SGホールディングスグループの株式会社ヒューテックノオリン、博多運輸株式会社、日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)、全国通運株式会社の4社は2026年9月15日、31フィート冷凍コンテナを活用した関東〜九州間の鉄道モーダルシフト体制を強化したと発表した。
自社ロゴをあしらった専用コンテナを増備して往復のラウンド輸送体制を拡充し、トラックドライバーの1運行当たりの拘束時間を約13時間削減する。
関東・九州を結ぶ31フィート冷凍コンテナの共同運行体制
今回の発表に先立ち、2026年9月14日にはJR貨物東京貨物ターミナル駅において、4社の代表者が出席する「コンテナ完成記念式典」が開催された。本取り組みは、ヒューテックノオリンと博多運輸が2024年から進めてきた冷凍鉄道コンテナによる往復ラウンド輸送を、コンテナの追加投入によって本格拡充するものである。
長距離の低温輸送では、トラック単独運行による拘束時間の超過や、復路(帰り荷)の確保が困難なことによる積載効率の低下が運行継続のハードルとなっていた。今回の枠組みでは、4社がそれぞれの事業インフラを持ち寄り、集荷・幹線・コンテナ管理を分担することで持続的な運行ルートを成立させている。
| 連携企業 | 主な役割・担当業務 | 活用インフラ・機能 |
|---|---|---|
| 株式会社ヒューテックノオリン | 関東から九州向けの集荷および集配輸送 | 関東圏の低温物流拠点ネットワーク |
| 博多運輸株式会社 | 九州から関東向けの集荷および集配輸送 | 福岡貨物ターミナル駅を軸とする集配車両網 |
| 日本貨物鉄道株式会社(JR貨物) | 関東〜九州間の幹線鉄道輸送 | 定時運行ダイヤ、鉄道幹線インフラ |
| 全国通運株式会社 | 専用冷凍コンテナの調達および運用支援 | 31フィート冷凍コンテナの機材管理 |
この体制により、従来の長距離トラック輸送と比較して年間約120トンのCO2排出量を削減する見込みである。同時に、中継地点を含めた長距離運行を鉄路へ代替することで、1運行当たり休憩時間を含めて約13時間のドライバー拘束時間を圧縮する。
2024年の実証からコンテナ増備に至る経緯
ヒューテックノオリンと博多運輸による鉄道輸送の連携は、2024年の共同ラウンド輸送開始から段階的に実績を積み上げてきた。2025年6月には、一般社団法人日本物流団体連合会が主催する「第26回物流環境大賞」において、ヒューテックノオリン、博多運輸、日清製粉ウェルナ、ナカムラロジスティクス、ロイヤル、JR貨物の共同の取り組みが「サステナブル活動賞」を受賞している。この先行事例では、年間CO2排出量の83%削減を達成するとともに、鉄道輸送障害時におけるトラック代行輸送スキームを確立した。
今回の増備は、実証フェーズを終えて商用ベースでの輸送キャパシティを恒常的に拡大する段階に入ったことを示している。
冷凍食品の消費拡大と法規制の本格施行
輸送需要の側面では、冷凍食品の国内消費量が拡大を続けている。一般社団法人日本冷凍食品協会の統計によると、2025年(1〜12月)の国内消費量は前年比3.6%増の302万9,325トンと、調査開始以来初めて300万トンを突破した。国民1人当たりの年間消費量も24.6kgに達し、国内生産額は6.4%増の8,577億円と過去最高を更新している。日常的な食生活への定着に伴い、温度管理を維持した幹線物流の安定供給が強く求められている。
法制度の面では、物資の流通の効率化に関する法律(改正物流効率化法)が2026年4月に本格施行された。荷主企業および物流事業者に対する物流効率化の努力義務に加え、一定規模以上の「特定事業者」に対しては中長期計画の作成や定期報告、特定荷主への物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられた。荷主企業にとっては、サプライチェーン上の実車率向上や長距離運行の是正を数値として管理・開示することが法的に求められており、鉄道モーダルシフトの活用が具体策として浮上している。
参考記事: 2024年問題を打開!鉄道輸送へのモーダルシフトを成功に導く3つのカギ
低温物流チェーンの各プレイヤーに生じる実務上の変化
4社連携による31フィート冷凍コンテナのラウンド輸送は、長距離幹線に携わる運送事業者、倉庫・通運事業者、荷主メーカーの業務プロセスに直接的な影響を及ぼす。
運送事業者:長距離運行から近距離集配への戦力再配置
長距離運行を担っていたトラック運送事業者にとって、関東〜九州間の幹線を鉄道へ切り替えることは、ドライバーの労務管理における拘束時間違反リスクを排除することにつながる。
東京から福岡までの陸送距離は約1,100kmに及び、1人のドライバーによる運行では連続運転時間や休息期間の法令基準を満たすことが困難であった。幹線輸送をJR貨物に委託することで、自社のドライバーは貨物ターミナル駅周辺の集荷・配達(ドレージ輸送)に専念できる。拘束時間が日帰り可能な範囲に収まることで、労務コンプライアンスの順守と乗務員の定着率向上が見込める。
倉庫・通運事業者:片道荷物の解消と31フィート受け入れ体制
コールドチェーンの幹線輸送において最大の課題とされてきたのが、地域間の荷動きの不均衡(荷主の片道利用)による空コンテナ回送コストであった。
博多運輸は福岡貨物ターミナル駅を拠点に47台の集配車両を配備し、売上高の約3割を通運事業が占めているものの、貨物の発着比率は3対7と着荷過多の傾向を持っていた。関東側に強固な集配網を持つヒューテックノオリンと組むことで、関東発・九州発の双方向で冷凍貨物を確保し、往復積載率を高める運用が成立する。
また、31フィートコンテナは大型10トントラックとほぼ同等の容積を持つため、従来の12フィートコンテナのように荷物を小分けに分割する荷役の手間が生じない。荷受側の冷凍倉庫においては、大型トラック用のバースをそのまま活用できるため、積み替えコストを抑制したオペレーションが可能となる。
参考記事: 武田薬品の北海道鉄道輸送を実現した断熱コンテナ技術と物流業界に及ぼす3つの影響
食品製造業者:温室効果ガス算定と安定調達の確保
冷凍食品メーカーなどの荷主企業にとっては、改正物流効率化法に基づくCLO主導の輸送改善計画において、具体的な数値実績を計上できる手段となる。
トラック輸送から鉄道への転換は、輸送単位当たりのCO2排出量を大幅に圧縮する。国土交通省の公表データによれば、鉄道貨物のCO2排出量は営業用トラックの約11分の1である。自社の温室効果ガス排出量(Scope3)削減目標に向けた客観的エビデンスとして活用できる。加えて、長距離トラックの手配難による出荷停止リスクを回避し、消費地である関東・九州双方への安定供給ルートを維持できる利点がある。
LogiShiftの視点:31フィート規格と異社間協調が解く低温物流の採算性
長距離コールドチェーンにおける鉄道利用は、これまで「温度管理機器の電源確保」「コンテナ容積の小ささ」「往復の荷量不一致」という3つの障壁により、限定的な利用にとどまってきた。今回のヒューテックノオリン、博多運輸、JR貨物、全国通運のスキームは、これらの構造的ボトルネックを実務レベルでクリアしている。
第一に、31フィート冷凍コンテナの採用である。日本の幹線物流は大型10トントラックを前提にパレット割付や倉庫バースが設計されている。12フィートコンテナではトラック1台分の荷物を2〜3個に分割して積み替える荷役コストと時間ロスが発生していたが、31フィート規格であればトラック直行便と同一の荷姿で鉄道幹線へ接続できる。
第二に、強みを持つエリアが異なる運送会社同士の協調モデルである。SGホールディングスグループとして関東をはじめ全国に収容能力約50万トン超の低温拠点を展開するヒューテックノオリンと、九州の通運事業に強固な集配地盤を持つ博多運輸が手を組んだ。単一企業では解決が困難な「発着地の荷量アンバランス」を、競合関係を超えたアライアンスによって解消している。全国通運がコンテナを調達・供給する役割を担うことで、個別企業が多額の特殊コンテナ投資を単独で抱え込むリスクも分散されている。
2026年4月に施行された改正物流効率化法により、荷主・物流事業者双方に積載率向上や待機時間削減の数値管理が課されている。コールドチェーンのような特殊設備を要する輸送領域において、幹線インフラをシェアし、集配を地域ごとの実力企業が分担する協調型のラウンド運行は、持続可能な輸送ネットワークを維持するための有効な選択肢となる。
明日から現場が着手すべき実務のポイント
長距離幹線輸送の見直しやモーダルシフトを検討する実務担当者は、以下の項目から着手することが推奨される。
- 幹線輸送データの抽出と中長距離便の抽出
自社の出荷データから、輸送距離500km以上の定期幹線便を抽出し、運行頻度と月別の荷動きバランスを洗い出す。片道運行になっているルートを可視化することが検討の起点となる。
- 発着地におけるトラックバースの規格確認
31フィートコンテナのドレージ車両が自社倉庫や委託先拠点のトラックバースに進入可能か、敷地内の旋回半径やドックレベラーの対応状況を施設管理部門と確認する。
- 通運事業者とのダイヤ適合性検証
貨物鉄道へのモーダルシフトでは列車の発着時刻に合わせた出荷締め時間の再設計が必要となる。集荷から貨物駅への搬入、到着駅からの最終納品先までのリードタイムを算出し、現行の納品指定時間に収まるかを検証する。
- 帰り荷マッチングに向けたパートナー候補の探索
自社貨物だけで往復積載を満たせない場合、同一方面に逆方向の荷動きを持つ他荷主や、地域で集配基盤を持つ物流事業者との協調余地を情報収集する。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: 株式会社ヒューテックノオリン ニュースリリース
出典: SGホールディングス株式会社 ニュースリリース
出典: 日本貨物鉄道株式会社 ニュースリリース
出典: 一般社団法人日本冷凍食品協会 統計データ
出典: カーゴニュース



