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物流DX・トレンド 2026年7月31日

CMPコンソーシアムの2025年10月始動が変える管理実務の必須対応

CMPコンソーシアムの2025年10月始動が変える管理実務の必須対応

環境規制への対応に伴う化学物質調査やメール連絡の作業に追われ、本来の業務が圧迫されていませんか。
製造業やサプライチェーンで長年常態化している「問い合わせの連鎖」は、新プラットフォーム「CMP」によるデータの自動同期で根本から解消できます。

サプライチェーンの「問い合わせの連鎖」を断ち切るCMPの基礎知識

日本の製造業がグローバル市場で成長を続ける中、製品に含まれる化学物質の管理は企業の存続に関わる重要課題となっています。
しかし、現場の管理実務は依然としてアナログな手法に依存しており、業務の形骸化や膨大な事務コストが問題視されてきました。

従来のアナログ管理「chemSHERPAメール送信」の限界

これまでの化学物質管理では、Excelベースの共通フォーマットである「chemSHERPA(ケムシェルパ)」を添付したメールのやり取りが主流でした。

完成品メーカーが部品メーカーへ調査を依頼し、依頼を受けた部品メーカーはさらに材料メーカーへ問い合わせを行うという「問い合わせの連鎖」が発生しています。
サプライチェーンを順々に辿るバケツリレー方式の情報伝達は、多大な調査負担を生み出す原因となっていました。

欧州のREACH規制をはじめとする環境規制は、約年2回の頻度で改定・追加されます。
法規制が更新されるたびに数次にわたる全サプライヤーへ再調査を依頼する必要があり、現場の事務工数を膨らませていました。

CMP(Chemical and circular Management Platform)の全体像と仕組み

こうしたアナログ作業の限界を打破するために開発されたのが、新基盤「CMP(Chemical and circular Management Platform)」です。

CMPは、2025年10月に発足した「CMPコンソーシアム(代表幹事:古田清人氏)」を中心に、自動車や電機などの大手メーカーが連携して構築を進めています。
ブロックチェーン技術を活用し、サプライチェーン全体を製品ベースで繋ぐデータ連携プラットフォームです。

最大の特長は、一度サプライチェーン上で製品チェーンを構築すれば、上流の材料メーカーがデータを更新した際、その情報が下流の企業まで一元的に自動反映される点にあります。

一度のデータ更新で全階層に同期されるため、毎回発生していた「調べ直しや再問い合わせ」が不要になります。
ブロックチェーンの分散型データ構造により、データの改ざん検知も容易に行える安全な環境が確保されます。

さらにCMPは、化学物質情報だけでなく、リサイクル材の含有率や部品のリユース情報といった「資源循環情報(Circular)」の伝達にも対応しています。

従来手法(chemSHERPA単体)とCMPの比較

従来のメール添付型(chemSHERPA単体)運用と、新基盤CMPの主な違いを以下の表に整理しました。

比較項目 従来型(chemSHERPA単体) 新プラットフォーム(CMP)
データ伝達方式 メール添付によるバケツリレー(ファイル交換) サプライチェーン接続型(自動同期)
規制改定時の対応 更新ごとに全階層で再調査メールが発生 上流での更新データが下流へ自動同期
管理可能な情報 製品含有化学物質情報 含有化学物質情報 + 資源循環情報
国際規格・互換性 chemSHERPAフォーマット IEC/ISO 82474準拠(データ読込可)

従来の手作業に依存したデータ交換から、プラットフォーム主導の自動同期モデルへと移行することで、情報伝達の正確性とスピードが格段に向上します。

参考記事: トレーサビリティプラットフォームとは?仕組みや導入メリット、選定基準をわかりやすく解説

なぜ今、化学物質情報のデジタル化と「ウラノス・エコシステム」が必要なのか

化学物質情報の迅速なデジタル化が求められる背景には、世界的な環境規制の急拡大と、日本産業全体の競争力を維持するための国家戦略が存在します。

REACH規制更新とサプライチェーン可視化の要請

欧州を中心とした環境規制は強化の一途をたどっています。
2000年以前は「工場内の化学物質管理」が中心でしたが、現在は製品に含まれる部品や材料の末端まで把握することが法律で義務付けられています。

企業はTier1(直接の取引先)だけでなく、Tier2やTier3といった深層サプライチェーン全体のトレーサビリティを証明しなければなりません。
規制に対応できない場合、製品の輸出停止や市場からの撤去といった重大なビジネスリスクに直結します。

人手不足が深刻化する中で、手作業による調査体制を続けていては、規制更新のスピードに追いつかず企業コンプライアンスを維持できません。

日本版データ共有圏「ウラノス・エコシステム」との強力な連携

欧州では「Gaia-X」をはじめとするデータ共有圏の構築が進み、企業や国境を越えたデータ共有ルールが形成されつつあります。
こうした海外のデータ包囲網に対抗し、日本主導で強靭なサプライチェーン基盤を構築するために推進されているのが、経済産業省の「ウラノス・エコシステム(Ouranos Ecosystem)」です。

CMPの仕組みは、ウラノス・エコシステムを主導する取り組みの一環として位置づけられています。
研究開発・検証は、NEDO事業に採択されたNTTデータなどが中心となって進めています。

ウラノス・エコシステムと連携することで、異なる業界や国境を越えた安全なデータ共有基盤としてCMPを定着させることが目指されています。

参考記事: 供給網の可視化とは?Tier2以降の調達リスクを低減する実践ステップと最新トレンド

CMP導入で現場と経営にもたらされる3つの効果

CMPの導入は、単なる事務作業の省力化にとどまらず、企業の透明性と競争力を高める多くの定量的・定性的メリットをもたらします。

最低25%の事務工数削減とデータ精度向上

CMPの導入において最も大きなインパクトを持つのが、情報伝達に関わる業務工数の削減です。

CMPコンソーシアムでの検討において、一連の問い合わせや回答集計作業が自動同期化されることで、含有化学物質情報の伝達工数を「最低でも25%削減できる」との試算が立っています。

工数削減により得られる具体的なメリットは以下の通りです。

  • 問い合わせやリマインドメールなどの事務作業を大幅に削減できる
  • 手入力や転記ミスによるデータ不備のリスクを防止できる
  • 調査回答の返信待ち時間がなくなり、迅速な製品出荷準備が可能になる

従来は調査依頼対応に追われていた担当者のリソースを、高度な品質管理や企画業務などのコア業務へ集中させることが可能となります。

ブロックチェーン技術による改ざん防止と信頼性確保

CMPの基盤にはブロックチェーン技術が採用されています。
データ改ざんの防止と追跡性の確保が高度なレベルで実現されます。

情報がいつ・誰によって更新されたのかが暗号技術で分散記録されるため、データの改ざんや誤魔化しを容易に検知できます。
取引先や規制当局に対して、提供する環境データが正当なものであることを証明しやすくなります。

企業の機密情報(配合比率や詳細なサプライヤー関係など)は保護しつつ、必要な環境適合データのみを同期できる安全なアクセス管理が徹底されています。

脱炭素・資源循環(サーキュラーエコノミー)対応の基盤構築

CMPは、将来的な資源循環型社会への移行を見据えた設計がなされています。

有害化学物質の制限対応(有害性の排除)だけでなく、製品に含まれるリサイクル素材の比率や部品の再利用履歴などのトレーサビリティ管理が可能です。

サプライチェーン全体での排出量把握や環境負荷の算定、サーキュラーエコノミーに対応した製品設計の推進に向けたインフラとして活用できます。

参考記事: 物流ブロックチェーンとは?基礎知識から導入メリット、最新事例まで完全ガイド

失敗しないCMP活用に向けた導入ステップと実務上の注意点

CMPの導入成果を最大化させるためには、自社のみならず取引先を巻き込んだ計画的な準備が不可欠です。

2026年本番利用に向けたロードマップと活用手順

CMPの社会実装は着実に進められています。
実務担当者は以下のロードマップを把握し、スケジュールに合わせた導入準備を進める必要があります。

  • 2025年10月: アーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)を改組し「CMPコンソーシアム」が正式発足(キヤノン、トヨタ自動車など主要企業が参画)
  • 2025年度内: ウラノス・エコシステムとしてのデータ連携機能の検証およびシステム基盤構築の完了
  • 2026年3月末: ユーザー事業者やシステム提供ベンダーを交えた大規模な実証実験の開始
  • 2026年9月〜10月: CMP本番利用および商用サービスの順次運用開始

2026年秋の本格スタートに向け、各企業は自社の管理体制の見直しを開始しておくことが推奨されます。

サプライヤーとの連携をスムーズに進める3つのポイント

CMPの利点を活かすには、サプライチェーン上のパートナー企業との協調体制が重要となります。

社内マスターデータと標準フォーマットの整理

社内で保持している既存のchemSHERPAデータや部品・材料マスターのクレンジングを実施します。
データ項目や単位が不統一な状態では自動同期の恩恵を十分に得られないため、国際標準(IEC/ISO 82474)に合わせた整理が必要です。

川上・川下パートナー企業への導入周知と協調体制構築

自社単独のシステム導入として捉えるのではなく、取引先企業に対してもCMP導入の価値を共有します。
上流の材料メーカーや下流の完成品メーカーに対し、「問い合わせ対応工数が削減される」という共通のメリットを明確に伝えることがスムーズな移行に繋がります。

セキュアなアクセス権限と情報ガバナンスの設定

ブロックチェーン上で共有する情報の開示範囲をあらかじめ明確化します。
企業の知的財産にあたるノウハウや独自技術の機密性を担保しながら、環境コンプライアンスに必要なデータのみを適切に共有する運用ルールを社内で定めておくことが大切です。

参考記事: Scope 1, 2, 3とは?物流・サプライチェーン実務担当者が知るべき基礎知識と算定ガイド

まとめ:脱アナログで実現する持続可能なサプライチェーン管理

環境規制の厳格化に伴う「問い合わせの連鎖」は、製造業やサプライチェーン全体の生産性を低下させる要因となっていました。
ブロックチェーンを活用した新基盤「CMP」は、上流から下流へのデータ自動同期によって事務工数を最低25%削減し、作業負荷を大幅に軽減させます。

ウラノス・エコシステムとの連携により、業界や国境を越えたデータ共有基盤としての普及が進む見込みです。
情報管理のデジタル化は単なるコスト削減にとどまらず、企業のコンプライアンス遵守とグローバル市場での競争力を左右する重要戦略となります。

明日から取り組むべき3つのアクション
1. 自社における化学物質調査の工数およびメール問い合わせ対応にかかるコストの現状を可視化する
2. 保持しているchemSHERPAデータや部品マスターのフォーマット標準化を進める
3. 2026年秋の商用利用開始に向けてCMPコンソーシアムやウラノス・エコシステムの最新動向を収集する

出典: MONOist
出典: 経済産業省
出典: NTTデータ
出典: 経済産業省 メティジャーナル
出典: CMPコンソーシアム

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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