Skip to content

LogiShift(ロジシフト)

  • 物流DX・トレンド
  • 倉庫管理・WMS
  • 輸配送・TMS
  • 政策動向
  • ツール紹介
  • 統計分析
  • 用語辞典
Home > サプライチェーン> 東海地区の自動車企業54.3%が被災確認2日以上|JIT維持に必要な情報DX
サプライチェーン 2026年8月10日

東海地区の自動車企業54.3%が被災確認2日以上|JIT維持に必要な情報DX

東海地区の自動車企業54.3%が被災確認2日以上|JIT維持に必要な情報DX

東海地区の自動車関連企業を対象とした実態調査により、大規模災害が発生した際にサプライヤーの被災状況把握へ「2日以上」を要する企業が54.3%に達することが判明しました。在庫を極限まで削減するジャストインタイム(JIT)生産方式が定着する中、情報のデジタル化とリアルタイムな同期が遅れている現状は、サプライチェーン全体を停止させる致命的なリスクを裏付けています。

東海地区の自動車関連企業における被災把握とBCPの実態

日本の自動車産業の中枢である東海地区(愛知・岐阜・静岡・三重)において、災害時のサプライチェーン分断リスクが顕在化しています。株式会社Specteeが2026年8月に発表した調査結果によると、過半数の企業が初動段階で重大な「情報の空白」を抱えていることが明らかになりました。

大規模災害時の初動に潜む「2日間の空白」

調査結果によると、災害発生時にサプライヤーの被災状況や稼働可否を確認するまで「2〜3日以上」かかると回答した企業は54.3%に上ります。さらに、事業継続計画(BCP)を策定済みと回答した企業(54.3%)のうち、「有事に十分に実行できる自信がある」と答えた割合はわずか7.0%にとどまりました。

調査項目 該当データ・割合 現場における主な要因・背景
被災状況の把握にかかる時間 2〜3日以上:54.3% 個別電話・メール連絡やサプライヤーからの「自発的報告待ち」に依存しているため。
南海トラフ想定BCPの策定と自信 BCP策定済:54.3% 十分な実行自信あり:7.0% 文書化された計画はあるものの、リアルタイムな情報収集手段を欠き実用性に不安があるため。
サプライチェーンの課題認識 多層化・複雑化の課題感:82.9% 自社供給網の把握不十分:約30% Tier2(二次取引先)以降の深層サプライチェーンに関する動態が可視化されていないため。
専用リスク管理システムの導入 導入済み:2割弱 システム導入の最大の阻害要因はコスト面よりも「運用を担う人員の不足」であるため。

多くの現場において、電話や電子メールによる個別の状況確認、あるいはサプライヤーからの自発的な連絡を待つ受動的な業務プロセスが常態化しています。このアナログかつ受動的な確認体制こそが、有事における「初動の空白」を引き起こす直接の原因となっています。

歴史的教訓と1410兆円超の巨大災害リスク

JIT生産方式は、必要な部品を必要なタイミングで必要な量だけ供給することで、無駄な在庫コストを徹底的に排除する高度な生産管理手法です。しかし、この高度な効率性は「供給網のすべてのラインが正常に稼働し続けていること」を前提としています。

過去の事例を見ても、2011年の東日本大震災において車載用マイコン世界大手であるルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)が被災した際、代替品調達の難しさと在庫の少なさから、直接の被災を免れた国内外の完成車メーカーの工場までもが長期の操業停止に追い込まれました。

さらに、土木学会が公表した被害想定(2025年改訂推計)によると、南海トラフ巨大地震が発生した場合の20年間の長期的な経済被害額は最大1466兆円(2018年時点推計では1410兆円)に達すると試算されています。巨大地震の発生リスクが高まる中、物理的な「モノ」の動きだけに依存し、「情報」のデジタル伝達や同期が遅れている従来の運用モデルは、事業継続の観点から非常に厳しい状況に直面しています。

参考記事: JIT(ジャストインタイム)完全ガイド|トヨタ生産方式の基礎から2024年問題を見据えた次世代型運用まで

参考記事: トヨタ自動車が6月3日に13工場を一時停止、JIT依存の脆弱性対策が急務

自動車サプライチェーンの主要プレイヤーに迫る構造変化

初動の遅れが及ぼす影響は、完成車メーカーから末端の物流事業者に至るまで、サプライチェーンを構成するすべてのプレイヤーに波及します。

完成車・部品メーカー:在庫ゼロの強みが一転して単一障害点(SPOF)に

完成車メーカーやTier1(一次取引先)サプライヤーにとって、JITによる「在庫を持たない強み」は、有事においては「わずかな途絶でも生産ライン全体が止まる脆弱性」へと反転します。

自動車は約3万点の部品で構成されており、たった1点の汎用小部品や電子部品が届かないだけで、数千億円規模の組み立て工場が停止します。被災確認に2日以上を要している現状では、代替生産の手配や輸送ルートの切り替え判断が2日遅れることを意味します。製造業はBCPを単なる書類の整備で終わらせず、リアルタイムデータに基づいて動的に配送や調達を変更できるプロセスへと高める必要があります。

SaaS・テクノロジーベンダー:物理カンバンの限界を超える「情報同期」への需要

デジタル技術を提供するIT・SaaSベンダーにとっては、物理的な伝票やカンバン方式の限界を突破するソリューションの提供が緊急の命題となっています。

従来型の運行管理ツールや在庫管理システムは、自社内の動きを可視化することに留まっていました。しかし今後は、Tier2やTier3といった深層のサプライヤーの稼働状況、気象・災害インシデントデータ、配送トラックの運行状況をリアルタイムで統合・可視化する「情報同期プラットフォーム」の構築が求められています。安否確認や被災把握を人間が手作業で行うのではなく、被害エリアに位置する拠点をシステムが即座に割り出し、影響度を試算する「調達DX」の需要が急速に拡大しています。

参考記事: 供給網の可視化とは?Tier2以降の調達リスクを低減する実践ステップと最新トレンド

倉庫事業者・3PL:保管業から最適配置を提案する「参謀」へ

倉庫事業者や3PL(サードパーティ・ロジスティクス)には、単に指示された荷物を保管・配送する受動的な役割からの脱却が求められています。

JITを補強するためには、生産現場に近い場所に適切な規模の「MISE(みせ=在庫拠点)」を配置し、有事のバッファ(緩衝領域)として機能させることが重要です。3PL事業者は、サプライヤーの地理的分散データや最適な配送網のシミュレーションを活用し、平時には高度な物流効率化を実現しながら、有事には即座に代替出荷拠点として機能する「レジリエントな在庫最適化」を荷主企業へ提案する価値が問われています。

参考記事: サプライチェーン・レジリエンスとは?BCPとの違いや強靭な供給網を築く実務戦略まで解説

LogiShiftの視点:モノ後追い型から「情報先回り制御型」への不可逆的転換

東海地区の自動車製造業における被災確認の遅れ(54.3%が2日以上)は、単なる企業の危機管理意識の欠如ではなく、「モノが動いた後に情報を処理する」という従来の製造・物流システムの根本的な構造限界を示しています。

物理的カンバンから「電子カンバン+リアルタイム情報同期」への移行

JITの運用において、生産指示や納入指示は長らく物理的なカンバン(紙の伝票など)が担ってきました。しかし、物理的な媒体に依存した管理体系では、災害時の通信遮断や交通網の寸断が発生した際、状況を把握するための情報そのものが現場で停滞してしまいます。

これを克服するために不可欠なのが、紙のカンバンから「電子カンバン」への移行と、サプライチェーン全体での情報同期(DX)です。電子カンバンにより、どの拠点にどの部品が何個あり、どのトラックで移動中であるかがデジタル上で一元管理されていれば、被災地域にある部品を特定し、他地域の工場へ代替発注を出す判断を数時間単位で行うことが可能になります。

「情報の動きでモノを制御する」予兆管理型物流の実現

今後、製造業および物流業界が目指すべきは、デジタルツイン等を活用した「情報先回り制御型」の物流モデルです。

1. 物理ネットワークの可視化とデジタル連携

サプライヤーの工場位置、物流ルート、倉庫の在庫情報をデジタルマップ上に統合し、気象庁や災害情報提供機関のデータとリアルタイムで自動連動させます。

2. 被災影響の自動算出とアラート発信

災害発生と同時に、影響を受ける可能性がある部品番号や完成車ラインをAIが即座に特定し、手動の確認作業を介さずに危機管理担当者へ通知します。

3. 「ジャスト・イン・ケース(万全の備え)」を組み込んだJITの再構築

完全に在庫をゼロにする従来のJITから、特定リスクの高い重要部品(車載マイコンや専用成形品など)については戦略的バッファ在庫を持たせるハイブリッド型へのシフトを進めます。

「報告を待ってから動く」受動的な運用から脱却し、デジタル技術によって「被災の影響を予測して先回りして動く」体制を構築できるかどうかが、1400兆円を超える南海トラフリスクから日本の産業基盤を守る分水嶺となります。

参考記事: SCRM(サプライチェーンリスクマネジメント)とは?BCPとの違いや5大リスク、強靭化への4ステップを徹底解説

参考記事: BCP(事業継続計画)とは?災害や障害に備える策定ステップと失敗しない運用のコツ

まとめ:危機に強い製造・物流基盤を構築するための3つのアクション

東海地区における「被災確認2日以上」という実態は、日本の自動車産業が抱える情報伝達の遅れと、JIT運用の脆弱性を浮き彫りにしました。明日から各企業が取り組むべきアクションは以下の3点に集約されます。

  1. 受動的な報告体制の撤廃と被災確認プロセスの自動化
    「被災状況の報告待ち」をやめ、SaaSや災害情報連携ツールを活用して、災害発生時に影響拠点と対象部品が自動で抽出される仕組みを導入する。
  2. Tier2以降のサプライチェーン情報のデジタル化と可視化
    直接取引のある一次サプライヤーだけでなく、二次・三次サプライヤーの製造・出荷拠点を把握し、電子カンバン等による情報同期を進める。
  3. 効率性と堅牢性を両立する「戦略的在庫(MISE)」の再配置
    単なる在庫削減思考から脱却し、主要な配送ルートやリスク地域を考慮したバッファ在庫の最適配置とマルチソース調達を平時から設計する。

効率性を追求したJITの真価を発揮させるためにも、デジタル技術による強靭な「情報の動線」を確立することが、これからの時代を生き抜く必須の戦略となります。


出典: Merkmal(メルクマール)
出典: PR TIMES(株式会社Spectee プレスリリース)

Share this article:

監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

関連記事

改正物流効率化法で3826者を特定指定、10月末の中長期計画提出が必須対応に
2026年8月5日

改正物流効率化法で3826者を特定指定、10月末の中長期計画提出が必須対応に

報道資料|「物流統括管理者(CLO)のあるべき姿に関するワークショップ」提言を策定・公表 ...
2026年3月30日

【国交省公表】物流統括管理者(CLO)提言|荷主に迫る経営変革と現場への影響

「物流統括管理者の選任」に関するプレスリリース一覧 - PR TIMES
2026年3月27日

【PR TIMES発】物流統括管理者の選任義務化|法対応の最大障壁とCLO主導の経営改革

AD LogiShiftへの広告掲載を募集中 媒体資料をダウンロード »
表示できるコメントはありません。

LogiShift

物流担当者と経営層のための課題解決メディア。現場のノウハウから最新のDX事例まで、ビジネスを加速させる情報をお届けします。

カテゴリー

  • 物流DX・トレンド
  • 倉庫管理・WMS
  • 輸配送・TMS
  • マテハン・ロボット
  • サプライチェーン

もっと探す

  • 政策動向
  • ツール紹介
  • 海外トレンド
  • 事例
  • 統計分析
  • 物流用語辞典

サイト情報

  • 運営者情報
  • お問い合わせ
  • 媒体資料
  • プライバシーポリシー
  • TechShift
  • ConShift

© 2026 LogiShift. All rights reserved.