佐川急便株式会社は2026年7月21日、東京都江東区において延床面積約8万7,000平方メートルの大型中継拠点「関東ハブセンター」の本格稼働を開始しました。人手不足や輸送力不足が深刻化する中、本拠点の稼働は幹線輸送の集約化と自動化を同時に推進し、首都圏を起点とする物流ネットワークの持続可能性を高める重要な施策となります。
ニュースの背景・詳細
物流業界では、トラックドライバーの時間外労働上限規制や少子高齢化に伴う労働力不足を受け、幹線輸送能力の維持が喫緊の課題となっています。特に物量が集中的に発生する関東エリアでは、各営業所からの荷物を高度に集約し、大型トラックの積載効率を極限まで高めて運行台数を最適化することが求められていました。
こうした背景のもと、佐川急便は首都圏の主要高速道路や港湾・空港へのアクセスに優れた東京都江東区新砂に「関東ハブセンター」を新設し、2026年7月21日より本格稼働させました。
関東ハブセンターの概要と物理スペック
本施設は、SGホールディングスグループの不動産事業を担うSGリアルティ株式会社が開発した「SGリアルティ新砂」(地上7階建て)の1~2階および3~4階に入居し、2層構造の中継拠点として機能します。延床面積は約8万7,000平方メートルに及び、162のトラックバースと毎時約5万個の仕分け処理能力を備えています。
施設概要および導入されている主な機能・設備を以下の表に整理します。
| 項目 | 詳細仕様・実績数値 | 実務上の機能・導入効果 |
|---|---|---|
| 施設名称 | 関東ハブセンター | 関東エリアにおける幹線輸送の最重要中継拠点 |
| 所在地 | 東京都江東区新砂 | 首都圏主要都市部および幹線道路ネットワークへの良好なアクセス |
| 本格稼働日 | 2026年7月21日 | 2026年7月17日にSGホールディングス・佐川急便より正式発表 |
| 規模(延床面積) | 87,561.31㎡ | 中継センターが入居する施設の延べ床面積 |
| トラックバース数 | 162バース | 大型トラックの同時接車による迅速な入出庫に対応 |
| 処理能力 | 毎時約5万個(1日約40万個計画) | 最新の自動化ソーターによる大量荷物の高速仕分け |
| 主な自動化設備 | クロスベルトソータ、伸縮コンベア | 省人化の推進、荷降ろし作業の物理的負荷軽減とスピード向上 |
| ドライバー環境 | 屋上駐車場(約200台分)、事務所、仮眠室 | 協力会社のドライバーを含む拘束時間短縮と環境改善 |
庫内には最新のクロスベルトソータなどの自動化設備が導入されており、手作業による仕分けを最小限に抑えています。さらに、トラック荷台の奥まで直接延伸する伸縮コンベアを配備することで、荷降ろし・積み込み作業の負担軽減とスピードアップを実現しています。また、屋上には大型トラック約200台分の駐車場や協力会社向けの仮眠室・事務所を併設し、ドライバーの待機時間削減と労働環境の改善を図っています。
既存旗艦拠点「Xフロンティア」との役割分担と全国ロードマップ
関東ハブセンターの本格稼働において重要なポイントは、隣接する既存の大型旗艦拠点「Xフロンティア」との明確な機能分担です。
これまで首都圏の物流を支えてきたXフロンティアが主に関東方面への中継機能を担うのに対し、新設された関東ハブセンターは「関東の営業所から集まった荷物を関西・北陸・中京方面へ中継する」役割を集中して担います。2拠点が密接に連携し役割を再編することで、首都圏全体の幹線中継ネットワークの混雑が緩和され、輸送の安定性とスピードが大幅に向上します。
さらに、佐川急便はこの関東ハブセンターの稼働を皮切りに、全国主要エリアを結ぶ大型中継ハブ網の構築を加速させています。
| 稼働時期 | 拠点名称 | 所在地 | ネットワーク上の役割 |
|---|---|---|---|
| 2026年7月(本格稼働) | 関東ハブセンター | 東京都江東区 | 首都圏の集荷荷物を関西・北陸・中京方面へ集約・中継 |
| 2027年2月(予定) | 関西ハブセンター | 兵庫県尼崎市 | 近畿圏の幹線輸送を再編し、東西を結ぶ中継機能を強化 |
| 2028年(予定) | 九州ハブセンター | 福岡県 | 九州エリア全体の荷物を集約し、本州との幹線輸送を最適化 |
このロードマップが示す通り、2028年にかけて日本列島の大動脈を結ぶ「3大ハブ網」が順次完成する予定です。各地のハブ拠点がデータと自動化設備で連携することにより、物量急増時のボトルネック解消や、自然災害等によるサプライチェーン寸断時の迂回ルート確保(BCP対応)が強固になります。
参考記事: 佐川急便、江東区に8.7万㎡の関東ハブセンターを稼働し幹線輸送網強化が加速
サプライチェーンを構成する主要プレイヤーへの具体的影響
関東ハブセンターの稼働と高度な自動仕分け機能の実装は、配送キャリア自体の効率化にとどまらず、EC事業者(荷主)、運送事業者、そして現場の倉庫作業員やドライバーに対して直接的な影響をもたらします。
EC事業者(荷主):出荷能力の底上げとScope3(脱炭素)対応
EC市場の拡大に伴い、多くの荷主企業が出荷量の変動や繁忙期の配送遅延リスクに直面しています。関東ハブセンターが毎時約5万個という圧倒的な処理能力を発揮することで、首都圏を起点とするEC商品の集荷・発送キャパシティが大きく底上げされます。これにより、セールイベントや繁忙期における出荷制限リスクが緩和され、配送リードタイムの安定化に寄与します。
また、荷物をハブ拠点に集約して大型トラックの積載率を極限まで引き上げる取り組みは、1個あたりの輸送に伴うCO2排出量の削減に直結します。近年、荷主企業には自社のサプライチェーン全体における温室効果ガス排出量(Scope3)の把握と削減が強く求められており、佐川急便のグリーンロジスティクスを活用することは、荷主企業のESG経営やブランド価値向上を支える強力な要素となります。
参考記事: 総合物流施策大綱が示す2030年度輸送力25%不足に荷主の経営改革が必須
運送事業者・特積み会社:幹線輸送のシェアリングと積載効率の追求
自社単独で数万平方メートル規模の自動化ハブ拠点を建設・維持できる企業は限られています。佐川急便のようなメガキャリアが高度な中継インフラを稼働させることは、業界全体における共同配送や幹線輸送のシェアリング議論を一段と加速させます。
改正物流効率化法をはじめとする規制強化のもとで、手積み手降ろしの削減やトラックの積載率向上はすべての運送事業者にとって命題です。巨大ハブを通じた中継輸送モデルが定着することで、個々の運送事業者が自前のアセットだけに頼る構造から、高度な中継網を活用したアセットライトなネットワーク利用へとシフトしていく契機となります。
参考記事: 改正物流効率化法が成立!中継輸送を加速させる3つの強力な特例支援と実務への影響
倉庫内作業員・現場ドライバー:重労働の軽減と拘束時間の短縮
現場で働く作業員やドライバーの労働環境にも直接的な変化が生まれます。
倉庫内作業においては、クロスベルトソータによる自動仕分けと伸縮コンベアの導入により、荷物の持ち上げや長い距離の歩行といった身体的負荷が激減します。人手に頼らない作業体制へ移行することで、省人化が進むと同時に、作業中の負傷リスクが低減し、多様な人材が働きやすい現場環境が整備されます。
一方、トラックドライバーに対しては、162バースという大規模な接車スペースと屋上駐車場の整備によって、慢性的な荷待ち(順番待ち)時間が削減されます。さらに、関東ハブセンターを基点とした中継輸送や短距離シャトル運行が組み組みやすくなることで、1人のドライバーが長時間を連続して走る過酷な運行が減り、日帰り運行の拡大や拘束時間の短縮が実現します。
参考記事: 佐川印刷株式会社が年間3万500時間を削減するマテハンを導入し省人化が加速
LogiShiftの視点(独自考察)
関東ハブセンターの本格稼働は、単なる一企業のインフラ投資という枠組みを超え、日本のロジスティクス構造が「人海戦術」から「データと自動化設備によるシステム制御」へ完全に移行したことを物語っています。LogiShiftでは、このニュースを以下の2つの視点から考察します。
3大ハブ網と「Xフロンティア」が描くフィジカルインターネットの基礎
佐川急便が推進する関東・関西(2027年2月予定)・九州(2028年予定)の大型ハブ構想は、既存の旗艦拠点「Xフロンティア」と結びつくことで、日本列島を網羅する巨大な幹線背骨(バックボーン)を構成します。
これは、標準化されたコンテナやデータを共有して社会全体の輸送効率を高める「フィジカルインターネット」を、自社アセット上で先行して実証・構築する動きと言えます。各地のハブにおいて毎時数万個の荷物が全自動で最適に再編され、高積載の大型トラックで拠点間を結ぶ仕組みが完成すれば、個別の運送事業者の稼働状況に依存しない、極めて強靭なメガ物流システムが誕生します。
今後、このバックボーンに他社との共同配送や異種貨物の混載が組み込まれていけば、2030年に懸念されている輸送力不足(約25%の不足予測)を押し戻す最大の解となる可能性があります。
幹線自動化と「ラストワンマイル行動変容」の統合
どれほど幹線のハブ拠点や大型トラックの運行を自動化・高効率化しても、最終端であるラストワンマイルで不在持ち戻りが発生すれば、システム全体の効率は著しく低下します。
この課題に対し、佐川急便は上流(幹線ハブの自動化)と下流(ラストワンマイルの消費者協調)の両端から同時に改革を進めている点が極めて特徴的です。同社は2026年夏より東京都中野区の集配拠点において、顧客が営業所で荷物を受け取った場合に次回送料を15%割り引く実証実験を開始しています。
上流では関東ハブセンターの圧倒的な処理能力で荷物を集約・省人化し、下流では金銭的インセンティブを用いて消費者の受け取り行動を営業所へ誘引する。この「基幹インフラの超高効率化」と「末端における行動変容型DX」が合流して初めて、ドライバー不足が常態化する時代においても破綻しない、持続可能な配送エコシステムが完成します。
参考記事: 受け取りで佐川急便が提示する15%割引、役割分担の転換に直結
まとめ
佐川急便の「関東ハブセンター」本格稼働は、テクノロジーの活用と拠点の集約によって幹線輸送の積載効率と作業生産性を劇的に高める、次世代ロジスティクスの象徴的な事例です。
この動向を踏まえ、物流に関わる経営層および現場リーダーが明日から意識・実行すべきアクションは以下の3点です。
- 自社サプライチェーンにおける積載率とCO2排出量の可視化
委託している幹線輸送の積載効率や運行データを精査し、大型ハブへの中継集約や共同配送モデルを活用することで、コスト抑制とScope3削減を両立させる計画を策定する。 - 高効率ハブ拠点を前提とした在庫配置と拠点の再設計
関東ハブセンターやXフロンティアをはじめ、将来的に関西・九州へ広がる大型ハブ網のアクセス性を考慮し、自社の倉庫立地や在庫の配置戦略を中長期ロードマップへ落とし込む。 - 配送サービスレベルの見直しと「受取多様化」への対応
「全件を個別の玄関先へ即日届ける」過剰サービス依存から脱却し、営業所受け取りや置き配、拠点受け取りを活用する顧客へのインセンティブ設計やシステム連携(ECカート改修等)を検討する。
2026年から2030年にかけて加速する物流構造の変化を先取りし、先進的な物流インフラと柔軟に連携できる体制を構築することが、企業の持続的な成長を左右します。
出典: Yahoo!ニュース
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: 佐川急便株式会社 公式プレスリリース


