和歌山発のモビリティベンチャーであるglafit株式会社は、セイノーグループの株式会社地区宅便および日祐株式会社と共同で、2026年7月以降に「特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)」区分に適合した電動サイクル「NFR-01Pro⁺」を用いた次世代型配送オペレーションの実証実験を順次開始します。
本取り組みは、深刻化する配送現場の人手不足や環境負荷低減といったラストワンマイルの諸課題に対し、マイクロモビリティの導入によって「配送の生産性向上」と「労働参加の障壁撤廃」を同時に実現する先進的な試みです。
ニュースの背景・詳細:電動サイクル「NFR-01Pro⁺」を活用した次世代配送モデルの検証
これまでダイレクトメールやポスト投函型配送、小型荷物配送を主軸に首都圏および神奈川県で独自の高密度配送網を築いてきた地区宅便と日祐は、配達エリア近辺まで軽自動車に自転車を積載して運搬し、そこから先を自転車で配達するハイブリッド運用を行ってきました。しかし、従来の自転車では坂道や長距離移動による配達員の身体的負荷が大きく、また軽自動車への自転車の積載数が最大2台に制限されていたため、配送エリアへの運搬効率(デリバリー効率)がボトルネックとなっていました。
今回の実証実験では、glafitが開発したコンパクトな特定小型原付「NFR-01Pro⁺」を導入することで、軽自動車1台あたりの積載台数を2台から4台へと倍増(200%向上)させます。これにより、配送エリアへの運搬にかかる輸送効率を劇的に高めるとともに、最高時速20kmの車道モードと最高時速6kmの歩道モードをワンタッチで切り替えられる機動力を活かし、坂道の多い地域や広域エリアにおける配送負荷の軽減を目指します。
本実証実験の概要は以下の通りです。
| 項目 | 詳細内容 | 実務上の狙い |
|---|---|---|
| 開始時期 | 2026年7月以降、順次開始予定 | 電力消費や配送需要が活発化する夏季からの実証開始 |
| 検証エリア | 東京都23区内、神奈川県川崎市内の配送ネットワーク | 都市部の住宅密集地や起伏の激しい地形での適応力検証 |
| 対象業務 | ダイレクトメール、ポスト投函型配送、小型荷物配送など | 軽量・小型荷物の高密度ラストワンマイル配送 |
| 検証項目 | 配送効率、移動時間、CO2削減効果、配達員の使いやすさ | 運行コストや安全性、気象・地形への適合性評価 |
| 3社の主な役割 | 地区宅便:運用知見の提供、日祐:実証設計と測定、glafit:モビリティ供給 | 各社の強みを活かした協調体制の構築 |
業界への具体的な影響:3つのプレイヤーに迫るメリットと変化
本実証実験は、配送コストの急増やドライバー不足に悩むラストワンマイル領域において、「脱・軽バン」と「脱・運転免許」を具現化する重要なモデルケースとなります。
1. 運送事業者:「軽バン不足・ドライバー不足」を打破する輸送アセットの軽量化
これまでラストワンマイル配送といえば、軽貨物自動車(軽バン)と運転免許保持者の組み合わせが当たり前でした。しかし、EC市場の拡大に伴う「軽バン不足」とドライバーの採用難は深刻化しています。
マイクロモビリティを配送プロセスに組み込むことで、軽自動車1台あたりの運搬台数が4台へと倍増するため、現場全体の配車台数を半減させても同等以上の配送体制を維持できるようになります。車両調達コストや維持費の削減、さらには都市部での駐車違反リスクの回避にもつながり、事業者の収益改善に直結します。
参考記事: ラストワンマイル完全ガイド|2024年・2026年問題に向けた実務知識と解決策
2. ドライバー(配達員):運転免許や体力の壁を取り払う「インクルーシブ雇用」の実現
特定小型原付は、16歳以上であれば運転免許不要、ヘルメット着用は努力義務という緩和された法的区分に位置づけられています。また、ペダルを漕ぐ必要がない電動モーター駆動のため、これまで「運転免許がない」「自転車の坂道移動は体力的につらい」という理由で採用ターゲットから外れていたシニア層、主婦層、若年層などが即戦力として物流現場に参画できるようになります。
これは、以前日本通運とWHILL社が取り組んだ、倉庫内で電動モビリティを活用して就労障壁を下げるアプローチと同様、身体的制約や適性を拡張する「誰にでも開かれたラストワンマイル配送」の地盤を整えるものです。
参考記事: 物流2026年問題とは?2024年問題との違いや法改正、実務で必要な対策を徹底解説
3. 行政・規制当局:改正道路交通法を活かした「安全性と生産性の調和」を示すベンチマーク
2023年7月の改正道路交通法で新設された「特定小型原付」区分は、都市型のパーソナルモビリティとしての普及が期待されている一方で、安全性や歩道走行時におけるマナーが課題視されてきました。
大手配送事業者である地区宅便・日祐が実務(ビジネス)の現場で法令遵守に準拠した運用フロー(車道・歩道モードの適切な切り替えやヘルメット着用指導など)を構築し、配送効率向上と安全運行を両立する客観的なデータを蓄積することは、行政にとっても今後の次世代マイクロモビリティの規制緩和と産業振興の行方を左右する極めて価値の高い実証データとなります。
LogiShiftの視点(独自考察):ラストワンマイル配送の「脱・重量化」と「マルチモーダル化」
今回の実証実験が示唆する物流の構造的変化は、ラストワンマイル配送における「車両の最適サイジング(脱・重量化)」と「マルチモーダル輸送」の融合にあります。
過剰スペックだった「1.5トンの軽バン」からの脱却
これまで、郵便物やダイレクトメール、小型EC荷物などの軽量・薄型の商材を、1トンを超える鉄の塊である軽バンで配送することは、エネルギー効率や道路専有面積の観点から「過剰スペック(非効率)」と言わざるを得ませんでした。
しかし、これまでは航続距離や積載効率、免許制限の壁があったため、自転車やバイクで代替しきれなかった経緯があります。今回のように「拠点〜エリア間は軽自動車でまとめて搬送」「エリア内は特定小型原付で高密度に巡回」という多段階のマルチモーダル輸送へシフトすることで、エネルギー消費を最小化する「カーボンニュートラル物流」への現実的な移行シナリオが完成します。
「2030年問題」に向けた持続可能な配送網の解
「2030年問題」では、ドライバー不足によって国内の輸送能力が著しく不足するリスクが叫ばれています。これに対抗するには、幹線輸送における自動運転の導入だけでなく、ラストワンマイル配送の末端部分をいかに「プロのドライバーに頼らない構造」へ変革できるかが鍵を握ります。
16歳以上で免許不要の特定小型原付による配送が社会実装されれば、ギグワーカーや地域の主婦、学生が「日常の隙間時間で、自宅周辺の配送を電動サイクルで数時間だけ担う」といった、地産地消・シェアリング型のラストワンマイル配送網の構築が容易になります。本実証は、まさに将来の労働力供給不足を先手で解決するための、重要なパラダイムシフトの第一歩となるでしょう。
参考記事: 2030年問題(物流)とは?2024年問題との違いや3大リスク、乗り越えるための効率化アプローチを解説
まとめ:次世代配送モビリティの本格導入に向け、明日から現場で意識すべきこと
glafitとセイノーグループ(地区宅便・日祐)による特定小型原付を活用したラストワンマイルの実証開始は、2026年以降の持続可能な配送モデルを占う重要なマイルストーンです。
配送部門や現場リーダーの皆様が、明日から自社の配送戦略で意識すべきポイントは以下の3点です。
- 商材と配送距離に応じた「アセットの再適正化」の検討
自社が配送している荷姿のサイズ・重量を分析し、すべてのルートを軽バンでカバーする必要があるかを再評価してください。小型・軽量商材を特定小型原付や電動サイクルに切り替える「脱・軽バン」の検討がコスト削減の切り札となります。 - 「免許不要・身体的負荷の低い車両」を前提とした採用計画へのマインドシフト
「運転免許を持ったドライバー」という限られた採用市場で消耗戦を続けるのではなく、特定小型原付などの導入によってシニア・主婦層を物流現場に引き入れる、間口の広い採用戦略を準備しましょう。 - マルチモーダル運行のための「中継荷役フロー」の確立
軽自動車にモビリティを複数台積載し、配送エリアで配達員に引き渡すといった「荷役分離・中継オペレーション」を想定し、現場が混乱しないための受け渡し手順やマニュアル整備を早期に進めてください。
出典: PR TIMES

