、荷主との交渉で実際に通用するレベルまで引き上げることを目指しています。

参考記事: 標準的な運賃とは?2024年4月改定 of 5大ポイントと実務対応を徹底解説

物流サプライチェーンにおける各プレイヤーへの影響

アセンドによる「原価意識の底上げ」と法改正の荒波は、運送事業者だけにとどまらず、荷主企業(製造業・メーカー・流通)や、物流テクノロジー業界にもドミノ倒しのような連鎖的変化をもたらします。

1. 運送事業者:「どんぶり勘定」の決別とエビデンスによる武装

受託側である中小運送事業者にとって、本講座のような原価計算の体系的習得は、そのまま「経営権の奪還」を意味します。

これまで、荷主から「予算がないから、従来の運賃でお願いしたい」「高速代は運賃に含めてほしい」と言われた際、中小運送会社は「厳しいですが、お引き受けします」と泣き寝入りせざるを得ませんでした。なぜなら、その運行を引き受けることで、自社がどれだけの赤字(または超低利益)を出しているかを、客観的なデータ(数字)で証明できなかったからです。

原価計算をマスターし、荷主別・コース別の採算を1円単位で可視化できるようになれば、交渉のスタンスは一変します。「この運行ルートでは、平均90分の荷待ち時間が発生しており、当社の1時間あたりの適正労務費に基づくと、1運行あたり〇〇円の赤字になっています。よって、この運賃改定または待機時間料の別建て請求に合意いただけなければ、安定的な車両の供給は不可能です」と、感情論を排した「エビデンス(確証)」に基づいた交渉が可能になります。

参考記事: 標準貨物自動車運送約款とは?2024年改正のポイントと運送事業者・荷主が今すぐ取り組むべき契約実務

2. 荷主企業(製造業・メーカー):「安ければいい」からの脱却とコンプライアンスリスク

発注側である荷主企業にとって、運送事業者が原価計算スキルとエビデンスを手に入れることは、これまでの「下請け叩き」や「価格交渉の引き延ばし」が通用しなくなることを意味します。

内閣官房や公正取引委員会、国土交通省の「トラックGメン」による監視の目は日増しに厳しくなっています。運送事業者から、公的指標(標準的な運賃や物価統計)および実態ログ(待機時間や荷役時間の実績データ)に基づいた正当な運賃交渉の申し入れがあった場合、それを合理的な理由なく拒否、あるいは協議の場すら設けない行為は、独占禁止法の「優越的地位の濫用」や下請法の「買いたたき」に該当するリスクが極めて高くなります。

荷主企業の物流・調達部門責任者は、単なるコスト削減(運賃の買い叩き)を追い求めるのではなく、運送側の原価構造を理解し、「どうすれば相手の原価(無駄な待機時間や非効率なルート)を減らせるか」という物流効率化の共同プロジェクトへと舵を切る必要があります。これに対応できない荷主企業は、真っ先にトラックを手配できなくなり、自社のサプライチェーンが断絶するという致命的な事業停止リスクを背負うことになります。

3. SaaS・テクノロジーベンダー:手入力の限界とシステム移行の加速

本講座のような取り組みによって原価計算の「手法」を理解する事業者が増えるほど、アナログ管理の「限界」も浮き彫りになります。

Excelを利用した原価計算は初期導入としては有効ですが、日々の運行データ、複雑な深夜早朝割増、ルート変更、燃料価格の変動、そしてドライバーごとの正確な労働時間をすべて手入力で集計し続けるには、膨大な管理工数と、入力ミスのリスクが伴います。

アセンド株式会社自身が、配車・運行・請求・原価管理をシームレスに統合するクラウド業務管理ツール『ロジックス』を提供しているように、原価意識が高まった運送事業者による「物流DXシステム」への移行ニーズは今後爆発的に増加するでしょう。単なる業務効率化ツールとしてではなく、「適正原価の算出とコンプライアンス(実運送体制管理簿の自動生成など)を両立させる経営基盤」としてのSaaSの価値が、市場で再認識されることになります。

参考記事: アセンド株式会社が第7回関西物流展に出展|法改正リスクを打破するDX戦略とは

LogiShiftの視点:データ駆動型交渉(データドリブン・ネゴシエーション)の仕組み化

アセンドが無料の連続講座で広く業界に原価計算を浸透させようとする動きは、単なる企業のプロモーション活動を超えた、極めて戦略的かつ構造的なインパクトを持っています。

LogiShiftでは、これからの運送会社が生き残るための本質は、単発の「値上げ交渉」の成功ではなく、価格転嫁を自動化・システム化する「データ駆動型交渉(データドリブン・ネゴシエーション)」の仕組み化にあると考えます。

他業界の成功事例に学ぶ「自動計算モデル」の衝撃

これまでの物流業界における価格交渉は、属人的な営業マンの熱意や、荷主との長年の関係性に依存する「お願い営業」が主流でした。しかし、先進的な製造業などでは、すでに「公的統計」をベースにした、交渉不要の自動価格改定モデルが成果を上げています。

例えば、産業用ロボット部品の鋳造を手掛ける株式会社キャストは、消費者物価指数などの公的統計を用いた客観的な自動計算モデルを導入することで、これまで最も困難とされてきた「労務費(人件費)」の大企業取引先への価格転嫁を、ほぼ100%近い精度で実現しました。

この「キャスト社の事例」は、今後の運送業界が目指すべき極めて重要なロールモデルです。運送会社は、国土交通省の「標準的な運賃」や全日本トラック協会(全ト協)が提供する原価計算ツール、さらに公的な燃料・物価統計を組み合わせた「自社独自の自動運賃改定ロジック」を構築すべきです。「燃料価格が〇〇円動いたらサーチャージをこれだけ変動させる」「消費者物価指数や最低賃金の上昇率に基づき、年1回、基本運賃を自動再計算して合意する」という契約をあらかじめ荷主と交わしておくのです。これにより、毎回の面倒な交渉工数を削減し、双方が納得できる価格改定をシームレスに仕組み化できます。

参考記事: 労務費100%転嫁を実現!統計と自動計算で運賃交渉を成功させる3つのデータ活用術

外部支援を「生存戦略」に昇華させるための自走力の重要性

また、現在では業界団体によるバックアップ体制も強化されています。全日本トラック協会(全ト協)が公式に発表した「経営診断・経営改善支援・運賃交渉支援事業」では、外部の専門的な診断士を運送現場に投入し、経営の可視化から実際の交渉までを伴走支援するコンサルティングが用意されています。

参考記事: 全ト協・令和8年度運賃交渉支援事業の全貌!適正利益を確保する3つの実践ステップ

しかし、ここで運送事業者の経営層が最も陥りやすい罠が「外部の専門家や、アセンドの提供するテンプレートにすべてを丸投げすること」です。外部のコンサルタントが作成した美しい原価計算書を使って一時的な値上げに成功したとしても、その算定ロジックを社内の営業担当者や運行管理者、配車マンが本質的に理解していなければ、次回の法改正や外的ショック(例えば2026年問題やさらなる燃料高騰)が発生した際に、自社で対応できなくなります。

アセンドの連続講座で得られる「原価計算の基礎から実践、DX活用まで」のプロセスを、自社内の共通言語として定着させ、外部の支援が終了した後も「自走してデータを分析し、荷主に提案し続けられる体制(自走力)」を構築することこそが、本質的な経営戦略です。

まとめ:明日から運送事業者が意識すべき3大アクション

「コストが上がって苦しい」という定性的な嘆きを口にしているだけでは、企業は淘汰される時代です。アセンドの講座開講を一つの号砲として、明日からすべての運送事業者が直ちに着手すべき3つの具体的なアクションプランを提示します。

  1. 自社の原価構造と「標準的な運賃」のギャップを1円単位で可視化する
  2. 全ト協の簡易原価計算ツールやアセンドのExcelテンプレート等を活用し、自社の現在の収支が、国が示す「標準的な運賃」からどれだけ乖離しているかを明確に数値化する。
  3. 特に、1運行あたりにかかっている「見えない人件費(待機時間中のドライバー給与など)」が適切に回収できているかを精査する。

  4. 物流DXによるエビデンス(運行ログ・作業ログ)の自動収集体制を整える

  5. デジタルタコグラフ、動態管理システム、スマートフォンの配送アプリなどを活用し、各荷主の配送拠点における「実際の到着時間、出発時間、待機時間、附帯作業(手荷役など)の実績」をデジタルログとして自動的に記録・蓄積する。
  6. 紙の日報への手書き入力による曖昧さを排除し、荷主がぐうの音も出ない客観的事実(ファクト)を交渉のテーブルに提出できるようにする。

  7. 荷主との「協調による物流効率化」をセットで提案する

  8. 単に「原価が上がったので値上げしてください」と要求するのではなく、「御社のセンターでの待機時間をバース予約システムの活用などで30分削減できれば、今回の運賃値上げ幅をこれだけに抑えることが可能です」といった、お互いのメリットになるソリューション(共同プロジェクト)として提案する。

データと客観的エビデンスは、中小運送会社が巨大な荷主企業と対等に渡り合い、持続可能な利益とドライバーの笑顔を守り抜くための最強の武器となります。この「原価計算」のムーブメントを自社の経営改善の最大のチャンスと捉え、パラダイムシフトの波に乗り遅れないようにしてください。

出典: アセンド、運送事業者向け「原価計算・活用」連続講座を7月開講 – LOGISTICS TODAY

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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