ロジスティード西日本株式会社は、大同特殊鋼株式会社と株式会社プロテリアルが2026年8月に開始した愛知県と山陰地域を結ぶ鋼材共同輸送に参画しました。
本取り組みは名古屋南駅と伯耆大山駅の間で鋼材専用の鉄道コンテナを往復共同利用するもので、トラックドライバーの総走行時間を約76%削減します。
愛知~山陰間を結ぶ鋼材共同輸送の概要と実務プロセス
特殊鋼メーカー大手2社による幹線輸送の共同化は、単なるトラック輸送から鉄道への置き換えにとどまらず、専用コンテナのラウンドユース(往復利用)と3PL拠点を融合させた運用体制を構築しています。
往復路の荷物を組み合わせるラウンド型輸送の仕組み
従来、大同特殊鋼は愛知県から山陰地域へ、プロテリアルは山陰地域から愛知県へ、それぞれ自社手配のトラックを用いて製品を片道輸送していました。この体制では、納品を終えたトラックが復路に空車で走行するか、個別に帰り荷を探す必要があり、積載効率の低下や運行の非効率が生じていました。
新体制では、愛知県と山陰地域を結ぶ幹線輸送をJR貨物の鉄道網へと転換しました。大同特殊鋼が保有する鋼材専用の鉄道コンテナを使用し、往路と復路で荷主を入れ替えて輸送容器を循環させる「ラウンドユース」を実施しています。
【従来の輸送体制】
大同特殊鋼:愛知県 ──(個別トラック輸送・片道)──> 山陰地域(復路は空車回送等の非効率)
プロテリアル:山陰地域 ──(個別トラック輸送・片道)──> 愛知県(復路は空車回送等の非効率)
【今回の共同輸送スキーム】
[往路]愛知県(大同特殊鋼製品) ──> 名古屋南駅 ──[鉄道幹線輸送]──> 伯耆大山駅 ──> 安来物流センター(島根県安来市)
│
(ロジスティード西日本が荷降ろし・保管)
│
[復路]愛知県豊田市等 ──[ドレージ]── 名古屋南駅 ──[鉄道幹線輸送]── 伯耆大山駅 <──(プロテリアル製品積込)┘
具体的な運行フローは以下の通りです。
往路では、愛知県の大同特殊鋼の製造拠点から出荷された特殊鋼材が名古屋南駅(愛知県)へ持ち込まれ、専用コンテナに積載されて鉄道で伯耆大山駅(鳥取県米子市)へと輸送されます。伯耆大山駅に到着したコンテナはトラック(ドレージ)で二次輸送され、ロジスティード西日本が運営する安来物流センター(島根県安来市)に搬入されます。
安来物流センターにおいてロジスティード西日本が大同特殊鋼の製品を荷降ろし・保管し、山陰エリアのエンドユーザーへの配送を担います。その後、空になった同じ専用コンテナに対し、近隣に製造拠点を構えるプロテリアルの製品を積み込みます。
復路では、プロテリアル製品を載せたコンテナが再び伯耆大山駅から鉄道に載せられ、名古屋南駅へと輸送されます。名古屋南駅に到着後は、連携事業者である丸太運輸株式会社などが愛知県豊田市などの納品先へ向けたラストワンマイル輸送を担います。納品完了後、空になったコンテナは大同特殊鋼の次期出荷用として再び活用され、切れ目のない往復循環が完了します。
参考記事: モーダルシフトとは?鉄道・船舶への転換メリットと実務での導入ステップを徹底解説
事業推進の時系列と参画各社の役割分担
本プロジェクトは民間企業の連携にとどまらず、国の物流効率化推進策と連動して段階的に実務体制が整備されました。
| 日付・時期 | 出来事・決定事項 | 内容の詳細と実務上の位置付け |
|---|---|---|
| 2026年7月31日 | 国土交通省による補助金交付決定 | プロテリアルとロジスティード西日本による「特殊鋼材物流効率化推進協議会」が、物流効率化推進事業費補助金(運行経費補助)に採択 |
| 2026年8月 | 共同往復輸送の運用開始 | プロテリアル、大同特殊鋼、ロジスティード西日本、丸太運輸が連携し、山陰~愛知間の鉄道往復輸送をスタート |
| 2026年8月20日 | 国土交通省中部運輸局の公表 | 中部地方におけるモーダルシフト事業として、プロテリアルおよびロジスティード西日本の取り組み概要(安来市~豊田市間)が公表 |
| 2026年9月9日 | 取り組みの本格運用・参画発表 | 大同特殊鋼、プロテリアル、ロジスティードが連名・個別にプレスリリースを発行し、新体制の運用成果を公表 |
本スキームに関わる主要4社の役割と機能は、以下のように整理されます。
| 参画企業 | 企業区分 | 本スキームにおける主たる役割と担当業務 |
|---|---|---|
| 大同特殊鋼株式会社 | 発荷主・着荷主(特殊鋼メーカー) | 愛知発・山陰着の往路荷物の提供。自社の鋼材専用鉄道コンテナを往復利用の機材として拠出 |
| 株式会社プロテリアル | 発荷主・着荷主(特殊鋼メーカー) | 山陰発・愛知着の復路荷物の提供。協議会を組成し物流効率化事業を主導 |
| ロジスティード西日本株式会社 | 3PL・物流事業者 | 山陰側の結節点となる安来物流センター(島根県安来市)の運営、荷降ろし・保管・荷役・二次輸送 |
| 丸太運輸株式会社 | 運送事業者・パートナー企業 | 愛知側における鉄道貨物駅(名古屋南駅)からのコンテナ引き取りおよび需要家への配送 |
参考記事: 共同配送とは?仕組みと混載便との違い・導入メリットをわかりやすく解説
特殊鋼輸送特有の課題と数値的改善成果
普通鋼や一般消費財と異なり、特殊鋼材の物流には特有の難しさがあります。特殊鋼は重量物であり、自動車や産業機械向けの重要保安部品に使われる高付加価値材であるため、輸送中の固縛作業や雨濡れ防止、荷崩れ防止に高度な技能が求められます。取り扱い可能な平ボディ車や専属ドライバーが限定されており、ドライバーの高齢化や労働時間規制の強化によって輸送力の逼迫が深刻化していました。
愛知県から山陰地域へは片道約450キロメートル以上の距離があり、トラック直行便ではドライバーの拘束時間が法令の上限に抵触しやすく、日帰り運行は不可能です。こうした制約を打破するために導入された本スキームは、公表された試算データにおいて高い改善効果を示しています。
| 評価指標 | 共同輸送全体(年間期待効果) | プロテリアル側単独(安来市→豊田市) |
|---|---|---|
| CO2排出量削減率 | 約62%削減 | 68.0%削減(年間31.3トン削減) |
| ドライバー拘束・走行時間 | 総走行時間:約76%削減 | 運転時間:81.9%削減(年間532時間削減) |
| 輸送手段の転換 | 愛知~山陰間のトラック直行を廃止 | 名古屋南駅~伯耆大山駅間の鉄道輸送へ転換 |
| 輸送機材の活用方法 | 鋼材専用コンテナのラウンドユース | 往路・復路の積載率100%を維持 |
プロテリアル側の片道ルート試算(国土交通省中部運輸局公表)では、トラックドライバーの運転時間を年間532時間(81.9%)削減できる見通しとなっています。長距離運行を鉄道に委託し、トラックドライバーの運行を貨物駅と荷主・物流センター間の短距離シャトル輸送に限定したことが、大幅な労働時間圧縮に直結しています。
参考記事: 2024年問題を打開!鉄道輸送へのモーダルシフトを成功に導く3つのカギ
物流サプライチェーン各プレイヤーへの具体的な波及効果
大同特殊鋼とプロテリアルという同業メーカーの連携と、ロジスティード西日本による結節点拠点の運用は、関係するステークホルダーに実務上の変化をもたらします。
製造業者・メーカー:輸送キャパシティの安定化とScope3排出量の大幅削減
特殊鋼メーカーにとって、長距離トラックの確保難は製造ラインの出荷停止に直結する重大な事業リスクです。特に山陰地域のような大都市圏から離れたエリアでは、トラック事業者の撤退やドライバー不足の影響を強く受けます。
復路を他社荷物で埋めるラウンドユース型鉄道輸送の構築により、自前で長距離トラックを仕立てる必要がなくなり、安定した輸送枠を中長期的に確保できるようになりました。専用コンテナを往復満載で回すことで、空コンテナの回送費用を発生させず、モーダルシフトに伴うコスト上昇圧力を抑制しています。
環境面では、荷主企業に求められるサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope3 カテゴリ4:上流輸送・配送)を約62%削減します。脱炭素対応の進捗度合いがサプライチェーン維持の条件となる中、具体的な削減数値を伴う鉄道利用実績は、自動車メーカーをはじめとする最終需要家に対する説明力を強化します。
参考記事: NXHDと化学品3社が同一コンテナ往復鉄道輸送で成果|実験が示す競合協調のリアル|
倉庫事業者・3PL:単なる保管請負から共同輸送プラットフォーム提供者への進化
ロジスティード西日本をはじめとする3PL企業にとって、本プロジェクトは事業領域の拡張を意味します。山陰側のハブとなる「安来物流センター」(島根県安来市)は、単なる荷物の保管場所ではなく、異業種・同業種の荷物を集約して鉄道コンテナと地域内輸送を中継する「インターモーダル結節点」として機能しています。
鉄道モーダルシフトの難点は、列車のダイヤと工場の出荷・納品スケジュールが合致しない点にあります。荷主同士が直接コンテナをやり取りしようとしても、納入時刻のズレや荷受先の休業日によってコンテナが駅やヤードで滞留し、回転率が低下します。
ロジスティード西日本が安来物流センターで一時保管と在庫調整機能を担うことで、鉄道の定時運行と各工場の納品ニーズのギャップを吸収しています。3PLが荷主間の物理的・時間的バッファとなることで、ラウンド輸送の実装が可能となりました。倉庫会社が幹線輸送ネットワークの運用設計に深く関与するモデルは、今後の3PLビジネスにおける付加価値の源泉となります。
参考記事: 郵船ロジスティクスが6月10日開始の共同東西ラウンド輸送でモーダルシフトを加速
トラックドライバー:過酷な長距離運行の解消と日帰り勤務へのシフト
実運送を担う運送事業者とトラックドライバーへの恩恵は、拘束時間の劇的な短縮です。
愛知~山陰間の運行は、往復で900キロメートルを超える長距離運行であり、道路渋滞や悪天候の影響を受けやすく、車中泊を伴う不規則な勤務体制を余儀なくされていました。運転時間の年間81.9%削減(プロテリアル側試算)が示すように、ドライバーの担当業務は長距離幹線から、名古屋南駅や伯耆大山駅を起点とした短距離の集荷・配送(ドレージ)へと置き換わりました。
運行距離が日帰り可能な範囲に限定されることで、労務管理が容易になり、時間外労働の上限規制を順守しやすくなります。拘束時間の予測可能性が高まることは、ドライバーの離職防止や若年層・女性ドライバーの採用間口を広げる要因となります。
LogiShiftの視点:重量物輸送における「共同ラウンド型幹線」への構造転換
本プロジェクトは、日本の幹線物流における構造的課題に対する重要な実務モデルを示しています。
長年、鉄道モーダルシフトは飲料や紙パルプ、日用品といった比較的荷姿が標準化しやすい軽量・中量貨物を中心に進められてきました。特殊鋼のような重量物かつ異形物は、積載バランスの難しさ、コンテナ床面の強度制限、荷役用クレーン等の設備制約から、個別トラック輸送への依存が最も根強く残っていた領域です。
大同特殊鋼とプロテリアルの取り組みが示したのは、重量物輸送であっても、専用コンテナの仕様共有と荷主間での往復荷量マッチングが成立すれば、鉄道輸送への移行が十分に機能するという事実です。大同特殊鋼の営業総括部長がコメントしているように、「自社専用コンテナ路線の拡大」と「他社荷物によるラウンドユース」を組み合わせた点が、採算性と持続性を成立させた決定打となりました。
これまで「片道モーダルシフト」を導入した多くの企業が、復路の空コンテナ回送コストに苦しみ、運用を断念してきました。片道利用では、JR貨物駅までの横持ち費用やコンテナ返還費用が嵩み、トラック運賃に対する優位性を維持できません。本件のように、競合関係にある同業2社が発着地データの整合を取り、往復で実車率100%を維持する運用スキームを前提とすることが、モーダルシフトを定着させる必須要件です。
さらに、行政の支援制度(物流総合効率化法に基づく補助金)を活用して立ち上げ時の設備投資や初期リスクを抑え、ロジスティード西日本や丸太運輸といった物流事業者を実務のハブに据えた座組みは、他地域・他業種の重量物輸送にも水平展開が可能な実効性の高いアプローチです。
参考記事: 三井化学など15社の物流可視化で危険物共同輸送が加速
明日から取り組むべき3つのアクション
特殊鋼2社とロジスティード西日本の事例から得られる教訓を、自社の物流戦略に落とし込むための具体的なアクションを整理します。
1. 幹線輸送における「片道運行データ」の棚卸しと可視化
長距離輸送(概ね300キロメートル以上)を行っている区間を抽出し、復路が空車になっているルートや、帰り荷の確保に苦慮している便の運行コストを算出する作業から着手します。
自社単独で往復の荷量バランスが取れていない区間を特定することが、他社との共同輸送やモーダルシフトを検討するための出発点となります。
2. 同業・近隣荷主とのアライアンス可能性の模索
サプライチェーンの同階層に位置する企業や、同一エリアに生産拠点・配送先を持つ異業種企業との情報交換を開始します。
輸送容器(コンテナやパレット)の仕様を共通化できるか、出荷曜日やリードタイムの調整余地があるかを検討し、非競争領域である物流インフラの共同利用を協議する土台を整えます。
3. 3PL事業者を交えた結節点(中継・ストック)拠点の機能検証
鉄道貨物駅や主要港湾の周辺にある自社・委託先の物流センターについて、単なる保管庫ではなく「モーダルシフトの結節点」として再定義できるかを評価します。
ダイヤ運行に伴う時間差を吸収できる一時保管機能や、専用コンテナからの積み替え・検品オペレーションを委託できるパートナーを選定することが、共同ラウンド輸送を継続させるための鍵となります。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: 国土交通省 中部運輸局
出典: 大同特殊鋼株式会社
出典: 国土交通省



