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Home > 輸配送・TMS> 国交省の中継輸送認定、IC5km・延床2000㎡基準と運輸局委任の要点
輸配送・TMS 2026年9月9日

国交省の中継輸送認定、IC5km・延床2000㎡基準と運輸局委任の要点

国交省、中継輸送認定案を公表!IC5km以内など基準明記で11月始動

国土交通省は2026年9月4日、改正物流効率化法に基づく「貨物自動車中継輸送実施計画の認定制度」を新設するための関係省令案を公表し、意見公募を開始した。本省令案では、申請手続きの詳細に加え、高速道路インターチェンジから5キロメートル以内の立地などを求める特定中継輸送施設の認定基準を明記しており、2026年11月1日に施行される予定である。

改正物流効率化法に基づく「中継輸送認定制度」の枠組みと整備の経緯

国土交通省が意見募集を開始した省令案は、2026年5月に成立・公布された「物資の流通の効率化に関する法律の一部を改正する法律(改正物流効率化法)」の実務的な運用基準を定めるものである。

トラックドライバーの時間外労働上限規制(年960時間)が適用されて以降、長距離輸送の輸送力維持と労働環境の改善が喫緊の課題となっている。従来の「1人のドライバーが長距離全行程を往復する」運行モデルから、中間拠点でドライバー交代やトレーラーのヘッド・シャーシ交換を行う「中継輸送」への移行を法制面・資金面から国が直接後押しする。

制度創設に至る政策の歩みと今後のスケジュール

中継輸送の普及に向けて、政府は法改正と制度設計を段階的に進めてきた。2024年の検討会立ち上げから、今回の省令案公表、2026年11月の制度施行に至る経緯は下表の通りである。

年月日 政策・制度設計の動き 主な内容と法的効力
2024年4月1日 改善基準告示の改正適用 ドライバーの時間外労働に年960時間の上限規制を適用。拘束時間削減が急務となる。
2024年10月〜2025年4月 物流拠点の今後のあり方検討会 国土交通省が計4回開催。新技術対応や中継輸送を担う基幹拠点の整備・支援を提言。
2026年3月6日 改正物流効率化法案の閣議決定 中継輸送の基本方針策定や実施計画認定制度の創設を盛り込んだ法案を国会提出。
2026年5月13日 改正法案の可決・成立 参議院本会議で可決し、物流インフラと運行計画の認定制度に関する法的根拠が確定。
2026年5月20日 改正物流効率化法の公布 令和8年法律第21号として公布。公布後6カ月以内の施行を規定。
2026年8月26日 政令改正案のパブコメ開始 1地方運輸局管内の事業認定権限を地方運輸局長へ委任する政令案を公表。
2026年9月4日 関係省令案の公表・パブコメ開始 中継輸送施設の具体的スペックや申請手続を規定。受付は10月4日13時0分まで。
2026年10月上旬(予定) 関係政令・省令の公布 パブリックコメントを踏まえた最終的な省令・政令を公布。
2026年11月1日(予定) 改正物流効率化法の施行 貨物自動車中継輸送実施計画の申請受付を開始し、支援スキームを運用開始。

今回の意見公募は2026年10月4日13時0分まで実施され、寄せられた意見を踏まえて10月上旬に関係省令が公布された後、2026年11月1日に正式施行される運びとなっている。

省令改正案に盛り込まれた4つの追加規定

公表された国土交通省関係省令の整備に関する省令案(施行規則改正案)では、認定制度の実務を円滑に進めるため、主に以下の4項目に関する規定が追加された。

  • 貨物自動車中継輸送実施計画の認定の申請手続き(申請書の記載事項や添付書類の規定)
  • 特定貨物自動車中継輸送施設の整備に関して貨物自動車中継輸送実施計画に記載すべき事項
  • 特定貨物自動車中継輸送施設の基準(立地、規模、構造、設備要件)
  • 特定貨物自動車中継輸送実施計画の変更認定の申請に関する手続き

これらにより、事業者が中継拠点を新設・改修し、共同で運行計画を策定する際の具体的な手続きルールが確立される。

「特定貨物自動車中継輸送施設」に求められる認定基準案

計画認定の核となるのが、税制特例などの対象となる「特定貨物自動車中継輸送施設」の要件である。単なる荷物の保管倉庫ではなく、幹線道路網との連続性や大型トラックの機動的な中継、ドライバーの確実な休息を担保するため、施設スペックに厳格な基準が設けられた。

評価項目 規定された基準案 要件設定の実務的な狙い
立地条件 高速道路インターチェンジ(IC)周辺5km以内の区域 高速道路網からのアクセス性を高め、一般道走行による時間ロスと市街地混雑を抑止。
施設規模 延床面積2,000㎡以上(貯蔵槽倉庫・冷蔵倉庫等は容積4,000㎥以上) トレーラーのヘッド・シャーシ交換や荷役、一時待機に必要なヤード空間を確保。
建物構造 主要構造部の柱や梁が鉄骨造または鉄筋コンクリート造等 防災拠点機能も兼備できる堅牢な耐震・耐火構造を担保。
疲労回復設備 入浴施設(シャワー室等)などドライバーの休養設備 長距離運行を終えたドライバーの疲労を確実に回復させ、労務管理を改善。
昇降設備 地上複数階建ての場合は積載荷重2t以上のエレベーター配備 重量パレットや大型資機材の縦移動を円滑化し、荷役遅延を防止。
デジタル運行管理 トラック到着時刻表示装置の配備 車両の接近状況をリアルタイムに共有し、バース待機や荷待ち時間を最小化。

計画の認定審査では、施設図面や高速道路ICとの位置関係図の提出が必要となるほか、地域交通やまちづくりへの影響を考慮し、立地自治体の首長への意見聴取手続きも組み込まれている。

認定計画に付与される公的支援スキームと手続きの迅速化

本制度で認定を受けた「貨物自動車中継輸送実施計画」に対しては、民間投資の採算性リスクを緩和するための支援スキームが用意されている。

最も大きな柱の一つが、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)による支援である。改正法に基づきJRTTの業務方法書が改定され、認定を受けた中継輸送事業に対して長期・低利の資金貸付けや直接出資が行えるようになる。民間単独では巨額の初期投資を賄いにくい専用ヤードや共同中継ハブの整備を、国の財政投融資を活用して推進する枠組みである。

また、地方分権と手続きの迅速化を目的に、1つの地方運輸局の管轄区域内のみで実施される中継輸送事業については、国土交通大臣の認定権限が地方運輸局長に委任される。これにより、地方運輸局の交通政策部等に担当事務が追加され、地域の実情に応じた迅速な審査環境が整えられる。

参考記事: 国交省、延床2000㎡以上の中継輸送施設に固定資産税半減

参考記事: 国交省の基幹物流拠点支援が11月創設、税制優遇で中継輸送の導入を加速

輸送ネットワーク刷新がもたらす主要プレイヤーへの影響

中継輸送実施計画の認定制度創設は、幹線輸送に携わる運送会社、現場のトラックドライバー、物流不動産を供給するデベロッパーなど、サプライチェーンの各主体に多角的な変化をもたらす。

運送事業者:拠点投資の負担軽減と日帰りリレー運行への転換

長距離幹線輸送を担う運送事業者にとって、新制度は長距離運行モデルを刷新するための足がかりとなる。

国土交通省が過去に実施した調査では、トラック事業者の50%以上が中継輸送に前向きな意向を示していたものの、実際の実施率は約16%にとどまっていた。運行ダイヤの同期や中間ヤードの確保、シャーシ交換に必要な初期投資負担が大きな障壁となっていたためである。

今回の省令整備により、JRTTからの出資や低利融資、施設に係る固定資産税の減免措置、さらには計画策定・運行初期の経費補助などの活用が可能となる。これにより、自前で全額を負担することなく中間中継拠点を確保できるようになり、競合他社とのアライアンスによる「リレー型運行」の具現化が進む。

【中継輸送導入による運行構造の変化】
従来モデル: ドライバーAが東京〜大阪間(往復1,000km超)を1人で連続運行(車中泊・拘束時間超過のリスク)
中継モデル: 中間地点(静岡等)の特定中継施設でドライバー交代またはトレーラー交換
       ドライバーA・Bともに自社拠点へ当日中に帰着(日帰り運行・拘束時間の遵守)

長距離輸送の拘束時間削減が図られることで、改善基準告示の遵守が容易になり、労務コンプライアンス違反による行政処分リスクを低減できる。

トラックドライバー:拘束時間の適正化と労働環境の改善

現場のドライバーにとって、中継輸送の社会実装は過酷な勤務形態の抜本的な改善に直結する。

従来の長距離運行では、数日間にわたる運行に伴う車中泊や、荷待ち・荷役を含めた長時間の拘束が常態化していた。中間拠点でのトレーラー交換方式やドライバー交代方式が定着すれば、片道3〜4時間程度の中間地点まで走行して折り返す「日帰り勤務」が可能になる。

省令案の特定施設基準に「入浴施設などの疲労回復設備」の設置が義務付けられたことも大きなポイントである。運行の合間に適切な休息と身体のケアを行える環境が公的に担保されることで、ドライバーの健康起因事故の防止や離職率の低下、若年層や女性ドライバーの新規採用につながる。

物流施設デベロッパー:高速IC近接地における中継需要の顕在化

物流不動産市場においては、従来の「荷物の長期保管・流通加工」を主目的とした大型マルチテナント型倉庫に加え、「中継輸送特化型」の施設開発という新たな投資カテゴリーが明確化する。

高速道路ICから5km以内、延床面積2,000㎡以上、トレーラーが容易に回転・待機できる広大なヤード、ドライバー休憩・シャワー設備の常設といった基準が公示されたことで、開発すべき施設計画の要件が具体化した。

市街化調整区域における開発許可手続きへの配慮や、固定資産税・都市計画税の軽減措置が受けられることは、デベロッパーにとって土地取得および開発採算性の面で強力な後押しとなる。今後は、複数の運送事業者が共用できるオープン型の中継ハブ施設を東名・新東名、名神、新名神、東北道などの主要幹線沿いに開発する動きが本格化する。

参考記事: 中継輸送とは?長距離運行の日帰り化を実現する仕組みと導入ステップ

参考記事: 幹線輸送とは?地場配送との違いや導入メリット、課題解決の最新動向を解説

LogiShiftの視点:幹線輸送の構造転換と制度活用の要諦

今回の省令案公表は、単なる手続き規則の制定にとどまらず、日本の長距離幹線輸送が「1社単独・1台・1人完結型」から「共創型・拠点中継リレー型」へと構造転換する分岐点となる。

国土交通省は2030年度までに全国20カ所の中継拠点を整備する目標を掲げている。日本全体で予測される最大25%の輸送力不足(約7.2億トン分)を回避するためには、この公的枠組みをいかに実効性ある運行ネットワークへ昇華させられるかが問われる。

制度を実務に落とし込むにあたり、事業者側が直面する最大のハードルは「ハード(施設)の整備」以上に「ソフト(運行同期と規格統一)の整合」である。

中継輸送の方式 運用上のメリット 解決すべき実務課題
トレーラー交換方式 自社車両に触れずに荷物のみを受け渡せるため、車両管理責任の線引きが明確。 トラクターヘッドとシャーシのカプラー規格、ブレーキホース形状、安全点検の統一ルールが必要。
ドライバー交代方式 車両をそのまま乗り換えるため、特別なシャーシ投資が不要。 他社ドライバーが自社車両を運転することに伴う保険適用範囲の確認、運転マナーや車内清掃の標準化。
荷物積み替え方式 車両形状に制約されず、既存の単車トラック同士でも実施可能。 中間拠点でのフォークリフト荷役や積み替え時間が発生し、荷物破損リスクやコストが増加。

国土交通省が施設要件に「トラック到着時刻表示装置の設置」を盛り込んだ背景には、運行ダイヤの遅延やズレによって中間拠点で長時間待機が生じる「中継待ち」を防ぐ意図がある。

今後、事業者が実施計画の認定を目指す上では、単に設備要件を満たすだけでなく、複数事業者間で運行管理システム(TMS)をAPI連携させ、リアルタイムの動態把握と遅延時の自動リカバリー体制を構築することが成否を分ける。行政が用意した出融資や税制優遇を最大限に引き出すためにも、同業者間でのアライアンス形成を早期に進める必要がある。

参考記事: 物流総合効率化法とは?改正のポイントと計画認定で得られる4大実務メリットを解説

参考記事: 2030年の最大25%輸送力不足回避へ国土交通省などの政策加速による必須対応

中継輸送認定制度の施行に向けて企業が着手すべきこと

2026年11月1日の制度施行と公募開始を控え、幹線輸送の維持・見直しを迫られている物流事業者や荷主企業は、施行前の現段階から準備を進める必要がある。

  1. 自社運行ルートにおける「中継ポイント」のシミュレーション

既存の運行データ(発着地、運行時間、高速道路利用区間、荷待ち時間)を精査し、IC周辺5km圏内で中継拠点となり得る候補地を特定する。特に東京〜大阪間、関東〜東北間など、片道500km以上のルートについて、中間地点での折り返し運行がドライバーの拘束時間(原則1日13時間以内、最大15時間)にどう収まるかを試算する。

  1. 中継パートナー企業との連携協定の検討

1社単独での中継輸送は車両回転率やドライバー運用の面で非効率が生じやすい。幹線を挟んで反対方向に拠点を持ち、同様の運行課題を抱える運送事業者との間で、ドライバー交代やシャーシ交換に関する事前協議を開始する。計画認定には複数事業者による連携計画が基本となるため、コンソーシアムの組成を視野に入れる。

  1. 車両・シャーシの仕様統一とシステム要件の洗い出し

トレーラー中継を想定する場合、連結機構(カプラー荷重やブレーキ配線等)の仕様確認を行う。あわせて、省令案で求められる到着時刻表示装置や運行管理システムとの連携を見据え、運行動態データの外部共有が可能なテレマティクス機器の導入状況を確認する。

  1. 地方運輸局交通政策部への事前相談の活用

1つの運輸局管内で完結する計画については地方運輸局長に認定権限が委任されるため、管轄の運輸局への事前相談がスムーズな審査の鍵となる。パブリックコメント期間中であっても、公表された省令案をベースに、自社の計画が「特定貨物自動車中継輸送施設」の基準に合致するか確認を進めておくことが推奨される。

中継輸送の公的認定スキームは、幹線輸送の担い手不足に対する有効な解決手段となる。2026年11月のスタートに向け、関係法令と支援策の詳細を正確に把握し、戦略的な運行ネットワークの再設計に着手することが求められる。

出典: トラックニュース
出典: e-Gov パブリック・コメント
出典: 参議院 議案情報
出典: 国土交通省 報道発表資料
出典: LOGISTICS TODAY
出典: LOGI-BIZ online

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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