JR貨物北海道支社、国分北海道、北海道で構成する北海道「新モーダルシフト」推進協議会は、2026年9月18日、札幌エリアからオホーツク・根釧地域に向けた貨物鉄道輸送による実証事業を実施すると発表しました。札幌貨物ターミナル駅から北見駅および釧路貨物駅へ向かう下り列車の空きコンテナ(12ft)を活用し、加工食品や日用品などをパレット単位で混載輸送する社会実装モデルの検証を2026年9月28日より順次進めます。
札幌〜道東間における下り空コンテナ活用と共同輸送の枠組み
本実証は、国土交通省の「地域の事業者間連携を通じた物流生産性向上推進事業」の採択を受けて実施されます。対象区間は札幌貨物ターミナル駅から北見駅および釧路貨物駅までの約300km〜350kmの幹線区間です。
道内物流では、生産地域から札幌圏や本州へ運ばれる農産品・水産品の上り輸送需要が大きい一方、札幌圏から地方都市へ向かう下り貨物は少なく、返却用の鉄道コンテナに空回送が生じる構造的課題が存在していました。今回の事業では、この空回送される12ftコンテナのスペースに、複数荷主の生活必需品をパレット単位で混載し、幹線輸送を鉄道へ転換します。
実証事業の基本計画と参画組織
実証の運行スケジュール、運行区間、参画荷主および実運送事業者の内訳は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施主体 | 北海道「新モーダルシフト」推進協議会(JR貨物北海道支社、国分北海道、北海道) |
| 実証日程 | 第1回:2026年9月28日〜10月3日、第2回:2026年10月26日〜10月30日 |
| 対象区間 | 札幌貨物ターミナル駅〜北見駅(オホーツク)、札幌貨物ターミナル駅〜釧路貨物駅(根釧) |
| 対象貨物 | 酒類、加工食品、飲料水、内装資材、日用品などの生活必需品(パレット単位) |
| 参画荷主(6社) | 国分北海道、セイコーフレッシュフーズ、ジャストカーゴ、サッポログループ物流、幸楽輸送、ベスト・ロジスティクス・パートナーズ(三菱食品の100%子会社) |
| 実運送事業者 | 日本フレートライナー、北見通運、三ッ輪運輸 ほか |
| オブザーバー | 北海商科大学、北海道商工会議所連合会、北海道物流を支える鉄道輸送の会 |
幹線鉄道と端末ミルクランを組み合わせた輸送スキーム
運用の流れとして、発地側である札幌エリアでは、トラックが複数荷主の物流拠点を巡回して集荷する「ミルクラン方式」または札幌貨物ターミナル駅への直接持ち込みによって貨物を集約します。集約された貨物はパレット単位でJR貨物の12ftコンテナへ混載され、北見駅および釧路貨物駅まで鉄道で幹線輸送されます。
着駅到着後は、荷主の納品条件に応じてミルクラン方式による複数納品先への店舗・拠点配送を実施するほか、着駅での引き取り対応も行います。これまでの単一区間における走行試験にとどまらず、端末配送の集約度、通いパレット等の資材回収サイクル、現行トラック運賃と比較した荷主側のコスト受容度までを含めた運用手順が検証されます。
実証に至る経緯と道内輸送力不足の試算データ
北海道内におけるトラック事業者は99%を中小規模が占めており、長距離ドライバーの高齢化が進んでいます。北海道「新モーダルシフト」推進協議会の事業計画概要によると、2030年には道内のトラック輸送力が2019年比でマイナス39%(約4割減)となる試算が示されており、札幌から遠隔地へ日用品を届ける幹線輸送網の維持が危ぶまれていました。
協議会設立に至る時系列は以下の通りです。
- 2024年2月: 国分北海道がJR貨物北海道支社や北海道通運業連合会と連携し、札幌〜北見間におけるトラックから鉄道への転換実証を先行実施。
- 2024年10月31日: 国の官民物流標準化懇談会にて、多品種小ロット貨物のモーダルシフトを促す「新たなモーダルシフトに向けた対応方策」が策定。
- 2026年1月15日〜16日: 苫小牧港から根釧方面(弟子屈町)に向け、船舶・鉄道・トラックを連携させた海陸一貫モーダルシフト実証を実施。
- 2026年5月〜7月: 国土交通省による「地域の事業者間連携を通じた物流生産性向上推進事業」の二次公募に本事業が応募・採択。
- 2026年9月18日: 北海道「新モーダルシフト」推進協議会より、札幌〜北見・釧路間における実証事業の実施が正式発表。
参考記事: ミルクランとは?巡回集荷の仕組みと導入メリット・失敗を防ぐポイントを徹底解説
運送事業者・流通卸・行政に生じる具体的な影響
本実証の推進は、長距離運行に依存してきた道内の物流関係各層にそれぞれ異なる実務上の変化をもたらします。
運送事業者:片道300km超の拘束時間削減と地場配送への人員再配置
札幌から北見・釧路間は片道300km〜350kmの距離があり、冬季の気象条件悪化などを考慮すると、1往復の運行でドライバーの拘束時間が法令上限を圧迫しやすい環境にありました。幹線輸送を鉄道に切り替えることで、運送事業者は長距離運行に伴う長時間拘束から乗務員を解放できます。
これにより、自社のドライバーおよびトラックを札幌圏やオホーツク・根釧の地域内集配送(地場運行)へ集中配置することが可能となります。長距離拘束の解消は、拘束時間短縮を求める労務管理基準の遵守や、日帰り運行を前提としたドライバー定着率の安定に直結します。
卸・問屋・流通業者:小口混載による地方向け輸送能力の確保
国分北海道やセイコーフレッシュフーズ、ベスト・ロジスティクス・パートナーズといった流通・卸事業者は、地方店舗向けの物量が減少する閑散期であっても、定期的な商品供給を維持しなければなりません。しかし、単独企業で1台のチャーター便を手配する場合、積載効率の低下による運賃負担の増加が課題となっていました。
12ftコンテナを複数社でシェアし、パレット単位で出荷枠を確保できる仕組みが確立されれば、ロットがまとまらない加工食品や飲料、日用品であっても低コストで地方へ輸送可能になります。また、競合関係にある流通業者が同一コンテナに混載する体制を整えることで、道東エリアの納品先における車両待機時間の削減や荷受け作業の集約も期待されます。
行政・規制当局:中山間・遠隔地物流を維持するモデルケースの獲得
北海道および国土交通省にとって、札幌から北見・釧路へのルートは生活物資の安定供給を支える生命線です。道内トラック輸送力が約4割減退すると予測される2030年に向けて、行政は単なる補助金拠出にとどまらず、既存のインフラである鉄道貨物の稼働率を引き上げる実効策を必要としていました。
特に今回の枠組みは、空回送コンテナという遊休資産の有効活用であるため、新規に大規模なインフラを建設することなく輸送能力を生み出せる特徴があります。道内他地域への水平展開だけでなく、全国の地方過疎地における物流網維持施策のひな型として行政データの蓄積が進められます。
参考記事: 共同配送とは?仕組みと混載便との違い・導入メリットをわかりやすく解説
LogiShiftの視点:空きリソースのシェアリング型幹線インフラ化
本実証で注目すべき本質は、鉄道コンテナ輸送が「1荷主・1コンテナによる大量輸送」という従来の専用型モデルから、空き容量を複数の荷主が小分けにして利用する「シェアリング型インフラ」へ運用形態を転換させた点にあります。
一般的に12ftコンテナは貸切利用が前提であり、1企業で5t分の貨物を集約できない中小荷主にとっては参入障壁の高い輸送モードでした。しかし、今回のように国分北海道やサッポログループ物流、ベスト・ロジスティクス・パートナーズなどがパレット単位でスペースを分け合うことで、鉄道貨物は特別積合せ便(路線便)に近い柔軟性を獲得します。
今後、社会実装を継続させる上での成否を握るのは、北見駅や釧路貨物駅からの二次配送(ラストワンマイル)におけるコスト配分です。幹線鉄道運賃が割安になったとしても、着駅でのパレット積替費用やミルクラン配送の集約効率が落ちれば、ドア・ツー・ドアのトラック直行便に対するコスト競争力を失います。荷主各社が納品日時の指定を柔軟に緩和し、通運事業者が着地配送便の積載率を一定水準以上に保てるかどうかが、実用化の分岐点となります。
参考記事: 鉄道輸送とは?仕組みやメリット・コンテナ規格から導入手順まで徹底解説
まとめ:明日から自社のサプライチェーンで意識すべきこと
地方幹線輸送を維持するため、荷主および運送事業者が現場実務で着手すべき点は以下の3点です。
- 地方向け出荷ロットのパレット換算と荷姿の統一
12ftコンテナへの混載を可能にするため、自社の出荷サイズをT11型などの標準パレットに適合させ、段ボールの積載効率を見直す。 - 復路・下り線の空きスペースを活用したラウンド運賃の探索
自社便や委託先トラックだけでなく、鉄道や内航船の「帰り荷方向(下り方面)」に生じている空きキャパシティを洗い出し、割安な輸送枠の活用を検討する。 - 着荷主とのリードタイムおよび納品時間指定の交渉
鉄道ダイヤやミルクラン配送に合わせた中1日運行を許容できるよう、地方向け納品スケジュールの前倒しや時間指定枠の緩和を商談項目へ組み込む。
参考記事: モーダルシフトとは?鉄道・船舶への転換メリットと実務での導入ステップを徹底解説
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: JR貨物 プレスリリース(2026年9月18日)
出典: 一般社団法人札幌地区トラック協会
出典: 国土交通省 地域の事業者間連携を通じた物流生産性向上推進事業



