NX総合研究所は2026年8月18日、企業物流短期動向調査(NX総研短観)に附帯する「物流の2024年問題に関する追加調査結果(2026年6月時点)」を公表しました。2024年問題の影響を感じる企業割合は56.3%と低下傾向にあるものの、輸送力確保の厳しさや業種間格差、さらには2026年4月に本格施行された改正物流効率化法に伴う「物流統括管理者(CLO)」の運用実態における課題が浮き彫りになっています。
NX総研短観が示す2026年6月時点の需給バランスと運賃動向
今回の調査結果では、2024年4月の時間外労働上限規制から2年以上が経過し、物流の混乱が「激震のフェーズ」から「構造的定着のフェーズ」へ移行している実態が定量データとして示されました。
需給ギャップと運賃上昇率の推移
2026年6月調査における主要指標と、前回(2026年3月)調査からの推移は以下の通りです。
| 調査項目 | 2026年3月調査 | 2026年6月調査 | 変化・推移動向 |
|---|---|---|---|
| 2024年問題の「影響がある」割合 | 56.9% | 56.3% | 0.6pt低下(緩やかな改善傾向が継続) |
| 輸送力確保が「厳しい傾向」の割合 | 65.8% | 64.4% | 1.4pt低下(3月以降低下傾向) |
| トラック運賃「5%以上上昇」の割合 | 51.1% | 49.3% | 1.8pt低下(2025年12月以来の50%割れ) |
| 対策に「すでに取り組んでいる」割合 | 51.4% | 52.4% | 1.0pt上昇(荷主の対策実行率は漸増) |
2024年問題の影響について「影響がある」と回答した企業は56.3%、「影響はない」は40.4%となりました。「影響がある」の比率は低下傾向を維持しているものの、依然として過半数の企業が影響下にあることを示しています。
トラック輸送力の確保については、「やや厳しい(59.4%)」と「非常に厳しい(5.0%)」を合わせた「厳しい傾向」が64.4%に達しました。2025年12月のピーク以降、緩やかに低下しているものの、6割以上の企業が車両の手配難に直面しています。
運賃動向では、「やや高くなった(3〜5%未満)」が43.1%、「高くなった(5〜10%未満)」が40.6%、「非常に高くなった(10%以上)」が8.7%でした。5%以上運賃が上昇した企業の比率は49.3%となり、2025年12月調査以来初めて半数を下回りました。運賃の急激な高騰圧力には一服感が見られるものの、日本銀行の「企業向けサービス価格指数」における陸上貨物輸送指数や海上貨物輸送指数は高水準を維持しており、輸送コストの高止まりが続いています。
業種間で広がる影響度の二極化
全体的な数値が落ち着きを見せる一方で、業種ごとの二極化が進んでいます。
- 影響を感じている割合が高い業種: 「木材・家具(79.2%)」「食料品・飲料(78.3%)」
- 輸送力確保が厳しい割合が高い業種: 「輸送用機械(77.4%)」「食料品・飲料(74.5%)」
- 運賃が5%以上大幅上昇した業種: 「その他の製造業(68.8%)」「繊維・衣服(66.7%)」
重量物や嵩高品を扱う分野、配送頻度が高くリードタイムが厳しい食品分野などでは、依然として約8割の企業が強い影響と輸送力不足を報告しています。
参考記事: 改正物流効率化法と野村総合研究所が示す輸送費34%増への必須対応
荷主企業の取り組み状況と自社完結の限界
2024年問題への対策について、「すでに取り組んでいる」企業は52.4%と過半数を超え、「取り組みを検討している(19.0%)」と合わせると7割超の荷主が動き出しています。
具体的な取り組み内容では、自社内で完結しやすい施策が上位を占めています。
- 輸送スケジュールやリードタイムの緩和: 59.2%
- バラ積みを廃し、発着一貫のパレット利用を推進: 38.8%
- ドライバーによる荷役を廃し、自社社員による荷役へ変更: 36.5%
- バース予約システム導入などドライバーの負担軽減: 32.2%
- モーダルシフトの推進: 29.0%
- 共同配送など他社との連携: 23.5%
リードタイムの延長や荷役の自社負担化、バース予約システムの導入が進展する一方、「共同配送など他社との連携」は2割強にとどまり、「まったくしていない」と回答した割合が高い水準のまま横ばいとなっています。自社単独でのカイゼンには限界が近づいており、他社との協調領域拡大が進んでいない実態が浮き彫りになりました。
CLO(物流統括管理者)の選任役職と浮き彫りになった課題
2026年4月に本格施行された改正物流効率化法により、特定荷主および特定連鎖化事業者に対してCLOの選任が法的に義務付けられました。本調査における選任役職の内訳と運用上の懸念点は以下の通りです。
| 項目 | 構成比 | 主な実務内容および懸念事項 |
|---|---|---|
| 物流部門の長(本部長・部長) | 25.2% | 現場実務に精通している一方、他部門への統制力に制約 |
| 物流管掌執行役員 | 21.7% | 経営と現場を橋渡しし、全社的な施策を主導 |
| 会社法上の取締役 | 20.3% | 経営トップレベルの権限を持ち、部門間調整を直接執行 |
| 当面は選任の予定なし | 7.7% | 対象基準の未把握や体制準備の遅れ |
| 形式的な事務作業の増加 | 18.3% | 中長期計画の策定や定期報告が形式的書類作成に留まる懸念 |
| 営業・製造部門との調整力不足 | 17.6% | 既存事業部門の権限が強く、実効性のある物流見直しが困難 |
CLOの選任役職は部長級から取締役級まで分散しており、特定荷主の間でも配置の温度差が見られます。運用上の懸念として、形式的な対応による事務負担増(18.3%)や、営業・製造部門との力関係による社内調整の困難さ(17.6%)が上位に挙がっており、CLOに実質的な権限を持たせられるかが成否の分かれ目となっています。
参考記事: 改正物流効率化法による特定事業者の年間9万トン基準とCLO選任の必須対応
サプライチェーン各プレイヤーに及ぶ構造的影響
本調査の結果は、製造業者、運送事業者、テクノロジーベンダーのそれぞれに新たな対応を求めています。
製造業者・メーカーへの影響
製造業者においては、CLOのリーダーシップによる「商物分離」と「社内トレードオフの解消」が急務です。
取締役や執行役員クラスをCLOに据えた企業(約42%)では、物流を起点とした生産計画の平準化や営業ルールの再設計が進みつつあります。一方、部長級を据えた企業では、営業部門の「無理な短納期要求」や製造部門の「過剰なロット生産」を是正できず、物流コストの増加や車両確保難を招くリスクが残ります。CLOに全社横断の是正命令権を付与し、サプライチェーン全体を同期化させることが事業継続の鍵となります。
参考記事: 国土交通省など3省の最大25%輸送力不足対策|荷主企業の構造改革が必須対応に
運送事業者への影響
運送事業者にとっては、運賃上昇率の鈍化に伴い、価格交渉の難易度が再び高まっています。
5%以上の運賃引き上げを実施した荷主が半数を下回ったことは、一律の「お願いベースの値上げ」が通りにくくなっていることを示唆しています。燃料高や人件費上昇が続く中、運行データや待機時間の客観的エビデンスを提示し、荷役作業や附帯業務の対価を明確に分離して請求する「データ駆動型の適正取引」への転換が不可欠です。
参考記事: CUBE-LINX調査、中小運送会社の42.2%が収益悪化|正直者が報われない2024年問題の必須対応
SaaS・テクノロジーベンダーへの影響
共同配送などの他社連携が23.5%にとどまり停滞している状況は、テクノロジーベンダーにとって大きな事業機会を意味します。
個別企業の自社努力だけでは、トラック積載率の向上や長距離運行の維持に限界が訪れています。企業間の荷物データや空車情報をセキュアにマッチングするプラットフォームや、標準パレット(T11型)の共同利用を支えるオープンなデータ基盤を提供するプレイヤーが、今後の市場で存在感を高めることになります。
LogiShiftの視点(独自考察)
物流の2024年問題は、法改正直後の混乱期を抜け、「構造的定着のフェーズ」に入りました。NX総研の分析が指摘するように、本質は「2024年を起点とした長期的な供給制約」であり、問題が解消したわけではありません。
自社完結型カイゼンの限界と「協調領域」への移行
調査結果が示す通り、リードタイム緩和(59.2%)やパレット化(38.8%)といった自社内の取り組みは一定の進展を見せました。しかし、これらは「自社の敷地内で完結する施策」をやり切った段階に過ぎません。
今後、2030年に向けて生産年齢人口が急減し輸送能力の不足が深刻化する中、自社単独の最適化だけでは輸送網を維持できなくなります。停滞している「共同配送」を機能させるためには、競合他社ともインフラを共有するフィジカルインターネットの概念を取り入れ、非競争領域におけるデータ連携基盤を早期に確立することが求められます。
参考記事: 総合物流施策大綱が示す2030年度輸送力25%不足に荷主の経営改革が必須
「名ばかりCLO」を打破するガバナンス設計
CLOの選任において、17.6%の企業が「営業・製造部門の力が強く実効性のある調整ができない」と懸念している点は、日本企業の組織的課題を端的に示しています。
CLOを単なる法対応の窓口に終わらせないためには、職務権限規程を改定し、他部門に対する強力な権限を明文化する必要があります。具体的には、営業部門が設定した非効率な小口特急便の追加コストを営業部門の損益(P/L)へ直接配賦するなど、評価制度と連動したガバナンス体制の構築が、制度の形骸化を防ぐ実践的な解決策となります。
参考記事: 日本貨物鉄道の5月25日公開提言書が迫る、経営課題化への必須対応
まとめ
NX総合研究所の最新調査は、運賃上昇の一服感の裏で、輸送力確保の難しさや業種間格差、社内調整の壁といった構造課題が依然として根深いことを明らかにしました。持続可能なサプライチェーンを構築するために、明日から取り組むべきアクションは以下の3点です。
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自社の輸送力確保状況と物流コストを業種・ルート別に再点検する
自社の取り扱う商材や配送ルートごとの車両確保率を数値化し、手配難易度の高い区間や荷待ち時間が長い拠点を特定してください。 -
CLOの職務権限規程を見直し、全社横断の調整権限を明文化する
CLOが営業部門の受注条件や製造部門の出荷計画に対して是正を指示できるよう、社内ルールと評価連動の枠組みを整備してください。 -
他社との共同配送や標準化(T11型パレット導入等)の検討に着手する
自社完結の効率化にとどまらず、同業他社や近隣荷主との協調輸送スキームへの参画を進め、中長期的な輸送キャパシティを確保してください。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: LOGI-TODAY
出典: 野村総合研究所



