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輸配送・TMS 2026年6月25日

不当な据え置きに公正取引委員会が779名の荷主へ注意喚起した必須対応

不当な据え置きに公正取引委員会が779名の荷主へ注意喚起した必須対応

令和8年(2026年)6月25日、公正取引委員会は「令和7年度における荷主と物流事業者との取引に関する調査結果等について」を公表しました。本発表は、物流業界が「2024年問題」を乗り越え、持続可能な運送体制を維持しようとする最中で、不適切な商慣習に依存し続ける荷主企業に突きつけられた強力な「最後通牒」です。

調査の結果、105名の荷主企業に対して実態解明のための立入調査が行われ、独占禁止法や物流特殊指定上の問題につながるおそれのある行為を行っていた779名の荷主に対し、具体的な懸念を示す「注意喚起文書」が送付されました。

本調査で最も注目すべきは、荷主側から「物流事業者からの価格引上げ要請がなかったため、協議を行わずに従来価格を据え置いた」という不作為が、優越的地位の濫用における「買いたたき」につながるおそれがあると明示された点です。本記事では、この最新の調査結果から読み解く取引適正化の実態、各プレイヤーが直面する実務的影響、そして生存のために不可欠な「攻めのコンプライアンス(能動的価格交渉)」への転換について徹底解説します。

令和7年度調査結果の全貌と不公正取引のワースト3

公正取引委員会が実施した令和7年度(2025年度)取引実態調査は、現下の労務費、エネルギー価格、原材料コスト等の上昇を背景に、適正な価格交渉が行われているかを徹底的に把握するために実施されました。

まずは、今回の調査スキームと執行措置の規模について時系列を交えて整理します。

令和7年度物流取引調査の事実関係

項目 詳細内容 対象・規模 実務上の意味
発表主体 公正取引委員会 全国の荷主企業および物流事業者 取引の公正化を促進する最高執行機関。
発表日 令和8年(2026年)6月25日 物品の運送・保管の委託取引が対象 実態把握に基づき厳格な行政処分や注意喚起を実施。
調査の執行 アンケートおよび荷主105名への立入調査 コスト上昇分を反映せず運賃を据え置いた疑いのある事案 行政が直接現場の違法性をあぶり出す強力な姿勢。
行政措置 779名の荷主へ注意喚起文書を送付 注意喚起を受けた上位業種は卸売・食品製造など 独占禁止法上の問題につながる懸念事項を直接通達。

現場で横行する不公正取引のワースト3類型

今回の調査で浮き彫りになった、独占禁止法上の問題につながるおそれのある「行為類型別内訳」のワースト3は以下の通りです。

  1. 不当な給付内容の変更及びやり直し(特に荷待ち等)
    • 荷主側の製造工程の遅れ、事務手続きの遅延、積込みバースの混雑などを原因として、数時間に及ぶ「荷待ち(待機)」を発生させていながら、その追加費用について事前の算定方法を定めず、支払いを怠っているケースです。また、当日の急な出荷変更や運送中止に対して、人員や車両手配に伴う費用の補償をしないことも該当します。
  2. 代金の支払遅延
    • 営業所から本社への手続き漏れや、年末年始等の長期休業といった自社の都合を理由に、あらかじめ合意していた支払期日を過ぎて運賃を支払う行為です。
  3. 買いたたき
    • 労務費やエネルギーコストの上昇を認識していながら、物流事業者から直接の値上げ要請がないことを理由に、価格交渉の場を設けずに従来の運賃を据え置う行為です。

特に買いたたきに関して、「運賃の引上げ要請がなかったから協議をせず据え置いた」という事例が明確に「不公正な取引」につながるおそれがあると指摘されたことは、業界にとって大きなパラダイムシフトとなります。

参考記事: 公正取引委員会が6月17日に公表した事例集と特定荷主の必須対応

業界プレイヤー別にみる実務への甚大な影響

この最新の調査結果は、日本のサプライチェーンを構築する多様なステークホルダーに、従来の商慣習からの「強制的な決別」を迫っています。主要なプレイヤーごとに生じる具体的な影響と課題を整理します。

卸売業・製造業(荷主):注意喚起数トップが示す「価格の不作為」リスク

注意喚起文書を多く送付された上位業種は、以下の通りでした。

  • 建築材料、鉱物・金属材料等卸売業
  • 食料品製造業
  • 飲食料品卸売業
  • 協同組合(主に農水産物の販売)

これらの業種に共通するのは、多頻度小口配送や複雑な付帯作業が現場に定着しており、これまで「物流は付加価値(無料サービス)」という商習慣が根強く残っていた点です。

「荷主が自ら準備の遅れによる荷待ちや、出荷日変更を発生させておきながら、運送事業者から追加請求がなかったことをいいことに、実費を支払わない」
「これまでの慣習から、荷待ちや荷積み作業に係る費用は運賃に含まれていると考え、適正な対価をあらかじめ設定していない」

このような現場の「不作為」が、ことごとく注意喚起の対象となりました。今後は、「要請がなかったから据え置いた」という言い訳は通用しません。荷主企業が自ら主導して定期的な協議の場を設定し、データに基づいたコスト転嫁を推進する「攻めのコンプライアンス(能動的価格交渉)」への転換が急務となります。

参考記事: 2027年4月改正、公正取引委員会の物流特殊指定による着荷主規制への必須対応

運送・倉庫事業者(受託側):要請を待たずに「客観的データ」で交渉する好機

「仕事を失うかもしれない」「他社との競争が激しい」という懸念から、運賃の引き上げを自ら申し出ることができなかった運送事業者にとって、今回の公表は自社の存続とドライバーの待遇を守るための「強力な盾」となります。

荷主が「要請がない」ことを言い訳にできなくなったため、運送事業者はこれを千載一遇の好機と捉え、能動的に適正価格への交渉を呼びかけるべきです。

その交渉においては、単に「コストが上がって苦しい」と感情的に訴えるのではなく、客観的なデータ(エビデンス)を提示することが求められます。

  • 運行事実のデジタル記録: デジタルタコグラフ、GPS、動態管理システムを活用し、どの拠点で何分待機したかを客観的なログとして記録する。
  • 契約外作業の可視化: 指示された無償の付帯作業(仕分け、検品、棚入れ等)に要した時間と人員を正確に算出し、1分単位で可視化する。
  • 標準的な運賃の活用: 国土交通省が告示する「標準的な運賃」や「標準運送約款」をベースに、自社の運行原価を論理的に分解して提示する。

データに基づく交渉体制(エビデンス経営)への移行こそが、不当な取引条件を打破するための最大の防衛策です。

参考記事: 荷待ち時間とは?2024年問題の実態と劇的に削減する実践的アプローチ

行政・規制当局:「取適法」と「物流特殊指定」の二段構えによる網の拡大

行政側は、今回の実態調査に加え、複数の強力な法的枠組みをシームレスに運用することで、サプライチェーン全体の取引適正化を執拗に推し進めています。

  • 中小受託取引適正化法(取適法、令和8年1月1日施行)
    • 新たに「特定運送委託」を適用対象に追加しました。公正取引委員会、中小企業庁、国土交通省の3省庁が連携し、執行情報の共有を行う連絡会議を定期的に開催するなど、シームレスな法執行に取り組んでいます。
  • 改正物流特殊指定(令和9年4月1日施行)
    • 改正後は、直接の運送契約を持たない「着荷主(スーパーや小売、配送先センターなど)」がドライバーに対して一方的に長時間の荷待ちや、ラベル貼り・棚入れなどの無償付帯作業を行わせる行為も新たに規制対象となります。

行政処分(勧告・企業名公表)への包囲網が「発荷主」「着荷主」「元請事業者」へと急速に拡大しており、法令違反を「知らなかった」では済まされない時代が到来しています。

参考記事: 公正取引委員会の改正物流特殊指定、令和9年4月1日施行に伴う荷主の必須対応

LogiShiftの視点(独自考察):物流取引を「データ主導型契約」へ昇華させる組織防衛策

公正取引委員会の一連の動きが示す本質的な構造変化は、物流取引が「商慣習や力関係による曖昧な合意」から、法令遵守を前提とした「データに基づく契約主導型」へ完全にパラダイムシフトしているという事実です。

「言われないからそのまま」を許さない公権力の介入

従来の日本社会における契約自由の原則では、「受注者が何も言わずに請け負っているのだから、従来価格の据え置きで合意が成立している」という言い訳が通用していました。しかし、今回の調査結果を受け、公権力はその不作為自体を「優越的地位の濫用を誘発する温床」と見なし、厳しい是正姿勢を示しています。

物流事業者が過度な買いたたきや無償荷役に耐えかねて突然倒産・撤退すれば、サプライチェーンは寸断され、結果として荷主企業自身が事業継続困難に陥ります。物流費を「極限まで削るべきコストセンター」とみなす時代は終わりました。電気や水道と同様に、適切な対価を支払わなければ維持できない「有限な社会インフラ」として、社会全体、ひいては消費者に至るまでが正しくコストを分担・分配する仕組みへの転換が必要です。

「書面交付とデジタルログ」が企業を守るライセンスとなる

公取委や「トラックGメン」の監視の目が光る時代、荷主が自社のクリーンさを証明するため、また運送事業者が正当な対価を主張するために、唯一絶対の証拠となるのが「客観的な事実の記録(エビデンス)」です。

「良かれと思った現場の協力」や「これまでの慣習」は、立入調査における反証として一切役に立ちません。

  • GPSや動態管理システムを用いた、配送拠点での「待機時間の自動計測」
  • AIカメラと連動した入退場管理による「荷待ち・荷役時間」の可視化
  • トラック予約受付システム(バース予約システム)による、待機時間の恒常的な削減
  • 電子契約や電子受領書(e-POD)を活用した「突発的作業の承認ログのデジタル保存」

これらをシステム化することが不可欠です。契約書面や業務ログのデジタル化を推進することは、単なるバックオフィスの効率化ではなく、厳しい法規制時代に企業活動を継続するための「ライセンス(生存条件)」なのです。

参考記事: 物流法改正で弁護士ドットコム調査の87%が事務増と回答し契約DX必須に

参考記事: トラックGメンとは?2024年問題に立ち向かう不適切取引の監視体制と企業の必須対策

まとめ:明日から物流関係者が直ちに取り組むべき3つの実務アクション

公正取引委員会が発表した最新の調査結果は、不当な取引条件を是正し、持続可能なサプライチェーンを再構築するための「最後通牒」とも言えます。激変する法規制環境を生き抜くために、明日から現場のリーダーや経営層が直ちに取り組むべきアクションを提唱します。

1. 現場に潜む「隠れた無償作業」と「待機時間」の徹底棚卸し

自社の工場や倉庫、あるいは納品先の店舗において、到着したトラックドライバーに対して「ラップ巻き」「棚入れ」「検品」「ラベル貼り」などの契約にない付帯作業を無償で強要していないか。また、常態化している荷待ち時間を正確に可視化し、その時間とコストを明確な数値として測定してください。

参考記事: 漫画が暴く年間600時間のトラック待機時間!2026年義務化を乗り切る3つの防衛策

2. 「運賃」と「待機料・作業料」を分離した書面契約への完全移行

標準運送約款等に基づき、運賃一括の「どんぶり勘定」契約を完全に廃止してください。「輸送の対価(基本運賃)」と「待機時間料(待機料金)」「荷役作業費(付帯作業料金)」を明確に切り分けた書面による個別契約、あるいは基本合意書を早期に締結することが必須です。

3. 客観的エビデンスを自動蓄積するデジタル投資の加速

手書きの受付簿や電話、記憶に依存するアナログな管理を即刻廃止してください。GPS動態管理、バース予約システム、電子契約システム(契約DX)などのITツールを積極的に導入し、運行原価や取引プロセスのエビデンス(タイムスタンプ)を組織的に自動蓄積する仕組みを早急に確立してください。

古い商慣習と「言われないからそのままにする」という受け身の姿勢を完全に断ち切り、法令遵守と透明性の高いデータ駆動型の取引関係へと自社のオペレーションをいち早く適応させた企業だけが、これからの厳しい物流淘汰の時代を生き抜く勝者となることができます。

出典: 公正取引委員会

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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