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Home > 物流DX・トレンド> 株式会社TRILL.が2026年7月に新潟市で実証開始の「OURCAR」が示す物流車両の共同使用による固定費削減効果
物流DX・トレンド 2026年7月13日

株式会社TRILL.が2026年7月に新潟市で実証開始の「OURCAR」が示す物流車両の共同使用による固定費削減効果

株式会社TRILL.が2026年7月に新潟市で実証開始の「OURCAR」が示す物流車両の共同使用による固定費削減効果

物流業界を取り巻く経営環境が厳しさを増すなか、自社で保有するアセット(資産)の運用効率を最大化する「アセットライト」な経営戦略が注目を集めています。2026年7月、この流れを加速させる新たな実証実験が新潟市で産声を上げました。

株式会社TRILL.は、国土交通省が主導する地域交通DX推進プロジェクト「COMmmmONS(コモンズ)」の採択事業として、カーシェアリングサービス「OURCAR(アワカ)」の実証実験を新潟市で開始しました。本取り組みの最大の特徴は、法人が保有する車両を、業務で使用しない時間帯に地域住民や他法人と共有する「共同使用スキーム」にあります。

運送事業者や荷主企業にとって、配送用車両や営業車、駐車場といった物理資産はこれまで「コストセンター」として捉えられがちでした。しかし、デジタル技術を用いてこれらを地域社会と接続し、マルチタスク化させることで、固定費を相殺し新たな収益源へと変貌させる可能性が見えてきました。本記事では、この革新的な実証実験の全容と、物流業界に与える多大なインパクトについて徹底解説します。

国土交通省「COMmmmONS」採択事業「OURCAR」実証実験の概要

今回の実証実験は、新潟市が推進する都市政策「にいがた2km(ニーキロ)」構想と連動し、都市部における移動の利便性向上と、デジタル技術を活用した効率的な車両運用の確立を目指しています。

まずは、今回の発表内容と実証実験の基本情報をタイムラインとあわせて整理します。

実証実験およびサービス実績の基本情報

項目 詳細内容 物流・ビジネス視点での意義
発表主体 株式会社TRILL.、国土交通省(地域交通DX推進プロジェクト「COMmmmONS」) 国土交通省主導の官民連携による公認プロジェクト
発表日 2026年7月13日(実証デモは7月8日開催) 2026年夏の最新DXトレンドとしての位置づけ
実証拠点 新潟市中央区・ピア万代 観光客や地域住民、法人が交錯する都市中心部での検証
先行実績(長野) 累計会員数1,587名、予約件数2,850件(2026年6月時点) 地方都市における共同使用モデルの需要と有効性を証明
コア技術 スマートキーボックス、専用スマートフォンアプリ 対面での鍵受け渡しを排除し、管理コストを極小化

7月8日実証デモに見る「アプリ完結型フロー」のシームレス性

2026年7月8日に新潟市中央区の「ピア万代」で行われたデモ運用では、現地の 大学生がテスターとなり、実際の利用フローを実演しました。

利用者は専用スマートフォンアプリから空き車両を検索・予約し、車両に設置されたスマートキーボックスとアプリが通信することで、非対面での解錠・施錠を行います。走行から返却、決済に至るまでの一連のプロセスは完全にデジタル上で完結しており、運営側が現地に管理スタッフを常駐させる必要がありません。

この「スマートキーボックスによる非対面管理」は、単なる一般消費者向けの利便性向上にとどまらず、物理的なアセットを他者と安全に共有するための技術的基盤(SaaS・IoTインフラ)として極めて重要な役割を果たしています。

共同使用スキームが運送・物流プレイヤーに与える3つの変化

法人が保有する「休眠資産(使われていない時間帯の車両や駐車スペース)」を地域や他社とシェアする動きは、物流サプライチェーンに関わる各プレイヤーに構造的な変化を迫ります。

1. 運送事業者:配送用車両や軽バンの「マルチタスク化」による固定費相殺

運送事業者にとって、車両は稼働していなければ維持費(駐車場代、保険料、車検代など)を垂れ流すだけのコストとなってしまいます。特に、EC需要の拡大に伴い急増した軽貨物事業者や、特定の時間帯(午前中など)に稼働が偏るラストワンマイルの現場では、午後の時間帯や夜間、休日に車両が遊休化しているケースが少なくありません。

「OURCAR」が提唱する共同使用スキームを物流現場にスライド適用させた場合、以下のようなメリットが生まれます。

  • 夜間・休日の遊休軽バンを一般向け・他法人向けカーシェアとして開放
  • 稼働率の低いバックアップ車両(予備車)をシェアリングに回して維持費を回収
  • 自社駐車スペースの一部をシェアリングポートとして提供し、賃料収入化

このように、保有資産を自社業務専用の「シングルタスク」から、使わない時間を他者に切り売りする「マルチタスク」へと移行させることで、固定費の相殺や実質的なアセットライト化が可能になります。

2. テクノロジーベンダー:スマートキー技術の物流現場への水平展開

今回の実証実験で採用されている「スマートキーボックス」は、物流DXを推進するSaaS・テクノロジーベンダーにとっても強力なビジネスチャンスを示唆しています。

物流や輸配送の現場では、依然として「車両の物理的な鍵の管理」がアナログな状態のまま残されています。事務所のキーボックスから手作業で鍵を取り出し、台帳に手書きで記入してドライバーに渡すといった運用は、紛失リスクや管理工数の肥大化を招いてきました。

非対面で鍵の解錠権限をデジタル管理・付与するスマートキーシステムは、カーシェアだけでなく、運送会社における自社車両の鍵管理自動化、さらには置き配用倉庫・共同配送ハブ拠点のセキュリティ錠の管理などへも容易に転用可能です。物理資産をデジタル制御下に置くための「インターフェース」として、この領域の市場拡大が期待されます。

3. 行政・都市計画:人口減少下における「民間アセットの公共インフラ化」

新潟市が推進する「にいがた2km」構想との連動に代表されるように、行政や都市計画の観点からも、この共同使用スキームは極めて重要な解決策を提示しています。

地方都市や郊外において、公共交通機関の維持は人口減少に伴い困難を極めています。一方で、地域の企業や法人が保有する社用車は、土日祝日や夜間に一斉に眠っています。

これら民間の「休眠資産」をデジタルで繋ぎ、地域住民や観光客の足として開放することは、行政が新たに莫大な投資をして公共モビリティを整備することなく、地域交通の維持・強化を図る「アセットライトな地方創生」に直結します。民間企業の遊休アセットが、DXを通じて地域社会の「公共的な移動インフラ」へと昇華する仕組みが、本実証実験の本質と言えます。

LogiShiftの視点:アセットの「所有から共有へ」が促すアセットライト経営

今回の「OURCAR」による新潟での実証実験は、一見するとモビリティ領域(カーシェア)のニュースに映るかもしれません。しかし私たちは、これこそが今後の物流業界、特に「フィジカルインターネット」の実現に向けたアセットマネジメントのあり方を占う重要な試金石であると考えます。

フィジカルインターネット時代における車両・拠点の「共有化」

国が2030年に向けて強力に推進する「フィジカルインターネット」構想では、トラックの積載スペースだけでなく、倉庫や配送拠点、さらには車両そのものに至るまで、すべての物流インフラをインターネットのパケット通信のように「共有・共同利用」することを目指しています。

花王や三菱食品など卸大手9社が立ち上げた共同配送コンソーシアム「CODE」に見られるように、すでに荷物の共同配送(協調領域の拡大)は本格始動しています。

参考記事: 花王株式会社など9社が配送効率20%向上へ、データ標準化が必須対応に

次のフェーズとして起こるのは、荷物の混載だけでなく、「車両そのものの共同使用」や「配送リソースのダイナミックな融通」です。自社でトラックや倉庫を100%所有して囲い込むモデルは、維持コストの観点から非効率極まりないものとなり、必要な時に必要な分だけアセットを借り受ける、あるいは自社のアセットを他社に貸し出す柔軟な体制(ボラティリティへの適応力)が、企業の競争力を左右することになります。

資産を「コスト」から「サービス基盤(PaaS)」へ昇華させる

物流企業やトラック事業者は、これまで運賃(輸送サービス)のみを対価として収益を得てきました。しかし、車両や拠点をデジタル技術で制御可能にし、外部にAPI連携(システム連携)できるようにすることで、物理的なアセットそのものが「サービスプラットフォーム(Platform as a Service = PaaS)」としての価値を持ち始めます。

昼は自社の共同配送に使い、夜間は他社の都市型ラストワンマイル事業者に軽バンを貸し出し、土日は地域住民のカーシェア車両として稼働させる。こうした一元的なアセット管理とマネタイズを自動で制御する仕組み(アセット・マネジメントSaaS)が確立されれば、物流企業の収益構造は劇的に強靭化します。

今回のTRILL.による「OURCAR」の挑戦は、地方都市において民間企業の社用車を地域インフラに変革する有効なステップであり、この思想はそのまま明日の物流資産の最適化へと繋がっているのです。

参考記事: 卸大手9社が共同配送へ!効率20%増を実現する異業種連携と3つの影響

まとめ:持続可能なアセット運用に向けて明日から意識すべきこと

新潟市での「OURCAR」実証実験は、眠っている法人アセットをデジタル技術で地域社会に接続し、最大効率で運用する「休眠資産有効活用」の好例です。この動きから、物流業界の経営層や実務担当者が明日から意識すべきアクションは以下の3点です。

  • 自社保有アセットの「非稼働時間」の棚卸し
  • 自社のトラック、軽バン、フォークリフト、駐車場、空きスペースなどが「稼働していない時間帯(夜間、休日、季節の谷間)」がどれだけあるかを定量的に把握する。
  • 物理アセットの「デジタル化・共有化」に向けた技術選定
  • 将来的にアセットを他者と共有したり、自社内で効率的に使い回したりできるよう、スマートキーボックスやクラウド型車両管理システムなどの導入検討を始める。
  • 「所有」にこだわらないアセットライトな経営計画へのシフト
  • 車両や倉庫をすべて自社で抱え込むリスクを認識し、共同配送や倉庫の変動費化シェアリングサービスを視野に入れた、柔軟性の高いサプライチェーン構築を模索する。

これからの物流経営において、資産の多さ(規模の経済)だけが強みとなる時代は終わりを告げようとしています。保有するアセットをいかに「賢く共有し、稼働率を限界まで高めるか」というアセットライトな視点こそが、持続可能な企業成長を支える最大のエンジンとなるはずです。


出典: レスポンス(Response.jp)

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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