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Home > 輸配送・TMS> 中小受託取引適正化法施行後も続く傭車依存|物流Gメン指導2647件の現場実態
輸配送・TMS 2026年10月13日

中小受託取引適正化法施行後も続く傭車依存|物流Gメン指導2647件の現場実態

中小受託取引適正化法施行後も続く傭車依存|物流Gメン指導2647件の現場実態

物流ウィークリーは2026年10月13日、岡山県や兵庫県などのトラック運送事業者を対象にした取材を通じ、荷主と運送会社の間で続く取引慣行の歪みに関する現場の実態を報じました。法改正が進展する一方、一部の荷主による「対応次第で仕事を切る」といった高圧的な発言や、全案件の喪失を恐れて利益の薄い傭車配車を継続せざるを得ない下請事業者の窮状が浮き彫りになっています。

取引慣行の歪みを示す運送現場の肉声と制度改正のタイムライン

2026年に入り、物流取引を巡る法制度の整備は急速に進んでいます。しかし、現場のトラック事業者からは、依然として旧態依然とした商慣行や優越的地位の濫用に起因する課題が報告されています。物流ウィークリーが報じた近畿および岡山エリアの事業者の実態は、制度の理念と日常的な実務との間に横たわる隔たりを示しています。

現場で表面化する3つの歪み:傭車リスク・高圧的言動・繁閑ギャップ

取材に応じた各社の証言からは、現代の物流現場が抱える個別の取引摩擦が確認できます。

岡山市の建材輸送事業者:傭車継続に伴う財務的ジレンマ

建築関連部材を手掛ける岡山市のトラック経営者は、顧問税理士から傭車(他社車両の手配)費用の削減を求められた実態を明かしています。税理士からは「中身のない売り上げ」「運賃をもらう前に支払わなければならない資金繰りリスク」と指摘されたものの、車両手配の依頼を断れば当該荷主からの全受注を失う恐れがあるため、要請に応じ続けざるを得ない状況にあります。

兵庫県伊丹市の運送会社:理不尽な要求と契約見直しの検討

兵庫県伊丹市の運送会社社長は、ハラスメントに対する社会的な監視が強まる現在においても、高圧的な言動を繰り返す顧客の存在を指摘しています。過去に「そんな対応なら仕事を切る」といった脅し文句を受けた経緯があり、自社の軽微なミスには暴言を浴びせる一方で自身の非は認めない荷主に対し、今後の受託継続を再考せざるを得ない段階に達しています。

近畿地方の運送事業者:閑散期における需給ギャップと調達の非効率

近畿地方の運送事業者からは、閑散期に入った途端に求車情報が途絶え、荷物を求める同業他社からの電話が急増している実態が語られました。車両の調達が極めて容易な閑散期であるにもかかわらず、荷主側が需給の波を戦略的に捉えた配車計画を組めていないサプライチェーンの非効率性が浮き彫りになっています。

取引適正化に向けた法改正と監視体制の推移

2024年4月の時間外労働上限規制適用以降、運送事業者の労働環境改善と適正な対価の収受を目指し、複数の法改正および行政施策が施行されています。

年月 制度・政策の動き 現場・実務への直接的影響
2023年7月 トラックGメン創設(国交省) 荷主・元請への監視体制発足。2024年11月に360名規模へ拡充
2024年4月 時間外労働の上限規制適用 ドライバーの年間時間外労働が960時間に制限
2026年1月 中小受託取引適正化法(取適法)施行 「特定運送委託」の追加、代金据え置き禁止、手形払いの原則禁止
2026年4月 改正貨物自動車運送事業法等の全面施行 実運送体制管理簿の作成義務化、運送契約時の書面交付義務付け
2026年5月 物流Gメンの累計指導実績が2,647件に達する 荷主1,725件、元請605件などに対する是正指導(働きかけ・要請等)

2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法(取適法)では、発荷主が自社の事業のために行う物品運送の委託が「特定運送委託」として明確に規制対象へ組み込まれました。また、従来の資本金基準に加えて「従業員数基準」が新設され、労務費や燃料費の高騰時に正当な協議を経ずに代金を据え置く行為が明示的に禁止されています。

さらに、国土交通省の「トラック・物流Gメン」による監視網も強化されており、2026年5月31日時点での累計指導件数は2,647件に達しています。2026年3月末には、国土交通省・中小企業庁・公正取引委員会の3省庁連名により、燃料サーチャージの導入や適切な価格転嫁を徹底するよう荷主および元請事業者へ強い要請が発出されました。

参考記事: 取適法が2026年1月施行、運送事業者が進めるべき価格交渉

参考記事: トラック・物流Gメン、6.3万社の通報を是正指導に導く客観的証拠

サプライチェーン各プレイヤーに求められる実務対応

法整備が進む一方で現場に不当な商慣行が残存する背景には、荷主と運送会社双方における構造的な課題があります。業界関係者にはそれぞれの立場に応じた業務プロセスの刷新が求められています。

運送事業者:傭車依存の収益性点検と不採算荷主の選別

運送事業者にとって、自社車両の不足を補う傭車手配は顧客関係を維持するための手段となってきました。しかし、先行して支払う傭車費用に対して荷主からの入金サイトが長い場合、手元キャッシュの枯渇を招く直接的なリスクとなります。

特に実運送を伴わない単なる差配案件は、マージンが極めて薄いにもかかわらず、事故やトラブル発生時の運行管理責任・賠償リスクを負う構造になりがちです。顧問税理士が指摘するように、売上規模だけを追い求めて限界利益が伴わない案件を抱え続けることは、ドライバーの賃金改善原資を圧迫します。

加えて、暴言や契約解除をちらつかせる優越的地位の濫用に対しては、取適法や貨物自動車運送事業法を根拠とした毅然とした対応が不可欠です。感情的な対立を避けつつ、通話記録やメールなどの証跡を確保し、改善が見られない取引先については撤退を含めた契約見直しの判断を下す局面を迎えています。

参考記事: トラックGメンとは?行政処分のリスクと荷主企業が講じるべき不当慣行対策

製造業者・荷主企業:高圧的対応の法的リスクと平準化調達の欠如

発荷主や元請事業者の調達・物流担当者による「仕事を切る」といった脅迫的な態度は、単なるマナーの問題にとどまらず、独占禁止法や取適法に抵触する明確なコンプライアンス違反です。トラック・物流Gメンの通報窓口には全国の運送会社から情報が寄せられており、悪質な違反行為に対しては社名公表を伴う行政処分が執行されます。

また、近畿地方の運送事業者が指摘した「繁忙期と閑散期の調達の非効率」は、荷主企業のロジスティクス戦略における盲点となっています。繁忙期に車両確保難で高騰したスポット運賃を支払う一方で、車両が余剰となる閑散期には計画的な事前手配や拠点の在庫調整を行わず、結果として年間の調達コストを押し上げているケースが散見されます。

自社の出荷波動を精緻にデータ化し、閑散期に中長期的な定期運行契約を打診するなど、年間を通じた車両確保戦略を構築することが、調達コストの最適化と運送会社との安定的なパートナーシップ構築につながります。

参考記事: 改正物流効率化法で2030年の輸送力25%不足を防ぐ計画策定

SaaS・テクノロジーベンダー:多重下請け管理と動的マッチングの実装

物流ITを提供するベンダーにとっては、運送会社と荷主の双方が抱える実務的摩擦を解消するソリューションの展開が求められます。

2026年4月に全面施行された改正トラック法により、利用運送事業者や物流子会社に対しても「実運送体制管理簿」の作成・保存が義務付けられました。これにより、電話やFAXに頼った属人的な傭車手配は、下請階層の把握漏れという法的リスクに直結します。手配と同時に請負階層を自動記録し、運行原価と手数料を可視化するシステムの重要性が増しています。

さらに、閑散期における車両の余剰と繁忙期の車両不足を緩和するため、求荷求車プラットフォームの高度化が必要です。空車情報と貨物データをリアルタイムに突合させ、季節波動に左右されやすい中小事業者の実車率を高めるマッチング機能が求められています。

参考記事: Hacobuが解説する2026年4月改正トラック法と実運送体制管理簿の必須対応

LogiShiftの視点:制度適正化と「データによる取引選別」の必然性

法整備が先行する一方で、現場では「断れば仕事を失う」という恐怖や暴言への我慢が続いている背景には、長年にわたり固定化された取引の非対称性があります。しかし、この力関係は構造的な変化を迎えつつあります。

2028年6月までに全面施行が予定されているトラック適正化二法の「適正原価」制度では、法令遵守に必要な最低コストを下回る運賃での受委託が法的に禁止されます。これにより、運送会社が採算を度外視して安易に傭車を受けたり、荷主が相場を無視した買いたたきを行ったりする商慣行は、事業許可の取り消しや行政指導の直接の対象となります。

運送会社が取るべき防衛策は、顧問税理士が指摘した「中身のない売上」を客観的数値で選別することです。デジタルタコグラフや動態管理システムから得られる待機時間、実走行距離、傭車手数料を組み合わせ、便ごと・荷主ごとの限界利益を可視化できれば、「受けるべき傭車」と「断るべき赤字案件」の境界線が明確になります。

荷主による暴言や不当な要求に対しても、感覚的な対立ではなく、客観的な稼働データと取適法の条文をセットで提示することで、対等な条件交渉へと持ち込むことが可能です。データを基盤とした取引のスクリーニングを実行できる事業者だけが、制度移行期における経営の健全性を維持できます。

明日から取り組むべき3つの実務アクション

旧来の商慣行による経営圧迫を回避し、持続的な運行体制を確立するために、運送事業者の経営層が直ちに着手すべき実務を整理します。

  1. 傭車案件ごとの限界利益とキャッシュフローを総点検する

自社で引き受けている利用運送案件について、荷主からの受取運賃、傭車先への支払運賃、入金・支払サイトのタイムラグを一覧化し、資金繰りリスクに見合わない低マージン取引を抽出する。

  1. 高圧的荷主との取引履歴および通話記録の客観的証跡化を進める

理不尽な契約解除の示唆や契約外作業の強要を受けた場合は、日時・担当者名・発言内容を日報等に詳細に記録し、取適法やトラック・物流Gメンへの申告に耐えうるエビデンスを保管する。

  1. 年間波動を可視化し閑散期を見据えた定期契約の再設計を打診する

自社の月別・季節別の実車率と稼働データを整理し、車両が余剰となる閑散期の荷量確保に向けて、荷主側へ運賃テーブルの見直しや便の平準化を提案する交渉資料を準備する。


出典: 物流ウィークリー
出典: 国土交通省
出典: 全日本トラック協会

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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