トヨタモビリティパーツは、3大都市圏において都道府県単位で展開してきた物流網を県境をまたぐ広域体制へと再構築することを決定しました。中核拠点として愛知県清須市に延床面積約8万5,000平方メートルの「東海物流センター」を新設し、2027年5月の稼働に向けて拠点の集約と幹線輸送の効率化を進めます。
愛知県清須市に中核拠点を新設、県境を越えるネットワークへ転換
トヨタグループの自動車関連部品・用品卸大手であるトヨタモビリティパーツ(本社・名古屋市、榊原弘隆社長)は、従来全国の支社ごとに都道府県単位で完結させていた物流体制を刷新し、3大都市圏において県域を越えた広域物流ネットワークの構築に踏み切ります。
拠点計画の概要と経緯
同社は2020年4月、全国33社のトヨタ部品共販店と株式会社タクティーが統合して発足しました。発足当初は旧共販店各社が築いた県単位の支社・物流拠点を引き継ぎ、地域ディーラーや整備工場へのきめ細かな配送を展開してきました。しかし、配送ドライバーの時間外労働上限規制や将来的な輸送力不足を背景に、細分化された拠点網の維持を見直す動きが進められてきました。
今回の中核となる「東海物流センター(仮称)」は、東海エリアの物流拠点を集約・再編する大型施設として位置付けられています。
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 施設名称 | 東海物流センター(仮称) |
| 所在地 | 愛知県清須市春日下中割1-2 |
| 建物規模 | 地上4階建て・鉄筋鉄骨造、延床面積約8万5,000㎡ |
| 主要機能 | 1階・3階に入出荷バース設置、広域部品在庫の集約保管・仕分け |
| 稼働予定 | 2027年5月稼働予定 |
参考記事: 物流ハブの仕組みとは?ハブ&スポーク方式のメリットと拠点設計のポイントを解説
制度改正と業界データが促す物流網の刷新
この再編の背景には、輸送能力の物理的な制約があります。NX総合研究所などの試算によると、対策を講じない場合、2030年には全国で輸送能力が34%不足すると見込まれています。さらに国土交通省の統計では、営業用トラックの積載率は約40%前後に低迷しており、空車走行や積載ロスを解消することが喫緊の課題となっています。
また、2024年5月に公布された改正物流効率化法(物流関連二法)により、特定荷主に対する「物流統括管理者(CLO)」の選任や、積載率向上・荷待ち時間削減に向けた中長期計画の策定が義務付けられました。トヨタモビリティパーツによる拠点の広域集約は、法的要請と輸送力不足への具体的な施策として位置付けられます。
参考記事: 幹線輸送とは?地場配送との違いや導入メリット、課題解決の最新動向を解説
サプライチェーン関係者に及ぶ実務への影響
トヨタモビリティパーツの広域再編は、同社と取引を行う流通業者および運送事業者の実務運行に直接的な変化をもたらします。
卸・問屋・流通業者:分散在庫の圧縮と安全在庫の最適化
都道府県単位で保有していた倉庫やデポを集約することで、同一都市圏内における重複在庫が削減されます。多品種少量かつ即納性が求められる自動車部品において、各拠点が抱えていた安全在庫を広域センターへ一元化できれば、欠品率を維持したまま全体の在庫回転率を向上させることが可能です。
一方で、末端の整備工場や販売店までの物理的距離が伸びるエリアに対しては、配送リードタイムを維持するための受発注締め時間変更や、中継デポを活用した配送オペレーションの再設計が必要となります。
運送事業者:短距離ピストンから広域幹線輸送・共同運行へのシフト
輸送を担う運送会社にとっては、運行ルートの大幅な見直しが生じます。従来の「県内倉庫から地場販売店へ」という短距離ルート中心の運行から、「広域ハブ拠点から各地の配送デポへの大量一括幹線輸送」と「デポからのラストワンマイル配送」へと機能が分離されます。
大型車両を用いた幹線輸送では、高い実車率と積載率を担保する配車管理が求められます。また、日本自動車工業会などが推進する自動車メーカー間の共同輸送構想や、同業他社との共同配送スキームへの参画など、積載スペースを共有する運行モデルへの適応が運送事業者の受注競争力に影響します。
参考記事: 積載率とは?計算方法や実車率との違い・改善に向けた実践アプローチを解説
LogiShiftの視点:県境モデルの解体と「都市圏メガハブ」の必然性
これまで国内の卸売業では、顧客に近い県ごとに営業拠点と倉庫を一体配置する「地域密着型」が定石とされてきました。しかし、ドライバーの労働時間規制と燃料費・人件費の高騰により、トラックの積載率が低い状態のまま県域配送を維持することは、コスト面でも要員確保の面でも成り立ちません。
トヨタモビリティパーツの動きは、行政区画である「県」を基準とした物流設計から、高速道路網と所要時間を基準とした「都市圏メガハブ」への転換を示しています。延床面積約8万5,000平方メートルに及ぶ清須市の拠点は、1階と3階に入出荷バースを備えるなど、大量の貨物を高密度で処理する構造を備えています。
今後は、メガハブに集約した部品をいかに高い積載率で各エリアに送出できるかが採算の分かれ目となります。自社便だけで荷量を満たせないルートについては、日産やホンダといった他社系列パーツ卸との協調輸送や、異業種混載便の導入が現実的な選択肢となります。自前主義の物流網から、積載スペースを共有するネットワーク型物流への移行は、自動車アフターマーケット全体でさらに具体化していく見通しです。
参考記事: 共同配送とは?仕組みと混載便との違い・導入メリットをわかりやすく解説
明日から現場が意識すべき物流戦略の着眼点
自社の物流網を見直すにあたり、実務担当者や経営層が把握しておくべき具体的なアクションは次の通りです。
- 拠点管轄エリアの「所要時間」による再測定
県境ベースで区切られた既存の配送エリアを見直し、主要高速道路のインターチェンジからの到達所要時間をもとに、近隣県の配送網を統合できないかシミュレーションを実施します。
- 自社トラックの「積載率」と「実車率」のデータ化
改正物流効率化法への対応を見据え、自社便や専属庸車の便ごとの平均積載率を把握し、積載率40%未満の低密度ルートを抽出して合流・統合の対象を特定します。
- 荷主間・同業他社との「共同配送・中継輸送」の検討
長距離幹線区間や末端の低密度エリアにおいて、他社貨物との混載や中継拠点を利用した運行切り替えが可能なルートがないか、運送パートナーと協議を開始します。
参考記事: 配送密度向上とは?積載率との違いやコスト削減を実現する手法・事例を解説
出典: 47NEWS
出典: トヨタモビリティパーツ公式プレスリリース


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