政府は2026年10月16日、物資の流通の効率化に関する法律施行令などの一部を改正する政令を閣議決定しました。ひとつの長距離運行を複数人で分担する「貨物自動車中継輸送実施計画」の認定権限を地方運輸局長へ委任する規定が盛り込まれ、2026年11月1日に施行されます。
中継輸送計画の認定権限を委任する政令改正と法制度の歩み
今回の政令改正は、2026年5月20日に公布された「物資の流通の効率化に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第21号)」の施行期日に合わせ、実務上の規定を整備するために実施されました。
ドライバーの拘束時間を短縮しつつ長距離幹線輸送を維持する手段として法制化された「中継輸送」について、認可プロセスの迅速化を目的に国土交通大臣の権限の一部が地方運輸局長へ委任されます。また、法律改正に伴う条項ずれを整理するため、独立行政法人中小企業基盤整備機構法施行令の規定整備も併せて行われました。本政令は2026年10月21日に公布され、2026年11月1日より施行されます。
法改正から施行令閣議決定に至る時系列
中継輸送を軸とした幹線輸送の維持施策は、2026年3月の法案提出から段階的に具体化されてきました。
| 年月日 | 政策・制度設計の動き | 実務への影響・決定内容 |
|---|---|---|
| 2026年3月6日 | 改正物流効率化法案の閣議決定 | 中継輸送の基本方針策定や実施計画認定制度の創設を盛り込んだ法案を提出。 |
| 2026年5月13日 | 改正法案の国会成立 | 参議院本会議で可決され、中継拠点支援や計画認定の法的根拠が確定。 |
| 2026年5月20日 | 改正法の公布(令和8年法律第21号) | 法律公布。公布後6カ月以内(11月1日)の施行が決定。 |
| 2026年9月4日 | 関係省令案のパブリックコメント開始 | 特定中継施設の立地(高速IC周辺5km以内)や規模(延床2,000㎡以上)の基準案を公表。 |
| 2026年10月16日 | 施行令改正の閣議決定 | 地方運輸局長への認定権限委任および条項ずれの整備を正式決定。 |
| 2026年10月21日 | 改正施行令の公布 | 改正政令の正式公布。 |
| 2026年11月1日 | 改正法および改正施行令の施行 | 貨物自動車中継輸送実施計画の申請受付および認定事務が開始。 |
地方運輸局長への権限委任がもたらす申請フローの変化
本政令によって、事業実施区域が1つの地方運輸局の管轄区域内にとどまる中継輸送事業に関しては、計画認定の手続き窓口および審査権限が地方運輸局長へ委任されます。
従来、本省(国土交通大臣)への申請が必要だった許認可手続きが地域ブロックごとの地方運輸局で完結するため、事業計画の審査期間が短縮されます。これにより、地域内の幹線結節点を利用して運行を組み立てるローカル型の中継輸送や、近接拠点間でのトレーラーヘッド交換・ドライバー交代計画が迅速に認可を受けられる環境が整います。
参考記事: 国交省の中継輸送認定、IC5km・延床2000㎡基準と運輸局委任の要点
認定計画に付与される公的支援措置
事業者が策定する「貨物自動車中継輸送実施計画」が認定を受けた場合、複数の支援措置が適用されます。
| 支援項目 | 具体的な優遇・措置内容 |
|---|---|
| 物流施設税制(課税特例) | 認定を受けた特定中継輸送施設の固定資産税・都市計画税を5年間2分の1に軽減。 |
| JRTTによる資金支援 | 鉄道建設・運輸施設整備支援機構による長期・低利の資金貸付および直接出資。 |
| 運行経費の補助 | 中継輸送実施計画の策定経費や事業初年度の運行経費に対する国費補助。 |
| 法令手続きのみなし特例 | 貨物自動車運送事業法や倉庫業法等における関連許認可手続きの一括化・ワンストップ処理。 |
中継拠点として認定対象となる「特定貨物自動車中継輸送施設」には、高速道路インターチェンジから5km以内の立地、延床面積2,000㎡以上(冷蔵・貯蔵等は容積4,000㎥以上)、シャワー室等の疲労回復設備、トラック到着時刻表示装置の設置といった基準が関係省令で定められています。
参考記事: 国交省、延床2000㎡以上の中継輸送施設に固定資産税半減
主要プレイヤーにおける実務への影響
地方運輸局への権限委任と中継輸送認定制度の施行は、運送事業者、行政機関、ドライバーの業務形態にそれぞれ具体的な変化を与えます。
運送事業者:計画申請リードタイムの短縮と共同運行の具体化
幹線輸送を手掛ける運送事業者は、中継輸送実施計画の申請から承認までのリードタイムが短縮されることで、新規運行ルートの立ち上げをスピーディに進められるようになります。特に同一管内の中継拠点を介して複数社がトレーラーのシャーシを交換する運行モデルや、中間地点でドライバーが車両を乗り換えるモデルにおいて、地方運輸局への申請で即座に制度的支援(税制減免や運行補助)を受けられる利点が生じます。
長距離案件を受注する際、単独での長距離運行が労務管理上困難なケースでも、パートナー企業と組んで地方運輸局に中継計画を提出することで、事業法上の手続きと支援適用の双方を一体的に進めることが可能になります。
参考記事: 改正物流効率化法、IC5km・延床2000㎡の中継拠点認定で税制優遇|
行政・規制当局:地域の実態に即した審査と普及推進
認可権限を持つ地方運輸局では、管内の道路網やインターチェンジ周辺の用地状況、トラックターミナルの稼働状況を把握した上で審査を行う体制へと移行します。本省一括審査と比較して、申請事業者との事前相談や現地確認が円滑に行われるため、書類不備による差し戻しなどのタイムロスが減少します。
一方で、各地方運輸局の交通政策部や自動車技術安全部においては、中継拠点の構造(延床2,000㎡以上、入浴設備の有無など)や運行計画が法令基準を満たしているかを厳格に精査する実務体制の構築が求められます。
トラックドライバー:拘束時間の削減と日帰り運行への移行
中継輸送の認可が円滑に進むことで、長距離ドライバーの勤務シフトは宿泊を伴う運行から中間拠点で折り返す日帰り運行へと移行します。
往復1,000km前後の運行を1人で担う場合、拘束時間は連続運転制限(4時間ごとに30分休憩)や改善基準告示の上限に抵触しやすくなります。中継拠点で車両交換やドライバー交代を行えば、1人あたりの運転距離が往復400〜500km程度に収まり、拘束時間の大幅な圧縮と自拠点への当日帰着が実現します。シャワー室や休憩設備が義務付けられた特定中継施設の利用が広がることで、運行途中の身体的負荷の低減にも直結します。
LogiShiftの視点:単独運行から「分担型ネットワーク」への実務転換
今回の地方運輸局長への権限委任は、2026年11月1日に施行される改正物流効率化法を、書類上の制度にとどめず実際の幹線運行へ定着させるための実務整備です。
これまでの中継輸送は、拠点確保の初期コストやパートナー事業者との運行調整、行政手続きの煩雑さが障害となり、意向があっても実導入に進まない事例が多く見られました。しかし、固定資産税の5年間半減やJRTTの低利融資といった金銭的インセンティブに加え、認可権限が地方運輸局へ下りたことで、地方都市間の幹線ネットワークを再編するハードルは一段下がりました。
今後、運送事業者が取るべき戦略は、自社のみで全行程を抱え込む運用を改め、同一運輸局管内の同業者や荷主、倉庫業者と「協議体」を速やかに組織することです。高速道路ICから5km以内にある基準適合拠点をハブとして確保し、11月1日の申請受付開始と同時に中継計画を提出できる企業が、2026年以降の長距離輸送枠の確保において主導権を握ることになります。
まとめ
2026年11月1日の中継輸送認定制度施行に向け、運送事業者および荷主企業は直ちに以下の実務準備に着手する必要があります。
- 運行ルートの洗い出しと日帰り化の検証
自社で運行している長距離便のうち、拘束時間が上限に近い路線をリストアップし、中間地点での中継運行(ドライバー交代・シャーシ交換)に切り替えられるかを運行データから検証します。
- パートナー事業者および利用可能拠点の選定
運行を分担できる提携運送会社を選定するとともに、中継地点として活用できる高速道路IC周辺5km以内の特定施設(延床2,000㎡以上、休息設備完備)の候補地を確定させます。
- 管轄地方運輸局への事前相談の準備
共同運行体制と中継拠点の見通しが立った段階で、事業実施区域を管轄する地方運輸局の窓口へ申請書類や設備要件の事前確認を行い、11月1日以降の計画申請へ備えます。



