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Home > 輸配送・TMS> 消費者庁が是正要請|EC送料無料表示を見直す運賃別立て2パターン
輸配送・TMS 2026年9月30日

消費者庁が是正要請|EC送料無料表示を見直す運賃別立て2パターン

消費者庁が是正要請|EC送料無料表示を見直す運賃別立て2パターン

ECサイトで「送料無料」と表記されていても配送コストが消えるわけではなく、実際には商品代金への転嫁か販売事業者の利益削減によって賄われています。実質的な物流原価を正しく把握し、送料別立てや「送料当社負担」への表記変更を行うことで、利益の圧迫を防ぎながら商品本来の価値による適正な価格競争を実現できます。

「送料無料」表示の実態と物流コストの負担構造

EC市場で長年定着してきた「送料無料」という表記は、消費者に「運送にかかる費用が発生していない」という誤認を与えやすい側面を持っています。しかし、トラックや鉄道、航空便などを使った貨物輸送には、集荷、拠点間輸送、仕分け、積載、ラストワンマイルの配達に至るまで、確実な人件費と燃料費、減価償却費が発生しています。

コストはどこへ消えたのか?2つの負担スキーム

宅配便の運賃がゼロになることは物理的にあり得ません。表示上「無料」とされている場合、そのコストは以下のいずれかの方法で処理されています。

【「送料無料」における費用の所在】
パターンA:商品代金への上乗せ(買い手負担)
[ 商品本来の価格 ] + [ 全国一律の想定送料 ] = 販売価格(送料無料と表記)
※近隣への配送や複数個購入時でも送料分が引かれず、消費者が割高に支払う場合がある

パターンB:事業者の粗利益の削減(売り手負担)
[ 商品本来の価格 ] = 販売価格(送料無料と表記)
※配送ごとに発生する運賃実費を販売事業者が自社の利益から全額持ち出す
項目 パターンA:商品代金込み(買い手負担型) パターンB:自社利益削減(売り手負担型) 送料別立て(本来の姿)
販売価格の見た目 相対的に高く設定される 通常の本体価格のまま据え置き 本体価格のみで安く見える
利益率の変動 配送先エリアによって利益がブレる 発送件数が増えるほど利益が圧迫される 原価と送料が切り離され利益が安定する
消費者側の納得感 遠方購入者には割安、近隣には割高 見た目の割安感が強く購入されやすい 運賃の内訳が明確で透明性が高い
複数購入時の影響 同梱しても送料分が重複徴収されやすい 事業者側の持ち出し負担が累積する 荷姿・個口数に応じた適正計算が可能

配送プロセスに発生する5大作業工程と原価の内訳

貨物輸送の実務では、小口の宅配貨物であっても複数の物流結節点を通過します。鉄道貨物輸送やトラック輸送の現場を発信する専門家からも指摘されている通り、表記を無料に変えたところで物理的なハンドリング作業は一切削減されません。

  • 集荷作業: 出荷元の倉庫や店舗に集配車両が接車し、荷物の引き渡しを受ける工程。ドライバーの拘束時間と車両稼働コストが発生。
  • 拠点仕分け: エリアごとの配送デポやトラックターミナルへ送るため、バーコードスキャンやソーターで方面別に分ける工程。マテハン設備の減価償却費と構内作業員の人件費が発生。
  • 幹線輸送: 大型トラックや貨物列車、フェリーを用いて各地域の配送ハブ間を大量輸送する工程。高速道路利用料、燃料費、ドライバーの人件費が発生。
  • 配達所仕分け: 到着した幹線便から荷物を降ろし、配達ルートごとの軽バンや小型トラックへ積み込む工程。
  • ラストワンマイル配達: 受取人の自宅や指定場所へ個別に配達する工程。不在再配達が発生した場合は、この工程のコストが倍増する。

これらの工程にかかる原価を無視して「送料無料」を維持し続けると、荷主と運送事業者の力関係によっては運賃のダンピング要求につながり、サプライチェーンの持続性を損なう要因となります。

参考記事: 2028年6月全面施行!国土交通省の適正原価制度で運送事業者の淘汰が加速


2026年に「送料無料」表示の是正が急務とされる背景

ECサイトにおける表記見直しは、単なるWebマーケティングのトレンドではなく、国の政策方針や法改正と直接連動した構造改革の一環です。

政府・消費者庁の主導による商慣行の是正措置

政府は2023年6月に閣議決定された「物流革新に向けた政策パッケージ」において、物流の負荷軽減に向けた商慣行の是正として「送料無料」表示の見直しを明記しました。これを受け、消費者庁は2023年6月から12月にかけて運送業界、荷主団体、消費者団体を集めた意見交換会を計9回実施しました。

2023年12月19日に公表された取りまとめでは、景品表示法等による一律の法規制は見送られたものの、事業者に対する自主的な対応要請が示されました。具体的には、「誰が送料を負担しているのか」を明記すること(例:「送料当社負担」)や、送料込みの価格であることを正しく説明することが求められています。

この要請を受けて、大手通販各社は対応を開始しました。株式会社ファンケルは2024年5月8日より、オンラインストアやカタログにおける「送料無料」表記を「送料はファンケル負担」または「送料当社負担」へ順次切り替えました。アマゾンジャパンや楽天グループなどの大手プラットフォームでも、送料の仕組みや実費負担の所在を明示するガイドラインの改定が進んでいます。

改正物流効率化法の段階的施行と荷主責任の強化

背景にある最大の要因は、物流業界における法規制の強化です。2024年4月に適用されたトラックドライバーの時間外労働上限規制(年間960時間)により、国内の輸送能力不足が現実化しました。国土交通省などの試算によると、何ら対策を講じない場合、2030年度には営業用トラックの輸送能力が約34%不足する恐れが指摘されています。

これに対応するため、2024年5月に公布された「改正物流効率化法(物資の流通の効率化に関する法律)」が段階的に施行されています。

施行時期 法的区分 主な義務内容と対象事業者
2025年4月1日 努力義務(すべての荷主・物流事業者) 荷待ち時間・荷役時間の削減、積載効率の向上措置の実施
2026年4月1日 規制的措置(特定荷主・特定連鎖化事業者) 年間取扱貨物重量9万トン以上の事業者に対する、役員級の物流統括管理者(CLO)選任、中長期計画策定、毎年度の定期報告の義務化

荷主企業には、運送事業者に対する荷待ち時間の削減や適正な運賃支払いが強く求められるようになり、企業全体で物流コストを可視化・管理する体制整備が必須となりました。

参考記事: 改正物流効率化法で2000人超のCLO誕生|特定荷主の選任義務と罰則

参考記事: [改正物流効率化法と野村総合研究所が示す輸送費34%増への必須対応](https://logishift.net/2026/08/03/post-7686/)


表記見直しと送料別立てがもたらす4つの具体的効果

「送料無料」表記から「送料当社負担」への変更や、本体価格と送料を切り分ける「送料別立て」への移行は、EC事業者と物流現場の双方に明確なメリットをもたらします。

1. 中小EC事業者の価格競争力の回復

「送料無料」が当たり前とされていた検索市場では、スケールメリットを持つ大手企業が有利でした。年間数百万個を出荷する大手EC事業者は、運送会社との大口契約により1個あたりの配送単価を低く抑えられます。一方、月間数百個規模の中小事業者は、高い配送料実費を商品代金に上乗せせざるを得ず、商品一覧画面で割高に見えてしまう構造的なハンディキャップを負っていました。

送料を別立てにして本体価格のみを比較できる環境が整えば、商品の品質や企画力といった本来の価値で対等に競争できるようになります。

2. 複数購入時における利益率の適正化

送料込み価格で設定された商品を顧客が複数点同時に購入した場合、荷姿が1つにまとめられても(同梱出荷)、システム上は商品ごとに含まれる送料分を二重に受け取ることになります。これは消費者側から見れば割高感の原因となり、事業者側にとっても「まとめ買い割引」などの柔軟な販促施策を打ちにくくする要因となっていました。

送料を外出しにすることで、「1配送あたり〇〇円、〇点購入でも同一送料」といった設計が可能になり、まとめ買いによる客単価アップと適正な利益管理を両立できます。

3. 運送事業者との適正な運賃交渉の実現

送料無料という名目で物流費を社内の一般管理費や売上原価の中に埋没させていると、運送会社から運賃改定(値上げ)を要請された際に、自社のどの利益を削って対応すべきかが判断できません。

荷物1個あたりにかかる集荷費用、幹線輸送費、配達完了費用を切り分けて把握できていれば、運送会社からの改定要請に対しても、根拠を持った対等な交渉が行えます。

4. 消費者の物流意識向上による再配達削減

「配送はタダで届くもの」という誤認が薄れることで、受け取り側である消費者の行動にも変化が生じます。時間帯指定の確実な利用や、置き配、宅配ボックス、コンビニ受け取りの選択率が向上し、物流業界の深刻な課題である再配達率の低減に寄与します。

参考記事: 船井総研SCコンサル新刊、特定荷主3200社が直面するCLO改革の要諦


失敗を防ぐ送料別立て・表示改定の5ステップ

送料無料表示を廃止し、送料別立てや適正な負担表示へ移行する際は、顧客離れを防ぎながら社内の原価管理を整備する綿密な手順が必要です。

ステップ1: 出荷1件あたりの「配送実費5要素」を分解する

最初に、これまで「送料」として一括りにしていたコストを以下の5項目に分解し、1出荷あたりの正確な原価を算出します。

  • 資材費: ダンボール箱、クッション封筒、緩衝材、OPPテープ、納品書用紙などの単価
  • 作業費: ピッキング、検品、梱包、ラベル貼り付けにかかる構内作業員の人件費(作業時間×時給)
  • 集配・運賃実費: 運送事業者に支払う契約運賃(サイズ別、地帯別)
  • 割増・サーチャージ: 燃料サーチャージ、冬季割増、離島・中継料の実費
  • 決済・システム手数料: 代金引換手数料や後払い決済利用時の手数料

フリマアプリや小規模ECを運営している個人事業主であっても、手元の伝票や資材の仕入れ値からこれらの数値を割り出すことが可能です。

ステップ2: 地域別・サイズ別の運賃マトリクスを作成する

全国一律料金を設定している場合、北海道・沖縄・離島への配送コストを本州近隣エリアの利益で補填する構造になりがちです。適正な価格設定を行うため、主要配送先エリア別の配送コスト実績を整理します。

【運賃設計マトリクス(算出例)】
区分A(関東・中部・近畿):運賃実費 650円 + 資材・梱包作業費 150円 = 基本送料 800円
区分B(東北・中国・四国):運賃実費 750円 + 資材・梱包作業費 150円 = 基本送料 900円
区分C(九州・北海道)    :運賃実費 950円 + 資材・梱包作業費 150円 = 基本送料 1,100円
区分D(沖縄・離島)      :運賃実費 1,350円 + 中継料 400円 + 資材費 150円 = 基本送料 1,900円

ステップ3: カートシステムおよび商品ページの表記改定

消費者庁のガイドラインおよびプラットフォームの規約に沿って、表記を改定します。

  • 完全別立ての場合: 「商品本体価格 〇〇円(税込 〇〇円)+ 送料 〇〇円」
  • 自社で負担を継続する場合: 「送料無料」の単独表記を取りやめ、「送料当社負担」「送料は店舗負担」と明記
  • 送料込み価格の場合: 「〇〇円(送料込み)」とし、商品詳細ページ内に「本体価格〇〇円、配送料〇〇円を含みます」といった内訳注記を記載

ステップ4: 顧客向けFAQと配送料改定のアナウンス

突然の表記変更や送料別立て化は、既存顧客に「実質的な値上げ」と受け止められるリスクがあります。変更の少なくとも1〜2カ月前には、Webサイトのトップページやメルマガ等で改定の趣旨を告知します。

「物流効率化法への対応やドライバーの労務環境維持、配送品質向上のため、配送料の透明化を実施します」といった事実ベースの理由を提示し、地域別送料の根拠をFAQページに記載します。

ステップ5: 購買転換率(CVR)の推移測定とカート放棄対策

送料を別立てにすると、購入手続きの最終画面で送料が加算された瞬間に顧客が離脱する「カゴ落ち(カート放棄)」が発生しやすくなります。

  • 一定金額以上の購入で「送料当社負担」にする閾値の設定: 平均客単価の1.2〜1.5倍に設定し、客単価引き上げを狙う
  • 小型便(メール便・ネコポス等)の併用: 厚さ3cm以内の商品は安価なポスト投函便を選択可能にする
  • 商品詳細ページでの送料事前明示: 送付先都道府県を選択することで、カート投入前に総額が分かるUIを実装する

参考記事: 物流総括管理者設置義務とは?2026年施行に向けた選任基準と企業が備えるべき実務対策


自社の物流原価を見直すための検討アクション

「送料無料」表示の是正は、単なるWebサイトの文言変更ではなく、自社のサプライチェーン原価を正しく把握し直す契機となります。実務担当者や経営層は、以下の手順で社内検討を進めることが推奨されます。

  1. 直近1年間の運送会社請求書と出荷伝票の突合
    サイズ別、エリア別の出荷実績データを取りまとめ、1件あたりの平均支払運賃とサーチャージの実額を再集計します。
  2. 商品別・SKU別の利益率再計算
    「商品代金に送料を埋没させていたことで、実は赤字になっていた出荷」が存在しないかを精査します。
  3. 主要販売チャネル(自社EC・モール)の表示ルール確認
    出店しているモールや利用中のカートシステムが提供している「送料当社負担」表示機能や、送料別設定の仕様を確認し、切り替えスケジュールを策定します。

物流コストをブラックボックス化させず、原価の根拠を説明できる状態を整えることが、健全なEC運営と持続可能な輸送ネットワークの維持につながります。


出典: Infoseekニュース
出典: 消費者庁
出典: 株式会社ファンケル
出典: 国土交通省 物流効率化法についてポータルサイト

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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