株式会社アンドエスティHDの物流子会社である株式会社アンドエスティ・ロジスティクスは、兵庫県神戸市の「西宮北物流センター」に次世代型自動倉庫システム「AirRob PickingWall」と搬送ロボット「t-Sort OPS」を導入し、2026年7月より本格稼働を開始した。高密度保管とGTP・BTPによる定点作業化を同時に実装した本取り組みは、深刻化する人手不足と需要変動に対応する次世代型アパレル物流の先進モデルとして大きな注目を集めている。
ニュースの背景・詳細
拠点概要と自動化プロジェクトの全貌
アンドエスティHDグループは、55を超えるアパレル・ライフスタイルブランドを展開するマルチブランド戦略を推進している。同グループの物流を一本化して担う株式会社アンドエスティ・ロジスティクスは、全国7拠点(関東・近畿・群馬等)で「マルチロジスティクス戦略」を展開しており、大型ブランドについては東西2拠点から、中小規模ブランドについては関東のメイン拠点から発送する体制をとっている。
今回自動化が実施された「西宮北物流センター」は、同グループの主力ブランドである「GLOBAL WORK(グローバルワーク)」をはじめとする大型ブランドの西日本店舗網を網羅する重要拠点である。同社は2025年6月に関東のメイン拠点である「常総物流センター」(茨城県常総市)のオートメーション化を完了させており、今回の西宮北物流センターへの設備導入によって、東西双方における高度な自動化ネットワークを確立した。
本プロジェクトでは、プラスオートメーション株式会社が提供するRaaS(Robotics as a Service)を活用し、次世代型自動倉庫システム「AirRob PickingWall(エアロボピッキングウォール)」と、搬送・仕分けロボットソリューション「t-Sort OPS(ティーソートオーピーエス)」を複合的に導入した。また、システムインテグレーターとして株式会社T5が参画し、機器の調達から現場施工、PLC制御によるシステム連携までを一気通貫で手掛けた。
GTP・BTPの実装による作業プロセスの変革
従来の倉庫オペレーションでは、作業員が広大な庫内を歩き回り、保管棚から商品をピッキングする「Person-to-Goods(人が商品を探しに行く方式)」が一般的であった。
今回の自動化では、商品が作業者の元へ届く「GTP(Goods to Person)」と、出荷用の箱が作業者の元へ届く「BTP(Box to Person)」を同時に実装した。作業員は設置された所定のステーションから動くことなく、ピッキングと仕分けを同時に完了できる「定点作業」へと完全に移行した。
このシステム刷新により、以下の劇的な成果が達成されている。
- 在庫保管量:従来比 155%(高密度保管の実現)
- 出荷作業生産性:従来比 196%(作業効率が約2倍に拡大)
システム構成と導入プロジェクトのタイムライン
本プロジェクトにおける技術スペックおよびタイムラインの詳細は以下の通りである。
| 項目 | 詳細・スペック |
|---|---|
| 稼働拠点 | 株式会社アンドエスティ・ロジスティクス 西宮北物流センター |
| 所在地・面積 | 兵庫県神戸市北区有野町有野字岡場1897番地7 CPD西宮北EAST 2階(約5,850坪) |
| 導入設備 | AirRob PickingWall(最大5.5m高層ラック、24ステーション)、t-Sort OPS |
| システム制御 | プラスオートメーション開発 WES/WCS統合作業プラットフォーム「+Hub」 |
| パートナー企業 | プラスオートメーション(RaaS提供・設計・保守)、株式会社T5(SIer・施工・制御) |
| 技術的特徴 | 固定式コンベアの排除、2段架台構造(出荷保留品の自動滞留機能)、FloorBot連携 |
| 定量改善成果 | 在庫保管効率155%、出荷作業生産性196%(いずれも従来比) |
| 実施時期 | プロジェクトの進捗・経緯 |
|---|---|
| 2025年6月 | 関東のメイン拠点「常総物流センター」(茨城県常総市)のオートメーション化完了 |
| 2025年7月 | 西宮北拠点が入居する大型物流施設「CPD西宮北EAST」が竣工 |
| 2026年7月 | 西宮北物流センターにて複合ロボティクスソリューションが本格稼働を開始 |
| 2026年8月3日 | アンドエスティHDグループおよびパートナー各社より大規模導入を公式発表 |
インフラ環境とサプライチェーン最適化の狙い
西宮北物流センターが入居する「CPD西宮北EAST」は、地上6階建ての免震構造を有し、CASBEE「Aランク」やBELS「5スター」、ZEB Ready評価を取得した最新鋭の省エネ型物流施設である。梁下有効高さ5.5m、床荷重1.5t/㎡という基本性能を備えており、高層ラックを活用した「AirRob PickingWall」の性能を最大限に引き出す設計となっている。
立地面においても、中国自動車道「西宮北IC」や阪神高速「西宮山口南IC」から約2kmの位置にあり、神戸電鉄「岡場駅」からも徒歩圏内と、雇用確保と輸配送の利便性を兼ね備える。この好立地を活かしたサプライチェーン戦略の狙いは以下の4点に集約される。
東西分割による災害リスク分散とBCP強化
東日本の「常総物流センター」と西日本の「西宮北物流センター」の2拠点に大型ブランドの出荷機能を分散させることで、大規模災害発生時のリスクを軽減し、継続的な供給体制を維持する。
国外からの輸入ルート最適化によるCO2削減
海外の生産拠点から入荷する製品を神戸港などの西日本エリアの港湾へ直接引き込むルートを確立。従来発生していた国内での長距離陸上輸送を大幅に縮小し、輸送コストの抑制とCO2排出量削減を実現する。
西日本全域への配送リードタイム短縮
中部・近畿・中国・四国・九州エリアの店舗に対する物理的距離を大幅に縮めることで、発注から店頭納品までのタイムラグを極小化し、欠品による販売機会損失を防ぐ。
主力ブランドの拡大に対応する出荷スループットの確保
グループの成長を牽引する「GLOBAL WORK」などの店舗拡大計画に対応するため、将来的な出荷波動や物量増加を吸収できる高度な自動化処理能力をあらかじめ構築する。
参考記事: アパレル物流とは?実務担当者が知るべき基礎知識から自動化・3PL活用まで徹底解説
業界への具体的な影響
倉庫内作業員:歩行ストレスからの解放と定点高度オペレーターへの進化
アパレル物流の現場では、1人の作業員が1日に10km以上歩き回ってピッキングを行うことが珍しくなく、身体的負荷の高さが離職や人手不足の大きな要因となっていた。
今回の「GTP+BTP」による定点作業化は、作業員の労働環境を劇的に改善する。作業員は冷暖房が効いた快適なステーションに常駐し、画面指示に従って商品と箱を照合・投入するだけで作業が完了する。歩行作業がゼロになることで身体的疲労が著しく軽減されるとともに、経験の浅いスタッフやシニア、パート社員であっても初日から高い精度とスピードで業務を行うことが可能となる。
現場の作業員は「広大な倉庫内を歩き回る労働者」から、「自動化設備と連携して高いスループットを維持する高度な定点オペレーター」へと役割がシフトする。
小売業者(物流担当者):需要波動に対する高い弾力性とオムニチャネル対応力の向上
アパレル業界は季節変動やセール・イベントによる出荷波動が極めて大きく、繁忙期における人員確保と作業ラインのパンクが長年の課題であった。
常総と西宮北の東西2拠点体制に次世代自動倉庫が組み合わさったことで、急激な注文増加が発生した場合でも、ロボットの稼働時間を延長するのみで柔軟に出荷スループットを引き上げることが可能になる。また、店舗向け配送(BtoB)とEC向け配送(BtoB/BtoC)の双方において高度な在庫管理と迅速な出荷が実現されるため、オムニチャネル戦略における在庫の一元化と欠品回避に大きく寄与する。
倉庫事業者・3PL:固定設備リスクの排除とレイアウト柔軟性の獲得
本プロジェクトで特筆すべきは、倉庫内で一般的に多用される「固定式の大型ベルトコンベア」を撤去し、ロボットによる自由軌道搬送へ切り替えた点である。
固定コンベアは一度設置するとレイアウトの変更が困難であり、将来的な取り扱い商材の変更や事業規模の変動に対応できないという「設備の陳腐化リスク」を抱えていた。搬送ロボット「t-Sort OPS」を用いたシステム設計であれば、将来的な出荷量の増加に応じてロボット台数を増設することや、作業ステーションの配置を変更することが容易に行える。
さらに、RaaS(サブスクリプション型ロボティクスサービス)を活用することで、多大な初期固定投資を抑えつつ最新設備を導入できるため、資産の流動性を保ちたい倉庫事業者や3PL事業者にとっても極めて再現性の高いモデルケースとなる。
参考記事: 【図解】なぜ物流リーダーはGTPに注目?5つのメリットと導入手順を徹底解説
参考記事: ピッキングロボットの選び方|AMR・GTP・アーム型の違いと失敗しない導入5ステップ
LogiShiftの視点(独自考察)
「固定設備依存」からの脱却と2段架台構造がもたらすボトルネック解消
アパレル物流における自動化の歴史を振り返ると、自動倉庫や高価格なソーターを一度導入したものの、季節ごとの商品形状の変化や出荷波動に対応しきれず、設備の移設や改修に莫大な追加費用を要した事例が散見される。
今回のアンドエスティ・ロジスティクスの事例が優れている点は、高さ空間を最大限に生かす固定型の高密度保管機能(AirRob PickingWall)と、床面の柔軟な搬送・仕分け機能(t-Sort OPS)を明確に役割分担させ、それらを制御プラットフォーム「+Hub」で最適に統合した点にある。
特に注目すべきは、ステーション周辺に配置された独自開発の「2段架台構造」である。GTP/BTP運用においてしばしば発生する問題が、注文内容の変更や欠品確認、システムエラーなどによる「出荷保留品の滞留」である。保留品が作業ライン上に残ると、後続のロボットや作業員の手が止まり、システム全体の処理能力が低下する。
本システムでは、一時的に処理できない保留アイテムを2段架台の別ラインへ待避・滞留させる仕組みを組み込むことで、主ラインのロボットと作業員の立ち止まりを防止している。こうした現場の細かな例外処理までを考慮したシステム設計こそが、単なる理論値ではない「出荷生産性196%向上」という実効性を担保している要因である。
RaaSとSIerの共創が生み出す「アジリティ(敏捷性)の高いサプライチェーン」
従来の物流自動化は、単一の総合マテハンメーカーに一括発注する形態が主流であった。しかし、本事例ではRaaSを提供するプラスオートメーションと、インテグレーターであるT5が手を取り合い、海外製先進ロボットと国産の周辺機器(自動製函機・封函機・架台等)を組み合わせた高度なシステムを作り上げている。
ファッションEC市場において、ブランドの改廃や消費トレンドの移り変わりは非常に早い。物流インフラ側にも、事業戦略の変化に合わせて数カ月単位で構成を変更できる「アジリティ(敏捷性)」が求められている。
ZOZOが「ZOZOBASE習志野3」などで進める大規模なロボティクス活用や拠点再編の動きに見られるように、アパレル物流の勝敗は「いかに人手不足を克服しつつ、変動する物量に対して固定費を肥大化させずに対応できるか」にかかっている。高度なソフトウェア制御と柔軟なハードウェア構成を組み合わせたアンドエスティ・ロジスティクスのアプローチは、2026年以降の日本における都市近郊型物流センターの標準解となる可能性を示している。
参考記事: 約50%の省人化を実現!ZOZOに学ぶ物流倉庫の自動化導入3ステップ
まとめ
アンドエスティ・ロジスティクスによる西宮北物流センターの大規模自動化は、単なる庫内作業の省人化にとどまらず、持続可能な店舗網拡大とサプライチェーンの強靭化を同時に達成する戦略的取り組みである。人手不足や配送コスト高騰に直面するすべての物流担当者が、明日から意識すべき具体的なアクションを整理する。
明日から意識すべき3つのアクション
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自社倉庫におけるピッキング作業の「歩行比率」を算出し、定点作業化(GTP)の投資対効果を評価する
WMS(倉庫管理システム)のデータや現場観測から、作業員が「移動(歩行)」に費やしている時間の割合を可視化し、定点作業化によって削減できる人件費・採用コストのシミュレーションを行う。 -
固定式コンベア偏重の設備計画を見直し、ロボット搬送(AGV/AMR/RaaS)の導入可能性を検証する
今後の商材変化や物量波動に追従できるよう、床固定型設備の導入を最小限に抑え、レイアウト変更が容易な搬送ロボットやサブスク型サービス(RaaS)の活用を選択肢に加える。 -
拠点配置と港湾アクセスの再点検を行い、内陸輸送の削減とBCP対応を推進する
輸入拠点から倉庫までの引き込みルート、および倉庫から各店舗・顧客までの配送ルートを再点検し、CO2排出量と輸配送コストを削減する東西拠点配置や港湾近接拠点の活用を検討する。
参考記事: 物流ロボティクスとは?2024年・2026年問題に立ち向かう省人化・自動化の基礎知識と導入ステップ
出典: PR TIMES
出典: 神戶経済新聞(keizai.biz)
出典: LNEWS


