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Home > 物流DX・トレンド> 高輪ゲートウェイでJR東日本とABEJAが実証|7軸双腕ロボとフィジカルAIで挑む「荷役×搬送」の完全自動化
物流DX・トレンド 2026年9月3日

高輪ゲートウェイでJR東日本とABEJAが実証|7軸双腕ロボとフィジカルAIで挑む「荷役×搬送」の完全自動化

ABEJAとJR東日本、7軸双腕ロボで挑む館内物流の完全自動化

株式会社ABEJAは2026年9月3日、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)と連携し、大規模開発エリア「TAKANAWA GATEWAY CITY」において、フィジカルAIを活用した館内物流の完全自動化に向けた実証プロジェクトを開始したと発表した。本実証では、7軸関節を持つ双腕ロボットが人間の実演データを基盤モデルで模倣学習し、弁当などの対象物を自律認識してデリバリーロボットの棚奥へ適切に積み込む一連の受け渡しプロセスを検証している。

TAKANAWA GATEWAY CITYで始動したフィジカルAI実証の全貌

実証実験の概要と技術的ブレイクスルー

本実証実験は、JR東日本が品川車両基地跡地で推進する大規模複合開発「TAKANAWA GATEWAY CITY」を舞台に実施されている。これまで館内物流における最大の技術的難所とされてきた「荷役(ロボットアームによるピッキング・積み込み)」と「搬送(自律走行型デリバリーロボット)」の結節点を、フィジカルAIによって完全無人化することを目指す取り組みである。

従来の産業用ロボットは、あらかじめミリ単位でプログラミングされた条件下でのみ動作するため、現場で発生する荷物の位置ずれや傾き、対象物の形状や柔らかさといった個体差に柔軟に対応することが困難であった。しかし本プロジェクトでは、ABEJAが現場の不確実性を前提としたAI基盤モデル「ABEJA Platform」を適用。人間が双腕ロボットに対して手本となる動作を実演し、その際のカメラ映像(視覚情報)、関節の角度、力加減などの操作データをAIに模倣学習させるアプローチを採用している。

これにより、AIが「卓上に置かれた弁当」を自律的に対象物として認識し、7軸関節の双腕を協調動作させながら把持し、デリバリーロボットの棚口に置いたうえで奥まで適切に押し込むという、人間に極めて近い繊細なプロセスを自律実行することに成功した。

項目 詳細内容
発表日 2026年9月3日
参画主体 株式会社ABEJA、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)
実証場所 TAKANAWA GATEWAY CITY(東京都港区)
使用ロボット 7軸関節双腕ロボット、自律走行型デリバリーロボット
適用技術 フィジカルAI基盤モデル(視覚・関節角度・力加減の模倣学習)
対象物・検証作業 弁当の自律認識、把持、デリバリーロボットへの積み込み・押し込み
最終目標 荷役から移動搬送までを無人化する館内物流の完全自動化

高輪ゲートウェイを巡るロボット実装の時系列

TAKANAWA GATEWAY CITYにおけるロボティクスの実装は、段階的な検証を経て進められてきた。これまでの経緯と今回のフィジカルAI実証への流れは以下の通りである。

年月 出来事 主な内容と到達点
2020年12月 基本合意書の締結 JR東日本とKDDIが「空間自在プロジェクト」に関する基本合意を締結。
2025年3月 まちびらき(先行開業) 「THE LINKPILLAR 1」の一部先行開業に伴い、自律配送ロボットの実装検証を開始。
2025年11月 ロボット配送サービスの開始 ニュウマン高輪のテナント商品を対象に、デリバリーロボットによる配送を順次運用。
2026年3月 まちグランドオープン 「THE LINKPILLAR 2」や周辺施設が全面開業し、都市型ロボット共生インフラが拡張。
2026年9月 フィジカルAI実証の開始 ABEJAとJR東日本が連携し、双腕ロボットによる荷役受け渡しの自動化実証を公表。

これまでの取り組みが「通路を自律走行して目的地へ届ける」という搬送フェーズを中心としていたのに対し、今回は「人が手作業で行っていたロボットへの荷物積載」を双腕ロボットが代替するステップへ踏み込んだ点が極めて大きな前進である。

参考記事: 物流ロボティクス入門|AGV・AMRの違いと導入手順・費用対効果を徹底解説

国策としてのフィジカルAI開発支援と市場環境

今回の実証の背景には、国を挙げたフィジカルAI基盤モデル開発の後押しがある。経済産業省および新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2026年6月30日に「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」を採択し、製造・物流・介護分野などの実世界データを活用した基盤モデル構築を国家プロジェクトとして推進している。さらに経済産業省の2027年度概算要求(2026年8月提出)においても、AI・半導体・ロボット関連予算として1兆9,913億円が要求されており、フィジカルAIの早期社会実装は重点政策に位置付けられている。

2024年4月に施行されたトラックドライバーの時間外労働上限規制(年960時間)以降、幹線輸送のみならず、ビルや商業施設における「ラストワンマイル・ラスト10フィート」の滞留時間削減が物流効率化の必須要件となっている。現場の不確実性を吸収できるフィジカルAIのロボティクス実装は、こうした人手不足を根本から解決する技術基盤として位置付けられている。

参考記事: 物流自動化とは?導入メリットや主要設備・失敗しない進め方を徹底解説

館内物流の完全自動化が主要プレイヤーに与える影響

SaaS・テクノロジーベンダー:現場調整を不要にする「基盤モデル型ロボティクス」への転換

AI開発企業やロボティクスSaaSを展開するベンダーにとって、本件はロボット制御のアーキテクチャが根本から変化したことを示している。

従来のロボットSI(システムインテグレーション)では、荷物の形状や配置環境が変わるたびに、エンジニアが現地でルールベースのティーチングや画像認識の再設定を行う必要があり、これが莫大な導入コストと期間(いわゆるPoCの長期化)を生んでいた。

ABEJAが示したフィジカルAIによる模倣学習アプローチは、少数の実演データから関節のトルクや視覚情報を基盤モデルが統合処理し、未知のズレに対して自律的に軌道修正を行う。これにより、ソフトウェアのクラウド配信と最小限の追加学習で多様な荷物・環境に対応できるようになり、ロボティクスSaaSの水平展開スピードが飛躍的に加速する。

物流施設デベロッパー・都市開発事業者:荷役と搬送のシームレス統合による施設価値向上

大規模複合ビルや物流施設を開発・運営するデベロッパーにとって、館内物流の自動化は不動産価値を左右する重要設備となる。

これまでの館内搬送ロボット導入では、搬送ロボットが到着しても「店舗スタッフが荷物を積み込み、オフィスフロアで受取人が取り出す」という同期作業が残存しており、人の業務を中断させる課題があった。荷役を担う双腕ロボットと自律走行ロボットが連携すれば、バックヤードでの集約・仕分けから各フロアへの配送まで、完全無人でオペレーションを完結させることが可能になる。

施設全体が知能化された自動物流インフラを備えることは、テナント店舗の採用難対策や人件費抑制に直結し、競合施設に対する強力な差別化要素となる。

参考記事: 三井不動産、八重洲でロボ4台導入!AIとデジタルツインで館内物流を自動化

小売・飲食テナント:ピーク時の出荷・積み込み作業からの完全解放

商業施設やオフィスビル内に出店する飲食店・小売店舗にとって、配送準備にかかる工数の削減は営業利益率の改善に直結する。

ランチタイムなどのピーク時間帯において、店舗スタッフがデリバリー用の商品を梱包し、指定の配送場所へ運んだりロボットに1点ずつ詰め込んだりする作業は、本来の接客・調理業務を圧迫していた。

双腕ロボットによる柔軟な把持技術が確立されれば、店舗側は所定のピックアップ台に商品を置くだけで、ロボットが弁当の傾きやパッケージの違いを認識して自動でデリバリーロボットへ積み込む。スタッフがロボットの到着を待つ必要がなくなることで、限られた人員での店舗運営を維持することが可能となる。

参考記事: ロボットは人を待たない。米病院で実現した「完全非同期」物流の衝撃

LogiShiftの視点:ハード単体から「荷役×搬送」の自律連携へ

本件が物流業界に示す本質的な示唆は、「自動化の主戦場が『移動(搬送)』から『結節点(荷役・受け渡し)』へ完全に移行した」という点にある。

これまでの物流ロボティクスは、AGV(無人搬送車)やAMR(自律移動ロボット)による「水平移動の自動化」が先行してきた。しかし、移動がどれほど自動化されても、ロボットへの積み込み・積み降ろしに人間が張り付いていては、真の省人化効果は得られない。

世代 主な自動化対象 技術的アプローチ 残存する課題
第1世代 水平搬送のみ 磁気テープ誘導型AGV 経路変更の難しさ、荷役は完全手動
第2世代 自律走行搬送 LiDAR・SLAM搭載AMR 移動は柔軟化するも、積み込み時に人の同期待機が発生
第3世代(現在) 荷役×搬送の統合自動化 フィジカルAI・双腕協調ロボット 現場の不確実性をAIが吸収し、受け渡しから搬送まで無人完結

ABEJAとJR東日本の実証は、7軸関節双腕ロボットが視覚と力加減を自律調整することで、形状が崩れやすい弁当のような不定形物をデリバリーロボットへ受け渡すことに成功した。これは、ハードウェアを個別最適で導入する時代が終わり、フィジカルAIを中核に据えて「荷役アーム」と「搬送モビリティ」を有機的に結合するシステム統合の時代が到来したことを意味している。

2026年現在、AI基盤モデルが物理世界(フィジカル)の身体性を獲得したことで、これまで人手依存から抜け出せなかった施設内ラスト10フィートの自動化は、実証から商用実装のフェーズへと確実に移行しつつある。

館内物流DXに向けて明日から意識すべき3つのアクション

1. 施設内における「受け渡し待機時間」の定量化

配送ロボットや館内物流の導入を検討する際、単に「A地点からB地点への移動時間」を計測するだけでなく、荷物の積み込みや受け取りのためにスタッフが手を止めている「同期待機時間」を測定すること。結節点における時間的ロスを可視化することが、フィジカルAIや双腕ロボット導入の投資対効果(ROI)を正確に試算するための前提条件となる。

2. 取り扱い荷物の個体差と許容公差の棚卸し

自社で扱う荷物や商材(弁当、チルド品、段ボール、アパレル袋など)について、重量・サイズ・外装の柔軟性・位置ずれの許容範囲を分類・整理すること。完全な定形物であれば従来の安価な専用機で対応可能だが、個体差や配置のズレが大きい不定形物については、ABEJAのようなフィジカルAI基盤モデルを適用したロボティクスの活用を前提にシステム要件を定義する必要がある。

3. モビリティと荷役機器のオープン連携仕様の確認

今後導入する搬送ロボット(AMR)や自動倉庫、受渡ロッカーなどの設備が、外部のロボットアームや上位管理システムとAPI連携できる仕様になっているかを事前に検証すること。単一ベンダーの閉じたハードウェアに依存せず、フィジカルAIソフトウェアを介して異種ロボット同士が協調動作できるオープンなシステム設計を選択することが、将来の拡張性を担保する鍵となる。


出典: 物流ニュース LNEWS
出典: PR TIMES(株式会社ABEJA 公式プレスリリース)
出典: 経済産業省 公式発表資料

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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