コクヨグループの株式会社カウネットは2026年8月20日、代表取締役社長の宮澤典友氏がCLO(最高物流責任者)に就任し、経済産業省への届出を完了したと発表しました。EC・オフィス通販大手の経営トップ自らが物流改革の舵を握り、配送条件の緩和や最新鋭拠点の整備、データ連携を主導する動きは、物流2024年問題以降の持続可能なサプライチェーン構築における先駆的モデルとなります。
カウネットが推進する「荷主主導型」物流構造改革の全容
政府が策定した「物流革新に向けた政策パッケージ」や2026年4月に本格稼働した改正物流効率化法では、一定規模以上の荷主企業に対して役員級のCLO(物流統括管理者)の選任が求められています。カウネットでは、代表取締役社長が自らCLOを兼務することで、物流部門単体の改善にとどまらず、商流のルール設定から拠点投資、配送オペレーションに至るサプライチェーン全体の最適化を経営の最優先課題として推進しています。
カウネットの物流改革に関する主要事実
今回の発表における体制構築および主要な物流施策の概要は以下の通りです。
| 項目 | 詳細内容 | 目的・狙い |
|---|---|---|
| 発表主体・体制 | 株式会社カウネット(代表取締役社長 兼 CLO 宮澤 典友 氏) | 経営トップ直轄で全社的な物流構造改革を強力に牽引するため |
| 発表日・稼働時期 | 2026年8月20日発表、新拠点「東北IDC」は2026年10月稼働予定 | 東北・北海道エリアの配送体制強化とグループ全体の配送網最適化 |
| 主な定量的成果 | 当日配送の約36%が翌日配送へ移行、2時間超荷降ろし94%削減 | ドライバーの待機・荷役時間削減および夕方の配送集中緩和 |
| 商流・配送条件の改定 | 送料無料基準を3,500円(税込)へ引き上げ、卸インフラを宅配へ統合 | まとめ買いの促進による配送件数抑制と積載効率の向上 |
2022年からの物流改革タイムライン
カウネットはCLO選任以前から、段階的に配送平準化やデジタル技術の導入を推進してきました。これまでの主な施策の歩みは以下の通りです。
| 年月 | 導入施策・マイルストーン | 主な内容と定量的効果 |
|---|---|---|
| 2022年 | AI需要予測の導入 | 季節変動が大きい飲料品やオフィス家具の在庫補充を最適化し、欠品を抑制 |
| 2023年2月 | Web注文後10分以内キャンセル機能 | 誤発注による不要な出荷・配送を未然に防止 |
| 2023年 | オリコン納品の導入 | 一部サプライヤーからの詰め合わせ納品を折り畳みコンテナへ切り替え、資材削減 |
| 2024年 | バース予約システム導入・異業種共配開始 | トラック接車時間を可視化。大阪市内で異業種パートナーと共同配送を開始 |
| 2025年7月 | 当日選択式サービスの開始 | 通常配送を翌日とし希望時のみ当日配送とする運用へ移行。当日便の36%が翌日へ |
| 2026年1月 | カウ得!ポイントUPカレンダー公開 | 特価日をカレンダー形式で事前開示し、曜日や日付をまたいだ受注の分散・平準化を促進 |
| 2026年2月 | 最新鋭拠点「東北IDC」竣工 | 宮城県仙台市泉区に竣工。テストフェーズを経て2026年10月稼働へ |
| 2026年6月 | 配送料自社負担の基準改定 | 配送料無料の注文金額基準を3,500円(税込)以上に引き上げ |
| 2026年8月 | 社長自らCLO就任・改革実績を公表 | 経済産業省への届出完了。15項目の物流改革施策と成果を広く公表 |
参考記事: 改正物流効率化法と野村総合研究所が示す輸送費34%増への必須対応
配送平準化と現場負荷軽減を実現する多面的な施策
カウネットが公表した物流改革は、顧客へのサービス設計、サプライヤー連携、庫内DX、輸配送効率化など多岐にわたります。
1. 顧客インターフェースと商流の見直しによる需要平準化
EC・通販事業における最大の物流負荷要因である「即日配送」と「突発的な注文集中」に対し、同社は顧客側の行動変容を促す仕組みを実装しました。
- 当日選択式サービス: 従来の「デフォルトで当日配送」を見直し、「標準を翌日配送とし、必要な場合のみ当日配送を選択する」UI/UXへ刷新しました。これにより、物量の約36%が翌日配送へ移行し、夕方15〜18時台の配送集中が9.4パーセントポイント緩和。配送完了時間前倒しに伴い、一部配送ドライバーの労働時間が1時間短縮されました。
- カウ得!ポイントUPカレンダー: セール日をあらかじめ可視化することで、顧客の計画購買を促進し、特定日への受注スパイク(急増)を抑制して物流センターの稼働平準化を図っています。
- 配送料基準の引き上げと購買集約: 配送料無料の注文金額基準を3,500円(税込)以上に改定したほか、間接材購買管理システム「べんりねっと」による注文集約を進め、小口多頻度配送の抑制と一括配送率の向上を両立させています。
2. 入荷・輸送オペレーションの適正化
荷主主導によるサプライチェーンの効率化として、荷役作業とトラック運行の最適化を徹底しています。
- パレット入荷の推進と手荷役削減: 仕入先からの入荷をパレット単位へ切り替え、ガイドラインを整備した結果、対象サプライヤー5社において2時間を超える荷降ろし件数が年間17件から1件へと約94%削減されました。
- バース予約システムの活用: 2024年に導入したバース予約システムにより車両到着時間を可視化し、待機時間の解消と輸送会社とのデータに基づく改善交渉を定着させています。
- 異業種との共同配送: 配送の繁閑パターンが異なる異業種パートナーと大阪市内で共同配送を展開。パートナー企業の平日積載効率が約15%、カウネットの週末積載効率が約28%向上し、年間でトラック運行約2,000台、CO₂排出量約5.8tの削減を達成しました。
- 卸配送インフラの統合: 従来の文具卸ルート配送(早朝納品や納品書手渡し等の特殊運用)を廃止し、通販カウネットの一般路線・宅配モデルへ統合することで積載効率を大幅に高めました。
3. AIと次世代マテハンを活用した拠点ネットワークの高度化
2026年10月に本格稼働を予定している宮城県仙台市泉区の最新鋭拠点「東北IDC(北日本物流センター)」では、高度な自動化技術が導入されます。
| 項目 | 東北IDCの仕様・導入技術 | 期待される効果・数値目標 |
|---|---|---|
| 施設規模・構造 | 地上4階建て施設の2〜3階部分を賃借(賃借面積約7,000坪、施設全体延床約4.95万㎡) | 東北・北海道エリアの配送リードタイム短縮と品揃え強化 |
| マテハン制御基盤 | 日立製作所の統合型マテハン制御システム「ユニバーサルWCS」および「LogiRiSM」 | 複数マテハンの統合制御による搬送計画の最適化 |
| 自動保管・ピッキング | HAI ROBOTICSの昇降・高密度保管型GTP「HaiPick Climb System」を国内初本格導入 | 最大27万SKUの高密度保管、既存主要拠点比で庫内生産性約40%向上 |
| 業務効率化目標 | AI需要予測に基づく在庫最適配置、サプライヤー58社とのリアルタイム在庫連携 | 棚卸工数を50〜70%削減、複数拠点からの分割配送(別送)を削減 |
参考記事: 年9万トン超の荷主に改正物流効率化法での物流統括管理者選任が必須対応に
業界への具体的な影響
カウネットによる経営トップ兼CLO体制の確立と一連の施策は、EC事業者、運送事業者、荷主企業全般に大きな影響を与えます。
EC・通販事業者:過剰サービス競争からの脱却と「選べる物流」の標準化
従来のEC業界では「最短即日配送」「送料無料」が顧客獲得の武器とされてきましたが、物流リソースの逼迫によりその維持コストは限界に達しています。カウネットが「当日選択式」によって当日便の36%を翌日へ移行させた実績は、顧客に対して適切な選択肢を提供すれば利便性を損なわずに物流負荷を平準化できることを証明しました。今後、EC各社において「翌日配送を標準とし、急ぎの顧客のみ当日配送を選択させる」インターフェース設計や、出荷波動を抑えるポイント施策の導入が業界標準として広がると見られます。
運送事業者・3PL:運行管理の予見可能性向上と待機時間の大幅短縮
運送事業者にとって、荷主側がバース予約の導入やパレット化、リードタイムの緩和に主体的に取り組むことは、ドライバーの拘束時間短縮と車両回転率の向上に直結します。カウネットの事例のように、2時間超の荷待ちが94%削減され、夕方の配送集中が緩和されることで、運送会社は無理のない運行計画を組むことが可能になります。また、客観的なデータに基づき荷主と運送会社が対等に協議できる関係性が構築されるため、持続的なパートナーシップの確立につながります。
行政・特定荷主企業:名ばかりCLOを打破する「経営直結型」の実践事例
2026年4月の改正物流効率化法施行により、特定荷主には役員クラスのCLO選任が法的に義務付けられました。しかし、一部では既存の物流部長の肩書を変更しただけの「名ばかりCLO」にとどまり、営業部門や販売施策にメスを入れられないケースが懸念されています。カウネットのように代表取締役社長自らがCLOに就任し、送料無料基準の改定やセール時期の平準化、異業種共配といった商流・経営判断を伴う改革を断行した事例は、行政が求めるCLOの理想像として今後の特定荷主企業のモデルケースとなります。
参考記事: 選任が迫る物流統括管理者と改正物流総合効率化法2026年への必須対応
LogiShiftの視点(独自考察)
カウネットの物流改革の本質は、物流を現場のオペレーション課題としてではなく、「商流(売り方・価格・納期)をコントロールして物流負荷を制御する」という『荷主主導型物流最適化』へのパラダイムシフトにあります。
商流と物流の統合制御がもたらすブレイクスルー
物流現場の効率化(マテハン導入や配車組み)だけでは、急激な出荷波動や過剰な即日納品要求を吸収しきれません。真の物流効率化は、マーケティングや営業のルール変更からしか生まれないのが実情です。カウネットが成功を収めている要因は、以下の3つの商流制御を物流改革と直結させた点にあります。
- 納期の適正化: 「当日選択式」によって顧客側の過剰な即納要求を自然に抑制
- 需要波動の平準化: 「ポイントUPカレンダー」で突発的なセール集中を分散
- ロットの適正化: 送料無料基準を3,500円(税込)に引き上げ、まとめ買いを誘発
社長自らがCLOを務めることで、営業部門やマーケティング部門との利害対立をトップダウンで解消し、商流と物流の同期化を成し遂げています。
協調領域へのシフトとフィジカルインターネットへの接続
同社が取り組む「大阪市内での異業種共同配送」や「サプライヤー58社との在庫情報連携」は、自前主義からの脱却を示しています。輸送力不足が深刻化する中、1社単独で車両や拠点を満載・フル稼働させることは困難です。荷主自身が他社との協調領域を広げ、標準パレットの活用や共同配送プラットフォームへ接続していく姿勢こそが、2030年に向けた企業の生存戦略となります。
参考記事: フィジカルインターネットセンターが示す2026年4月CLO義務化への必須対応
まとめ
カウネットの事例は、経営トップが物流の最高責任者として主導権を握ることで、サービス品質の維持と現場の負荷軽減が両立できることを明確に示しました。サプライチェーンの維持に向けて、経営層および現場リーダーは以下の取り組みを直ちに進めるべきです。
- 商流ルールの総点検と物流負荷の可視化
即日配送の標準設定や不定期な特売キャンペーンなど、自社の商慣行が引き起こしている配送集中やトラック待機時間をデータで把握し、注文受付条件の見直しを検討する。 - CLOへの実質的な決定権限の付与
物流部門だけでなく、営業・マーケティング・IT部門を横断して取引条件や配送リードタイムの改定を指示できるガバナンス体制を構築する。 - パレット化とデータ連携によるスモールスタート
主要サプライヤーとのパレット入荷切り替えやバース予約システムの導入、近隣他社との共同配送など、着手可能な協調領域から段階的に効率化を推進する。
物流をコストセンターではなく競争力の源泉として位置付け、商流と物流を一体で再設計する企業こそが、持続可能なサプライチェーンを確立できます。
出典: コクヨ
出典: LOGISTICS TODAY
出典: 通販通信ECMO
出典: ロジスティクス・ビジネス オンライン
出典: 物流ニュース LNEWS


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