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Home > サプライチェーン> 日本ロジスティクスシステム協会調査、特定荷主の31%のみ中長期計画準備で役員選任必須に
サプライチェーン 2026年7月7日

日本ロジスティクスシステム協会調査、特定荷主の31%のみ中長期計画準備で役員選任必須に

日本ロジスティクスシステム協会調査、特定荷主の31%のみ中長期計画準備で役員選任必須に

日本の物流業界が大きな転換期を迎える中、荷主企業における法規制への対応遅れを示す衝撃的なデータが公表されました。

公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が発表した「物流2024年問題の影響と現状に係る実態調査」によると、改正物流効率化法で義務付けられた「中長期計画」の策定準備ができている特定荷主・特定連鎖化事業者はわずか31.2%にとどまり、約7割の企業が未着手であることが明らかになりました。

この結果は、多くの企業において物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)の選任や計画策定の動きが遅れており、法改正への対応が経営課題として十分に昇華されていない厳しい現実を浮き彫りにしています。本記事では、この調査結果の詳細と、各プレイヤーに及ぼす影響、そして企業が今取るべき具体的なアクションプランを徹底解説します。


ニュースの背景:特定荷主「約7割が未準備」の衝撃

JILSが実施した実態調査は、改正物流効率化法で義務化される「物流統括管理者(CLO)の選任」や「中長期計画の策定」に対する企業のリアルな準備状況を可視化しました。調査の概要と、判明した主な数値を整理します。

JILS実態調査の概要

項目 詳細
発表主体 公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)
調査期間 2024年3月3日〜10日(2024年6月29日発表)
対象・規模 JILSメルマガ登録の発着荷主、物流事業者など(有効回答数:299件)
主な調査内容 法改正への対応状況、輸送量の見通し、荷待ち・荷役時間の変化

法対応における「二極化」と職位による進捗の格差

調査結果によると、特定荷主および特定連鎖化事業者のうち、CLOを選任して中長期計画策定に向けた準備ができているのは全体の31.2%にすぎませんでした。残りの約7割は準備ができておらず、制度開始を控えた段階としては極めて深刻な進捗状況となっています。

さらに、CLOに任命予定、あるいは選任された人物の「職位(役職)」が、計画策定の進捗に直結していることも浮き彫りになりました。

  • 役員級(専任・兼務)をCLOに予定している企業
    • 役員級(兼務)が47.4%、役員級(専任)が6.2%を占め、経営層が直接コミットする姿勢を見せる企業では対応が比較的スムーズに進んでいます。
  • 部長級以下をCLOに予定している企業
    • 全体の17.1%が部長級以下の選任を想定していますが、そのうち35.4%の企業で「中長期計画策定の準備ができていない」と回答しています。

この結果から、物流の効率化・適正化を単なる「現場(物流部門)の仕事」として部長級に丸投げしている企業ほど、全社的な合意形成や計画策定が暗礁に乗り上げている実態が証明されました。

実車率や輸送力への懸念は継続

あわせて実施された輸配送量に関する意識調査では、2025年度の営業用貨物自動車の利用について、「増える」の回答が前回調査(2023年3月実施)から1.6%減少した一方、「減る」との予測が2.9%増加しました。
また、「引き続き運べている」とする回答が1.4%減少し、「運びにくくなった」が0.4%増加するなど、輸送能力のひっ迫に対する現場の懸念は年々強まっています。

ドライバーの荷待ち・荷役時間の短縮については一部で改善傾向が見られるものの、全体の約半数は「変わらない」と回答しており、抜本的な現場改善には至っていないのが現状です。


業界各プレイヤーへの具体的な影響と地殻変動

JILSの実態調査が示した「約7割が未準備」というデータは、サプライチェーンを構築する各プレイヤーに多大な地殻変動をもたらします。

荷主企業(製造・卸・小売):名ばかりCLOによる事業継続リスクの顕在化

改正物流効率化法では、年間貨物取扱重量が9万トン以上の企業が「特定荷主」に指定されます。この中には、商品を発送する「発荷主(メーカーなど)」だけでなく、受け取る側の「着荷主(大手流通・小売など)」も同様に含まれます。

準備が遅れている7割の企業が直面する最大の壁は、「部門間のセクショナリズム」です。部長級以下のCLOでは、営業部門の「即日・小口多頻度納品の要求」や、調達・製造部門の「生産の波」に対してメスを入れる権限がありません。結果として「名ばかりCLO」になり、実効性のある中長期計画を作れず、勧告・是正命令や最大100万円の罰金、さらには企業名公表という深刻なペナルティを課されるリスクに直面します。

参考記事: 2026年施行!改正物流効率化法で発・着荷主が負う3大義務と罰則回避の必須対策

行政・規制当局:実効性担保のためのガイドライン整備と監視強化

7割の荷主が未準備という実態を受け、経済産業省や国土交通省などの監督官庁は、企業向け中長期計画の策定ガイドラインの提示をさらに急ぐ必要があります。
特に、着荷主(流通・小売)に対する指導や、バース予約システムの導入を含むデジタル化支援の補助金拡充など、単なる規制強化にとどまらない「実行支援策」の充実が急務となります。あわせて、Gメン活動などによる不適切な取引(過度な荷待ち時間や手下ろし作業の強要など)の監視の目も一層厳しくなることが見込まれます。

SaaS・テクノロジーベンダー:データ管理の自動化を阻む「サイロ化」の解決がビジネスチャンスに

計画策定が進まない最大の原因の一つは、自社の正確な貨物取扱量や荷待ち・荷役時間の「データがない」ことです。WMS(倉庫管理システム)やERP(基幹システム)、そして配送計画システムが連携しておらず、データが社内で完全にサイロ化している企業が大多数を占めます。

テクノロジーベンダーにとって、この現状は決定的な商機です。単に「バース予約システム」を提供するだけでなく、
* トラックの入出荷待機時間を自動で1分単位で可視化・分析する
* 自社の年間輸送重量を自動集計して特定荷主判定をサポートする
* 中長期計画のKPI(積載率、荷待ち削減時間など)をモニタリングするダッシュボードを提供する

といった、法対応に特化した「データ統合プラットフォーム」としての提案が、今後の市場シェアを大きく左右することになります。


LogiShiftの視点:改正法への対応を「攻めの投資」に変える3つのロードマップ

JILSの調査が示した「約7割が未準備」というデータは、見方を変えれば、今すぐ正しい対応に動いた残り3割の企業が、競合に対して圧倒的な物流優位性を築けるチャンスであることを意味します。
LogiShiftが提言する、法改正を企業成長へ繋げるための処方箋は以下の3点です。

1. 職務権限規定に「物流改善命令権」を明文化する

多くの企業が陥っている「部長級以下のCLO選任と計画の遅れ」を防ぐには、CLOに取締役・役員級を配置するだけでは不十分です。企業の職務権限規定(ガバナンスルール)を改定し、CLOに対して、他部門への強力な「物流改善命令権」を付与するべきです。

例えば、
* 営業部門が求める基準外の突発配送に対し、CLOが拒否権を行使できる権限
* 非効率な配送によって生じた割増物流コストを、営業部門や製造部門の部門業績評価(P/L)に直接賦課する社内評価制度の構築

これらを実行して初めて、営業や製造といった他部門も「我が事」として物流改革に協力せざるを得なくなります。名ばかりCLOを即座に淘汰し、経営陣の一角としてガバナンスを効かせることが最優先事項です。

2. 「データの自律化」と通信障害時を見据えたBCP策定

中長期計画を提出するためには、バースの空き状況や荷待ち時間、運送ルートの積載率を正確に計測するデジタル基盤が不可欠です。APIを用いてWMSとバース予約システム、動態管理システムを連携させ、トラックの到着予測と連動した「倉庫内作業の自動平準化」を目指すべきです。

ただし、過度なシステム依存には「サイロ化とは逆のリスク」が潜んでいます。仮に通信障害やサーバーダウンが発生した場合に、出荷作業が完全にブラックボックス化しストップしては、企業としての供給責任を果たせません。CLOの責務として、デジタルを最大限活用しつつも、万が一のシステム障害時に「紙の伝票とアナログな配車確認で、最低限の出荷を維持するBCP(事業継続計画)マニュアル」を並行して整備し、現場で避難訓練のようにテストしておくことが強く求められます。

参考記事: 物流総括管理者設置義務とは?2026年施行に向けた対象基準と実務対応を徹底解説

3. 「選ばれる荷主」としての地位確立:付帯作業の完全分離と契約化

運送会社は、慢性的なドライバー不足に伴い、「非効率な荷主(待機時間が長い、無償での手下ろしやラベル貼りを強要されるなど)」との取引を縮小・停止させる動きを本格化させています。

中長期計画を美しく仕上げるだけでなく、実際の運送会社との交渉において、これまでサービスで行われていた附帯作業(検品、ラップ巻き、仕分け作業など)を契約書から完全に切り離して「適正な作業料金」を支払う、もしくは自社倉庫スタッフ側へ業務を移管する必要があります。輸送能力そのものがゴールド(希少価値)となる時代において、運送会社を単なる下請けではなく「サプライチェーン維持の共同経営パートナー」として扱い、取引適正化を主導することこそが、中長期的に自社の商品を「運びきってもらう」ための最大の生存戦略となります。


まとめ:明日から経営層と現場リーダーが実践すべきアクション

JILSの実態調査が突きつけた「準備不足」の現状を、他山の石としなければなりません。制度が本格始動する2026年4月に向け、判定の指標となるデータ蓄積や社内体制の構築には一刻の猶予もありません。明日から着手すべきステップは以下の通りです。

  • ステップ1:年間貨物量の正確な把握とダッシュボード化
    • 自社グループ全体の年間貨物取扱量が9万トン以上(特定荷主基準)に達するか、着荷主としての引き取り分も含めて早急に算出し、データを一元化する。
  • ステップ2:役員級CLOの選任と「物流改善命令権」の規定準備
    • 単なる肩書きの変更にとどまらず、営業や調達へ強制力を持つ社内組織体制を整え、経営トップが「物流は全社最優先の経営アジェンダである」と宣言する。
  • ステップ3:荷待ち時間を1分単位で計測・記録するシステムの選定と導入
    • 現状のボトルネック(何時に、どのバースで、どのトラックが待っているか)を客観的数値で証明できる環境を、小規模な拠点からでも即座にスタートする。
  • ステップ4:運送会社との「書面契約」の見直し交渉準備
    • 運賃と付帯作業料を完全に分離し、適正な料金での契約改定交渉に着手する。

「物流は現場がなんとかするもの」というこれまでの古い常識は完全に崩壊しました。物流をコストではなく「企業のガバナンスと生存を左右する戦略的アセット」として再定義し、主導権を握る企業こそが、次の10年を勝ち抜くことができるのです。

参考記事: 改正物流効率化法で特定荷主3000社超に2026年4月CLO選任が義務化へ


出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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