エスビー食品、オタフクソース、エバラ物流、T2の4社は2026年9月8日より、自動運転トラックと貨物鉄道を組み合わせた「モーダルコンビネーション」による関東―中国エリア間約850kmの往復共同輸送実証を開始します。複数荷主の実商流貨物を往路と復路で分担して混載・共同輸送する取り組みは物流業界初の試みであり、長距離幹線輸送の省人化と物流費高騰への対抗策として大きな注目を集めています。
関東―中国間850kmを結ぶ往復共同輸送実証の全貌
トラックドライバーの時間外労働上限規制や人手不足に伴い、長距離幹線輸送の維持と物流コストの抑制は全産業共通の経営課題となっています。特に食品業界においては、物流費の上昇が製品価格の改定要因となるケースが増加しており、個社単独の効率化努力を超えた新しい幹線輸送スキームの構築が急務でした。
今回の実証実験は、自動運転トラックと貨物鉄道という異なる輸送モードを有機的に結びつけ、往路と復路で異なる荷主企業の貨物を積載して空車回送を徹底排除する「往復共同輸送モデル」の実効性を検証するものです。
参画4社の役割分担と実証概要
本プロジェクトには、調味料・加工食品を製造する荷主企業、物流会社、そして自動運転技術を開発・運行するスタートアップが参画しています。
| 企業名 | 本実証における主な役割 | 輸送対象貨物・拠点 |
|---|---|---|
| エスビー食品株式会社 | 発荷主(往路貨物の提供) | 「赤缶カレー粉」「本生本わさび」等(埼玉県物流センター) |
| オタフクソース株式会社 | 発荷主(復路貨物の提供) | 「お好みソース500g」(広島県本社工場) |
| 株式会社エバラ物流 | 拠点運用・荷受管理 | 関西第2物流センター(大阪府)、川崎物流センター(神奈川県) |
| 株式会社T2 | 自動運転トラックの運行管理 | レベル2自動運転走行(綾瀬スマートIC〜久御山JCT間) |
往路・復路の運行スキームと輸送モードの連携
実証は2026年9月8日から4日間にわたり、関東から中国エリアまでの約850km往復ルートで実施されます。輸送には、T2と日本貨物鉄道(JR貨物)が共同開発した31フィート共用コンテナ「U51D」が使用されます。
| 行程 | 区間 | 利用モード | オペレーションの詳細 |
|---|---|---|---|
| 往路(第1区間) | 埼玉県物流センター → エバラ物流関西第2物流センター(大阪府) | 自動運転トラック(レベル2) | エスビー食品の貨物を積載。東名・綾瀬スマートIC〜名神・久御山JCT(約410km)を自動運転走行。 |
| 往路(第2区間) | 吹田貨物ターミナル駅(大阪府) → 広島貨物ターミナル駅(広島県) | 貨物鉄道 | 大阪で荷下ろし後、空の共用コンテナ「U51D」を貨物列車に載せ替えて回送。 |
| 往路(第3区間) | 広島貨物ターミナル駅 → オタフクソース本社工場(広島県) | トラック陸送(有人) | 駅からオタフクソース本社工場へ空コンテナを陸送し、復路貨物の積み込み準備を完了。 |
| 復路(第1区間) | オタフクソース本社工場 → 広島貨物ターミナル駅 | トラック陸送(有人) | オタフクソースの商品(お好みソース等)を「U51D」コンテナに積載して駅へ搬入。 |
| 復路(第2区間) | 広島貨物ターミナル駅 → 吹田貨物ターミナル駅 | 貨物鉄道 | 広島から大阪まで貨物鉄道で幹線輸送を実施。 |
| 復路(第3区間) | 吹田貨物ターミナル駅 → エバラ物流川崎物流センター(神奈川県) | 自動運転トラック(レベル2) | 吹田でコンテナをトラックへ載せ替え。名神・久御山JCT〜東名・綾瀬スマートIC間を自動運転走行して納品。 |
自動運転区間となる東名高速道路・綾瀬スマートIC(神奈川県)から名神高速道路・久御山JCT(京都府)までの約410kmでは、システムが加減速や操舵を支援し、車内にセーフティドライバーが同乗する「レベル2」自動運転走行が行われます。
モーダルコンビネーション推進の時系列
自動運転トラックと貨物鉄道を融合させる「モーダルコンビネーション」は、JR貨物とT2の提携を起点に、段階的に検証範囲を拡大してきました。
| 年月 | 主な出来事・実証内容 |
|---|---|
| 2024年2月 | JR貨物が株式会社T2へ出資。鉄道と自動運転を組み合わせた輸送網の共同検討を開始。 |
| 2025年6月 | 北海道〜大阪間(約1,500km)で雪印メグミルク製品を対象とした第1弾実証を実施。 |
| 2025年7月 | 千葉〜福岡間においてライオン製品を対象としたモーダルコンビネーション実証を実施。 |
| 2025年11月 | 食品物流大手のF-LINEがT2の幹線輸送商用運行へ参画。 |
| 2026年7月 | アイリスオーヤマ、NLP協同組合らと九州〜関東間(約1,100km)での実証を実施。 |
| 2026年9月 | エスビー食品、オタフクソース、エバラ物流、T2が業界初の「往復共同輸送実証」を開始。 |
| 2027年度以降 | 高速道路におけるレベル4完全無人運転の商用運行を見据え、定期運行枠への参画を推進。 |
参考記事: アイリスオーヤマが1100km輸送で自動運転と鉄道を融合し長距離物流の省人化が加速
業界への具体的な影響:3つの視点から見る物流構造改革
本実証の開始は、単なる1輸送ルートの実験にとどまらず、製造業、運送事業者、そしてサプライチェーン全体の構造に対して大きな影響を与えます。
1. 製造業者・メーカー:自前主義からの脱却と「往復ラウンド型」共同物流への転換
食品メーカーにとって、長距離幹線輸送の運賃高騰や車両手配難は、直接的な収益圧迫要因となっています。これまで多くのメーカーは自社専用の物流網や特約運送会社に依存して製品を配送していましたが、積載率の低下や復路の空車回送がコストを押し上げる主因となっていました。
エスビー食品とオタフクソースが手を結び、関東発・関西着の往路と、中国発・関東着の復路を1本のループとして統合した本スキームは、メーカー主導による「コ・オペティション(協調的競争)」の具現化です。競合や近接カテゴリーの垣根を越え、輸送インフラを共有することで、実車率を極限まで引き上げ、製品1個あたりの物流コストを抑制することが可能になります。
2026年4月に本格施行された改正物流効率化法に基づき、特定荷主には物流統括管理者(CLO)の選任や積載効率向上が義務付けられています。荷主自らが輸送ルートと複数モードを組み合わせる物流デザイン能力を持つことが、今後の事業継続性を左右します。
参考記事: 郵船ロジスティクスが6月10日開始の共同東西ラウンド輸送でモーダルシフトを加速
2. 運送事業者:超長距離運行から「ハブ&スポーク型」の地域輸送へ特化
従来の運送事業者は、関東から中国・九州エリアまでの800〜1,000kmを超える区間を1台のトラックと1人のドライバーで何日もかけて走破するビジネスモデルを続けてきました。しかし、拘束時間規制の厳格化により、ワンマンドライバーによる超長距離ピストン運行は労務管理上、極めて困難になっています。
自動運転トラックと貨物鉄道が長距離幹線部分を代替することで、運送事業者は過酷な深夜長距離運行からドライバーを解放できます。事業者は、貨物駅や高速道路IC近郊の物流拠点(エバラ物流の物流センターなど)から各配送先までの「集荷・ラストワンマイル輸送」に特化することが可能になります。
拘束時間が短縮され、日帰り勤務が主体となることで、労働環境の劇的なホワイト化が進み、深刻化する若手や女性ドライバーの採用難を打開する契機となります。
参考記事: コーナン商事が約520kmの自動運転定期輸送を開始|荷主の輸送力確保に直結
3. 物流構造の変革:単一手段依存から「マルチモーダル・シェアリング」へ
本実証は、日本の物流が「特定の運送会社やトラック単体に依存する構造」から、「利用可能な輸送インフラを柔軟に組み合わせるマルチモーダル構造」へと転換していることを示しています。
トラック、鉄道、自動運転という異なる特性を持つ輸送アセットを、複数企業が共同でシェアリングする仕組みが整うことで、災害時の代替ルート確保(物流BCP)や脱炭素化(CO2削減)が同時に達成されます。「自社で運ぶ」から「共用インフラに相乗りする」へのパラダイムシフトが本格化しています。
参考記事: モーダルシフトとは?鉄道・船舶への転換メリットと実務での導入ステップを徹底解説
LogiShiftの視点:共用コンテナ標準化と2027年レベル4実装への道筋
エスビー食品、オタフクソース、エバラ物流、T2の連携は、将来の完全自動運転時代を見据えた極めて合理的なアライアンスです。本実証が持つ固有の意義について、独自の視点から考察します。
「U51D」31フィート共用コンテナが切り拓く物理的インターフェースの統一
本プロジェクトを成立させている基盤は、T2とJR貨物が共同開発した31フィート共用コンテナ「U51D」の存在です。
大型トラックの荷台と同等の容積を持つ31フィートコンテナを共通規格として用いることで、鉄道貨車と自動運転トラックのシャーシ間をクレーンやトップリフターで直接載せ替えることが可能になります。荷物をパレットごと積み替える作業が不要となり、輸送モード間の接続点(ノード)における荷役時間を大幅に短縮できます。
ハードウェアとしてのコンテナ規格が統一されて初めて、異なる輸送モードが「相互接続可能なモジュール」として機能します。
食品物流特有の課題と「荷役分離」の高度化
食品・調味料は、重量がかさむ製品(ソース類などの液体)や、パレットへの積載効率が問われる製品(香辛料・チューブ製品など)が混在します。これらを自動運転や鉄道に載せる際、拠点での荷役作業に時間がかかると、高価な自動運転トラックの稼働率が低下してしまいます。
エバラ物流の東西拠点が中継ハブとして機能し、トラックの運行(動脈)と倉庫内での荷役(作業)を完全に切り離す「荷役分離」を徹底することが、運行ダイヤの安定性と費用対効果(ROI)を高める絶対条件となります。
2027年度レベル4商用化への布石
参画4社が明言している通り、今回のレベル2実証の先には、2027年度以降に予定される高速道路上での「レベル4(完全無人運転)」商用運行への参画があります。
レベル4の商用運行が始まれば、深夜の高速道路区間を完全無人で走行できるようになり、幹線輸送コストの劇的な低減と24時間連続稼働が現実のものとなります。商用化された段階でスムーズに枠組みへ移行できるよう、現段階から実商流でのオペレーション課題や荷崩れリスクを洗い出しておく先行者利益は極めて大きいと言えます。
参考記事: 株式会社T2が国交省事業に採択、2026年1月からの共同実証で幹線無人化が加速
まとめ:持続可能な幹線輸送に向けて明日から取り組むべき3つのアクション
エスビー食品ら4社による自動運転トラックと貨物鉄道の往復共同輸送実証は、幹線物流の未来像を明確に提示しています。激変する物流環境において、荷主企業および物流事業者のリーダーが明日から取り組むべきアクションは以下の3点です。
- 自社の長距離輸送における「片道運行」と「空車リスク」の棚卸しを実施する
現在運行している500km以上の幹線ルートについて、復路の実車率や積載効率をデータ化し、往復ラウンド化や他社との共同輸送に転換可能な区間を早期に洗い出してください。
- 31フィートコンテナや標準パレット(T11型)への対応を加速させる
鉄道や自動運転トラックとのシームレスな接続を実現するため、バラ積みからパレット輸送・共通コンテナ規格へ移行し、拠点でトラックを待たせない「荷役分離」の現場体制を構築してください。
- オープンな共同輸送プラットフォームや異業種連携の協議を開始する
1社単独で物流網を抱え込むのではなく、地域の荷主や同業他社と貨物を集約・混載できるアライアンスへの参画を検討し、将来の自動運転インフラ活用に向けた準備を整えてください。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: PR TIMES



