愛知県やNTTドコモビジネス、NTTモビリティ、NTTドコモなど8者は、2026年9月11日から名古屋市都心部において、May Mobility社の自動運転ソフトウェアとオンデマンド配車システムを連携させた実証実験を開始すると発表しました。交通量の多い都市部でタクシーに近いオンデマンド運行を行い、自動運転レベル4(特定条件下での完全無人運行)を見据えた走行制御や車内対話AIの受容性を検証する本取り組みは、将来の乗務員不足解消や「貨客混載」を含む都市型ラストワンマイル配送の自動化に向けた重要な先行モデルとなります。
名古屋都心部における自動運転とオンデマンド配車連携の全貌
愛知県が主導する本実証プロジェクトは、複雑かつ交通量の多い都市環境下での自動運転技術向上と、将来の社会実装に向けた課題抽出を目的としています。2026年9月11日から2027年3月19日までの約半年間にわたり、名古屋市都心部で実施されます。
実証実験の運用スペックと主要ルート
実証実験では、米国で無人自動運転の実績を持つMay Mobility(メイ・モビリティ)社の自動運転ソフトウェアを搭載した3台の自動運転車両(トヨタ「シエナ」ベース)が使用されます。車両にはLiDAR5個、カメラ8個、レーダー5個などの各種センサーが密に配置され、複雑な路上環境をリアルタイムに認識します。
今回の実証では、利用者の事前予約に応じて乗降地点へ配車を行う「オンデマンド運行」が導入されます。具体的には、NTTドコモビジネスが提供するオンデマンド配車システムと自動運転ソフトウェアを直接連携させ、名古屋鉄道が提供するなごやMaaSアプリ「デライド」をインターフェースとして活用します。
運行にあたっては、名鉄タクシーホールディングス(名鉄交通第一、名鉄交通第二)が運行支援を行い、タクシー事業者が培ってきた安全管理ノウハウやドライバーの乗務管理が活かされます。なお、実証実験中の運行自体は「自動運転レベル2」(運転席にセーフティドライバーが乗車)で行われますが、検証のターゲットは将来の「自動運転レベル4」(車内無人化)の社会実装です。
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 実施期間 | 2026年9月11日(金)〜 2027年3月19日(金)の平日 (土日祝、年末年始12月26日〜1月6日を除く) |
| 運行時間 | 午前10時 〜 午後5時 |
| 対象エリア・拠点 | 名古屋駅前(スパイラルタワーズ)、STATION Ai、愛知芸術文化センター、IGアリーナ前(名古屋造形大学)、FUJIなごや科学館の主要5カ所 |
| 使用車両・規模 | May Mobility製ソフト搭載車3台(トヨタ・シエナベース)、1台当たり定員最大5名 |
| 運行方式・レベル | 自動運転レベル2(セーフティドライバー乗車、オンデマンド1台貸切方式、利用料無料) |
| 予約システム | なごやMaaSアプリ「デライド」およびNTTドコモビジネスのオンデマンド配車システム |
技術検証の難所と車内対話AIによる受容性検証
都市部におけるレベル4自動運転の実現において、最大の技術的障壁となるのが「複雑な交差点における走行制御」です。本実証では、対向車の交通量が多い名駅エリアや栄エリアの交差点において、以下の高精度な制御・予測技術が検証されます。
1. 交差点での右折制御精度向上
対向直進車との距離や速度をミリ波レーダーやカメラで精緻に計測し、安全な隙間を認識して自動で右折するアルゴリズムの最適化を図ります。
2. 信号予測精度の向上
信号機の変化タイミングをシステム側で予測し、スムーズかつ安全な減速・発進を実現する技術検証を行います。
また、車内に無人の乗客のみが乗車する将来のレベル4運用を見据え、車内サービス面の検証も行われます。車内に設置されたタブレット端末を通じ、NTTドコモが開発した「対話AIキャラクター」による案内システムが導入されます(2026年12月中旬頃より開始予定)。事前のアンケート情報から乗客の目的地や欲しい情報をAIが把握し、自然な対話によって適切なタイミングで情報提供を行うことで、乗務員不在時における乗客の「安心感」や「サービス受容性」を評価します。
産官学が連携するプロジェクト体制
本取り組みは、行政、通信大手、交通事業者、そして地元教育機関が密接に連携した包括的な産官学プロジェクトです。車両のラッピングデザインや広報用PR動画、対話AIキャラクターのデザインには、乗降地点にもなっている学校法人日本教育財団(国際工科専門職大学名古屋キャンパス・HAL名古屋)および名古屋造形大学の学生が関与しており、地域密着型の都市型モビリティサービス構築を目指しています。
| 参画事業者・団体 | 本プロジェクトにおける主要な役割 |
|---|---|
| 愛知県 | 本実証の実施主体・全体統括 |
| NTTドコモビジネス | 幹事会社、プロジェクトマネジメント、オンデマンド配車システム提供・自動運転ソフト連携 |
| NTTモビリティ | 自動運転車両の提供および導入・運用支援 |
| NTTドコモ | 対話AIキャラクターおよび車内タブレットシステムの提供 |
| May Mobility, Inc. | 自動運転ソフトウェアの提供 |
| 名古屋鉄道 | なごやMaaSアプリ「デライド」の提供 |
| 名鉄タクシーホールディングス | 交通事業者としての運行支援、セーフティドライバーの乗務、安全管理 |
| HAL名古屋 / 名古屋造形大学 | 車両ラッピングデザイン、PR動画・キャラクター制作等による実証支援 |
本実証のように、都市の主要拠点や生活道路を結ぶ自動運転インフラの整備は、将来的な都市交通軸の再編にも大きな影響を与えます。
参考記事: 国土交通省が2026年6月24日に示す都市交通施策は物流の3大構造改革に直結
交通・物流エコシステムの主要プレイヤーに迫る大転換
名古屋都心部での自動運転オンデマンド配車実証は、旅客輸送のみならず、都市型ラストワンマイルの物理インフラを支える物流エコシステム全体に対しても、不可避な変革を迫ります。運送・交通事業者、行政、テクノロジーベンダーの3者の観点から、その具体的な影響を紐解きます。
1. 運送事業者・タクシー業界:過渡期の混載モデルと「動的フリート管理」へのシフト
深刻なドライバー不足に直面するタクシー・運送業界にとって、本実証のように「既存のタクシー運行管理体制(名鉄タクシーHD)」と「自動運転オンデマンドシステム」を融合させる試みは、将来の運行モデルの決定的なプロトタイプとなります。
従来の運送事業は、車両を保有しドライバーを直接雇う労働集約型モデルに依存してきました。しかし、レベル4技術が都心部で実装されれば、運送会社やタクシー会社の主要なミッションは「ドライバーのシフト管理」から「自動運転車両(フリート)のシステム統合管理」へと移行します。
さらに重要なのが、都市部における「貨客混載」への発展性です。日中の旅客需要が落ち着く時間帯や深夜帯において、同じ自動運転車両とオンデマンド配車システムを活用し、EC店舗からのラストワンマイル配送や店舗間補給輸送を動的に組み込む運用が可能になります。運送事業者は、旅客と貨物の双方を単一のモビリティOS上で切り替えて運用することで、アセットの稼働率(実車率)を極限まで引き上げることができるようになります。
参考記事: 自動運転の新時代へ!GO株式会社の2026年6月上場で無人輸送が加速
2. 行政・規制当局:高難易度エリアにおける官民一体のルール整備
愛知県が主導する本プロジェクトは、レベル4解禁に向けた法的・インフラ的な課題整理を、自治体と民間企業が一体となって進める先進的事例です。
名古屋駅前や栄エリアのような混雑した都市部では、路肩への停車、歩行者の飛び出し、右折時の複雑な交通流など、地方の限定領域実証とは比較にならないほど多くの「エッジケース(特殊事例)」が発生します。行政にとっては、交通容量を低下させずに自動運転車両を安全に走行させるための専用乗降スペース(モビリティ・ハブ)の確保や、道路側の路側センサー(スマートポール)と車両が通信する「インフラ協調型」の整備指針を具体化する機会となります。
また、車内に運転手が不在となるレベル4運行時の責任分解点や、万が一の緊急時における遠隔監視・遠隔指示の運用指針を整理することは、国のレベル4実装推進事業とも深く調和する取り組みとなります。
参考記事: 経済産業省が2026年度自動運転事業を公募、遠隔監視レベル4実装が加速
3. SaaS・テクノロジーベンダー:走行AIとユーザー体験(UX)を繋ぐプラットフォーム競争
テクノロジーベンダーにとっての本実証の示唆は、「優れた自動運転ソフトウェア(May Mobility等)を搭載するだけではサービスとして成立しない」という点にあります。
利用者の予約を受け付けるMaaSアプリ、運行状態をリアルタイムに最適化する配車アルゴリズム、車両側の自動運転制御ソフト、そして車内での安心感を提供する対話AIシステムが、ミリ秒単位でデータ連携(API連携)して初めて、一般利用者が利用できるサービスとなります。
特に、万が一のシステムエラー時や通信途絶時に運行データ(DSSAD等)を記録し、遠隔監視者へ低遅延で状況を伝えるプラットフォーム基盤の需要が急増します。海外のプラットフォーマー(ウーバー等)が水平分業モデルで自動運転フリートを管理し始めているのと同様に、日本のSaaSベンダーにとっても「既存の配車・運行管理システムを自動運転OSに接続するコネクター」の提供が最大の主戦場となります。
参考記事: 自動運転でウーバー・テクノロジーズが1.6兆円を投資する物流DXの必須対応
LogiShiftの視点:都市型MaaSの完成が切り拓くラストワンマイルの「貨客混載自動化」
本実証ニュースの本質は、単に「名古屋で自動運転タクシーの実験が始まった」という点にはありません。LogiShiftでは、この「都市型オンデマンド自動運転」のインフラ構築こそが、長年ボトルネックであった都市部ラストワンマイル配送の構造改革(貨客混載自動化)に向けた決定的な一歩であると分析しています。
旅客と貨物のサイロを破壊する「動的マルチモビリティ」
これまで日本の物流・交通業界は、旅客(タクシー・バス)と貨物(トラック・軽貨物)が法規制や運行管理システムの面で完全に分断されていました。その結果、日中に空車で回送するタクシーや、積載率が低い状態で都市部を走り回る宅配トラックといった、相互の効率低下が放置されてきました。
しかし、NTTドコモビジネスが構築するオンデマンド配車システムとMay Mobilityの自動運転ソフトウェアが動的に連携することで、この「旅客と貨物の境界線」は容易に打ち破られます。
乗客の移動需要が集中する朝夕の通勤時間帯には「旅客モビリティ」として稼働し、需要が落ち着く10時〜16時、あるいは夜間の時間帯には、同システムの配車アルゴリズムが配送指示を出力し、STATION Aiなどの拠点から周辺のオフィスビルや商業施設への「無人店舗補給・小口配送モビリティ」として機能させる運用が現実味を帯びてきます。高価な自動運転フリートの導入コストを回収するためには、24時間稼働による稼働率極大化が絶対条件であり、貨客混載のシステム化はその唯一の解です。
「手積み・手降ろし」脱却とデータ標準化が自動化の入場チケットになる
都市部における自動運転配車の普及は、物流側に対してもオペレーションの厳格な標準化を求めます。
自動運転車両は、従来のドライバーのように「荷主の指示で臨機応変に長時間の荷待ちをする」ことも「手作業で手積み・手降ろしをする」こともできません。あらかじめシステム上で予約された時間に正確に発着し、モビリティ・ハブや乗降ポイントで瞬時に荷物を積み替える必要があります。
これを実現するためには、貨物の寸法・重量データのノーマライズ(データクレンジング)、T11型などの標準パレットや標準コンテナの導入、およびWMS(倉庫管理システム)とTMS(運行管理システム)のリアルタイムAPI連携が不可欠です。都市型自動運転ネットワークという高度な「社会インフラ」へ接続できるか否かが、今後のEC事業者や3PL企業の配送コストとスピードを左右することになります。
参考記事: 国際規則採択で自動車基準調和世界フォーラムがレベル4量産を加速
都市部モビリティ変革に備えて明日から着手すべき3つのアクション
愛知県とNTTドコモビジネス等による名古屋都心部での実証実験は、自動運転とオンデマンド技術の融合が実用段階へと加速していることを示しています。将来の都市部無人配送や貨客混載時代を見据え、物流企業の経営層や現場リーダーが明日から取り組むべき具体アクションは以下の3点です。
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自社都市部配送網における「オンデマンド・貨客混載」の接続可能性をシームレスに検討する
自社でトラックやドライバーをすべて所有する自前主義を見直し、地域のオンデマンドモビリティ網やタクシー事業者との共同運行枠へ、将来的に配送業務を外部委託(スポット・動的補填)できる柔軟な配送ポートフォリオの設計に着手する。 -
「都市交通軸」と「モビリティ・ハブ」を意識した拠点・配送ルートの再構築
国土交通省の都市交通施策や自治体の実証(名古屋駅、STATION Ai等)が示す主要な乗降・中継ポイントを把握し、将来的な無人引き継ぎ拠点としてアクセスしやすい場所へ配送デポや集配拠点を集約・再編する準備を進める。 -
出荷データ・運行データのデジタル標準化(API連携体制の整備)
自社の配車システム(TMS)や倉庫管理システム(WMS)のデータを、外部の「移動OS」や自動運転フリート管理プラットフォームと双方向で接続できるよう、荷物サイズ、配送先住所、到着指定時間データの標準化とクレンジングを速やかに推進する。
出典: LOGI-BIZ online
出典: NTTコミュニケーションズ(NTTドコモビジネス)
出典: 愛知県
出典: 名古屋鉄道
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