「自社はトラックを所有せず手配のみを行っているため法改正の対象外だ」と安心していませんか?2026年4月施行の改正トラック法により、車両を持たない利用運送事業者やメーカー系物流子会社にも「実運送体制管理簿」の作成・保存が義務付けられました。制度の全体像を正しく把握し、デジタル管理を中心とした実務フローの再構築を進めることがコンプライアンス維持の最優先事項です。
基礎知識:利用運送事業者と「実運送体制管理簿」の全貌
2026年4月の改正貨物自動車運送事業法(通称:トラック法)の施行に伴い、物流業界の取引構造に大きな変化が生じています。その中心にあるのが「実運送体制管理簿」の作成義務化です。
これまで本制度は、自社で車両を保有して運送を行う「一般貨物自動車運送事業者」を主な対象としていました。しかし、2026年4月の改正法追加規定により、自社車両を持たずに運送手配を行う「貨物利用運送事業者(第一種・第二種)」へも作成・保存義務が全面的に拡大されています。
実運送体制管理簿とは何か?
実運送体制管理簿とは、荷主から引き受けた貨物がどのような運送ルートを通っているかを記録・可視化するための台帳です。どの運送事業者が実際にトラックを走らせているか(実運送事業者)を追跡可能にすることを目的としています。
作成対象となる取引および管理簿への記載必須項目は以下の通り定められています。
- 適用対象となる取引: 真荷主から直接受託した、1運送依頼あたり重量1.5トン以上の貨物を、他の運送事業者に再委託(利用運送)する場合
- 記載義務項目:
- 実運送事業者の商号または名称
- 運送する貨物の内容および運送区間
- 実運送事業者の請負階層(1次請け、2次請け等の多重下請け構造の明記)
- 各階層における契約内容・手配情報
- 保存期間および閲覧請求: 運送完了日から1年間営業所に保存(電磁的記録での保存可)。真荷主から開示請求があった場合は閲覧に応じる義務が発生
参考記事: 貨物利用運送事業とは?第一種・第二種の違いや登録要件、法改正への実務対応をわかりやすく解説
対象事業者の範囲と自社区分の落とし穴
今回の義務拡大で最も注意すべきなのは、「トラックを保有していないから自社は関係ない」という誤認です。
荷主(親会社など)から物流業務を一括受託し、協力運送会社へ下請け発注しているメーカー系・流通系の物流子会社や、国際輸送に伴う国内トラック手配を担う国際フォワーダーの国内部門は、その多くが利用運送事業者として登録・届出を行っています。そのため、自社が直接トラックを所有していなくても、管理簿の作成対象に含まれます。
事業者区分による義務の違いを以下の整理表で確認し、自社の立ち位置を正しく判定してください。
| 事業者区分 | 運送形態の概要 | 実運送体制管理簿の作成義務(施行時期) | 主な実務対応 |
|---|---|---|---|
| 一般貨物自動車運送事業者 | 自社で車両・ドライバーを保有し運送を実施 | 義務あり(2025年4月1日より施行) | 自車運行および下請け手配分の管理簿作成と保存 |
| 貨物利用運送事業者(第一種・第二種) | 自社車両を持たず、他社へ運送を委託 | 義務あり(2026年4月1日より拡大適用) | 荷主直接受託分(1.5t以上)の全階層情報の把握・記録 |
| 純粋な運送媒介・斡旋業者 | 取引の媒介のみを行い契約主体にならない | 義務対象外(ただし契約形態の厳密な確認が必要) | 媒介契約書面の確認と取引実態のチェック |
参考記事: 貨物自動車運送事業法とは?2024・2025年改正の要点と荷主・事業者が取るべき実務対応
なぜ今重要なのか:多重下請けの可視化と見落とせない業界の潮流
実運送体制管理簿の作成義務が利用運送事業者に拡大された背景には、物流業界において長年構造化してきた「多重下請け構造」の是正という大きな国家課題があります。
制度導入・義務拡大の時系列
法改正と実運送体制管理簿を巡るタイムラインは以下の通りです。2026年は利用運送事業者にとってコンプライアンス体制構築の決定的な年となっています。
- 2024年5月: 改正貨物自動車運送事業法(トラック法)が国会で成立・公布
- 2025年4月1日: 改正法施行。一般貨物自動車運送事業者の元請に対して管理簿作成・保存が義務化
- 2026年4月1日: 改正法の追加規定施行。利用運送事業者(物流子会社・フォワーダー等)への義務化が拡大
- 2026年7月31日: 株式会社Hacobuが物流子会社・フォワーダー向けオンラインセミナーを開催
物流子会社やフォワーダーに潜む「当事者意識の薄さ」
物流DXを推進する株式会社Hacobu(東京都港区)は、2026年7月31日に「物流子会社・フォワーダーも要注意!利用運送事業者の『実運送体制管理簿』の作成義務とは」と題した無料オンラインセミナーを開催します。
同社の分析によると、制度改正から時間が経過した現在も、自社が利用運送事業者として管理簿の作成義務対象であるという認識が不足していたり、具体策に着手できていなかったりする企業が少なくありません。
特に親会社からの配送受託が中心となるメーカー系物流子会社では、従来の電話やFAX、慣習的な手配フローが残存しており、配車先の下請け運送会社がさらにどこへ再委託しているか(2次請け・3次請けの実態)を把握できていないケースが見られます。
「ブラックボックス化」の放置がもたらす重大リスク
多重下請け構造の中で末端の実運送事業者が見えなくなる「ブラックボックス化」は、適切な運行管理や適正な運賃収受を阻害する最大の要因です。
管理簿の作成・保存を怠った場合、法令違反として行政指導の対象となるリスクがあります。さらに、違法な無許可業者(白トラ)の混入や過労運転などのトラブルが発生した場合、発注元である物流子会社だけでなく、親会社である真荷主のブランド価値や社会的信用まで失墜させる「レピュテーションリスク」に直結します。
参考記事: 白トラ規制とは?2026年法改正で激変する荷主の罰則リスクと今すぐ取るべき実務対応
デジタル管理への移行がもたらすメリットと具体的効果
実運送体制管理簿の作成義務化は、単なる事務負担の増加ではありません。紙やエクセルによるアナログ管理から脱却し、デジタルツールを活用して管理フローを再構築することで、企業経営に大きな定量的・定性的メリットをもたらします。
定量的効果:事務工数の爆発的削減と収益基盤の改善
アナログな手段で下請け・孫請けの配送情報を取りまとめ、1年分の管理簿を作成・保存することは実務上不可能です。配車管理システム(TMS)やクラウド型物流プラットフォームを導入することで、以下のような定量的効果が得られます。
配車・管理事務作業の時間短縮
手作業で1日あたり数時間費やしていた電話での車番確認や台帳記入が、ドライバーや協力会社からのデジタル入力・自動連携によって自動化されます。配車担当者の残業削減に直現します。
附帯作業費の明確化と適正運賃の収受
配送データと連携して「荷待ち時間」「積込み・ラップ巻きなどの附帯作業」を数値化・記録することで、荷主企業への交渉根拠が明確になります。コミコミ運賃を脱却し、適正な料金を請求できる体質へ転換できます。
定性的効果:コンプライアンス強化と「荷主からの選定優位性」
実運送体制をリアルタイムで透明化することは、自社のガバナンス体制を証明する最大の強みとなります。
違法車両・無断再委託の自動排除
システム上で下請け事業者の事業許可番号や車両番号を管理・参照することで、白トラの混入や無許可での再々委託を防止できます。
荷主企業・親会社からの信頼獲得
サプライチェーンの健全性を重視する大手製造業や荷主企業に対し、「実運送体制が完全に可視化された安心できる物流パートナー」として自社をアピールできます。他社との明確な差別化要因となり、継続的な受注につながります。
参考記事: ロジテック25アプリで2026年義務化の実運送体制管理簿作成を効率化
実践/導入のポイント:失敗しないための3つのステップ
利用運送事業者が実運送体制管理簿の運用を開始し、現場に定着させるためには段階的なステップが必要です。準備不足のまま制度対応を行うと、現場の混乱や入力漏れを引き起こす原因となります。
ステップ1:受託取引の棚卸しと対象区分の明確化
まず自社が取り扱っている全物流取引の洗い出しを行います。
- 真荷主からの直接受託か、他の運送会社からの下請け受託か
- 対象貨物の重量が1.5トン以上か
- 委託先(協力会社)が1次請けで完結しているか、2次請け・3次請けが発生しているか
上記を調査し、自社が「いつ、どの取引で管理簿を作成すべきか」の対象範囲をクリアに定義します。
ステップ2:クラウド型配車システム・動態管理ツールの選定
手書きや表計算ソフトによる管理は限界があります。Hacobuが提供する「MOVO」シリーズなどのデジタルプラットフォームやTMSを検討し、実運送体制管理簿の自動生成機能を備えたツールを導入します。
ツール選定時は、自社の配車担当者だけでなく、協力会社や末端のトラックドライバーが直感的に操作(車番入力や完了報告など)できるシンプルなUI/UXを備えているかを基準にしてください。
ステップ3:協力会社との運用ルールのすり合わせとBCP策定
システムを導入しても、下請けの運送会社から情報が届かなければ管理簿は完成しません。
協力会社に対して「2026年4月からの法改正対応であること」を丁寧に通達し、配車情報や実運送事業者名の提出フローを契約条件として組み込みます。
また、システム障害や通信エラーが発生した際に備え、緊急用の紙台帳や手動報告フローをBCP(事業継続計画)としてマニュアル化しておくことが重要です。
まとめ:法改正を機に「手配のみ」から「透明な物流プラットフォーム」へ
2026年4月に施行された改正トラック法による実運送体制管理簿の作成義務拡大は、物流子会社やフォワーダーにとって避けて通れないコンプライアンス上の課題です。
「知らなかった」「うちはトラックを持っていないから関係ない」という対応は、行政指導や顧客からの信頼失墜といった大きなリスクを招きます。制度の狙いである多重下請け構造の可視化をポジティブに捉え、デジタル化を通じた業務効率化と経営基盤の強化へ繋げることが求められます。
今すぐ自社の取引状況を棚卸しし、最新のセミナーや専門ツールの活用を検討しながら、時代に即した持続可能な物流体制の構築へ踏み出しましょう。
出典: LOGISTICS TODAY
出典: LOGISTICS TODAY
出典: 行政書士法人シグマ
出典: 国土交通省
出典: 株式会社Hacobu


