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Home > 輸配送・TMS> 国土交通省が2028年6月までに適正原価を全面施行へ、運賃未達で事業許可更新拒否に直結
輸配送・TMS 2026年7月9日

国土交通省が2028年6月までに適正原価を全面施行へ、運賃未達で事業許可更新拒否に直結

国土交通省が2028年6月までに適正原価を全面施行へ、運賃未達で事業許可更新拒否に直結

国土交通省は2026年7月9日、2025年6月に成立した「トラック適正化二法」に基づき、2028年6月までの全面施行を目指す「適正原価制度」の具体的な策定に向け、有識者検討会を近日中に設置することを発表しました。

この制度は、トラック運送事業が健全に維持・継続できるよう、通常必要とされる費用(適正原価)を国が算出して告示するものです。今回の発表における最大の注目点は、施行後に運送事業者がこの適正原価を下回る運賃・料金で契約の受託や支払を継続した場合、一般貨物自動車運送事業の「事業許可の更新(5年更新制)」が認められないという、極めて強力な法的ペナルティ・更新拒否規定が伴うことにあります。

2026年4月からは委託次数の制限や違法な「白トラ」規制がすでに先行して施行されていますが、今回の適正原価の具体化と5年更新制のセットは、物流業界の長年の課題であった「適正な運賃収受」を法的に担保する決定打となります。


国土交通省による「適正原価制度」策定の背景と時系列ファクト

トラック運送業界では、2024年問題による労働時間規制やドライバー不足への対応、さらには多重下請け構造による運賃の買い叩きといった構造的課題が続いていました。政府はこれらに対し、ガイドラインなどの「努力義務」から「罰則を伴う法的強制力」への移行を進めています。今回の適正原価制度の具体化は、その最終フェーズとも言えます。

本制度の策定スケジュールと決定している重要ファクトを以下に整理します。

【適正原価制度および関連規制のロードマップ】

期日・予定時期 項目・決定事項 具体的な内容と法的位置づけ 業界への直接的なインパクト
2025年6月 トラック適正化二法の成立 流通業務総合効率化法および貨物自動車運送事業法の改正。 法的規制強化の土台が完成。
2026年4月 先行規制の施行 委託次数の制限。違法な「白トラ」に係る荷主等の取り締まり。 多重下請け構造の是正。無許可営業の監視強化がスタート。
2026年7月9日 有識者検討会の設置発表 国土交通省、経済産業省、農林水産省、学識経験者、関係団体等の参画。 適正原価の考え方や構成要素、算出枠組みの論点整理を開始。
近日中〜 検討会での議論・取りまとめ 提言取りまとめ後、物流政策推進会議、運輸審議会を経て適正原価を告示。 運賃に費用を的確に反映させるための積算基準が決定。
2028年6月まで 「適正原価制度」の全面施行 適正原価制度と、一般貨物自動車運送事業への「5年ごとの許可更新制」を導入。 適正原価を下回る運賃の収受を継続した場合、事業許可更新を拒否。

有識者検討会では、トラック運送事業に係る運賃・料金について、適正な事業運営のために通常必要と認められる費用(適正原価)を的確に反映した積算を行うため、基本的な考え方や構成要素を詰めていきます。

事業許可の「5年ごとの更新制」と「適正原価を下回る取引に対する更新拒否」という強力な規制は、これまでの「荷主との力関係による妥協」を許さない強力な外圧となります。

参考記事: トラック適正化二法「健全化措置」3つの努力義務と運送事業者が講じるべき対策


3つのプレイヤーが直面する具体的な影響と生存戦略

適正原価制度の完全施行と5年更新制への移行は、運送事業者、荷主(製造・小売)、そしてテクノロジーベンダーのそれぞれに、これまでのビジネスプロセスや意識の根底からの変革を迫ります。

1. 運送事業者:「どんぶり勘定」からの完全脱却と「データ経営」の義務化

運送事業者にとって、適正原価制度は自社の利益を守る盾となる一方、経営体制の徹底的な近代化を突きつけるものとなります。これまでの「他社がこの価格だから」「慣習的にこの運賃だから」という曖昧な運賃設定(タリフ依存)は、適正原価を下回った場合に「事業許可を失う」という壊滅的なリスクへと変わります。

運送会社は今後、自社トラックを稼働させるために必要なコスト、すなわち車両の減価償却費、燃料費、ドライバーの労務費、管理費などを1キロ・1時間あたりで精緻に算出する「原価管理(ABC分析)」を構築しなければなりません。国が告示する適正原価を基準とし、自社の稼働データをエビデンス(証拠)として荷主に堂々と提示できる交渉力を持つこと、そして「原単価方式」へシフトすることが生き残りの絶対条件です。

参考記事: 貨物自動車運送事業法第24条と2026年7月9日の原単価方式転換への必須対応

2. 製造業者・小売業者(荷主):「安く運ばせること」が最大級の事業継続リスクに

荷主企業において、これまでの「物流コストは削るべき外部費用である」という認識は通用しなくなります。もし運送事業者に適正原価を下回る運賃を押し付け続けた場合、運送事業者が事業許可を失って倒産するか、あるいは法令違反を嫌う適法な事業者から一斉に取引を拒絶され、自社の製品が市場に運べなくなるという「物流崩壊」に直結します。

特に大規模な特定荷主企業に義務づけられる「物流統括管理者(CLO)」の選任を踏まえ、経営層が主導して物流維持のための適切な予算確保と、長時間の荷待ち・荷役といった不当な無償作業(付帯作業)の是正に取り組む必要があります。

参考記事: 2026年施行!改正物流効率化法で発・着荷主が負う3大義務と罰則回避の必須対策

3. SaaS・テクノロジーベンダー:原価管理と動態可視化システムの普及が爆発的に加速

適正原価の証明、実運送体制管理簿の運用、さらには多重下請けの可視化が義務づけられる中、これらを紙やエクセルなどのアナログ手法で管理することは実務上不可能です。

IT・テクノロジーを提供するベンダーにとっては、運送業界および荷主業界に対するシステム導入を推進する最大の機会となります。GPSやデジタコと連携した動態管理システム、バース予約システム、運行原価を自動計算するシステムは、もはや「あれば便利なツール」ではなく、「法令を遵守し、事業許可を維持するための必須インフラ」として社会実装が加速することになります。

参考記事: 労務費100%転嫁を実現!統計と自動計算で運賃交渉を成功させる3つのデータ活用術


LogiShiftの視点(独自考察):市場原理から「インフラ維持型」への強制アップデート

LogiShiftでは、今回の「適正原価制度」の策定と「5年ごとの事業許可更新制」の導入は、日本の物流産業における「自由競争の時代の終焉」と「公的基準に基づくインフラ維持体制への強制移行」を意味すると分析します。

これまで、日本の過密かつ高品質な物流網は、実運送事業者の過酷な労働と、多重下請けの最末端における運賃の買い叩きという「労働力の切り売り」によって維持されてきました。しかし、行政が「適正原価を下回る取引を継続する事業者には、運送業を行う資格(事業許可)を与えない」という強硬な姿勢を示したことで、この昭和型モデルは名実ともに完全崩壊します。

今後は、運賃や価格の引き下げによって競う不健全な競争ではなく、「いかにデータを精緻に可視化し、運行効率を高め、適正な原価の範囲内でドライバーの待遇を向上させられるか」という生産性と法令遵守のクオリティで競う、新しい業界構造へと强制的にアップデートされます。

この大転換を「逆風」と捉えるか、あるいは不公正な競争が是正され、真面目な適法事業者が報われる「千載一遇のチャンス」と捉えるかで、2028年以降の企業価値は180度異なるものになるでしょう。

参考記事: トラック新法を攻めの機会に!2026年問題に打ち勝つ3つの成長戦略


まとめ:明日から各企業が実践すべき3つの実務アクション

2028年6月の全面施行に向け、物流に関わるすべての経営層・現場リーダーが明日から取り組むべきアクションは以下の通りです。

1. 自社の運行コストと「原単価」の精緻な算出に着手する

標準的な運賃(タリフ)に頼るのをやめ、自社の実走行データ、固定費、変動費、労務費を洗い出し、「1時間あたり、1キロあたりにいくらの原価がかかっているか」を1円単位で算出できるデータ管理体制を構築してください。

2. 運送契約の見直しと「附帯作業」の分離・有償化を徹底する

契約外の無償作業(検品、ラベル貼り、店舗での棚入れ等)や、長時間の待機時間は適正原価を損なう主因です。純粋な「運賃」と「実作業・待機時間」の料金を明確に切り分け、書面または電子データで契約を交わす交渉を荷主と開始してください。

3. 運行管理・原価管理のデジタル化への投資を決断する

エクセルや紙の配車管理を早期に廃止し、ドライバーが直感的に動態や待機時間を記録できるクラウド型システム(TMS等)を導入しましょう。データを共通言語にした「対等なパートナーシップ」を荷主・元請間で構築することが、今後の最大の事業防衛となります。

参考記事: 標準的な運賃とは?2024年4月改定の5大ポイントと実務対応を徹底解説


出典: トラックニュース

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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