ラピュタロボティクスは2026年9月2日、食品卸大手の加藤産業の新物流センターにおいて自在型自動倉庫「ラピュタASRS」が採用されたと発表しました。高度な現場改善が先行し自動化投資の費用対効果(ROI)が出にくい食品卸業界において、保管効率の向上と段階的な拡張性を軸とした大規模自動化モデルとして注目を集めています。
加藤産業の新拠点における「ラピュタASRS」採用の全容
食品卸売業の物流現場は、多品種・小ロット・高頻度配送を支えるため、長年にわたる現場改善の積み重ねによって極めて高いピッキング生産性を維持してきました。そのため、作業員を削減するだけの単純な省人化効果では設備投資の回収計画が描きにくく、固定型自動倉庫の導入が躊躇されやすい構造的背景がありました。
加藤産業は今回の新物流センター構築において、単純な人件費削減にとどまらず、空間利用効率の最大化、災害や需要変動に対する事業継続性(BCP)、将来の物量増加に柔軟に応じるスケーラビリティを評価し、「ラピュタASRS」の導入を決定しました。
今回の導入計画における主要なスペックおよび想定効果は以下の通りです。
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 発表主体 | ラピュタロボティクス株式会社、加藤産業株式会社 |
| 発表日 | 2026年9月2日 |
| 導入設備 | 自在型自動倉庫「ラピュタASRS」 |
| 対象拠点 | 加藤産業 新物流センター |
| 省スペース効果 | 従来想定比で保管必要面積を約25%(約150坪/約500㎡相当)削減 |
| 省人化効果 | 保管・ピッキング工程の自動化により必要人員を約70%低減見込み |
| 構造的特徴 | アンカーレス構造による段階的拡張性、耐震性・柔軟なレイアウト設計 |
参考記事: 自動倉庫の仕組みと種類を解説|導入メリットや失敗しない選定基準まで
アンカーレス構造が実現する柔軟な拡張性と空間効率
「ラピュタASRS」は、床面へのアンカーボルト固定を必要としない独自のアンカーレス構造を採用しています。従来の固定式スタッカークレーン型自動倉庫とは異なり、建屋への負荷を抑えながら短工期での設置が可能です。
この構造により、将来的な取扱物量の拡大や荷姿パターンの変化に応じて、ロボットや保管棚を段階的に増設・再配置できます。高さ方向を有効活用することで、従来の重量ラック運用と比較して約150坪の省スペース化を達成し、限られた庫内面積における保管効率を大幅に引き上げます。
安定供給を支える現場負荷の低減と運用継続性
食品卸物流では、賞味期限管理に加えてケース・ボール・バラといった多様な荷姿への即応性が求められます。今回のシステム導入により、作業員の歩行時間や重い商品の搬送負担を削減し、ピッキング工程に関わる人員を約70%低減する見込みです。
加藤産業のロジスティクス本部執行役員である矢澤雄一氏は、自動化推進にあたり「毎日の安定供給を支えるインフラとして、地震や停電などの非常時にも継続運用できる仕組みが求められる」と述べており、柔軟な冗長性を持つモジュール型自動化が業界全体のスマート物流基盤構築につながる期待を示しています。
【ラピュタASRS導入による変革】
従来型運用(重量ラック+人手ピッキング)
└ 課題: 広大な保管面積が必要/歩行・搬送負荷大/固定設備化のリスク
▼
ラピュタASRS導入後
├ 保管面積: 約25%削減(約150坪の省スペース化)
├ 必要人員: 約70%低減(Goods to Person化による負担軽減)
└ 拡張性: アンカーレス構造により事業成長に応じた段階増設が可能
参考記事: 物流自動化とは?導入メリットや主要設備・失敗しない進め方を徹底解説
食品流通と物流自動化市場への3つの波及効果
大手食品卸である加藤産業がモジュール型の自在型自動倉庫を採用したことは、物流サプライチェーンに関わる各プレイヤーに大きな影響を与えます。
卸・問屋・流通業者:固定費リスクを抑えたスケーラブルな設備投資への転換
食品卸業界では、物流2024年問題以降の人手不足への対応と、限られた都市近郊拠点の地価・賃料高騰が二重の経営課題となっています。従来の自動倉庫は億単位の初期投資と長期の減価償却を前提とし、物量変動に対するリスクが高い点が障壁でした。
加藤産業の事例は、初期投資を抑えつつ需要の伸びに合わせて段階的にロボットや棚を追加できる「スケーラブルな自動化」の実効性を示しています。人件費抑制だけでなく、保管効率向上による坪効率の改善と事業成長への適応力を両立させる新たな投資基準として、同業他社への普及が進むと考えられます。
参考記事: 三菱食品が草加拠点にSkypod44台導入で食品卸自動化が加速
倉庫内作業員:身体的負荷の解消と管理・オペレーション業務への移行
食品物流センターのピッキング現場は、1日あたり数万歩に及ぶ歩行や重量ケースの持ち運びなど、身体的負荷の高さが離職要因となっていました。
保管からピッキングまでの工程が自動化され、作業ステーションに商品が運ばれるGoods to Person(GTP)運用へと移行することで、作業員は重労働から解放されます。現場スタッフの役割は「歩いて探す作業者」から「自動化システムのエラー監視や在庫品質を管理するオペレーター」へとシフトし、シニアや多様な人材が安定して働ける労働環境の整備につながります。
SaaS・テクノロジーベンダー:固定型マテハンからモジュール型ロボティクスへの潮流
これまで国内の自動倉庫市場は大型クレーンを用いた固定式設備が主流でしたが、ロボティクス技術の進展に伴い、自律走行ロボットを活用した分散型ASRSへの注目が集まっています。
ラピュタロボティクスはピッキングアシストロボット(PA-AMR)で培った群制御技術をASRSに応用し、他社マテハン機器と連携する全体最適ソリューションの展開を加速させています。テクノロジーベンダーにとっては、WMS(倉庫管理システム)やWES(倉庫実行システム)を介して柔軟にロボティクスを接続する「オープンかつ段階導入可能なソリューション」の需要が急速に拡大しています。
参考記事: 物流ロボティクス入門|AGV・AMRの違いと導入手順・費用対効果を徹底解説
LogiShiftの視点:固定資産から「事業成長に追従する可変資産」へのパラダイムシフト
今回の加藤産業による「ラピュタASRS」採用は、物流自動化が「一度設置したら変えられない固定設備」から、「事業成長や物量に合わせて最適化できる可変資産」へと変容している構造的変化を象徴しています。
従来の食品卸におけるマテハン選定は、5〜10年後のピーク物量を予測して設備仕様を決定する「過剰投資リスク」を孕んでいました。予測が外れた場合の固定費負担が大きいため、現場改善の工夫で乗り切る選択が取られがちでした。
しかし、アンカーレス構造とモジュール型ロボティクスを組み合わせた自在型自動倉庫は、「現在の物量に合わせた最小限の構成でスタートし、取扱量拡大に応じてロボットや棚を追加する」アプローチを可能にします。不確実性の高い現代のサプライチェーンにおいて、設備投資リスクを最小化しながら自動化の恩恵を即座に享受するモデルとして、今後の標準的な調達手法となる可能性を示唆しています。
まとめ:明日から意識すべき3つの実践アクション
食品卸における自動化投資の新モデルを踏まえ、物流責任者や現場リーダーが明日から取り組むべきアクションは以下の通りです。
- 自社拠点の「坪効率」と「ピッキング歩行比率」を再計測する
庫内の保管面積に対する収容効率と、作業時間全体に占める「歩行・運搬時間」の割合を定量化し、高密度保管とGTP化による改善ポテンシャルを洗い出してください。
- 自動化の評価軸に「段階的拡張性(スケーラビリティ)」を組み込む
単一の省人化人数だけでなく、物量増加に応じたモジュール追加の容易さや、床工事不要のアンカーレス構造といった撤去・移設の柔軟性を投資判断基準に加えてください。
- 部分導入が可能なロボティクス・自動倉庫の比較検討を開始する
拠点全体の全面刷新に縛られず、特定カテゴリや高頻度出荷SKUを対象としたスモールスタートが可能な自動倉庫ソリューションの情報収集を進めてください。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: PR TIMES(ラピュタロボティクス株式会社 プレスリリース)



