- 概要:厚労省の2025年調査(2026年3月公表)によると、営業用大型トラック運転手の月額給与は38.69万円(2010年比+22.7%)ですが、15年間の年平均上昇率は+1.37%と緩慢で、平均年齢は51.5歳(同+6.0歳)まで上昇しています。
- 実務への影響:上限規制の定着で月間残業は33時間へ抑制された一方、若年層の流入不足と高年齢層への依存が続いており、荷主・運送会社は標準的な運賃に基づく附帯作業料の別建て収受や、走行距離・残業に頼らない基本給設計が急務です。
トラックドライバー給与・年齢推移グラフ|上がらない給与と止まらない高齢化
いま何が起きているのか:緩やかな賃上げと止まらない高齢化の現実
厚生労働省が公表した最新の「賃金構造基本統計調査」(2025年調査・2026年3月公表)によると、営業用大型貨物自動車運転者の「きまって支給する現金給与額」は月額38.69万円(前年比+2.52%)となりました。大型車を除く営業用貨物自動車運転者は月額34.17万円(前年比+3.42%)です。
2024年4月に適用された時間外労働の上限規制(年960時間)と改正改善基準告示から2年が経過し、2024年と2025年の2年分の調査実績が揃いました。現場では労働時間の短縮が進められているものの、長年続く構造的な課題の解消には至っていません。営業用大型貨物自動車運転者の平均年齢は51.5歳に達し、大型車を除く区分でも50.3歳と、いずれも50歳を超えています。
2010年時点における大型トラック運転手の月額給与は31.54万円でした。2025年時点の38.69万円までの15年間で累計+22.7%(月約7.15万円)上昇していますが、年平均の上昇率はわずか+1.37%にとどまります。この15年間で前年比の上昇率が+3%未満にとどまった年は13年に及び、2019年(-0.3%)や2020年(-1.4%)のように前年を下回った年もありました。
現場では人手不足が常態化しています。厚生労働省の一般職業紹介状況によると、2025年8月時点におけるトラックドライバーを含む「自動車運転の職業」の有効求人倍率は2.59倍で、全職業平均(1.20倍)の2.16倍と大幅な乖離が続いています。物流DXやバース予約システムの普及により、ドライバーの約51%が「荷待ち時間が短縮された」と回答する一方、約44%が収入について「変わらない」と回答しており、拘束時間の圧縮が手取り額の増加に直結しにくい状況が浮き彫りになっています。
さらに、軽油価格の推移を見ても、全日本トラック協会の調査による軽油ローリー渡し平均価格は2024年9月の114.17円/Lから2025年3月には123.72円/Lへと上昇し、高止まりが続いています。2026年4月に控える改正物流効率化法の本格施行を前に、「賃金水準の伸び悩み」と「高齢化の進行」という二重の制約が、物流現場とサプライチェーンの維持に重い影を落としています。
データが示す実態:労働時間抑制と高齢化が覆い隠す賃金の伸び悩み
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(企業規模計10人以上・男女計)から、2025年調査における主要指標を整理します。
表:トラックドライバー主要指標の確定数値一覧(2025年調査)
| 指標名 | カテゴリ | 2025年実績値 | 前年比(2024年比) |
|---|---|---|---|
| きまって支給する現金給与額 | 営業用大型貨物自動車運転者 | 38.69万円 | +2.52% |
| きまって支給する現金給与額 | 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) | 34.17万円 | +3.42% |
| 年間賞与その他特別給与額 | 営業用大型貨物自動車運転者 | 42.96万円 | +10.01% |
| 年間賞与その他特別給与額 | 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) | 38.51万円 | -5.12% |
| 所定内実労働時間数 | 営業用大型貨物自動車運転者 | 175.0時間 | +0.57% |
| 所定内実労働時間数 | 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) | 173.0時間 | +1.17% |
| 超過実労働時間数 | 営業用大型貨物自動車運転者 | 33.0時間 | 0.00% |
| 超過実労働時間数 | 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) | 26.0時間 | -16.13% |
| 平均年齢 | 営業用大型貨物自動車運転者 | 51.5歳 | +1.18%(+0.6歳) |
| 平均年齢 | 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) | 50.3歳 | +3.50%(+1.7歳) |
| 労働者数 | 営業用大型貨物自動車運転者 | 約47.16万人 | +9.41% |
| 労働者数 | 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) | 約45.16万人 | +0.52% |
※注:労働者数は2020年に調査設計が変更されたため、2019年以前の数値と2020年以降の数値を直接比較することはできません(賃金および労働時間の系列は連続しており比較可能です)。また、「営業用貨物自動車運転者(大型車を除く)」は標本の入れ替わりで数値が振れやすいため、単年の数値ではなく複数年の傾向として捉える必要があります。
緩慢な賃金上昇と勤続・高齢化への依存
大型トラック運転手の月額給与は、2023年37.12万円、2024年37.74万円、2025年38.69万円と推移しています。年間賞与その他特別給与額は、2023年39.84万円、2024年39.05万円、2025年42.96万円(前年比+10.01%)となりました。

しかし、この賃金推移を長期で見ると、伸びの鈍さが浮き彫りになります。2010年(31.54万円)から2025年(38.69万円)までの15年間で累計+22.7%の上昇にとどまり、年平均上昇率は+1.37%です。前年比上昇率の中央値は+1.5%であり、15年間のうち13年が+3%未満の上昇幅でした。

この小幅な給与上昇を支えている要因の一つが、ドライバー自身の高齢化です。大型トラック運転手の平均年齢は、2010年の45.5歳から2025年には51.5歳へと6.0歳上昇しました。直近3年間を見ても、2023年50.6歳、2024年50.9歳、2025年51.5歳と一貫して上がり続けています。大型車を除く区分でも、2010年の42.4歳から2025年には50.3歳へと上昇しました。
若年層の新規参入が進まないまま既存ドライバーが現場に残り、勤続年数を重ねていることが見かけの平均賃金を押し上げています。若手の基本給底上げや業界全体の抜本的な待遇改善が進んだ結果とは言えません。

上限規制後の労働時間推移と「大型車を除く」区分の変化
2024年4月の時間外労働上限規制の導入以降、労働時間の推移には変化が見られます。大型トラック運転手の超過実労働時間は、規制前の2023年に月35.0時間でしたが、2024年に33.0時間へ減少し、2025年も33.0時間(前年と同水準)となりました。一方で所定内実労働時間は175.0時間と高止まりしており、総実労働時間は月208.0時間と依然として長い水準が続いています。
一方、大型車を除く貨物自動車運転者では、2025年の超過実労働時間が26.0時間となり、前年比で-16.13%(前年31.0時間から5.0時間減)と減少しました。中小型トラックが担う地場配送で荷待ち時間の削減や配送効率化が進んだ一方、年間賞与その他特別給与額は前年比-5.12%(40.59万円から38.51万円)へ下落しており、時間外手当に依存していた給与体系がそのまま手取りの伸び悩みに直結しています。
現場への影響:荷主・運送会社・ドライバーはどう動くか
統計データに表れた緩慢な賃金上昇と労働時間の削減は、実務の各現場に具体的な課題を突きつけています。
荷主企業:運賃改定要請への対応と拘束時間削減の責務
荷主企業にとっては、運送会社からの運賃改定要請への対応が避けられない実務課題となっています。国土交通省が告示した標準的な運賃の改定では、平均約8%の引き上げとともに、待機時間料(30分あたり大型車1,890円など)や積込料・取卸料の「別建て・明確化」が打ち出されました。
CUBE-LINXの調査によると、荷主と運賃値上げ交渉を行った中小運送会社のうち「希望額まで値上げ達成」できた企業は10.9%にとどまり、37.0%は「希望額には及ばず値上げ」という結果でした。また、同調査では42.2%の中小運送会社が法規制対応後に「収益性が低下した」と回答しています。主な要因として燃料費高騰(75.0%)や人件費高騰(33.8%)が挙げられており、コスト増を運賃に転嫁しきれていない構図が続いています。
2026年4月施行の改正物流効率化法では、年間貨物取扱量が一定規模以上の特定荷主に対して物流統括管理者(CLO)の選任と中長期計画の策定が義務付けられます。荷待ち時間を原則2時間以内(努力目標1時間以内)に抑えることが求められ、不十分な場合は是正命令や罰則、企業名の公表対象となります。単に運賃交渉に応じるだけでなく、入出荷バース予約システムの導入やパレット化によって拘束時間を削減する実質的な協力体制が不可欠です。
運送会社:残業代依存からの脱却と若手採用の壁
運送会社では、走れる時間(拘束時間)の短縮に伴い、走行距離や残業時間に応じて支払う従来の歩合給的な給与体系が維持できなくなっています。走行距離の減少はトラック1台あたりの売上減に直結しますが、車両の減価償却費や保険料などの固定費は変わりません。
有効求人倍率が2.59倍に達する中で、若手ドライバーを確保するには初任給の引き上げが欠かせません。しかし運賃転嫁が進まない中小運送事業者では十分な昇給原資を確保できず、結果として高年齢層ドライバーの稼働に頼らざるを得ない悪循環が生じています。
現場ドライバー:手取りの伸び悩みと健康管理の負担
ドライバーにとっては、残業時間の抑制によって生活時間や休息が確保されやすくなった一方、時間外手当の減少によって月々の手取り給与が伸び悩む現実に直面しています。大型ドライバーの月額給与は38.69万円となりましたが、年平均+1.37%という小幅な上昇ペースでは、物価上昇や社会保険料の負担増を前に実質的な生活改善を実感しにくい状況です。
また、平均年齢が大型で51.5歳、中小型で50.3歳に達する中、手積み・手降ろしなどの荷役作業に伴う身体的負荷や、健康起因による事故リスクへの対策がこれまで以上に切実な問題となっています。
今後の影響・予測とウォッチすべき指標
今後の物流業界を取り巻く動向について、予測シナリオと定点観測すべき指標を整理します。
短期〜中期の影響予測(3〜12ヶ月)
現在の緩慢な賃金上昇と高齢化傾向が続いた場合、次の2つのシナリオが想定されます。
- 改善シナリオ
2026年4月の改正物流効率化法およびCLO選任義務化を機に、荷主企業による待機時間削減と適正運賃の収受が進展。附帯作業料(積込・取卸料)や待機料の別建て収受が定着し、運送会社の収益が改善。残業代に依存しない基本給ベースの賃上げ(年+3%以上)が可能となり、若年層の採用比率が上向き始める。 - 悪化シナリオ
荷主企業による運賃転嫁の抑制が続き、中小運送会社の収益悪化が固定化。労働時間短縮による手取り減少を補えず、他産業へのドライバー流出が加速。将来的に懸念される輸送能力不足が前倒しで顕在化し、地方路線や特殊輸送を中心に集荷制限やリードタイム延長が常態化する。
定期的に確認すべき実務指標
荷主・運送事業者の実務担当者が確認すべき指標は以下の通りです。
| 指標名 | 確認元 | 確認頻度 |
|---|---|---|
| 一般職業紹介状況(自動車運転の職業の有効求人倍率) | 厚生労働省 | 毎月 |
| 軽油価格調査集計表(ローリー渡し・スタンド価格) | 全日本トラック協会 | 毎月 |
| トラック運賃の推移(WebKIT成約運賃指数) | 日本貨物運送協同組合連合会 | 毎月 |
| 賃金構造基本統計調査(貨物自動車運転者の賃金・労働時間・年齢) | 厚生労働省 | 年1回(3月公表) |
| トラックGメンによる働きかけ・要請・勧告件数 | 国土交通省 | 四半期ごと |
大手物流企業の運賃改定動向と活用できる支援策
輸送環境を維持するため、大手各社では届出運賃の改定が相次いでいます。
- ヤマト運輸株式会社:2025年10月1日より宅急便の届出運賃を改定(大型サイズ等で見直し)。輸配送パートナーの労働環境改善と輸送体制の維持を掲げています。
- 佐川急便株式会社:2024年4月1日より「飛脚宅配便」等の届出運賃を平均約7%改定。エネルギーコスト増や労働環境改善への対応を進めています。
- 西濃運輸株式会社:2026年8月21日より一般便を対象に新届出運賃を適用(2024年運賃比で約20%の引き上げ幅)。あわせて他社との幹線共同輸送や中継輸送を推進しています。
また、運送会社が活用できる公的助成金・支援策も整備されています。
- 中小物流事業者の労働生産性向上事業(国土交通省):テールゲートリフターやバース予約受付システム、動態管理システム等の導入経費を補助(補助率1/2または1/4)。
- 働き方改革推進支援助成金(厚生労働省):労働時間短縮に向けた設備投資や取引環境の改善経費を助成。
- 業務改善助成金(厚生労働省):事業場内最低賃金を引き上げ、業務効率化の設備投資を行った事業者に最大600万円を助成。
まとめ:荷主と運送会社が今すぐ取るべき対策
2025年調査の大型トラック運転手の月額給与は38.69万円となりましたが、15年間の年平均上昇率は+1.37%にとどまり、平均年齢は51.5歳まで上がっています。「給与の伸びの緩さ」と「進む高齢化」が重なる現場では、労働時間の短縮を手取りアップと人材確保につなげるための抜本的な見直しが急務です。
荷主企業が取り組むべきアクション
- 荷待ち・荷役作業の契約分離と対価の支払い
バース予約システム等を活用して待機時間を可視化し、標準的な運賃に基づき、待機時間料および荷役作業料を運賃本体とは別に支払う契約へ移行します。 - 発注ロットの見直しとリードタイムの緩和
翌日着などのタイトな運行指定を緩和し、出荷ピークを分散させることで、実車率の向上と無理のない運行計画を支援します。 - CLO選任を通じた社内物流の抜本改革
営業部門や工場部門とも連携し、パレット化の推進や検品時間の短縮など、ドライバーの拘束時間を削る体制を全社で構築します。
運送会社が取り組むべきアクション
- 残業代依存から脱却する基本給重視の賃金設計
労働時間の短縮が進んでもドライバーの手取りが落ちないよう、作業内容やスキルを適正に評価する基本給主体の給与体系へ移行します。 - 運行データに基づいた科学的な運賃交渉
デジタコや動態管理システムの記録をもとに荷待ち・荷役の実態時間を提示し、未収受となっている附帯作業料を荷主に明確に請求します。 - 助成金を活用した荷役負荷の軽減
補助金を活用してテールゲートリフター等の荷役省力化機器を導入し、中高齢ドライバーの身体的負荷を和らげるとともに、若手・女性が定着しやすい環境を整えます。
まず最初の一手
実務担当者が最初に取り組むべき行動は、「自社の運行における荷待ち時間・附帯作業時間をデジタコ等の運行記録から洗い出し、標準的な運賃の基準に照らして未収受となっている金額を算出すること」です。実態を正確な数値で把握することが、荷主との公正な対話と、ドライバーの待遇改善に向けた確かな第一歩となります。
出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(政府統計の総合窓口 e-Stat) / 統計最終更新: 2025年
よくある質問(FAQ)
Q. トラックドライバーの給料は2024年問題以降上がっていますか?
A. 緩やかな上昇にとどまっています。2025年調査での営業用大型トラック運転手の月額給与は38.69万円(前年比+2.52%)です。2010年からの15年間で累計22.7%増えましたが、年平均の伸び率は+1.37%と小幅です。残業時間の抑制が進んだことで、手取り額が大きく増えにくい状況が続いています。
Q. ドライバーの高齢化はどの程度進んでいますか?
A. 高齢化は一貫して進行しています。営業用大型トラック運転手の平均年齢は、2010年の45.5歳から2025年には51.5歳へと6.0歳上昇しました。中小型(大型車を除く区分)でも42.4歳から50.3歳へ上昇し、いずれも50歳を超えています。若年層の参入が進まず、既存ドライバーが勤続年数を重ねていることが背景にあります。
Q. 荷主企業はドライバーの賃金維持に向けてどのような対応が必要ですか?
A. 待機時間料や積込・取卸料の別建て支払いが不可欠です。国土交通省の「標準的な運賃」に沿って作業対価を運賃本体と分離して支払うほか、バース予約システムの導入や検品レス化によって荷待ち・荷役時間を削減し、ドライバーの拘束時間を短縮する協力体制の構築が求められます。