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Home > 物流用語辞典 > サプライチェーン・経営戦略> JIT(ジャストインタイム)

JIT(ジャストインタイム)とは?

この記事の要点
  • キーワードの概要:JIT(ジャストインタイム)とは、必要なものを、必要な時に、必要な量だけ生産・供給することで、過剰な在庫や現場の無駄を徹底的に排除する管理手法です。
  • 実務への関わり:保管スペースの削減や在庫管理工数の低減により、無駄なコストを抑えてキャッシュフローを最大化できます。ただし、適切な安全在庫の管理を怠ると欠品による工程停止のリスクもあります。
  • トレンド/将来予測:ドライバー不足や配送負荷の限界といった課題に対し、IoTや重量センサーで在庫をリアルタイム可視化し、需要データをサプライチェーン全体で共有する現代版の「リアルタイムJIT」への進化が進んでいます。

ジャストインタイム(JIT)は、製造・物流現場における過剰在庫と工程の停滞を排除し、サプライチェーンの効率を高める管理手法です。本稿では、トヨタ生産方式に根ざす基本原則から、労働時間規制等によって直面する構造的リスク、さらにIoTやデータ連携を活用した「リアルタイムJIT」への再構築手順までを実務視点で詳しく解説します。

目次
  • ジャストインタイム(JIT)とは?トヨタ生産方式から生まれた基本定義と3原則
  • TPS(トヨタ生産方式)における「自働化」との関係と7つの無駄
  • JITを成立させる3つの基本原則(工程の流れ化・タクトタイム・後工程引き取り)
  • 概念と手段の違い:「JIT」と「かんばん方式」の明確な差別化
  • JIT導入がもたらす成果と直面する2つの構造的リスク
  • 【メリット】在庫削減・リードタイム短縮によるキャッシュフロー最大化
  • 【デメリット】欠品リスクの顕在化と「安全在庫」ゼロ化の脅威
  • 限界を迎える従来型JIT|時間外労働規制と供給網の課題
  • 頻小・多回配送の限界とトラックドライバー不足による輸配送崩壊
  • 下請け・物流事業者への負担偏重とコンプライアンスリスク
  • DXでアップデートする現代版JIT|IoTとデータ連携による「リアルタイムJIT」の実装手順
  • IoT・重量センサーを用いた「在庫可視化と自動発注」の仕組み
  • サプライチェーン全体で需要データを共有する「引き取り型(Pull)」連携
  • 自社現場へのJIT適用・再構築のための実務評価チェックリスト
  • 【診断】自社現場でJITが機能するかを見極める4つの評価項目
  • 物流パートナーと対等に構築する「持続可能なJIT」運用アクション

ジャストインタイム(JIT)とは?トヨタ生産方式から生まれた基本定義と3原則

トヨタ自動車の創業者・豊田喜一郎氏の構想をルーツとし、大野耐一氏らによって体系化された「トヨタ生産方式(TPS)」。その根幹をなす理念がジャストインタイム(JIT)です。JITとは、「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」生産・供給することで、過剰な在庫や工程の停滞を排除する生産・物流管理の思想です。単なる在庫管理のノウハウにとどまらず、サプライチェーン全体において価値を生まない要素を極限まで削ぎ落とす経営理念として機能しています。

TPS(トヨタ生産方式)における「自働化」との関係と7つの無駄

トヨタ生産方式は、「ジャストインタイム」と「自働化(ニンベンのついた自働化)」という2本の柱で成り立っています。「自働化」とは、機械や生産ラインに異常が発生した際、設備が自ら異常を検知して即座にラインを停止させ、不良品を後工程に流さない仕組みを指します。JITが「工程間の滑らかな流れと同期化」を目指すのに対し、自働化はその前提となる「品質の担保」を担います。もし自働化が機能せず不良品が混入した場合、必要な分だけを供給するJITのサイクルは中断し、後工程での欠品やライン停止を引き起こします。

この2つの柱によって排除を目指す対象が、現場における「7つの無駄」です。

  • つくりすぎの無駄(最悪の無駄):必要以上に早く、または多く作ってしまうこと。
  • 在庫の無駄:原材料、部品、完成品が必要以上に留まっている状態。
  • 運搬の無駄:物品の移動、積み替え、仮置きなどの余分な動作。
  • 加工の無駄:本来の製品価値に寄与しない余分な工程や作業。
  • 手待ちの無駄:材料不足や設備故障により作業者が待機している時間。
  • 動作の無駄:作業者の探す、屈むといった不必要な身体の動き。
  • 不良・手直しの無駄:不具合品の発生と、その修正にかかる労力。

特に「つくりすぎの無駄」は、在庫の無駄や運搬の無駄、保管スペースの増大といった他のすべての無駄を覆い隠してしまうため、最も警戒すべき無駄とされています。例えば、1日あたり1,000ケースを出荷する物流拠点において、欠品を恐れて予備として300ケースを先行入荷・保管した場合、保管ラックの占有だけでなく、フォークリフトによる移載作業や棚卸しの工数増加という二次的な無駄が連鎖します。JITでは後工程引き取りや平準化生産を徹底することで、こうした連鎖的なコスト増を防ぎ、確実な在庫削減へとつなげます。

JITを成立させる3つの基本原則(工程の流れ化・タクトタイム・後工程引き取り)

JITを理念で終わらせず、実際の生産や物流の現場で機能させるためには、相互に関連する3つの基本原則を同時に運用する必要があります。

1つ目の原則は「工程の流れ化」です。これは、製品や部品を停滞させず、1個ずつ滑らかに次の工程へ渡していく「1個流し」の体制を指します。工程間の仕掛品(留まっている在庫)を排除することで、製品が最初から完成に至るまでの経過時間であるリードタイム短縮が実現します。

2つ目の原則は「タクトタイム」の設定です。タクトタイムとは、市場や後工程の需要ペースに合わせて「1個の製品を何分何秒で作るべきか」を算出した指標です。

タクトタイムは「稼働時間 ÷ 必要数量」の計算式で算出されます。定時稼働時間が8時間(480分=28,800秒)で、その日の必要出荷数が1,200個である場合、タクトタイムは「28,800秒 ÷ 1,200個 = 24秒」となります。この24秒というペースを守って生産・供給することで、必要以上の早作りを防ぎ、手待ち時間も発生させない管理が可能になります。

3つ目の原則が「後工程引き取り」です。従来の生産管理では、前工程で作ったものを後工程へ押し出す「プッシュ型」が主流でした。これに対し後工程引き取りでは、「後工程が使った分だけ、必要な時に前工程へ取りに行く(プル型)」という逆の発想をとります。前工程は引き取られた数量分しか補充生産を行わないため、工程間における不要な在庫の滞留を防止できます。

トラックドライバーの労働時間規制に伴う輸配送能力の制限への対応として、荷待ち時間の削減や配送効率化が迫られています。計画なしに荷物を送り出すプッシュ配送から、実需要に合わせた後工程引き取りと計画配送へ移行することは、物流現場における待機時間カットの観点からも有効なアプローチとなります。

概念と手段の違い:「JIT」と「かんばん方式」の明確な差別化

実務現場では「JIT」と「かんばん方式」が同義語として使われる事例が散見されますが、両者は「目指すべき理念・目標」と「それを実現するための運用ツール」という明確な階層の違いが存在します。

JITは「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」供給して無駄を削ぎ落とすという経営およびSCMのビジョン・構造そのものです。これに対し、かんばん方式は、JITの基本原則である「後工程引き取り」を現場でミスなく回すために開発された情報伝達手段・道具です。

「かんばん」と呼ばれる紙やカード(現代では電子データ化されたデジタルかんばん)には、品番・数量・納入先・前工程情報などが記載されています。後工程が部品を使用するとその「かんばん」が外れ、前工程に対する「引取指示書」兼「生産指示書」として戻されていきます。この循環によって過剰生産を防止し、リアルタイムでの在庫可視化が達成されます。

比較項目 ジャストインタイム(JIT) かんばん方式
位置づけ 生産・SCM全体の経営理念・目的 JITを実現するための運用ツール・管理手段
主な役割 無駄の排除、リードタイム短縮、在庫削減 後工程からの生産指示・引取指示の伝達
運用アプローチ 3原則(流れ化・タクトタイム・後工程引き取り)の構造化 現物と情報の統一による在庫可視化と制御

自社のサプライチェーン改革に取り組む際は、単にツール(かんばん)の導入を行うだけでなく、前提となる工程の平準化やタクトタイムの算出、自働化による品質担保の仕組みを同時に整えるステップを踏む必要があります。

JIT導入がもたらす成果と直面する2つの構造的リスク

前章で触れた「後工程引き取り」「工程のフロー化(タクトタイムの遵守)」「平準化生産」というJITの3原則は、正しく機能すれば極めて高効率な生産・物流体制を構築します。しかし、前提条件が一つでも崩れると、システム全体に支障が及ぶ構造的脆さも併せ持っています。JITを実務へ適用するにあたっては、経営・財務および現場運用の双方で得られる成果だけでなく、表裏一体で存在するリスクの構造まで把握することが重要です。

【メリット】在庫削減・リードタイム短縮によるキャッシュフロー最大化

JITの導入が企業経営にもたらす大きなインパクトは、大幅な在庫削減に伴うキャッシュフローの改善です。従来の予測に基づいた押し込み型生産では、需要の変動や設備トラブルに備えて多額の安全在庫や仕掛品を保持するのが一般的でした。しかし、これらは「棚卸資産」として資金を固定化させ、倉庫賃料や管理工数、品質劣化・陳腐化リスクという固定コストを生み出す原因となります。

後工程引き取りとかんばん方式を厳格に運用することで、必要以上の製品や部品を前もって作る動作そのものが排除されます。例えば、月間約5,000点のパーツを組み立てる機械製造工場において、各工程がロット単位で生産していた体制からJIT運用へ移行したケースでは、後工程の引き取りペースに合わせて前工程が供給する仕組みへ変更することで、工程間に滞留していた仕掛品在庫が従来の5日分から0.5日分へと90%削減されます。これにより、資金が棚卸資産として固定化される期間が短縮され、営業キャッシュフローの回収速度(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)が向上します。

評価軸 従来の生産・物流体制 JIT導入後の変化 財務・運用への直接効果
財務(経営視点) 過剰在庫による資金の固定化 棚卸資産の最小化 運転資本の回収加速とキャッシュフロー改善
在庫(管理視点) 安全在庫・仕掛品の滞留 必要最小限の調達・保管 倉庫保管料や管理工数、陳腐化損失の削減
生産(現場視点) バッチ単位の推し進め生産 後工程引き取りによる引き取り生産 「7つの無駄」排除とリードタイム短縮

【デメリット】欠品リスクの顕在化と「安全在庫」ゼロ化の脅威

JIT運用がもたらす高い効率性の裏には、サプライチェーン上の余白(バッファー)を削減することに起因する脆弱性が存在します。課題となるのは、突発的な供給障害が発生した際に代替手段を確保する時間的猶予がなく、短時間で「欠品」や「生産ライン停止」へ直結する点です。

JITの基盤である「平準化生産」や、定められたペースで正確に作業を進める「タクトタイム」は、需要や外部環境が安定している前提で成立します。しかし、自然災害や地政学リスクに伴う海外パーツの調達途絶が発生した場合、安全在庫を削ぎ落とした生産体制は即座に不全を起こします。わずか1種類の汎用電子部品が届かないだけで、大きな製品の最終組み立てが全面的にストップするリスクを内包しています。

さらに、ドライバーの残業時間規制強化や人手不足に伴い、従来の「多頻度小口配送」を低コストかつ定時で維持することは困難になりつつあります。配送便数の削減や運賃の上昇は、JIT物流が依存してきた高頻度補充の前提を揺るがします。

こうした構造的リスクに対処するため、先進的な製造・物流現場では単に在庫をゼロにするのではなく、IoTを活用した「在庫可視化」を推進しています。サプライチェーン全体でのパーツ動態データをリアルタイムで把握し、特定のリスク部品については適正な安全在庫を意図的に保持するハイブリッド型SCMへの再設計が進められています。

限界を迎える従来型JIT|時間外労働規制と供給網の課題

JIT(ジャストインタイム)は、「必要なものを、必要な時に、必要な分だけ」調達・生産することで、在庫削減やリードタイム短縮を実現する優れた管理手法です。工場内でのかんばん方式や後工程引き取り、タクトタイムに連動した平準化生産を活用し、製造現場における7つの無駄を排除する仕組みとして高く評価されてきました。しかし、サプライチェーンの調達・配送現場において、この高頻度・小口配送(頻小・多回配送)を前提とした運用が、構造的限界を迎えています。

頻小・多回配送の限界とトラックドライバー不足による輸配送崩壊

従来のJIT運用では、工場内の保管スペースを最小化して自社の在庫削減を進めるため、サプライヤーや配送業者に対して1日に何度も細かく指定時間に納入させる「頻小・多回配送」が一般的でした。しかし、働き方改革関連法に基づくトラックドライバーの時間外労働上限規制(いわゆる物流2024年問題)や改正改善基準告示の適用に伴い、従来の輸配送モデルは維持できなくなっています。

積載効率を考慮しない指定時間ごとの頻小配送は、トラックの運行本数を増やし、ドライバーの拘束時間を著しく延ばします。例えば、1日5回の細分化された指定納入を行う取引において、受取側での荷待ちや積み降ろし作業(荷役時間)が1回あたり30分〜1時間発生した場合、それだけで1日あたり数時間の非生産的な待機時間が生じます。自動車運転者の改善基準告示により原則「1日13時間以内」と定められた拘束時間の上限枠内では、こうした荷待ち時間がボトルネックとなり、ドライバー1人が担当できる運行回数は大幅に減少します。その結果、運送事業者が配送を引き受けられず、必要な部品や原材料がラインに届かない輸配送崩壊のリスクが現実化しています。

比較項目 従来のJIT配送の前提 物流制約下における課題 今後求められる運用の方向性
配送頻度 1日複数回の頻小・多回配送 運行枠不足によりトラックが手配不能 共同配送や配送回数の集約・統合
納入時間指定 分単位での厳格な時間指定 待機時間の発生で拘束時間オーバー 納入時間枠(タイムウィンドウ)の拡大
在庫の保有場所 親工場内は原則ゼロ在庫 サプライヤー側の保管負荷とコスト増大 中間拠点(VMI倉庫等)の活用と在庫可視化

下請け・物流事業者への負担偏重とコンプライアンスリスク

従来型JITが抱えるもう一つの課題は、親事業者側の効率化や平準化生産に伴う負荷が、下請け企業や物流事業者に集中していた点です。発注元が「かんばん」に基づく後工程引き取りを徹底する一方で、自社の在庫を持たない代償として、サプライヤー側に過剰な安全在庫の保管を求めたり、配送事業者に対して遅延厳禁の納入指定を守らせるために長時間の荷待ちを発生させたりする構造が常態化していました。

こうした取引慣行は、単に現場を疲弊させるだけでなく、重大なコンプライアンスリスクへ直結します。公正取引委員会や国土交通省は、長時間の荷待ちを強いる行為や、荷主都合による急な配送計画の変更、燃料高騰に伴う運賃交渉に応じない行為に対し、下請法や独占禁止法上の「優越的地位の濫用」として監視・取り締まりを強化しています。長時間労働を前提とした過剰なサービス要求を続けた場合、荷主企業名が公表される「荷主勧告」の対象となるリスクも高まっています。

生産現場の7つの無駄を排除するために生まれた手法であっても、物流現場への過度な負荷転嫁によって成立するJITは持続可能ではありません。製造現場のタクトタイムだけに合わせるのではなく、サプライチェーン全体の在庫可視化を行い、発荷主・着荷主・運送事業者が連携して適正な配送計画を策定することが求められます。

DXでアップデートする現代版JIT|IoTとデータ連携による「リアルタイムJIT」の実装手順

従来のトヨタ生産方式におけるかんばん方式は、物理的なカードや現物管理を用いて「7つの無駄」を排する手法でした。しかし、紙の回収・集計に伴うタイムラグや、高頻度な小口配送による調達物流への負荷は、ドライバー不足が常態化する環境への適応を難しくしています。こうした従来型JITの課題を乗り越え、データ主導で「必要なものを、必要な時に、必要な分だけ」届ける仕組みへと更新するのが、IoTとサプライチェーンデータ連携による「リアルタイムJIT」です。

IoT・重量センサーを用いた「在庫可視化と自動発注」の仕組み

リアルタイムJITの起点となるのは、現場の状況を人的工数をかけずに捉える在庫可視化の自動化です。従来の「作業員が棚の残量を回収し、カードを外して発注する」アナログな運用を、重量センサー(スマートマット等)やRFIDなどのIoTデバイスへ置き換えます。

例えば、1箱10kg(50個入り)の資材を保管する棚に重量センサーを敷き、残量が2箱(20kg)を切った時点で自動的に発注トリガーを発行する仕組みを構築します。センサーが一定の重量変化(閾値割れ)を検知すると、WMS(倉庫管理システム)やERPへ即座に補充データが送信されるため、人手による確認漏れや伝達の遅延が解消されます。

製造ラインのタクトタイムに同期させて補充信号を自動発行すれば、部品不足によるラインストップや「手待ちの無駄」が防げます。現物とデータがズレなく一致することで安全在庫の保持を最小限に抑えられ、確実な在庫削減とリードタイム短縮が実現します。

サプライチェーン全体で需要データを共有する「引き取り型(Pull)」連携

社内の在庫可視化にとどまらず、前工程である調達先(サプライヤー)や3PL事業者と需要・消費データをリアルタイムで接続することで、サプライチェーン全体をデータ主導の「引き取り型(Pull)」に移行させます。

従来の「押し込み型(Push)」手配では、後工程の消費実態が見えないため、調達先は欠品を防ぐ目的で過剰な安全在庫を抱えたり、急な追加発注に対して突発的な便を手配せざるを得ませんでした。これに対し、後工程引き取りの原則を企業間ネットワークまで拡張し、APIやEDIを介して工場側の最終消費実績や組み立てラインの稼働データを前工程へリアルタイムに公開します。

比較項目 紙のかんばん方式(従来型) データ主導リアルタイムJIT(現代型)
在庫の把握方法 担当者による目視・カード回収 重量センサー・RFIDによる自動検知(在庫可視化)
発注・補充の契機 物理カードの回収・集計後(タイムラグあり) 閾値到達時に自動データ送信(リアルタイム)
サプライヤー連携 定期的な納品指示書の送付 消費データと生産計画のAPI/EDIリアルタイム共有
配送・物流への影響 頻小配送になりやすく物流負荷が高い 平準化生産と積載効率の最適化を両立

現場へリアルタイムJITを導入し実装する際は、以下の3ステップでプロセスを進めます。

  • ステップ1:タクトタイムに基づく発注点・基準在庫の再定義
    生産ラインの標準タクトタイムと調達リードタイムから、安全在庫の限界値を算出し、IoTセンサーが検知すべき閾値(重量・数量)を設定する。
  • ステップ2:IoTデバイスの配置とWMS/ERPとのデータ自動連携
    保管棚やパレットに重量センサー等のデバイスを導入し、閾値を割り込んだ際に発注伝票や補充指示が手作業なしで発行される連携ルートを構築する。
  • ステップ3:サプライヤー・物流事業者との需要データ基盤の統合
    EDIやAPI連携を通じて、前工程の企業へ後工程の消費データを常時送信できる環境を整え、後工程引き取りに基づく計画配送を運用する。

自社現場へのJIT適用・再構築のための実務評価チェックリスト

ジャストインタイム(JIT)を自社の製造や物流現場へ展開する際、理念の理解だけでは運用上の不具合が生じます。トヨタ生産方式に由来するJITは、前後の製造工程だけでなく、部品を納入するサプライヤーや配送を担う協力会社との連携が取れて初めて機能します。自社の準備状況を定量的に評価し、実務に即した改善策を実行することが運用の成否を分けます。

【診断】自社現場でJITが機能するかを見極める4つの評価項目

JITの導入や再構築を成功させるには、自社現場が適用可能な状態にあるかを正しく診断する必要があります。以下の4つの評価項目を用い、自社の運用体制を確認してください。

評価項目 診断ポイント 不全時のリスク 改善のアプローチ
1. 平準化生産の達成度 日次・週次の生産量と製品種類の変動幅が許容範囲内に収まっているか 特定の時間帯や日程に負荷が集中し、ラインの停滞や運搬の遅延が発生する 段取り替え時間を短縮し、小ロット生産を可能にする設備改修と人員配置を実施する
2. タクトタイムと引き取り制御 タクトタイムに基づき、後工程引き取りが適切に運用されているか 前工程の押し込み生産による過剰在庫や手待ち時間が発生する かんばん方式を導入し、後工程が消費した分のみを前工程から補充する循環を作る
3. 現場の無駄と状況の把握 7つの無駄が洗い出され、在庫可視化がリアルタイムで行われているか 滞留在庫や不要な運搬動作が埋没し、在庫削減の限界に達する WMS(倉庫管理システム)やIoTを活用して棚卸精度を99.9%以上に高める
4. リードタイム短縮と供給安定性 調達から出荷までのリードタイム短縮と安全在庫の設定が両立しているか 突発的な需要変動や配送トラブル時に欠品を発生させラインが停止する 変動係数の高い品目を見極め、拠点ごとに適正な安全在庫数を再計算する

平準化生産が確立されていない現場で無理に在庫削減を進めると、日々の生産変更に現場が追いつかなくなります。例えば、1日の生産計画の変動幅が±20%を超える工場において、補充間隔を短縮して安全在庫を削ると、欠品率が平均して3%以上悪化します。まずは製品の組合せや段取り替え手順を見直し、1日あたりの生産量の波を±5%以内に平滑化する手順を踏む必要があります。

また、かんばん方式による後工程引き取りを機能させるには、現場の工程内在庫や移動中の資材状況を常に追跡できなければなりません。RFIDやハンディターミナルを用いた在庫可視化を導入し、データ上の在庫と棚卸実数の誤差を0.1%以下に抑える基盤を作ることが、誤配送や手待ちの発生を防止する具体策となります。

物流パートナーと対等に構築する「持続可能なJIT」運用アクション

JITの維持には、自社工場内だけでなく、部材を運ぶ物流パートナーとの協働体制が欠かせません。過度な指定時刻納品や短納期の要請は、運送事業者に長時間の荷待ちや不効率な運搬を強いる原因となります。ドライバーの労働時間制限が厳格化する中、発荷主・着荷主双方が無理のない持続可能なJITへの転換を図るアクションプランを実行します。

  • 発注リードタイムの適正化と平準化納品
    納入指示の締め切り時刻を前日夕方から前々日午前中へと引き上げ、配送事業者が配車計画を立てる猶予時間を確保します。1日3回の細切れ納品を行っていた金属加工工場の場合、納入時間枠を午前・午後の2回へ再統合することで、トラックの積載効率を45%から75%へと引き上げ、配送便数を削減できます。
  • 荷待ち・荷役作業時間の短縮推進
    工場や倉庫の受入口にバース予約システムを導入し、トラックの平均待機時間を15分以内に抑えます。手積み手降ろしの作業を廃止し、パレット納品や通い箱の規格化を推進することで、1便あたりの荷役時間を40分から15分へ削減し、ドライバーの負担を直接軽減します。
  • BCPに対応する適正安全在庫の共同保持
    「在庫ゼロ」を過度に追求せず、調達難易度や輸送距離に応じた安全在庫の閾値を設定します。主要な構成部品については自社倉庫で3日分のバッファー在庫を保持しつつ、VMI(ベンダー・マネージド・インベントリー)等の仕組みを用いてサプライヤーとリアルタイムで在庫データを共有します。製造現場における7つの無駄を排除しながらも、供給網の寸断に対応できる柔軟なバッファーを確保します。

発荷主と着荷主、そして物流事業者の三者が対等な立場で配送計画や在庫情報を共有することは、配送コストの急騰を防ぎ、安定調達を継続するための現実的な解決策となります。取引先や運送パートナーと月1回の定期協議を設け、運送契約の書面化と適正な運賃設定を行うことで、長期的かつ強固なサプライチェーンを構築できます。

よくある質問(FAQ)

Q. 「JIT(ジャストインタイム)」とは何ですか?

A. JIT(ジャストインタイム)とは、製造や物流現場で「必要なものを、必要な時に、必要な分だけ」供給し、過剰在庫や工程の停滞を排除する管理手法です。トヨタ生産方式(TPS)をルーツとし、「工程の流れ化」「タクトタイム」「後工程引き取り」の3原則で運用されます。サプライチェーン全体の効率化とキャッシュフロー改善を実現します。

Q. JITと「かんばん方式」の違いは何ですか?

A. JITが「無駄を無くし効率を高める管理思想・概念」であるのに対し、かんばん方式は「JITを実現するための具体的な伝達手段(手段)」です。作業指示や納品情報を記載した「かんばん」を後工程から前工程へ回すことで、必要な分だけを生産・配送する仕組みを構築し、JITという理念を現場で具現化します。

Q. JIT(ジャストインタイム)のメリットとデメリットは何ですか?

A. メリットは、在庫削減とリードタイム短縮によるキャッシュフローの最大化です。一方デメリットは、安全在庫を減らすため供給停止時の欠品リスクが高まる点です。さらに頻小・多回配送は物流事業者への負担が大きく、現代では労働時間規制への対応としてIoT等を活用したリアルタイムJITへの再構築が進められています。

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