NX総合研究所は2026年10月8日、2026年度の国内貨物総輸送量が前年度比1.2%増となり、5年ぶりにプラスへ転じる見通しを公表しました。ただし、建設関連貨物を除いた一般貨物の通年伸び率は0.2%増にとどまり、消費や生産の本格的な荷動き回復には至っていません。
2026年度貨物輸送予測の内訳と輸送モード別の跛行性
今回の見通し改訂によると、国内総輸送量は上期に前年同期比1.7%増、下期に同0.7%増と推移し、通年で1.2%増となる予測です。上期は前年同期に落ち込んだ建設関連貨物の反動増が牽引したものの、下期にかけてその勢いは鈍化します。
品類別に見ると、消費関連貨物は通年で0.1%増の微増にとどまります。食料品や飲料を中心とした物価上昇や酷暑による買い控えが下押し要因となり、下期は前年同期の高い水準に対する反動から小幅なマイナスを見込んでいます。生産関連貨物は、DXや省力化投資に伴う一般機械・部品の需要持ち直しを背景に、下期にかけて増加し通年で0.3%増と3年ぶりのプラスへ浮上します。建設関連貨物は、住宅投資の伸び悩みはあるものの、上期の反動増が下支えして通年2.8%増と4年ぶりに増加する見通しです。
| 貨物品類 | 2026年度通年見通し(前年度比) | 主な変動要因 |
|---|---|---|
| 消費関連貨物 | 0.1%増 | 物価高や酷暑、下期における前年反動減 |
| 生産関連貨物 | 0.3%増 | DX・省力化投資に伴う一般機械・部品の回復 |
| 建設関連貨物 | 2.8%増 | 上期の反動増(下期は資材高騰等で横ばい) |
| 国内総輸送量 | 1.2%増 | 5年ぶりのプラス(一般貨物のみは0.2%増) |
輸送機関別の動向では、モードごとの明暗が分かれました。自家用自動車は建設関連貨物の復調により前年度比2.1%増、内航海運は石油製品や石炭の荷動きに支えられ同1.5%増と、それぞれ数年ぶりのプラス予測となりました。営業用自動車も前年度比0.9%増と5年ぶりに増加へ転じる見通しです。
一方、JRコンテナは前年度比6.8%減と3年ぶりのマイナスに沈む予測となっています。リニア中央新幹線建設工事に伴う発生土輸送の需要剥落に加え、相次ぐ大規模自然災害による路線寸断が大きく響きました。JR車扱もセメントや石油の輸送低迷により通年0.9%減と2年連続のマイナスです。国内航空も前年度比2.6%減と5年ぶりのマイナスを見込んでいます。国内航空については、大手宅配便事業者と航空会社が共同運航してきた貨物専用機(A321P2F)が2027年6月をめどに運航を終了し、旅客便の床下貨物室(ベリースペース)活用へ切り替える方針を公表しており、輸送ネットワークの再構築期に入っています。
| 輸送機関 | 2026年度通年見通し(前年度比) | 増減の主要因 |
|---|---|---|
| 営業用自動車 | 0.9%増 | 生産関連の持ち直しにより5年ぶり増 |
| 自家用自動車 | 2.1%増 | 大宗を占める建設関連貨物の反動増 |
| 内航海運 | 1.5%増 | 石油製品や石炭など生産関連の堅調 |
| JRコンテナ | 6.8%減 | リニア発生土輸送剥落、自然災害の影響 |
| 国内航空 | 2.6%減 | 専用便押し上げ一巡、コスト高に伴う再編 |
参考記事: モーダルシフトとは?鉄道・船舶への転換メリットと実務での導入ステップを徹底解説
輸送動向の乖離が運送事業者と荷主企業に与える実務的影響
品類および輸送機関ごとの跛行性は、物流実務を担う現場と荷主企業の輸送計画に直接的な影響を与えます。
運送事業者:特定モード依存からの脱却と運行ルートの再設計
JRコンテナの6.8%減という大幅な落ち込みと、内航海運の1.5%増という対照的な推移は、幹線輸送を担う運送事業者に調達戦略の変更を強いています。鉄道輸送では、自然災害による運行停止リスクや特定工事需要の剥落に伴うダイヤ調整が発生しており、鉄道一本に依存した長距離輸送は運行の安定性を欠く事態を招きます。
事業者は、堅調に推移するRORO船やフェリーなどの内航海運へ一部航路をシフトさせるか、高速道路での中継輸送を組み合わせたトラック幹線網の再編を進める必要があります。内航海運のスペース確保と港湾への集荷体制を整備できるかどうかが、幹線便の安定稼働を左右します。
参考記事: 2026年上期のフェリー・RORO船積載率を国交省が公表、海運モーダルシフトを後押し
製造業者・メーカー:出荷ロット適正化と混載による積載率維持
生産関連貨物が通年0.3%増と小幅な回復を示す一方で、消費関連貨物は0.1%増にとどまります。荷動き全体の爆発的な増加が見込めない環境下では、製造業者は単独でのフルチャーター便運行を維持することが難しくなり、輸送単位あたりのコスト上昇に直面します。
特に一般機械・電子部品メーカーにおいては、設備投資需要に合わせた出荷頻度の見直しや、複数拠点からの集約出荷が不可欠です。容積勝ち・重量勝ちの異なる荷物を持つ異業種荷主との共同幹線輸送や、31フィートコンテナを活用した相互積載など、荷物サイズに合わせた積載率の引き上げ策を実行することが求められます。
参考記事: 2030年の輸送力34.1%不足を打破するJR貨物等の共有戦略
LogiShiftの視点:一般貨物0.2%増下の輸送力確保は「専用から共用へ」の転換が鍵
総輸送量が5年ぶりに前年実績を上回ったとはいえ、建設関連貨物の反動増(2.8%増)を除いた一般貨物の成長率はわずか0.2%にとどまります。この数値は、国内の荷動きが量的拡大の局面にあるのではなく、停滞圏内での横ばい推移であることを示しています。
貨物量全体の伸びが乏しい中で、物流事業者が収益を維持し、荷主が安定した輸送枠を確保するための条件は、輸送アセットの「専用化」を解体し「共用化」を進めることです。象徴的な事象が、国内航空貨物における専用貨物機(A321P2F、最大積載量28トン)の2027年6月運航終了方針です。円安や燃油高によってトラックと航空のコスト差が拡大した結果、専用機による独立ネットワークの維持は採算ラインを割り込み、旅客便の床下貨物室(ベリースペース)を活用する共用モデルへの回帰が選択されました。
鉄道・海運・航空の各モードにおいて、自社専用の直行便を仕立てる手法は荷動きの波動リスクを吸収しきれません。一般貨物の伸びが0.2%にとどまる市場では、JR貨物と運行事業者が連携する31フィート共用コンテナの利用や、内航船のオープンスペースを活用した柔軟なマルチモーダル運用など、既存インフラの空き容量を複数の荷主・事業者で分け合う構造への移行が必須となります。
明日から意識すべきこと
- 自社が利用している幹線輸送モード(鉄道・内航海運・長距離トラック)の稼働率と遅延リスクを点検し、内航海運や中継輸送を組み入れた代替ルートを1つ以上設定する。
- 出荷データの品類別推移を把握し、消費財の伸び悩みに伴う低積載便を特定したうえで、同方向へ配送する近隣荷主との混載や集約出荷の可否を検討する。
- 2027年に向けた航空・鉄道などの幹線インフラ再編を見越し、長距離専用便の契約体系を共有型・混載型サービスへ移行できるか運送委託先と協議を開始する。
出典: Lnews
出典: LOGISTICS TODAY
出典: Aviation Wire



