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物流DX・トレンド 2026年10月1日

ニッスイ、AI導入で受注入力を月160時間削減|60人の属人化を解消

ニッスイ、AI導入で受注入力を月160時間削減|60人の属人化を解消

株式会社ニッスイは受注センターに株式会社route-Dが提供する次世代型AI-OCR「route-D AIデータ入力」を導入し、月間160時間以上の作業時間を削減しました。受注業務を担う担当者60人が抱えていた取引先ごとの注文書レイアウト設定作業や、個々の業務知識に依存していた入力フローを解消し、データ化の自動化を実現しています。

ニッスイ受注センターにおけるAI-OCR刷新の全容

水産・食品大手のニッスイでは、日々の受注業務において取引先から送付される多種多様なフォーマットの注文書を処理しています。同社はこれまでもAI-OCRを活用したデジタル化を進めていたものの、運用面において現場の業務負荷を押し下げるための課題が残されていました。

導入前の課題とシステム刷新の要因

従来のAI-OCR運用において最大の障壁となっていたのは、帳票フォーマットごとの事前設定工数です。食品流通の現場では、卸売業者や小売業者ごとに注文書のレイアウト、記載項目、品名表記が大きく異なります。新しい取引先の帳票を追加したり、既存のレイアウトが変更されたりするたびに、担当者が手作業で読み取り位置(座標)を指定し直す必要がありました。

また、ニッスイの受注センターには60人の担当者が在籍しており、取引先ごとの特殊な発注ルールや略称と正式品番の照合といった作業が各担当者の経験や暗黙知に依存していました。この属人化により、特定担当者の不在時に確認作業が滞るなど、センター全体の平準化が妨げられていました。

「route-D AIデータ入力」の機能特性と解決アプローチ

今回導入された「route-D AIデータ入力」は、書類ごとの読み取り位置設定を必要としない非定型帳票対応のAI-OCRソリューションです。AIが文書全体の文脈や表構造を解析するため、事前の座標定義なしで受発注データを抽出できます。

機能項目 従来の運用環境 route-D AIデータ入力導入後
帳票レイアウト設定 取引先ごとに読み取り位置(座標)の手動設定が必須 AIによる文脈解析により読み取り位置の事前設定が不要
学習モデル構築 帳票ごとに個別設定を行いチューニングを実施 過去の受注履歴データを活用したAIの一括学習に対応
品番・コード変換 60人の担当者が持つ個別の業務知識・暗黙知に依存 過去データに基づく学習と追加学習機能で自動変換
導入・運用支援 現場主導での設定が必要で立ち上げ負担が大きい route-D側の担当者が学習作業を直接伴走支援

過去の蓄積された受注データを活用してAIが一括学習を行う仕組みにより、導入初期の現場負荷を抑えながら高いデータ化精度を確保しています。さらに、現場での追加学習機能とroute-D側による学習支援体制を組み合わせることで、新商品の追加や季節ごとの注文変動にも柔軟に対応できる体制を整えました。

route-Dの展開タイムラインと実績推移

株式会社route-Dは、受発注業務の自動化に特化したAIデータ入力ソリューションの社会実装を段階的に進めています。

年月日 発表・展開内容 対象企業・領域
2025年7月14日 受発注データAI入力自動化ソリューションを出展 製造・流通向け展示会
2026年7月1日 帳票・パレット伝票等の入力工数を70%以上削減 花王株式会社
2026年8月25日 配管資材の受発注業務における受注入力を自動化 イシグロ株式会社
2026年9月29日 受注センターの入力工数を月間160時間以上削減 株式会社ニッスイ

ニッスイでは今回の成果を受け、受注センターでの利用にとどまらず、グループ各社への横展開を開始しています。

参考記事: OCR(光学文字認識)とは?仕組みやAI-OCRとの違い、RPA連携による物流DXの進め方を解説

受発注データの即時化がサプライチェーン各層に及ぼす影響

受発注業務におけるデータ入力作業の短縮は、バックオフィスの省力化にとどまらず、後続する物流オペレーション全体に直接的な変化をもたらします。

製造業者・メーカー:確定データの早期連携による出荷リードタイムの確保

食品メーカーのバックオフィスにおいて注文書入力に時間がかかると、基幹システムへの売上・出荷指示登録が後ろ倒しになり、物流倉庫へのピッキング指示や出荷締め切り時刻を圧迫します。

レイアウト設定が不要なAI-OCRによって注文受領からデータ確定までの時間が短縮されると、工場や外部委託倉庫への出荷データ連携が前倒しされます。これにより、倉庫側はピッキングや検品作業を日中の早い時間帯に平準化して進めることが可能になり、夕刻のトラック積載作業や出荷バースの混雑を緩和できます。また、ニッスイが方針として掲げているように、正規化された受注データを早期に蓄積・集計することで、生産計画や需要予測モデルへ直結させ、工場在庫の欠品や過剰保管を防ぐ基盤が整います。

SaaS・テクノロジーベンダー:現場の保守工数を奪わない「伴走型」への要件変化

受発注領域におけるテクノロジー選定では、単一帳票の文字認識率の優劣を競う段階から、運用の持続可能性を支える設計へと評価軸がシフトしています。

従来のAI-OCR製品の多くは、取引先が帳票フォーマットを変更するたびにユーザー企業側でテンプレートの再定義や座標修正を行う必要があり、導入後に保守工数が肥大化して運用が頓挫する事例が見られました。「route-D AIデータ入力」のように、過去データを用いた一括学習機能やベンダー側の学習支援体制を組み込み、ユーザー側の設定負荷を極小化する仕組みが導入判断の決定打となっています。今後は、自社システム単体での完結ではなく、基幹システムや販売管理システムとAPIで直結し、データ投入までを人手を介さず自動完了させる連携能力が求められます。

参考記事: インフォマートと大塚商会、26年8月受発注DX拡充で出荷遅延解消へ

LogiShiftの視点:設定レスAIが変える受発注データと需要予測の直結構造

帳票処理技術は、従来の「フォーマット固定型」OCRから、自然言語処理と文脈理解を前提とした「設定レス型」AIへと構造変化を遂げています。

食品流通では取引先ごとの商慣行が根強く、発注書フォーマットの統一(EDI化)を相手先に強制することは実質的に困難でした。その結果、メーカーのバックオフィスには非標準帳票を解読するための専任担当者が配置され、商品コードや納品先コードの読み替えという属人的な暗黙知が長年温存されてきました。

ニッスイの事例が示す本質的な価値は、60人の担当者が抱えていたコード変換ルールや取引先固有の表記揺れをAIに追加学習させ、組織の形式知へと置き換えた点にあります。この仕組みにより、非定型帳票を介したアナログな商流であっても、下流の物流現場へ流れる段階では完全にデジタル化された標準データへと瞬時に変換されます。

企業が今後注視すべきは、単なる入力時間160時間の削減にとどまらず、その先にある「需要予測へのデータ利活用」の実行スピードです。受発注データがタイムラグなく基幹システムに蓄積されれば、日々の受注変動を翌週の生産配分や拠点間在庫の配置計画へ即時反映できるようになります。受発注の入口で発生する情報の目詰まりを解消することは、製造から輸配送に至るサプライチェーン全体のリードタイムを縮めるための必須条件となっています。

まとめ:明日から意識すべき受発注業務の見直し

ニッスイの導入事例を踏まえ、バックオフィスと物流オペレーションの連携強化に向けて現場で確認すべき手順を整理します。

  1. 取引先ごとの注文書フォーマット数とレイアウト変更頻度を棚卸しする

取引先ごとに使用されている注文書の形式(FAX、PDF、Excel等)と、月間に発生するレイアウト修正の件数を集計します。既存のOCRや手入力において、設定変更やテンプレート修正に費やしている実労働時間を数値化することが出発点となります。

  1. 担当者ごとに分散しているコード変換ルールを台帳化する

取引先独自の品名表記、商品コード、納品先指定などの読み替え作業が特定の担当者の暗黙知になっていないかを点検します。AIに追加学習させるための基礎データとして、過去の受注履歴と基幹システムの確定データを照合可能な状態に整理します。

  1. 受注締め切り時刻と倉庫への出荷指示完了時刻のタイムラグを計測する

注文書を受領してから倉庫側へピッキング指示データが渡るまでの所要時間を把握します。入力自動化によって前倒しできる時間幅を算出し、倉庫現場の作業平準化やトラックの荷待ち時間削減にどれだけ寄与できるかを物流部門と共有します。

出典: logi-today.com
出典: route-d.co.jp
出典: prtimes.jp

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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