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マテハン・ロボット 2026年7月3日

佐川印刷株式会社が年間3万500時間を削減するマテハンを導入し省人化が加速

佐川印刷株式会社が年間3万500時間を削減するマテハンを導入し省人化が加速

日本の物流業界が「物流2024年問題」の余波を乗り越え、さらに厳しい規制やデータ連携が義務付けられる「2026年問題」に直面する中、倉庫内オペレーションの省人化と自動化は企業生存のための絶対条件となっています。こうした中、2026年7月3日、総合印刷会社である佐川印刷株式会社が、SGホールディングスグループの中核物流企業である株式会社ワールドサプライの新東京営業所(東京都江東区)に対し、大規模自動仕分け機や独自開発の自動採寸装置から構成される大型マテリアルハンドリング(マテハン)システムを設置・納入したと発表しました。

このニュースは、単なる一物流拠点への設備導入事例にとどまりません。慢性的な供給不足に陥っている日本のマテハン市場において、従来の「大手設備メーカー主導」から、物流現場を熟知した「実務者・周辺事業者主導」の特化型ソリューション提供へとシフトする構造的変革を象徴する出来事です。本記事では、この大型マテハン導入の全容を紐解き、業界に与える地殻変動と各ステークホルダーが取るべき次世代の戦略を徹底解説します。


1. ワールドサプライ新東京営業所への大型マテハン導入の全容

今回、ワールドサプライ新東京営業所に設置されたマテハンシステムは、幅約100メートルに及ぶ広大なコンベヤーラインを有し、1時間当たり2500ケースという高いスループット(処理能力)を誇る大規模な設備です。その基本情報と、期待される導入効果を以下のテーブルに整理します。

大型マテハン設置と削減効果の基本情報

項目 詳細仕様・実績値 実務上の運用条件・特徴
導入先・拠点 株式会社ワールドサプライ 新東京営業所(東京都江東区) 百貨店や大型店向けのアパレル・メーカー製品等の仕分け出荷を担当。
機械処理能力 2500ケース/時(コンベヤー速度60m/分の場合) 日あたり8時間運転。省エネ法トップランナー制度準拠モーター採用。
設備規模・構成 コンベヤーライン幅約100メートル。シュート数:幹線10、納品代行6、リジェクト1。 搬送可能サイズは最大W60×L90×H60cm(30kg)から最小W20×L30×H15cm(2kg)まで対応。
削減見込み効果 年間約3万500時間の作業時間削減 ワールドサプライの作業実績に基づき、月20日稼働として算出。

このシステムの導入により、ワールドサプライでは年間約3万500時間という膨大な作業時間の削減が見込まれています。これは、深刻な人手不足に悩む都市部の3PL・共同配送拠点において、極めて劇的な省人化効果をもたらすインパクトを持っています。

BCR(バーコードリーダー)採寸装置と「つり下げ式」設計の革新性

本設備が従来の仕分けコンベヤーラインと決定的に異なるのは、佐川印刷が独自開発した「BCR(バーコードリーダー)採寸装置」の実装と、空間の有効活用を極限まで追求した現場目線の設計にあります。

最終段階での自動採寸・計量・送料計算の実現

通常、荷物のサイズ計測や重量計量は、梱包前やピッキング時に個別に行うか、手作業で採寸ゲージを当てる必要があり、出荷前プロセスの大きなボトルネックとなっていました。今回導入されたBCR採寸装置は、送り状を貼り終え、コンベヤーを流れる最終段階の荷物をノンストップで自動的に採寸・計量し、送料を瞬時に自動計算します。これにより、実務者の手を一切煩わせることなく、出荷実績データと配送コストデータがシームレスに紐付けられます。

「つり下げ式」コンベヤーによる作業動線の確保

100メートル級のコンベヤーを床面に直接設置した場合、倉庫内の床面が物理的に分断され、フォークリフトや作業員の横断動線が著しく制限されるというデメリットがありました。佐川印刷は、この課題をクリアするためにコンベヤーを「つり下げ式(天井・架台からの懸垂構造)」に設計。床面の作業スペースとスムーズな横移動動線を完全に維持しました。これは、既存の限られた倉庫スペースを無駄なく活用し、保管効率とピッキング動線を両立させる、きめて現場感覚に優れた設計アプローチと言えます。


2. 業界各プレイヤーに与える影響と波及効果

佐川印刷によるこの大型マテハンの外販事業本格化は、日本のサプライチェーンを構成する様々なプレイヤーに多角的な影響を及ぼします。

倉庫事業者・3PL:大手マテハンメーカーの「受注残」を埋める新たな選択肢

現在、国内のマテハン市場は、Eコマースの急成長や省人化需要の爆発を背景に、2兆2600億円規模にまで急拡大しています。しかしその一方で、ダイフクや豊田自動織機などの大手マテハンメーカーは大量の受注残を抱えており、設計から施工、稼働までに数年のリードタイムを要する「供給不足」が慢性化しています。

この状況下において、既存の物流現場(SGホールディングスグループ各社)で実際に設置・運用実績を積んできた佐川印刷が、中大型マテハンの受注・設置事業に本格参入することは、3PLや倉庫事業者にとって「今すぐ自動化を進めたい」という切実なニーズを満たす、極めて現実的かつ信頼性の高い第3の選択肢となります。

参考記事: マテハン(完全ガイド)| 基本機能から最新トレンド・導入実務まで徹底解説

小売・EC事業者:サプライチェーン全体のデジタル化と受発注データの精度向上

納品代行や共同配送を担うワールドサプライのような3PL拠点で自動化が進むことは、荷主である小売業者やメーカーにとっても絶大なメリットをもたらします。

出荷最終段階で高精度な荷物の寸法・重量データが自動取得され、WMS(倉庫管理システム)へリアルタイムに格納されることで、納品先での検品作業の高速化や、ASN(事前出荷情報)データの精度向上に直結します。手作業による採寸ミスや、それに伴う運賃の請求差異トラブルが未然に防止され、サプライチェーン全体の信頼性が担保されます。

参考記事: 物流自動化完全ガイド|導入メリットから失敗しない選び方・事例まで徹底解説

SaaS・テクノロジーベンダー:輸配送管理システム(TMS)とのシームレスなデータ連携

自動採寸・計量によって得られた「生きたデータ」は、配送管理システム(TMS)や配車計画AI、あるいはBtoB決済システムとの連携を可能にする重要なリソースとなります。

これまでデータのサイロ化(分断)によって、荷物の物理的寸法と実際の配車効率・運賃計算の連動がアナログ処理されていましたが、BCR採寸システムから出力されるデジタルデータが、そのままクラウド経由で基幹システムとAPI連携可能になります。これにより、テクノロジーベンダーは、走行実績や燃料消費、配車効率と荷物情報を完全に紐付けた「真の物流DX基盤」を構築しやすくなります。


3. LogiShiftの視点:設備メーカー主導から「実務者・周辺事業者主導」へのシフト

ここからは、物流専門メディアとしての独自の考察を加えます。本ニュースが示唆する最大の地殻変動は、物流設備市場における「主役の交代」です。

なぜ印刷会社が物流インフラの担い手になり得るのか

一見すると、本業が「印刷」である佐川印刷が、大型マテハンという機械工学の領域で大手のシェアを脅かす存在になるのは不思議に思えるかもしれません。しかし、ここには確固たる論理的整合性(シナジー)があります。

佐川印刷は、これまでSGホールディングスグループの物流現場(佐川急便やワールドサプライなど)において、送り状の発行システムや、それに連動するラベル貼付技術、バーコード検品などのソリューションを通じて、膨大な「物理とデータの交差点」を構築してきました。

印刷会社の本質的な強みとは、紙にインクを載せることではなく、「データ(情報)を物理的な媒体(送り状やバーコード、ICタグ)に変換し、それを正確に読み取って管理する」というインターフェース制御能力にあります。マテハン大手が「鉄のハードウェア(クレーンや頑強なコンベヤー)」からシステムを構築するのに対し、佐川印刷は「バーコードスキャンとデータ処理」という、物流現場で最もエラーが起きやすく高度なノウハウが求められる「ソフトウェア・情報制御」の視点からシステムを逆算して設計しています。

この「現場のデータハンドリングを起点にした設計思想」こそが、大手のカスタマイズ性に勝る、使い勝手の良いマテハンソリューションを生み出す源泉となっています。

「2024年問題」「2026年問題」を突破する柔軟なDXソリューション

2026年4月に本格施行された改正物流効率化法では、年間取扱貨物が一定規模以上の特定荷主に対し、CLO(物流統括管理者)の選任や、荷待ち時間の2時間以内制限、さらには国への詳細な物流効率化報告が法的に義務付けられています。

この法規制をクリアするためには、もはや「ただ動く機械」を倉庫に入れるだけでは足りません。「どのトラックが、どの荷物を、何分で積み、その正確な容積と重量はいくらだったのか」という精緻なエビデンス(証跡データ)の自動取得が必要です。佐川印刷のBCR採寸装置付きマテハンは、まさにこの「改正法への対応(コンプライアンス)」を自動的に完了させるための、データ駆動型DXツールとして極めて強力に機能します。

異業種の物流DX参入が示す「ファクトリー・ロジスティクス」の未来

このように、従来の業界の境界線が溶け、自社の得意技術を活かして物流の高度なインフラを提供する動きは、他の産業セクターでも顕在化しています。

例えば、総合印刷会社の株式会社光陽社が、自社工場内に倉庫業免許を取得し、EC自動出荷システム「LOGILESS」と連携させることで「製造と物流を同一拠点内でワンストップ化」した事例(サステナブル・ロジスティクス)があります。これは、拠点間の無駄な横持ち輸送を物理的にゼロに抑え、Scope3の削減とリードタイム短縮を実現する画期的なアプローチでした。

今回の佐川印刷によるマテハン外販事業も、印刷と物流現場のデータ制御技術の高度な融合がもたらした、次世代の異業種参入モデルです。今後、物流不動産や倉庫管理のルールが変わる中で、自社のアセットや培った知見を「物流自動化のパッケージ」として外販・展開する動きはさらに加速していくでしょう。

参考記事: 横持ちゼロでCO2削減!光陽社の倉庫業参入がもたらす3つの衝撃とScope3対策


4. まとめ:明日から意識すべき3つの戦略的アクション

佐川印刷によるワールドサプライへの大型マテハン納入と、今後の外販事業本格化は、既存のマテハンメーカー不足に悩む多くの物流企業や、自社倉庫の自動化を急ぐ荷主企業にとって大きな追い風です。

明日から経営層や物流現場のリーダーが、このトレンドを自社の成長に取り入れるために意識・実行すべきアクションは以下の3点です。

  1. 「ハードのスペック」ではなく「データの収集力・活用力」でマテハンを選ぶ
    コンベヤーの速度やクレーンの頑丈さといった従来の物理スペックだけでなく、BCR採寸システムのように「出荷最終段階で、いかに無駄なく正確な容積・重量データを自動抽出し、WMS/TMSに流し込めるか」という情報連携能力を最優先の選定基準とする。
  2. 供給力不足の今、大手以外の「現場発」ソリューションを積極的に選択肢に加える
    マテハン大手メーカーの受注残による導入遅延(2〜3年待ち)を指をくわえて待つのではなく、佐川印刷のように「実際の物流グループの現場で鍛え上げられた、稼働実績のある周辺事業者」が提供する、カスタマイズ性と納期に優れたソリューションに視野を広げる。
  3. 「空間の有効活用(空中動線)」により既存倉庫のキャパシティを再定義する
    新規の倉庫を建て直す資金力がない中小事業者であっても、コンベヤーを「つり下げ式」にするなど、床面動線を潰さない立体的なレイアウト設計を採用することで、既存倉庫の坪効率と生産性を劇的に向上させることが可能である。

物理的な輸送力と倉庫内の労働力が同時に枯渇していくこれからの時代、勝敗を分けるのは「自動化設備をいかに早く、現場の使い勝手に即して実装できるか」に他なりません。従来の常識にとらわれず、現場を知り尽くした最新のソリューションを武器に、変化に強い強靭なデジタルサプライチェーンを構築していきましょう。


出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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