公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会は2026年10月19日、優れた物流革新を表彰する2026年度ロジスティクス大賞の表彰式を都内で開催した。自律型協働ロボットとデジタルピッキングの連携により人員を増やさず出荷生産性を約2倍に引き上げた事例など、先端技術の社会実装を果たした5組の企業・団体に賞が授与された。
2026年度ロジスティクス大賞の選考経緯と受賞5組の実装データ
公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS、大橋徹二会長=コマツ特別顧問)が主催するロジスティクス大賞は、物流の推進に向けて実績を挙げた企業や団体を表彰する制度である。第43回を迎えた2026年度は、2026年8月4日に受賞案件が公表され、10月19日に「ロジスティクス全国大会2026」の会場(東京都墨田区・KFC Hall & Rooms)にて表彰式および受賞記念講演会が執り行われた。
選定された5組の取り組みは、工場内物流の自動化、倉庫内のピッキング最適化、配送拠点の設備更新、医療機器物流のシミュレーション、軽貨物事業者の取引適正化と多岐にわたる。
| 受賞部門 | 受賞企業・団体 | プロジェクト名称 | 中核技術・施策 |
|---|---|---|---|
| 技術革新特別賞 | 株式会社Mujin Japan、株式会社三五 | 事業構造変革を支える工場内物流改革 | フィジカルAI、知能ロボットコントローラ、AGV統合制御基盤 |
| 現場革新特別賞 | GROUND株式会社(再春館製薬所、再春館システム、BIPROGY、タクテック) | 自律型協働ロボット(AMR)とデジタルピッキング(DPS)のリアルタイム連携による、増員なき出荷生産性2倍増への挑戦 | AMR、DPS、リアルタイム作業指示連動ソフトウェア |
| 業界革新奨励賞 | 北海道ロジサービス株式会社 | 日本初「エルゴローディングシステム」による物流革新に向けた荷役負担軽減と効率化の実現 | 半自動積み付けシステム(ダイフク共同開発)、ソーター更新 |
| 現場革新奨励賞 | 安田倉庫株式会社、株式会社イデアロジー | デジタルツイン×最適化シミュレーションによるメディカル物流変革 | デジタルツインソフト「IdeaSim」、マルチピック方式 |
| 社会性奨励賞 | 一般社団法人全国軽貨物協会 | 軽貨物運送業界における安全管理および適正取引の可視化・標準化を実現する共通デジタルプラットフォーム「K-LINK」の構築と社会実装 | 運行管理・取引標準化プラットフォーム「K-LINK」、安全管理者講習 |
Mujin Japanと三五:フィジカルAIによる工場内物流の統合制御
技術革新特別賞を受賞したMujin Japanと自動車部品メーカーの三五は、三五福田工場(愛知県みよし市)において知能ロボットと無人搬送車(AGV)を連携させた自動化倉庫を構築した。
自動車産業の工場内物流は、多品種の部品や異なる形状の通い箱が混在するため、事前の動作プログラミング(ティーチング)を伴う従来の産業用ロボットでは自動化が困難とされてきた。本プロジェクトでは、3Dカメラによる環境認識と動作計画アルゴリズムを組み合わせたフィジカルAIを導入し、事前の教え込みなしに通い箱の荷下ろしや積み付けを自動化した。
外部倉庫への輸送工程を工場内物流へ統合した結果、公表されている実績値として年間2,080便の10tトラック運行削減、年間約11.0tのCO₂削減、年間約1,700時間のドライバー荷役・待機時間削減、および1ケースあたり15kgの重量物荷役作業の完全自動化を達成している。
参考記事: Mujin、日本スタートアップ大賞受賞|フィジカルAIでトラック年2080便削減
GROUND:AMRとDPSのリアルタイム連携で出荷生産性約2倍を達成
現場革新特別賞を受賞したGROUNDの取り組みは、再春館製薬所の発送センターにおけるオペレーション改革である。再春館製薬所、再春館システム、BIPROGY、タクテックとの共同プロジェクトとして進められた。
従来のピッキング作業では、作業スタッフがカートを押して広いフロアを歩き回る歩行移動時間が全体の大きな割合を占めていた。本事例では自律型協働ロボット(AMR)とデジタルピッキングシステム(DPS)をリアルタイムに連動させる制御モデルを構築した。AMRが対象棚の前まで自律走行し、作業者はDPSの表示灯に従ってピッキングを行う役割分担を確立したことで、スタッフの増員を行わない条件下で出荷処理能力および生産性を約2倍に引き上げた。
参考記事: AMR(自律走行搬送ロボット)入門|AGVとの違いから選定基準・導入ステップまで解説
北海道ロジサービス:配送を停止させずにソーター更新と省人化を完遂
業界革新奨励賞に選出された北海道ロジサービスは、生活協同組合コープさっぽろの物流基盤を担う物流センターにおいて、日本初となる「エルゴローディングシステム」(半自動積み付けシステム、ダイフクと共同開発)の導入とソーター40本の更新を実施した。
既存の配送拠点において設備更新を行う際、出荷業務の一時停止や誤配送のリスクが伴う。同社は全道130店舗への日々の商品供給を維持しながら工事計画を策定・遂行した。エルゴローディングシステムの稼働により、従来の40ラインに分散していた積み付け作業を6機による定点作業へと集約した。この結果、担当作業人員を18人から6人へ削減し、年間5,000万〜5,600万円以上の人件費削減効果を創出した。
安田倉庫とイデアロジー:デジタルツインによるメディカル物流の効率化
現場革新奨励賞を受賞した安田倉庫とイデアロジーは、医療機器などを扱うメディカル物流拠点を対象に、デジタルツイン・最適化シミュレーションソフト「IdeaSim」を活用した現場プロセスの再設計を実施した。2023年の共同検証開始から2024年の「マルチピック方式」開発を経て、2025年に現場へ本格実装された。
仮想空間上に物流拠点のレイアウトや入出荷量、作業者の動線を精緻に再現し、シミュレーションにより導出された最適ルートとピッキング順序を現場へ適用した。導入後の検証数値として以下の成果が公表されている。
- 人時生産性:26%向上
- 作業員1人当たりの倉庫内歩行距離:24%削減
- トラックドライバー平均待機時間:20%短縮
- 作業スタッフ:20%省人化(創出された人員は医療機器の点検・メンテナンス業務へ再配置)
全国軽貨物協会:共通プラットフォーム「K-LINK」の社会実装
社会性奨励賞を受賞した全国軽貨物協会は、軽貨物運送業界における運行管理と適正取引を支える共通デジタルプラットフォーム「K-LINK」を構築・提供している。
軽貨物運送事業は個人事業主のドライバーが多く参入している特性上、事業者ごとの安全管理状況や運行実態の把握、法定帳票の整備、多重下請け構造下での適正運賃の収受にばらつきが存在していた。国土交通省の「事業用自動車総合安全プラン2030」に基づく貨物軽自動車安全管理者講習の実施機関としても登録された全国軽貨物協会は、プラットフォームを通じて点呼記録や安全講習受講歴を一元管理する仕組みを整えた。基本機能や個人会員会費を無償化することで、零細事業者や個人ドライバーがコンプライアンス要件を遵守できる環境を整備している。
荷主・3PL・運送事業者に生じる設備戦略への影響
受賞した各社の技術と運用モデルは、製造業の調達・出荷体制、倉庫事業者のマテハン選定、配送事業者の労務・運行管理に対して直接的な運用の見直しを迫る。
製造業者・メーカー:外部倉庫経由を排した工場内自動化の定着
三五福田工場の事例は、工場外にある外部保管倉庫を解約し、敷地内の工場内物流設備へ知能ロボットを直結させることでコストと輸送便数を同時に削減できる実証結果を示した。
製造業のサプライチェーン部門では、工場内の荷役やライン供給を単なる付帯作業として外部委託するのではなく、フィジカルAIによる統合制御基盤を導入して生産設備と連動させる投資判断が求められる。通い箱の仕分けや段積み作業の無人化により、重量物荷役に伴う労災リスクを排除しつつ、外部倉庫へのシャトル便輸送費を恒久的に圧縮できる。
倉庫事業者・3PL:単一マテハン依存から統合制御ソフトウェアへの投資転換
GROUNDや安田倉庫の事例は、高額な自動化マテハンを単体で導入するだけでは生産性向上が頭打ちになる実態に対し、ソフトウェアによる制御最適化が投資対効果を左右することを示している。
AMRとDPSのリアルタイム連携や、デジタルツインを用いたマルチピック指示の生成は、現場の作業員を増やすことなく施設のスループットを20〜100%向上させる。3PL事業者が荷主に対して自動化提案を行う際、棚や搬送機のハードウェア単体ではなく、WES(倉庫実行システム)やシミュレーションツールを介して作業動線と設備稼働をミリ秒単位で同期させるアーキテクチャの提示が必須要件となる。
参考記事: WES(倉庫実行システム)とは?WMS・WCSとの違いや導入メリット・選定ポイントを徹底解説
運送事業者:多重下請け・個人委託におけるデータ透明性の確保
全国軽貨物協会による「K-LINK」の普及は、ラストワンマイル配送を委託する大手運送会社やEC事業者に対し、委託先ドライバーの安全管理状況の確認基準を変化させる。
運送事業者は、個人事業主ドライバーの稼働状況や点呼の実施記録をデジタル基盤上で確認し、法令遵守状態を客観的に証明できなければ、荷主企業からのコンプライアンス審査を通過できないリスクを抱える。プラットフォームを介して適正な運賃管理と運行記録の可視化を進めることが、下請けドライバーの離職防止と荷主からの取引継続要件に直結する。
LogiShiftの視点:個別最適設備の「サイロ化」を打破する統合基盤競争
今回のロジスティクス大賞で選定された取り組みは、単一の工程に特定のマテハン機器を導入する「点の自動化」が限界を迎え、複数設備や現場データを上位で束ねる「統合制御基盤」の優劣が現場の生産性を決定づける段階に入ったことを示している。
三五福田工場の事例において年間2,080便のトラック運行削減が実現した根底には、MujinのフィジカルAIが3Dビジョンによる認識と動作計画を自律的に行い、AGVと知能ロボットを「MujinOS」という単一基盤上で統合制御した点にある。同様に、GROUNDの事例でもAMR単体の自律走行性能ではなく、DPSのピッキング指示とリアルタイムに同期させる制御ソフトウェアが存在して初めて出荷能力2倍という数値が成立している。
自動倉庫、AMR、ピッキング表示器、ソーターを別々のベンダーから調達して個別運用した場合、設備間の速度差やデータ形式の不一致により、中間バッファに人手による荷物の積み替え作業が残る事態が生じる。今後の物流自動化投資においては、ハードウェア機器の減価償却期間を計算する前に、異種メーカーのロボットや搬送機をAPI連携で束ねられるWESや知能制御基盤の接続性が投資判断の基準となる。
参考記事: ExotecとMujinが8月19日提携、全工程の統合で倉庫自動化を加速
まとめ:明日から自社拠点で確認すべき実務項目
先端技術の導入効果を自社の物流現場に落とし込むため、現場責任者が明日から着手すべき確認項目を整理する。
- 拠点内荷役における「歩行時間」と「滞留工程」の切り分け
ピッキング作業全体の工数のうち、純粋な取り出し作業時間と棚間の歩行移動時間をストップウォッチ等で計測して比率を算出する。歩行割合が5割を超える場合はAMR等の協働搬送、取り出し頻度が偏る場合はデジタルツインシミュレーションによるロケーション再配置を検討する。
- 導入済み・導入予定設備における制御インターフェースの開放性確認
倉庫内のAGV、自動倉庫、コンベヤを制御するソフトウェアが外部APIやオープンな通信プロトコル(REST-APIやMQTTなど)に対応しているかシステムベンダーに照会する。独自プロトコルで固定されている設備は、将来的なWES導入や知能ロボット追加の際に接続コストが跳ね上がる要因となる。
- 外部委託配送網における安全管理記録のデジタル保管状況の監査
自社荷物を配送する軽貨物事業者や個人委託ドライバーに対し、点呼記録や安全教育の受講履歴がどの形式で保管されているかを確認する。法定要件の遵守状況を紙伝票ではなく「K-LINK」等の共通プラットフォーム上で即座に開示できる事業者を選定基準に組み入れる。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: GROUND株式会社
出典: LOGISTICS TODAY(2026年10月19日)
出典: 安田倉庫株式会社
出典: 公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会
出典: 一般社団法人全国軽貨物協会



