株式会社インフォマートと株式会社大塚商会は2026年8月20日、製造業および卸売業の受発注・請求業務におけるDX支援に向けた協業体制を強化したと発表しました。2026年4月に本格施行された改正物流効率化法によって荷主企業への物流効率化が義務付けられる中、受発注から請求までの「Data to Data」連携によって出荷事務の遅延を解消し、輸配送リードタイムの短縮と現場の生産性向上を後押しする動きとして注目されます。
改正物流効率化法と受発注DXの連動:協業強化の背景と全体像
2026年現在のサプライチェーンにおいて、製造・卸売業を取り巻く環境は大きな転換点を迎えています。2024年4月のドライバー時間外労働規制適用以降、輸送力の不足と運賃上昇が恒常化する中、2026年4月には「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の法改正(改正物流効率化法)」が施行されました。これにより、年間貨物取扱量が一定規模以上の事業者は「特定荷主」に指定され、物流統括管理者(CLO)の選任や物流効率化に向けた中長期計画の策定・提出、トラックの荷待ち・荷役時間の削減が法定義務となっています。
荷主や卸売業者が積載率向上や荷待ち時間短縮を達成する上で、最大の阻害要因の一つとなっているのが、受発注現場に根強く残るアナログな商習慣です。FAXや電話による注文受付、担当者による基幹システムへの手入力転記は、入力ミスや確認作業の発生による出荷指示の遅延を引き起こし、倉庫でのピッキングや配車計画の確定を圧迫していました。
インフォマートと大塚商会は、こうした業務プロセスの停滞を解消するため、大塚商会が提供する保守・運用支援サービス「たよれーる」のラインアップを拡充し、基幹業務システムとのシームレスなデータ連携体制を構築しました。
協業拡大の経緯と主要マイルストーン
両社は2022年4月のパートナー契約締結以来、バックオフィス業務のデジタル化を段階的に推進してきました。今回の協業強化は、人手不足と法規制への対応が急務となる製造・卸売業の現場課題に直接応えるものです。
| 時期 | 主な取り組み内容 | 対象領域・対象システム |
|---|---|---|
| 2022年4月 | セールスパートナー契約を締結 | バックオフィス全般のDX推進基盤の確立 |
| 2023年4月 | 「たよれーる」に請求書サービスを追加 | 「BtoBプラットフォーム 請求書」と「SMILE V」の連携開始 |
| 2025年1月 | 建設業・製造業向けサービスを拡充 | 「BtoBプラットフォーム TRADE」や製造業向け受発注を追加 |
| 2026年8月 | 製造・卸売業向け受発注DXを大幅強化 | 「TANOMU」「BP Storage」追加、販売管理システム連携 |
| 2027年(予定) | 紙発注書の完全データ化を計画 | 株式会社invox協業の「発注書AI-OCR(invox)」を追加予定 |
連携ソリューションの構成と「Data to Data」の実現
今回の協業強化における中核は、大塚商会の販売管理システム「SMILE V 2nd Edition 販売」と、インフォマートが展開する受発注・帳票クラウドサービスとの自動データ連携です。
大塚商会のワンストップサポート「たよれーる」に対象サービスとして追加された「TANOMU」は、卸売業者が得意先からの発注をスマートフォンやLINE経由で受け付けられるシステムです。従来の電話やFAXによる聞き間違い・読み間違いを防ぎ、即座にデジタルデータとして受注を確定させます。
あわせて追加された「BP Storage」シリーズは、AI-OCR(人工知能光学文字認識)を用いて請求書などの各種帳票を高精度にデータ化し、電子帳簿保存法に準拠した保管を可能にします。さらに、店舗管理クラウド「V-Manage」の追加や、2027年に予定されている「発注書AI-OCR(invox)」の連携により、取引先ごとに異なる発注フォーマットを自動でデータ化する仕組みが整います。
これらのシステムが「SMILE V 2nd Edition 販売」と直接つながることで、受注データの受領から基幹システムへの登録、出荷指示、請求書の発行・保管に至るまで、人間が介在する転記作業を一切挟まない「Data to Data」の処理フローが完成します。
サプライチェーン関係者への具体的な影響
受発注から基幹システムまでのデータ直結は、単なるバックオフィスのペーパーレス化にとどまらず、輸配送網全体のオペレーションに大きな波及効果をもたらします。
卸・問屋・流通業者:出荷締め切り時間の前倒しと誤出荷の撲滅
卸売現場において、FAX注文の手入力作業は午前中から夕方にかけての業務負荷のピークを作り出し、倉庫への出荷指示データを遅延させる主因でした。スマートフォン経由の受発注システムやAI-OCRが基幹システムと連動することで、受注データがリアルタイムに出荷指示へと変換されます。
これにより、出荷締め切り時刻を前倒しすることなく倉庫作業の着手を早めることが可能になり、特定荷主としての荷待ち削減基準の遵守や、作業員の残業削減を両立できます。また、手作業による品番・数量の打ち間違いが排除されるため、誤出荷に伴う緊急再配送や返品対応の物流コストを根本から削減できます。
運送事業者:運行計画の安定化と突発的な待機時間の解消
運送事業者にとって、荷主側の事務処理遅延による「出荷指示待ち」や「荷揃えの遅れ」は、ドライバーの長時間待機を引き起こす重大な課題でした。
荷主側の受発注がデジタル化され、出荷確定情報が早期に物流現場へ渡ることで、積み込み開始時刻のブレが大幅に低減します。配車担当者は確定した物量データを早い段階で把握できるようになり、トラックの積載率向上に向けた混載計画や共同配送の調整が容易になります。運行計画の精度が上がることで、ドライバーの拘束時間管理が安定し、コンプライアンス遵守と輸送効率の向上が実現します。
製造業者・メーカー:リアルタイム需要データの把握と在庫・配分最適化
製造業の出荷・物流拠点では、基幹システムと受発注プラットフォームのシームレスな統合により、日々の受注変動が即座に生産・在庫計画へ反映されます。
従来生じていた発注書受領からシステム反映までのタイムラグが解消されるため、拠点ごとの実在庫と引き当て状況を高い精度で可視化できます。これにより、過剰在庫による保管スペースの逼迫や拠点間転送といった無駄な物流の発生を防ぎ、工場から中継拠点、卸先への輸配送コストを最小化する在庫配置が可能になります。
LogiShiftの視点:企業間データ直結が切り拓く「物流制約時代の新標準」
改正物流効率化法が施行された2026年以降、輸配送能力の供給不足は一時的な問題ではなく、産業構造上の制約条件として定着しています。この状況下で物流を維持するためには、物理的なトラックの増大に頼るのではなく、「情報の伝達速度と精度」を極限まで高めて輸送効率を最大化するアプローチが不可欠です。
今回のインフォマートと大塚商会の取り組みは、単一企業内の業務改善を超え、取引先を巻き込んだ企業間取引の「Data to Data」化を現実的な保守サポート網(たよれーる)とともに提供する点に本質的な価値があります。中堅・中小の卸売・製造業では、自社単独でのシステム間API構築や取引先へのシステム導入強制が困難なケースが多く見られました。しかし、全国に強固な販売・サポート網を持つ大塚商会の基幹システム基盤に、業界標準となりつつある受発注・請求サービスが標準連携されることで、デジタル化のハードルは劇的に下がります。
企業間データが直結した先にあるのは、蓄積された発注データを活用した高精度な需要予測と、荷主主導の共同輸配送プラットフォームへの展開です。受注から配送までのタイムラグを物理的に短縮できないのであれば、情報伝達のタイムラグをゼロにする必要があります。事務プロセスのデジタル化を「物流効率化のための重要インフラ」として捉え直せるかどうかが、今後のサプライチェーン維持における決定的な分岐点となるでしょう。
まとめ:明日から意識すべきアクション
サプライチェーンの停滞を防ぎ、法規制へ適応するために、事業者が直ちに着手すべき指針を整理します。
-
自社の受発注から出荷指示までのタイムラグの可視化
FAX受領や電話注文から基幹システムへの登録完了、倉庫への出荷指示データ送信までに何分(何時間)を要しているかを計測する。事務処理の遅延がトラックの荷待ちや庫内作業の圧迫を生んでいないかを定量的に把握することが第一歩となる。 -
取引先との受発注インターフェースにおけるデジタル比率の向上
取引先規模やITリテラシーに応じて、LINEやスマホ対応の受発注ツール、AI-OCRなどを柔軟に組み合わせ、紙や手作業による転記プロセスを段階的に削減する計画を策定する。 -
基幹システム(販売管理・WMS)と受発注データの自動連携検証
受注データが手動入力なしで販売管理や倉庫管理システム(WMS)へ流れる構造を構築し、特定荷主としての物流統括管理(CLO)体制に耐えうるデータ基盤を整備する。
受発注事務のデジタル化は、社内業務の省力化にとどまらず、輸送力を確保し荷主責任を果たすための物流戦略そのものです。現場のボトルネックを情報の力で解消する取り組みが求められています。
出典: VOIX biz
出典: 大塚商会 プレスリリース
出典: PR TIMES(インフォマート)



