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Home > 輸配送・TMS> 全ト協の調査で大型賃金39.5万円に|固定給シフトで変わる運送業界
輸配送・TMS 2026年8月6日

全ト協の調査で大型賃金39.5万円に|固定給シフトで変わる運送業界

全ト協の調査で大型賃金39.5万円に|固定給シフトで変わる運送業界

全日本トラック協会が発表した2026年版の賃金実態調査によると、2025年5月〜7月における男性大型トラック運転者の平均賃金が前年比4%増の39.5万円に達した。歩合給依存からの脱却と固定給重視へのシフトが鮮明となっており、荷主への価格転嫁を通じた人材確保と持続可能な物流網の構築に向けた構造転換が本格化している。

全ト協調査で判明したトラック運送業の賃金構造改革

全日本トラック協会(全ト協)が公表した「2025年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」(2026年発表)のデータをもとに、最新の運送業界における賃金動向を整理する。

本調査は、全国の貨物運送事業者4,624社を対象に実施され(有効回答数589社)、2025年(令和7年)5月〜7月に支給された1人1カ月平均給料の実態を捕捉したものである。

職種別平均賃金と前年比の変動

男性トラック運転者の職種別平均賃金(月額)では、大型およびけん引職種を中心に大きな伸びが見られた。

職種 平均賃金(月額) 対前年変動・特徴
けん引 42.4万円 前年比4%台増(1万円以上の伸び)
大型 39.5万円 前年比4%増(1万円超の増)、固定給化が進展
普通 34.7万円 前年比で1万円未満の緩やかな伸び

全職種の平均賃金(月額)は35万9,800円(前年比5.3%増)となり、賞与の1/12換算分を含めた平均月額は41万6,400円(前年比7.1%増)に達している。長年低迷してきたトラック運送業の賃金水準が、明確な上昇トレンドを描いていることが数字からも裏付けられた。

大型運転者における「固定給化」の深層

本調査において最も注目すべきファクトは、賃上げの内訳にある。男性大型運転者の平均月収39.5万円の内訳を見ると、固定給が21.3万円、変動給(歩合給等)が18.2万円となった。

賃金の内訳項目 令和7年5〜7月平均額 前年からの変化額 業界構造上の意味合い
固定給(基本給等) 21.3万円 前年比1.2万円増 ドライバーの生活基盤を安定させる基本給シフト
変動給(歩合・運行手当等) 18.2万円 横ばい〜微増 長時間走行依存からの脱却を示唆

大型運転者の賃上げ分(前年比1万円超の増)のほぼ全額が「固定給の増額(+1.2万円)」によってもたらされている。日本のトラック運送業界は、走行距離や回数に応じて支給される歩合給の比率が高く、これがドライバーの「残業代稼ぎによる長時間労働」や「荷量が減った時期の収入不安定」を誘発する負の構造要因となっていた。

しかし、2024年4月に施行された働き方改革関連法による時間外労働上限規制(年960時間)の導入により、時間外走行による歩合給の獲得が物理的に制限された。これにより「稼げる仕組み」として固定給のベースアップ(ベア)を行わなければ、他産業との人材獲得競争に敗れるという危機感が運送各社に拡大した。

さらに、2025年4月施行の改正物流効率化法や改正貨物自動車運送事業法、2026年1月施行の取適法(取引適正化)に基づき、荷主企業への価格転嫁や「標準的な運賃」の適用が進んだことが、固定給引き上げの原資として寄与している。

参考記事: トラックドライバー給料推移グラフ|賃金14年で18%上昇と2026年問題の実態

参考記事: 標準的な運賃とは?2024年4月改定の5大ポイントと実務対応を徹底解説

賃金の固定給化がサプライチェーン各プレイヤーに与える影響

固定給を中心とした賃上げへのシフトは、運送事業者にとどまらず、荷主企業やドライバー自身、さらには物流市場全体の構造に大きな変化をもたらす。

1. 運送事業者:定着率向上と固定費リスクの二面性

運送会社にとって、基本給・固定給の引き上げはドライバーの採用力強化と離職防止(定着率向上)に直ちに寄与する。特に若年層や他産業からの転職者にとって、「毎月の給与が安定していること」は就業選択の大きな判断基準となるため、募集力の強化につながる。

一方で、賃金体系の固定給化は、事業上の固定費比率を大幅に高めることを意味する。かつての歩合給主体の体系では、荷量が落ち込んだ閑散期において人件費が自動的に抑制される「安全弁」が機能していた。しかし、固定給比率が高まると、荷量が減少しても人件費を削ることができず、自社の収益をダイレクトに圧迫するリスクを抱えることになる。

このため、運送事業者はこれまで以上に「車両とドライバーの稼働率を限界まで高める配車計画」や「不採算案件からの撤退」、そして「荷主に対する適正な運賃転嫁・価格改定」を継続的に実施する経営体質への移行が必須となる。

2. 製造業者・流通業者(荷主):「安価な物流」からの脱却とBCP対策

製造業や流通業などの荷主企業は、「物流は安価で当たり前のように提供されるインフラ」という従来の固定観念を完全に捨てる必要がある。

ドライバーの固定給引き上げや安定した賃金保障は、荷主側が支払う運賃に転嫁されなければ継続できない。適正な運賃負担を拒絶し続ければ、委託先の運送会社が人手不足で廃業するか、より高い運賃・条件を提示する他社へとトラックを振り向ける(荷主選別)事態が頻発する。

荷主企業にとって、物流費の上昇を単なるコスト増として嫌うのではなく、自社商品のサプライチェーンを維持するための必須投資(BCP対策)として捉え直し、年間経営計画にあらかじめ織り込む対応が求められている。

3. ドライバー:生活安定と引き換えに求められる高い「時間内生産性」

ドライバーにとっては、固定給の増加により月々の手取り額の変動幅が縮小し、生活の安定性が格段に高まるという大きな恩恵がある。事故のリスクをおかしてまで過度な長時間走行で歩合を稼ぐ必要性が薄れるため、労働環境の改善が実感されやすくなる。

しかしその反面、固定給化は「時間あたり・運行あたりの高い生産性」を強く要求されることを意味する。決められた法的拘束時間の中で、安全運転と高い配送品質を両立させ、確実な作業を遂行するプロフェッショナルとしての自覚がより厳しく評価される時代へと移行している。

参考記事: CUBE-LINX調査、中小運送会社の42.2%が収益悪化|正直者が報われない2024年問題の必須対応

LogiShiftの視点:歩合依存脱却が迫る「稼働率改革」と「適正原価への備え」

全ト協の調査結果が示した「大型ドライバーの固定給21.3万円(前年比1.2万円増)」という事実は、運送業界が歴史的な価格転嫁フェーズに入ったことを象徴している。しかし、LogiShiftではこの変化を単なる「好材料」としてのみ捉えるべきではないと分析する。

固定給化がもたらす「稼働率低下=即赤字」の構造変化

歩合給から固定給へのシフトは、運送会社の「収支構造の損益分岐点」を根底から変える。固定費化した人件費を回収するためには、トラック1台・ドライバー1人あたりの生産性(稼働率と運行密度)を極限まで引き上げなければならない。

荷待ち時間や長時間の附帯作業(無償の手荷役等)によって稼働効率が落ちた場合、かつてはドライバーの歩合給減少という形で現場が負担を被っていた。しかし今後は、その非効率のツケがすべて運送会社の営業赤字として跳ね返ってくる。

そのため、運送会社は単に「賃金を上げた」ことで満足するのではなく、デジタコや輸配送管理システム(TMS)を駆使した「1便ごとの原価と利益の可視化」を行い、荷主企業とともに荷待ち時間の全廃や配送ルートの最適化を推し進める必要がある。

2028年施行の「適正原価制度」を見据えた人件費組み込みの戦略

さらに重要となるのが、国土交通省が進める2028年6月全面施行の「適正原価」制度との連動である。適正原価の算定式には、事業継続に必要な「適正な人件費」が固定費として組み込まれる。

今回進んでいる固定給の引き上げ実態は、国が告示する適正原価の基準値を底上げする強力なエビデンスとなる。運送事業者は、自社の賃金改定の実績を客観的なデータとして蓄積し、適正原価の算定や今後の運賃交渉において「法令順守と安定雇用のための人件費コスト」として堂々と提示すべきである。

固定給化と週休3日制などの柔軟な働き方の導入、そしてDXによる生産性向上を一体で進められる企業こそが、ドライバーからも荷主からも「選ばれる運送会社」として生き残ることになる。

参考記事: 2028年6月全面施行!国土交通省の適正原価制度で運送事業者の淘汰が加速

まとめ:明日から意識すべき3つの実務アクション

全ト協の賃金調査結果を踏まえ、運送事業者および荷主企業が明日から直ちに取り組むべき実務アクションを整理する。

  1. 賃金構造の見直しと固定給比率の適正化
    自社の給与規定を検証し、歩合給依存からの脱却を進めましょう。基本給・固定手当の引き上げを行うことで求人力を高めると同時に、固定費化した人件費に見合う稼働率・採算性を確保できるよう配車計画を見直すことが重要です。

  2. デジタコやTMSを活用した「便単位の原価可視化」の徹底
    固定給化に伴う収益圧迫を防ぐため、走行1時間・1キロあたりの原価を算出・可視化しましょう。どの運行が利益を生み、どこに荷待ちなどの非効率が潜んでいるかをデータで把握することが価格改定交渉の第一歩となります。

  3. 荷主と運送会社による「適正運賃と労働環境改善」の共同推進
    荷主企業は運送会社の固定給化と賃上げを自社のBCP課題と捉え、運賃改定に応じるとともに荷待ち時間の短縮に取り組みましょう。双方がデータを共有しながら対等なパートナーシップを構築することが、持続可能な物流の絶対条件です。


出典: 労働新聞社
出典: 全日本トラック協会

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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