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ニュース・海外 2026年7月10日

韓進の25トン有償自律走行から学ぶ国内幹線輸送の2025年度への必須対応

韓進の25トン有償自律走行から学ぶ国内幹線輸送の2025年度への必須対応

「自律走行トラックは、まだ技術検証の段階だ」――そんな認識は、もはや過去のものとなりました。

韓国の物流大手である「韓進(ハンジン)」が、25トン大型幹線トラックを用いた自律走行による「有償貨物輸送(商業運行)」を開始しました。これは単なるデモンストレーションや技術テストではなく、実際の宅配貨物を積載し、運賃(収益)を生み出す実務オペレーションに組み込まれたことを意味します。

少子高齢化と深刻なドライバー不足(2024年問題・2030年問題)に直面する日本にとって、この隣国の先行事例は極めて重要なベンチマークです。本記事では、韓進が構築した自律走行エコシステムの全貌を解き明かし、米国・中国をはじめとするグローバル動向と比較しながら、日本企業が今すぐ取り組むべき次の一手を徹底解説します。


【Why Japan?】なぜ今、日本企業が韓国の「自律走行幹線輸送」を知るべきなのか

日本の物流業界では、新東名高速道路での自動運転専用レーン整備計画や、2025年度以降のレベル4自動運転トラックの商用化ロードマップが国を挙げて推進されています。しかし、国内の多くの実証実験は、セーフティドライバーを乗せた「技術的な検証」や、限定的な実証の範囲にとどまっているのが現状です。

一方、韓国の韓進が開始した商業運行は、国土交通省から正式に「有償貨物運送許可」を取得し、全羅北道の群山(クンサン)港から大田(テジョン)メガハブまでの118kmに及ぶ幹線区間を週3回、実際の宅配貨物を載せて有料で運行しています。

安全要員が同乗する形態(レベル2相当)であるものの、特筆すべきは「ターミナルへの入車から、待機、荷役場への進入までを一貫して管理する管制体系」をすでに物流現場に実装している点にあります。

これは、幹線道路をまっすぐ走る技術(走行制御)だけでなく、「自律走行車両を既存のターミナルオペレーションにどう調和させるか」という実務実装のフェーズへいち早く移行したことを示しています。このスピード感と管制統合のアプローチこそ、日本企業が今まさに学ぶべき最大のポイントです。


【海外の最新動向】世界で加速する「幹線輸送自動化」の現在地

自律走行・自動運転トラックをサプライチェーンに組み込む動きは、グローバル規模で急速に拡大しています。米国、中国、欧州、そして韓国・日本の技術・実用化アプローチを整理すると、それぞれの国や地域の特性に合わせた進化が見えてきます。

主要国・地域における自動運転物流の最新アプローチ

国・地域 主な開発・実用化プレイヤー 技術・インフラのアプローチ 物流ビジネスへの応用フェーズ
韓国 韓進、JIAT(自動車融合技術院)、LX空間情報研究院 産学官連携の「セマングム自律輸送実証インフラ」を活用。管制システムとターミナル運用の統合を重視。 25トン大型幹線トラックでの実際の宅配貨物を用いた「有償商業運行」を週3回ペースで開始。
米国 インターナショナル・モーターズ、Aurora、Kodiak、Ryder 車両単体のAI・センサー性能(自律性)を重視。テキサス州などの広大なハイウェイ網(I-35回廊等)を毎日1000km規模で走行。 実際の顧客貨物を日常的に輸送する「商用フリートへの統合」および「完全無人化(レベル4)」直前フェーズ。
中国 Baidu (Apollo Go)、Pony.ai、政府関係機関 政府主導による強力な「路車協調(V2X)」インフラを整備。道路側のスマートポールと車両が連携。 港湾施設(コンテナターミナル)内や特定配送エリアでの完全無人運用がすでに実用化。
日本 株式会社T2、株式会社ロボトラック、豊田通商コンソーシアム 国土交通省の「自動運転トラック実装支援事業」が本格化。新東名高速での専用レーン整備が進む。 メーカー(大王製紙やロート製薬等)や卸、物流大手7社が参画し、関東〜関西間での実証・一部レベル2商用運行が本格化。

参考記事: 新東名の自動運転レーン整備で変わる幹線輸送。レベル4時代に必須の3つの対策


【先進事例】韓進の自律走行商業輸送が成功した3つの要因

韓進が韓国初の「25トン自律走行有償輸送」を実現できた背景には、単一企業の努力だけではない、高度に設計された「エコシステム」が存在します。その成功要因を3つの視点から深掘りします。

【韓進の自律走行幹線輸送エコシステム】

 ┌────────────────────────────────────────────────────────┐
 │           主管:産業通商資源部 / 許可:国土交通省        │
 └───────────────────────────┬────────────────────────────┘
                             │
 ┌───────────────────────────┼────────────────────────────┐
 │  【運行・インフラ】        │ 【自律走行・管制OS】       │
 │   韓進 (実際の物流網)       │  JIAT (実証インフラ構築)   │
 │   韓国統合物流協会         │  LX空間情報研究院 (管制)   │
 └───────────────────────────┴────────────────────────────┘
                             │
 ┌───────────────────────────▼────────────────────────────┐
 │  群山港 ~ 大田メガハブ (118km) を週3回・有償で宅配便輸送    │
 └────────────────────────────────────────────────────────┘

1. 産・学・官・協が一体となった「コンソーシアム型エコシステム」

本事業は、産業通商資源部が主管する「セマングム自律輸送商用車実証支援インフラ造成事業」の一環として推進されました。

  • 韓進:実際の物流インフラと商業輸送の宅配貨物、および運行フィールドを提供。
  • 自動車融合技術院(JIAT):自律走行実証道路インフラと車両の構築を担当。
  • LX空間情報研究院:3D地図情報などを基にした「自律走行管制システム」の構築を担当。
  • 韓国統合物流協会:自律走行における業界内の協力体系の構築と運営を支援。

各分野のプロフェッショナルが役割を明確に分担し、国土交通省が迅速に「有償貨物運送許可」を出したことで、技術検証からマネタイズ(有償運行)へのシームレスな移行が実現しました。

2. 「幹線輸送の主力」である25トン車両へのピンポイント投資

韓進が自律走行の対象として選んだのは、1トンなどの小型配送車ではなく、幹線輸送の主力である「25トン大型トラック」です。

宅配便ビジネスにおいて、1トン車はラストワンマイルの個別配送を担いますが、25トン車は「物流拠点間で大量の貨物を一括輸送する」という大動脈の役割を果たします。この最もドライバーの確保が難しく、労働環境が過酷になりがちな「長距離・大型幹線」を自律走行化することで、省人化とコスト削減のインパクトを最大化する戦略をとっています。

3. 車両制御だけで終わらない「ターミナル管制OS」の構築

自動運転における最大のボトルネックは、高速道路などの「直線道路」ではなく、物流センターや港湾ターミナルといった「敷地内(クローズドエリア)」での複雑な挙動です。

韓進は、車両がターミナルへ進入する際の「入車」「待機」「荷役場(バース)へのアプローチ」までを自律的に遂行できるよう、ターミナル側に認知用のセンサー装備や管制システムを配備しました。これにより、「走行中(動脈)」と「拠点(結節点)」のデータがシームレスに同期するスマート物流体系を構築しています。

参考記事: 株式会社T2が国交省事業に採択、2026年1月からの共同実証で幹線無人化が加速


【日本への示唆】日本企業が今すぐ取り組むべき3つの実務要件

韓国・韓進の事例や、日本国内で進むT2、ロボトラック、豊田通商コンソーシアムなどの先進実証から、日本の物流企業や荷主企業が今すぐ真似るべき、あるいは準備すべき具体的なポイントは以下の3点に集約されます。

1. 運行管理(TMS)と倉庫管理(WMS)の「API連携対応」への投資

自動運転や自律走行トラックが24時間体制でスケジュール通りに中継拠点(ハブ)へ到着しても、それを受け入れる倉庫側がアナログな運用(電話での確認、手書きの受付、目視検品など)を続けていては、中継地点で致命的な「待機渋滞」が発生します。

自律走行車から得られる高精度な到着予測時刻(ETA)をミリ秒単位で受信し、倉庫内の空きバースの割り当てや、自動搬送機(AGV)、フォークリフトの配備をリアルタイムで同期させるための「ITインフラ(API連携)」の構築に、今すぐ投資を開始すべきです。

2. 「荷役分離」を前提としたパレット輸送への完全移行

高価な自律走行トラックの投資対効果(ROI)を最大化するためには、車両の稼働率を極限まで高める必要があります。自律走行車を荷待ちや手積み・手降ろし(バラ積み)のために数時間も待機させることは、ROIの観点から絶対に許されません。

トラクターとシャーシ(荷台)を物理的に切り離す「ドロップ&フック」や「スワップボディコンテナ」の導入、そして業界標準である「T11型標準パレット」を用いた100%パレタイズの推進など、「走行」と「荷役」を完全に切り離すオペレーションへの転換を、荷主と運送会社が共同で進める必要があります。

3. 高速道路ICや「中継ハブ(トランスゲート)」を意識した拠点戦略の再編

将来の完全自動運転(レベル4)時代において、自律走行トラックが走行するのは主に「高速道路(自動運転区間)」となります。そのため、有人運転と無人運転を切り替える物理的な中継ハブ(日本国内におけるT2の「トランスゲート」など)の周辺立地の重要性が飛躍的に高まります。

今後、自社の配送デポや物流センターを新設・移転する際には、単に「消費地への近さ」や「賃料の安さ」だけで判断するのではなく、主要な高速道路ICや自律走行の切替ハブから「10分圏内」に位置しているかという、次世代インフラへのアクセス性を最重視したポートフォリオ戦略の描き直しが必要です。

参考記事: 国土交通省が25%の輸送力不足へ挑む自動物流道路で倉庫の立地再編が加速


【まとめ】労働依存から「装置・システム産業」への昇華

韓国・韓進が実現した25トン大型自律走行トラックによる商業輸送は、物流が「人の労働力に依存する労働集約型産業」から、高度な管制システムと自律デバイスを組み合わせた「技術・資本集約型の装置産業」へと完全移行しつつあることを雄弁に物語っています。

既存の「自社で優秀なドライバーをいかに囲い込むか」という囲い込み競争から、今後は「標準化された自動化インフラを、自社のシステムといかに高度に同期させて使いこなすか」というオペレーション競争へと、ゲームのルールは変わりつつあります。

この巨大なパラダイムシフトを静観するのではなく、自社のサプライチェーンを進化させる最大のチャンスと捉え、まずは「物量データの可視化」や「パレット化の推進」といった、明日からできる最初の一歩を踏み出してください。


出典: AFPBB News

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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