エバラ食品工業グループのエバラ物流は、津山物流センターにおいてハクオウロボティクスの自動フォークリフト「AutoFork」を導入し、隣接工場のロボットパレタイザーとのPLC連携による無人搬送を開始しました。生産ラインと物流設備をリアルタイムデータで同期させることで、深夜帯の作業負担を解消し、「止めない物流」の確立に向けた高度なDXモデルを示しています。
津山物流センターにおける「AutoFork」導入の全貌とPLC連携の仕組み
エバラ食品工業グループで物流機能を担う株式会社エバラ物流は、岡山県津山市に位置する「津山物流センター」において、株式会社ハクオウロボティクスが開発した自動フォークリフト「AutoFork(オートフォーク)」を導入し、本格稼働を開始しました。
本プロジェクトの核心は、単に自動走行車両を走らせるのではなく、隣接するエバラ食品工業株式会社津山工場の製造ライン末端に設置された「ロボットパレタイザー」と直接通信を行う点にあります。製造現場と物流現場の結節点をリアルタイムのデータ通信で統合したプロセスが構築されました。
深夜稼働に伴う現場の課題と自動化の狙い
エバラ食品工業の津山工場では、「焼肉のたれ」をはじめとする各種調味料などの生産を行っており、生産効率向上のためロボットパレタイザーが深夜帯も含めて連続稼働しています。
従来の運用において、ロボットパレタイザー周辺では以下の課題が存在していました。
- 完成品パレットの搬出・格納対応: パレタイザーからコンベヤー経由で搬出される完成品パレットを、速やかに指定の仮置き場へ移送する必要があった。
- 空パレットのタイムリーな補充: パレタイザーの稼働を止めないよう、空パレットの残量を監視し、不足する前に投入口へ補充し続ける必要があった。
- 夜間帯における作業者の身体的・心理的負担: パレタイザーの稼働ペースに合わせて作業員が常時張り付く必要があり、特に深夜時間帯における拘束と作業負担の軽減、安定した要員確保が大きな課題となっていた。
これらの課題を解決するため、1日当たり約50パレットの搬送工程を無人化し、人が常時張り付かない運用体制への移行が目指されました。
参考記事: パレタイズロボット完全ガイド|導入メリット・種類・失敗しない選び方を徹底解説
プロジェクト関係企業と対象拠点の関係性
本プロジェクトに関わる各組織の役割と関係性は以下の通りです。
| 区分 | 企業・拠点名 | 役割・関係性 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| 機器開発・提供 | 株式会社ハクオウロボティクス(東京都荒川区) | 自動フォークリフト「AutoFork」の開発およびシステム制御の提供 | 代表取締役:鈴木智広 |
| 導入主体・運営 | 株式会社エバラ物流 津山物流センター(岡山県津山市) | エバラ食品工業の物流子会社。製品の保管・搬送業務を担当 | 導入拠点:津山物流センター |
| 製造ライン連携 | エバラ食品工業株式会社 津山工場(岡山県津山市) | 津山物流センターに隣接する生産拠点。調味料等を製造 | ロボットパレタイザーを夜間も稼働 |
PLC通信を軸としたシステム構成とリアルタイム制御フロー
今回の導入で特筆すべきは、ロボットパレタイザーの制御盤とAutoForkをPLC(プログラマブルロジックコントローラ)経由で接続し、双方向の信号通信を確立した点です。
従来のAGF(自動フォークリフト)導入では、WMS(倉庫管理システム)やWCS(倉庫制御システム)といった上位システムを介して間接的に指示を出す構成が一般的でした。しかし本施策では、生産設備(パレタイザー)と物流機器(AutoFork)がPLCを介して直接データ通信を行うことで、タイムリーな連動を実現しています。
【製造エリア(津山工場)】 【物流エリア(津山物流センター)】
[ロボットパレタイザー] ───(PLC通信:品種データ/搬出要求)───> [AutoFork]
│ │
├─ 完成品排出 ───> コンベヤー受け取り ──────────────┼─> 仮置き場へ自動格納
│ │ (積載パターン自動制御)
└─ (センサー残量検知) 空パレットを投入口へ補充
具体的な処理プロセスは、以下のステップで自動実行されます。
1. 完成品パレットの自動搬出と積載パターンの最適化
パレタイザー側でパレットへの積載が完了すると、制御盤からPLC経由で「搬出要求信号」と併せて「品種データ」がAutoForkへ直接送信されます。
信号を受信したAutoForkはコンベヤーへ進入し、完成品パレットを受け取ります。この際、受信した品種データ(荷物の高さや重量情報)に基づき、あらかじめ設定された「1段積み」または「2段積み」の積載パターンを自律的に切り替えて仮置き場まで搬送・格納します。
2. センサー連動による空パレットの自動補充
パレタイザーの空パレット投入口には残量検知用センサーが配置されています。センサーが「空パレットの残量が規定値を下回った」ことを検知すると、PLCを通じてAutoForkへ「補充要求信号」が即座に送られます。
AutoForkは空パレット保管エリアから指定枚数のパレットを取得し、投入口へ自動で補充します。これにより、パレタイザーが資材切れで停止するリスクを回避できます。
自動フォークリフト「AutoFork」の技術的アドバンテージ
ハクオウロボティクスが提供する「AutoFork」は、従来の産業用ロボット導入で問題となりがちだった工事期間の長さや設置コストを解消する特長を備えています。
- 大規模改修工事が不要な自己位置認識技術: 床面への磁気テープ埋め込みや誘導線の敷設が不要であり、建屋の柱や壁に設置した「反射ポール」等を認識して自己位置を同定するため、既存レイアウトを変更せずに導入が可能です。
- 爪先センサーによる直感的な機器間調整: 機体のフォーク先端(爪先)にセンサーを搭載しており、コンベヤー上の荷物の位置や在荷状況を直接検知できます。
- 運用しやすい設計: 免許不要区分(1トン未満等の小型車体モデルなど)のベース車両を活用した柔軟な機体ラインナップがあり、狭小な作業エリアでも安全に稼働させることができます。
参考記事: 日本トランスシティが発注1か月でAutoFork導入、垂直搬送の効率化に直結
製造・物流のデータ結合がもたらす産業界へのインパクト
エバラ物流とハクオウロボティクスの取り組みは、単なる1拠点における省人化にとどまらず、製造業と物流業の境界線を越えた「データ統合」のモデルケースとして大きな意味を持っています。
製造業者・メーカー:工場ラインと物流の「情報の断絶」を解消
製造工場において、生産ラインの最後端にあるパレタイズ工程と、そこから先を出荷・保管エリアへ運ぶ物流工程の間には、従来「システムの壁」が存在していました。
生産計画はERPやMES(製造実行システム)で管理される一方で、倉庫内の動きはWMSや人の判断に依存しており、パレットがコンベヤーから排出された後の搬送指示には時間差や手動オペレーションが挟まれがちでした。
生産設備の制御信号(PLC)と物流機器(AutoFork)を直接同期させる仕組みは、この「情報の断絶」を排します。品種データに応じた積載パターンの自動選択までシステム化されたことで、工場から倉庫への製品移動がシームレスな連続プロセスに昇華されています。
参考記事: マテハンとは?物流の基本4動作から自動化の最新トレンドまで徹底解説
倉庫事業者・3PL:深夜・夜間オペレーションの省人化と投資回収
倉庫・物流業界において、深夜時間帯の要員確保は年々難易度を増しており、採用コストの上昇や割増賃金による人件費高騰が経営を圧迫しています。
津山物流センターのように「1日約50パレット」という特定工程の業務を全自動化することで、以下の経営的メリットがもたらされます。
- 深夜帯の専任作業者の配置解消: 夜間にパレタイザーに張り付く人員を削減、または別エリアの作業に再配置可能。
- 過剰な大掛かり投資の回避: 倉庫全体のフルオートメーション(数億円規模の投資)を行うのではなく、ボトルネックとなっている「搬出・補充」という特定工程に絞って自動フォークを導入することで、早期の投資回収(ROI)を実現。
- 稼働の安定化: 人手不足によるライン停止リスクを低減し、安定した運用体制を整備。
現場作業員:人車分離の推進と夜間作業からの解放
現場で働く作業者にとっても、物理的・心理的な環境改善効果は明確です。
- 身体的・心理的負担の軽減: 常にパレタイザーの進捗やコンベヤーの詰まりを気にする「監視・待機」から解放される。
- 安全性の飛躍的向上: 有人フォークリフトと人の作業動線を明確に分離(人車分離)しやすくなり、特に視界が狭くなりがちな夜間作業における接触事故リスクが大幅に低減する。
- 高付加価値業務へのシフト: 単純な往復搬送業務から解放されたスタッフは、検品やイレギュラー対応、全体の工程管理といった人間ならではの判断が求められる業務へ集中できる。
参考記事: 物流ロボティクスとは?2024年・2026年問題に立ち向かう省人化・自動化の基礎知識と導入ステップ
LogiShiftの視点(独自考察)
物流専門メディア「LogiShift」の視点から本ニュースを解読すると、自動化テクノロジーの活用フェーズが「単体機器の導入」から「設備間のシームレスな制御連携」へと完全に移行したことが分かります。
「点の自動化」から「生産と物流が同期する面としての自律稼働」へ
従来の物流自動化は、特定エリアにAGV(無人搬送車)を走らせる、あるいは自動倉庫を建てるという「点の自動化」が主流でした。しかし、どれほど高性能なロボットを投入しても、前後工程とのデータ連携が不十分であれば、コンベヤーの前でロボットが待機したり、人が手動で指示を入力し直したりする「システム間の間隙」が発生していました。
本件において重要なポイントは、パレタイザーの品種データをリアルタイムで受け取り、AutoFork側で「2段積みか、1段積みか」という積載判断まで自動で切り替えている点です。
これは、自動搬送機が単なる「荷物の移動手段」を超えて、生産工程の文脈(コンテキスト)を理解して動く「スマートロジスティクスの端末」として機能し始めたことを示しています。生産システムと物流システムを「データで繋ぐ」設計思想こそが、真の省人化を可能にする鍵となります。
段階的拡張(スモールスタート)によるDXの確実な推進
自動化プロジェクトにおいて失敗しやすいパターンは、最初から工場・倉庫全体の完全無人化を目指し、巨額のシステム構築費用と膨大な準備期間をかけた末に、仕様変更に対応できなくなるケースです。
これに対し、エバラ物流とハクオウロボティクスの手法は非常に堅実です。「日50パレット」という明確な対象範囲を定め、パレタイザー周辺の搬出・空パレット補充という最も省人化効果の高い工程に狙いを定めて導入を開始しました。
- Phase 1: ボトルネック工程(パレタイザー周辺)のPLC連携による無人化(今回の施策)
- Phase 2: 実際の稼働データに基づく運用プロセスの研磨・最適化
- Phase 3: 津山物流センターでの成功ノウハウを蓄積した上での他拠点への横展開
このように「スモールスタート&クイックウィン(初期の成功体験)」を確実に積み重ねるアプローチは、変化の激しい現代のサプライチェーンにおいて最も低リスクかつ効果的なDX推進モデルと言えます。
まとめ|生産設備連携から着手する物流DXの推進方針
エバラ物流による津山物流センターでの取り組みは、人手不足と夜間作業の負担増に直面する全ての製造・物流事業者に対し、実践的な選択肢を提示しています。
経営層や現場のリーダーが、自社の現場改革に向けて取り組むべきアプローチは以下の通りです。
- 工場と倉庫の「境目」に存在する手作業・待機時間を洗い出す
生産ラインの出口や垂直搬送機の投入口など、設備と搬送のつなぎ目で人が常時張り付いている工程を可視化・数値化します。 - 上位システムの改修を抑えた「設備間(PLC等)直接連携」を検討する
基幹システムやWMSの大規模な改修を待たず、マテハンやロボットの制御盤同士を直接接続して同期させる、柔軟で迅速なシステム構成を模索します。 - 限定的な単一工程から自動化を始め、稼働実績をもとに横展開する
最初から全体の自動化を目指すのではなく、日夜の搬送量が定常的な特定ライン(日50パレット規模)から着手し、実績を作った上で他ラインや他拠点へ適用範囲を拡大します。
製造現場の生産データと物流現場の搬送ロボットをリアルタイムで結びつける発想は、今後のスマートロジスティクスにおける重要な標準となっていくでしょう。
出典: LOGI-BIZ online
出典: PR TIMES
出典: LOGISTICS TODAY
出典: LNEWS


