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Home > 輸配送・TMS> 6割が賃上げ実感なし?Hacobu調査から学ぶドライバー定着に向けた3つの対策
輸配送・TMS 2026年4月15日

6割が賃上げ実感なし?Hacobu調査から学ぶドライバー定着に向けた3つの対策

改正物流効率化法が本格施行され、サプライチェーン全体の効率化が法的な「義務」となった2026年。その直前である3月に実施された株式会社Hacobuの最新調査は、物流業界に静かな衝撃を与えました。世間が大幅なベースアップに沸く中、物流現場では働き方改革の副作用として「残業減による収入減」という矛盾が顕在化しています。しかし、過酷な労働環境と収入不安に直面しながらも、約6割のドライバーが「今後も仕事を続けたい」と回答しているのです。この現場の「働く意欲」をいかにして適正な待遇へと結びつけ、持続可能な物流網を維持するのか。本記事では、賃上げ実感なき現場のリアルな実態と、荷主企業や運送事業者が生き残るために直ちに取り組むべき対策を徹底解説します。

【Hacobu実態調査】ニュースの背景と詳細

データの力で物流課題を解決する株式会社Hacobuは、全国のトラックドライバー1,516名を対象に「【2026年】トラックドライバー実態調査」を実施しました。本調査は、物流の2024年問題を経て、改正物流効率化法が本格稼働する直前の2026年3月に行われ、現場の生々しい実態を定量的に可視化しています。

調査から明らかになった最大のトピックは、労働環境の改善と収入減少のジレンマ、そして荷待ち時間の短縮に伴う新たな課題の浮上です。

調査項目 主な回答結果 現場への影響と示唆
収入の変化 6割以上が賃上げ実感なし(うち約2割は収入減少) 残業代に依存した給与構造の限界と生活不安の増大
収入減少の主な理由 仕事量の減少(44.9%)、残業時間の減少(39%) 働き方改革がドライバーの手取り額減少に直結
荷待ち時間の変化 過半数が「やや短くなった」「大幅に短くなった」と実感 バース予約システム等のDX化が一定の成果を創出
業務上の最大の負担 待機場所を見つけるのが困難(61.7%) 拠点周辺のインフラ不足や押し出し渋滞の顕在化

他産業では平均賃上げ率が3年連続で5%台を記録するなど社会全体で賃上げの流れが続く中、物流領域では「残業が減ったことで手取りが下がる」という構造的な問題が解消されていません。さらに、荷待ち時間が短縮された一方で、ドライバーの最大の負担が「待機場所の確保」や「給与が労働に見合わない(53.8%)」「付帯作業(41.1%)」へと移行している点も、現場の疲弊の形が変化していることを如実に示しています。

業界各プレイヤーへの具体的な影響

この調査結果は、荷主から運送事業者まで、サプライチェーンを構成するすべての企業に重い課題を突きつけています。

運送会社が直面する「残業代依存モデル」の完全崩壊

運送事業者にとって最も深刻なのは、長年業界にはびこってきた「歩合給や残業代で稼ぐ」という給与モデルの崩壊です。労働時間の上限規制により物理的に長く走れなくなった結果、ドライバーの収入が減少しています。燃料価格の上昇も重なり、企業側が独自に基本給をベースアップする体力は乏しく、適正な運賃転嫁が進まなければ人材流出は避けられません。一方で、「ドライバーを続けたい」という意向を持つ層が6割以上存在することは、待遇さえ適正化されれば高い定着率を見込めるという希望の光でもあります。

荷主企業に突きつけられた「受入体制全体」の再設計

荷主企業や倉庫事業者にとって、荷待ち時間が過半数で「短縮した」と評価されたことは、バース予約システムなどの導入努力が実を結んだ証と言えます。しかし、新たな課題として「待機場所を見つけるのが困難」という声が6割を超えた現実は無視できません。システム上で到着時間を厳密に指定した結果、早く到着したトラックが敷地内に入れず、周辺のコンビニや路上で待機せざるを得ない「押し出し渋滞」が全国で多発しています。荷主は単に自社の荷捌き場を効率化するだけでなく、停車環境の整備や予約枠の柔軟な運用を含む、受入体制全体の質を高める責任を負っています。

参考記事: トラックのコンビニ駐車摩擦が激化!改善基準告示を乗り切る3つの対策

LogiShiftの視点|「選ばれる現場」になるための経営戦略

2026年の物流効率化法の本格施行により、企業は「客観的なデータに基づく効率化」を義務付けられました。この変革期において、Hacobuの調査結果から読み解くべき「企業が打つべき次の一手」を考察します。

「続ける意欲」を搾取しない適正運賃の収受と還元

厳しい環境下でも「仕事を続けたい」と答えるドライバーが6割を超える事実は、物流業界が持つ職業としての魅力や誇りが失われていないことを示しています。経営層はこの意欲に甘えることなく、彼らの生活を保障する給与体系の再構築を急がなければなりません。

そのためには、どんぶり勘定の運賃交渉から脱却し、原価計算に基づいた「標準的な運賃」の確実な収受が不可欠です。また、ドライバーの負担として上位に挙がった「付帯作業(荷下ろし・積み込み等)」についても、運送契約から明確に分離し、別料金として荷主に請求する、あるいは倉庫スタッフへ移管するといった契約の適正化が急務です。

参考記事: 標準的な運賃とは?2024年4月改定の5大ポイントと実務対応を徹底解説

待機問題の根本解決に向けたデータの高度活用

「荷待ち」から「待機場所の確保」へと課題が移行したことは、個別のシステム導入だけでは現場の負担を取り除けないことを意味しています。この問題を解決するためには、点と点を結ぶデータの高度活用が求められます。

例えば、トラックの動態管理サービス(GPS)とバース予約システムをAPI連携させ、渋滞等で到着が遅れる、あるいは早まる車両の情報を倉庫側がリアルタイムに把握し、システム側で自動的に接車バースを再割り当てするような動的な運用です。荷主側が「待たせない・探させない」インフラを構築することは、コンプライアンスの遵守のみならず、深刻化するドライバー不足の中で自社の荷物を確実に運んでもらうための強力なインセンティブとなります。

参考記事: 荷待ち時間とは?2024年問題の実態と劇的に削減する実践的アプローチ

まとめ|明日から意識すべきこと

Hacobuの「【2026年】トラックドライバー実態調査」は、働き方改革が進む一方で取り残される賃金問題と、デジタル化の影で生まれる新たな待機負担という、物流現場のリアルな矛盾を浮き彫りにしました。

企業が明日から取り組むべきアクションは以下の3点です。

  • 運送事業者は、残業代に依存しない固定給のベースアップを前提とした、荷主への強気な運賃改定交渉を行うこと
  • 荷主企業は、自社拠点における「見えない待機場所問題」の実態を把握し、周辺環境の整備や予約ルールの見直しに着手すること
  • 業界全体で、付帯作業の分離や受入体制のデジタル化を推進し、ドライバーに「選ばれる現場」を構築すること

「ドライバーを続けたい」という現場の尊い意欲を未来の物流網へと繋ぐため、荷主と運送事業者が痛みを分かち合い、適正な取引環境をともに築き上げることが、2026年以降を生き抜く絶対条件となります。


出典: 物流の課題を解決するDXパートナー|株式会社Hacobu
出典: 独立行政法人労働政策研究・研修機構『賃上げ率は3年続けて5%超に/連合の2026春季生活闘争の第1回回答集計』
出典: デロイト トーマツ ミック経済研究所『スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2025年度版】』

監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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