日本パレットレンタル(JPR)は2026年9月15日、伝票電子化・共有化システム「DD Plus」を運用する伊藤忠食品札幌物流センターにおいて、納品伝票の電子化利用企業数が27社へ拡大したと発表した。2026年8月31日納品分から東洋水産やJ-オイルミルズなど食品メーカー11社と運送会社のキユーソー流通システムが新たに加わり、従来の15社から参画規模がほぼ倍増している。
札幌物流センターにおける「DD Plus」導入拡大の経緯と運用実態
伊藤忠食品は、メーカーと卸売企業の間で発生する紙の入荷納品伝票を電子化する取り組みを進めてきた。現場における伝票の受け渡しや保管、検品時の照合といったアナログ作業をデータ連携に置き換える狙いがある。
昭島から札幌への拠点展開と参加企業の推移
同社における伝票電子化の運用は、東京都昭島市の拠点から段階的に展開されてきた。2024年11月に実施したパイロットテストを経て、2025年11月に昭島物流センターでJPRの「DD Plus」を用いた本運用が開始された。
北海道エリアの基幹拠点である札幌物流センター(北海道札幌市)では、2026年2月2日にメーカー15社および運送会社2社(大塚倉庫、日本通運)の参画によって運用がスタートした。今回の拡大はそれに続くステップであり、2026年8月31日の納品分から対象企業が追加された。
| 時期 | 拠点 | 参加企業数・対象 | 運用内容 |
|---|---|---|---|
| 2024年11月 | 伊藤忠食品運営センター | 発荷主・着荷主 | 本運用に向けたパイロットテストを実施 |
| 2025年11月 | 昭島物流センター | 大塚倉庫ほか | DD Plusによる伝票電子化の本運用を開始 |
| 2026年2月 | 札幌物流センター | メーカー15社、運送2社 | 札幌拠点での本運用開始 |
| 2026年8月 | 札幌物流センター | 27社 | メーカー11社、運送1社が追加参画 |
新規参画したメーカー11社と運送会社1社の内訳
2026年8月31日から新たに対象となった企業は、調味料、水産加工品、飲料、油脂などを製造する大手食品メーカー11社と、チルド・ドライ食品物流を手がけるキユーソー流通システムである。
| 業種区分 | 企業名 | 拠点での役割 |
|---|---|---|
| 新規参加食品メーカー | 大森屋、ケンコーマヨネーズ、サンヨー堂、J-オイルミルズ、シマヤ、寿がきや食品、東洋水産、ドトールコーヒー、ブルドックソース、丸美屋フーズ、桃屋 | 事前出荷データの送信および電子受領の確認 |
| 新規参加運送事業者 | キユーソー流通システム | ドライバー端末等を用いた電子伝票受領オペレーション |
| 既存参加運送事業者 | 大塚倉庫、日本通運 | 幹線輸送および配送現場での電子運用継続 |
札幌物流センターには、通常1日あたり約100社のメーカーから商品が納品されている。伊藤忠食品は2026年度末までに、その半数にあたる「1日約50社」の納品伝票を電子化へ移行させる目標を設定している。今回の27社への拡大により、目標達成に向けた導入率はセンター全体の4分の1を超えた水準に達した。
参考記事: 伊藤忠食品札幌で納品伝票電子化が本稼働|昭島に続く第2弾、メーカー15社連携のインパクト
食品サプライチェーン各層に生じる実務上の変化
納品伝票の電子化は、荷受けを行う卸売企業だけでなく、荷物を運ぶ運送事業者や出荷元であるメーカーの業務フローにも直接的な変化をもたらす。
卸売・物流拠点:検品照合の自動化とバース待機の圧縮
着荷主である伊藤忠食品の札幌物流センターでは、紙伝票の目視確認と押印処理が削減される。従来、トラックがバースに接車した際、ドライバーが事務所へ紙伝票を持参し、入荷検品担当者が伝票束と実荷を照合する手順を踏んでいた。
事前出荷データが「DD Plus」を通じてシステム連携されることで、WMS(倉庫管理システム)との自動照合が可能になる。荷降ろし現場での伝票突き合わせ時間が削られ、荷受けバースの回転率が向上する。また、月間数万枚単位にのぼる紙伝票の仕分け、スキャン、ファイリング、保管スペースの確保といったバックオフィス業務も解消に向かう。
運送事業者:受領印待ちの排除による拘束時間削減
運送会社にとって、紙伝票のやり取りは荷待ち・荷役時間を長期化させる主因となっていた。キユーソー流通システムをはじめとする運送事業者は、ドライバーが納品完了後に受領印やサインを待つ拘束時間を直接削ることができる。
国土交通省の調査等によると、トラックドライバーの労働時間は全産業平均より年間約400時間長く、拠点での待機や付帯作業がその大半を占める。スマートフォンや車載端末上で受領確認が完結すれば、検品終了と同時に次の運行へ出発できる。受領書を営業所に持ち帰り、荷主ごとに仕分けて原本を郵送する事務工数も削減される。
参考記事: キユーピーのCLO改革!荷役時間を50分から5分に削減するSCM戦略
食品メーカー:出荷管理のデジタル化と請求回収サイクルの短縮
納品伝票を電子化する発荷主の食品メーカー側では、工場や外部委託倉庫での伝票印刷・封入作業が不要になる。従来は出荷ロットごとに複数枚綴りの複写伝票を発行し、ドライバーへ手渡していた。
「DD Plus」による共有化により、着荷主側で検品が確定した受領データが即時にメーカー側へ反映される。紙の受領書が運送会社経由で返送されてくるのを待つリードタイムが消失し、売掛金の照合や請求書発行プロセスの早期化につながる。複数社にまたがる出荷業務において、卸ごとに異なるフォーマットを個別調整する手間も抑制される。
参考記事: フマキラー、伝票電子化「DD Plus」導入|4社連携で挑む物流自動化
LogiShiftの視点:業界共通基盤によるオープン型標準化への転換
今回の利用企業拡大が示す構造的変化は、特定企業グループ内での閉じたシステム構築ではなく、業界共通プラットフォームを介した「オープン型の標準化」が食品流通で定着し始めている点にある。
これまでの物流システム化では、大手卸や小売が独自のEDIや専用ポータルを構築し、納入メーカーや運送会社に対して個別接続を求めるケースが散見された。しかし、1社ごとに異なるシステムへの二重入力や端末の使い分けは、現場の負担をかえって増大させていた。
伊藤忠食品がJPRの「DD Plus」を採用している理由は、JPRがすでにレンタルパレット事業を通じて食品メーカー、卸、運送会社と広範なネットワークを構築している点にある。JPR子会社のTSUNAGUTEによる運送会社への導入支援体制も含め、既存の物流インフラの上でデータ連携を進める枠組みが機能している。
さらに、2026年4月に本格施行された改正物流効率化法では、特定荷主に対して物流統括管理者(CLO)の選任や中長期計画の提出が義務付けられ、荷待ち・荷役時間の短縮が法的な責務となった。1日約100社が納品する札幌物流センターにおいて、2026年度末までに50社を電子化するという数値目標は、単なるコスト削減策ではなく、法令順守と運送会社から運行ルートとして選ばれ続けるための実務的な防衛策といえる。
参考記事: 改正物流効率化法2026年義務化!特定荷主に課される3大義務と生存リスク
まとめ:明日から自社拠点で確認すべきこと
札幌物流センターの事例は、地方の基幹拠点であっても業界標準ツールを用いれば短期間で参加企業を倍増できることを示している。紙伝票の運用を見直すにあたり、以下の確認から着手することが推奨される。
- 自社センターにおける紙伝票の処理工数と待機時間の把握
倉庫への入場から検品完了、受領書の発行・回収までに要している実測時間を計測し、紙の確認待ちがボトルネックになっていないかを特定する。
- 取引先が利用している共通データ基盤の調査
納入先の卸や委託先の運送会社が、DD Plusなどの標準プラットフォームを導入済み、あるいは導入検討中であるかを確認し、個社開発を避けた接続方法を模索する。
- 受領データの即時連携によるバックオフィス連携の設計
伝票電子化を現場のペーパーレスにとどめず、基幹システムやWMSと連携させて売掛・買掛照合の自動化まで繋ぎ込める業務フローを策定する。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: PR TIMES(日本パレットレンタル株式会社 プレスリリース)



