鴻池運輸は2026年10月1日、Hacobuが開発した配車管理システム「KONNECT」の本格運用を東京都と群馬県の流通センター2拠点で開始しました。配車台帳や運賃計算など分断されていたデータを統合し、月間1.5人分(月160時間以上)の業務工数削減と月末締め作業の3日間短縮を見込んでいます。
2拠点計400台の配車・運賃決済を統合する「KONNECT」の導入実態
鴻池運輸が導入した「KONNECT(コネクト)」(商標登録出願中)は、飲料製品や包装資材を扱う基幹拠点向けに開発された配車管理システムです。現場で分散していたアナログ作業を排除し、配車計画から運賃精算、点呼簿の作成までを単一のクラウド基盤で完結させる体制を整えました。
導入拠点における運用規模と旧運用の課題
今回の導入対象は、東京都の国立流通センター営業所と群馬県の北関東流通センター営業所の2拠点です。両拠点は合計で1日約400台のトラックを運行しており、首都圏および北関東エリアにおける飲料物流の中核を担っています。
従来のオペレーションでは、車両の空き状況やドライバーの割り当てを紙の配車台帳で管理し、運賃計算はExcel、請求支払いは基幹システムで個別に処理していました。このため、配車担当者は1日に100〜200件に及ぶデータの二重転記や照合作業を強いられていました。
資本提携から本番稼働に至る開発ロードマップ
今回のシステム稼働は、鴻池運輸とHacobuによる段階的な協業の成果です。2024年の先行実証から資本参加、そして専用システムの開発へと進展しました。
| 時期 | 実施内容 | 具体的な成果・進捗 |
|---|---|---|
| 2024年7月 | 先行実証の検証 | 国立流通センターで「MOVO Vista」を試行導入。配車業務時間を50%削減し、月約1,500枚のFAXをゼロ化。 |
| 2025年5月 | 資本参加の実施 | 鴻池運輸がHacobuへ出資を完了(総額7億円規模の調達ラウンドに参画)。DX推進基盤を強化。 |
| 2025年11月 | 開発プロジェクト始動 | 現場要件に合わせた配車管理システム(後のKONNECT)の開発に着手。 |
| 2026年9月 | テスト運用の開始 | 国立・北関東の2拠点において実際の配送案件を用いた並行運用を開始。 |
| 2026年10月 | 本格稼働の開始 | 2拠点での本格運用へ移行。配車から運賃確定までの処理を完全統合。 |
「KONNECT」が実装する主要機能の構成
KONNECTは、配車業務の上流から下流までを網羅する4つのコア機能で構成されています。
- 案件管理機能: 荷主からの配送依頼データをCSVファイル経由で一括登録・更新
- 配車計画機能: 自社乗務員・車両・協力会社の稼働枠を画面上で可視化し、過積載チェックを行いながら運行案件を割り当て
- 実績・請求支払管理機能: 運行実績に基づき運賃・料金を自動計算し、収支確認や請求・支払明細の確定処理を実行
- 点呼・マスタ管理機能: 配車データから点呼簿を自動生成し、拠点・車両・乗務員の基本情報を一元保持
これらの機能連携により、8人の配車担当者で月間160時間以上の作業時間を削減するとともに、これまで長期間を要していた月末の締め処理を3日間短縮する定量効果を見込んでいます。
参考記事: TMS(輸配送管理システム)とは?WMSとの違いから導入効果・失敗しない選び方まで解説
物流サプライチェーン各主体に及ぶ具体的な実務変化
配車から運賃決済までがデジタル上で直結した運用モデルは、3PL事業者、テクノロジーベンダー、運送協力会社のそれぞれに実務上の変化を及ぼします。
倉庫事業者・3PL:間接コスト削減と拠点オペレーションの脱属人化
3PL事業者の物流センターにおいて、配車業務は長年ベテラン担当者の頭脳や個人所有のメモに依存する属人的な業務でした。配車担当者が不在になると配車割りが滞り、請求確定にも遅れが生じる体制が一般的でした。
KONNECTのような統合システムの配備により、案件受託、車番割り当て、運賃計算の各ステップがデータで接続されます。担当者が交代しても同一水準の配車計画と過積載チェックが可能となり、月間1.5人分相当の間接業務コストを削減できます。鴻池運輸は今後、飲料を扱う全国拠点へ本システムを展開し、将来的には他品目の拠点へも広げる方針を示しており、全社規模での管理コスト圧縮を進める基盤となります。
参考記事: 鴻池運輸が2026年中20拠点にTMS展開、東阪間の共同配送を加速
SaaS・テクノロジーベンダー:資本提携を前提としたバーティカルSaaS開発への移行
物流ITを提供するベンダー側にとって、本件はパッケージ導入を超えたアライアンス型の開発アプローチを示しています。汎用的な配車SaaSをそのまま当てはめるだけでは、荷姿が特殊な飲料製品や包装資材の配送条件、多重下請構造を含む運賃精算要件に適合しきれない課題がありました。
Hacobuは鴻池運輸からの出資を受け入れ、大手物流企業の現場オペレーションに深く入り込むことで、実務要件に合致したシステムを開発しました。登録ドライバーID数80万超・3万2,000拠点以上の利用基盤を持つHacobuのプラットフォーム力と、特定荷主の輸配送を熟知した鴻池運輸のノウハウを組み合わせることで、開発期間の短縮と現場定着率の向上を両立させています。
参考記事: 株式会社Hacobuが11万拠点連携へ、2026年4月CLO義務化への必須対応
運送事業者:運賃計算の自動化による精算ラグの解消と運行管理の透明化
用車を受ける協力運送会社にとっても、実務の透明化が進みます。従来は月末に運行日報や受領書を突き合わせ、手作業で請求書を発行していたため、運賃の照合差異や支払期日のズレが頻発していました。
KONNECT上で運行実績と運賃計算が連動することにより、運行完了時点で支払額が自動算出されます。明細の差異確認にかかる手間が減少し、月末の締め作業が3日間短縮される恩恵は協力運送会社の資金繰り管理や請求事務の負担軽減にも直結します。配車割当と同時に過積載チェックが行われ、点呼簿が自動作成される仕様は、運行管理者の安全管理工数の削減にも寄与します。
参考記事: 配車計画とは?効率化の仕組みやシステム選定・改善ステップを解説
LogiShiftの視点:配車データと運賃決済の直結が握る競争優位性
物流DXの現場では、動態管理や配車組みの単体最適化にとどまり、運賃精算のバックオフィス業務が切り離されたまま運用される事例が依然として見られます。改正物流法により適正運賃の収受や多重下請構造の可視化が厳格に求められる中、配車と運賃決済の物理的・システム的な分断は、間接コストの増大とコンプライアンス違反リスクを直撃します。
鴻池運輸が選択した「配車から支払いまでの一元管理」は、単なる事務工数削減にとどまらず、2025年4月から順次施行されている改正物流法への実効的な対抗策です。KONNECTによって運行実績と請求・支払明細が完全に同期されるため、不透明な運賃設定や下請けへの支払遅延が発生する余地を構造的に排除できます。
今後、輸配送の委託先を選定する荷主企業は、適正運賃の算出根拠と下請運送会社への透明な決済能力を厳しく精査するようになります。配車計画の自動化にとどまらず、バックオフィスの決済データまでを即時連動させられる3PL事業者のみが、特定荷主からの元請けポジションを維持・拡大する優位性を獲得します。
運行・決済データ統合に向けて明日から確認すべき実務手順
配車および運賃精算業務の統合を進めるため、実務担当者が着手すべき確認事項は以下の通りです。
- 自社拠点における配車・運賃管理ツールの棚卸し
配車台帳(紙)、運賃表(Excel)、請求書作成(基幹システム)など、情報が分断されている箇所の数と転記作業に要している工数を実測します。
- 協力運送会社との運賃照合・締めプロセスの確認
毎月の締め作業で照合作業が発生している原因を特定し、運行実績と運賃計算を自動連動させるための契約条件・単価マスタの整理を進めます。
- 法令要件に合わせた点呼・過積載管理のシステム化検討
配車段階で過積載を自動抑止する仕組みや、配車データと連動した点呼簿の自動出力が可能か、現行の運用手順を見直します。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: LOGISTICS TODAY
出典: 株式会社Hacobu プレスリリース
出典: 鴻池運輸株式会社 ニュースリリース



