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Home > 輸配送・TMS> 日本通運が-80〜-40℃輸送を開始|調温・容器回収の代行で設備投資を削減
輸配送・TMS 2026年10月22日

日本通運が-80〜-40℃輸送を開始|調温・容器回収の代行で設備投資を削減

日本通運が-80〜-40℃輸送を開始|調温・容器回収の代行で設備投資を削減

日本通運は2026年10月19日、-80℃から-40℃の超低温帯に対応する輸送サービス「定温マルチBOX Premium」の提供を開始した。あらかじめ指定温度に調整した専用容器を集荷先へ持ち込み、配達先で貨物を引き渡した直後に容器をドライバーが回収する仕組みを日通側が包括して担う。

-80℃~-40℃領域における輸送課題とサービス仕様

従来のドライアイス輸送が抱える運用リスク

バイオ医薬品や再生医療等製品、新ワクチンの普及に伴い、医薬品物流における温度管理は従来の冷蔵(2~8℃)や冷凍(-20℃以下)だけでなく、-80℃~-40℃の超低温帯を厳格に維持する要求が高まっている。経済産業省の公表データによると、世界の細胞・遺伝子治療市場は2030年まで年率30%以上の成長率で推移すると予測されており、国内でも検体や細胞組織の移送件数が増加している。

しかし、従来の超低温輸送は発泡スチロール容器内にドライアイスを充填する手法が一般的であり、現場では以下の運用課題が常態化していた。

  • 過冷却による品質破壊: ドライアイスの表面温度(約-78.5℃)に内容物が直接接することで、許容下限温度を下回る過冷却が発生し、細胞や原薬の活性が損なわれるリスクがある。
  • 資材調達・事前調温の負荷: 出荷元ではドライアイスの手配や保管に加え、超低温対応の保冷剤や蓄熱材を凍結させる専用の超低温フリーザー(-80℃対応)の設備投資が必要となる。
  • 航空輸送時の危険物規制対応: ドライアイスは昇華時に炭酸ガスを発生するため、国際航空運送協会(IATA)および国際民間航空機関(ICAO)の危険物規則(DGR)において危険物(Class 9)に指定されており、積載重量制限や危険物申告書の作成が義務付けられる。
  • 納品先での容器滞留と返送手配: 納品先の病院や研究所では、到着後の空き容器の保管スペース確保や、返送伝票の発行・集荷手配といった付帯作業が発生していた。

「定温マルチBOX Premium」の提供スキームと従来方式の比較

日本通運は2010年1月より、断熱容器と蓄熱材を組み合わせた「定温マルチBOX」シリーズを展開してきた。今回の「定温マルチBOX Premium」は、専用の高性能断熱材と調温技術を組み合わせることで、-80℃~-40℃の超低温帯を安定維持する仕様となっている。

本サービスの最大の特徴は、資材の提供にとどまらず、集荷前の調温作業から配達時の即時容器回収までを日本通運が一括して代行する運用フローにある。

項目 従来のドライアイス・発泡スチロール輸送 定温マルチBOX Premium
温度帯 ドライアイス依存(過冷却リスクあり) -80℃~-40℃(設定温度を安定維持)
出荷元の事前準備 超低温冷凍設備の保有、ドライアイス調達 なし(調温済みBOXを日通が持参)
納品先の作業負荷 容器の保管、資材の廃棄または返送手配 なし(配達時に内容品受領後、即時回収)
航空輸送の扱い 危険物申告・積載量制限の対象 ドライアイス非依存の資材設計により規制対象外

厚生労働省が2018年12月に発出した「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」では、輸送中の温度逸脱リスクの低減と、バリデーション(適格性評価)された輸送容器の使用が求められている。本サービスは調温工程を作業手順として標準化し、荷主側が自社で温度管理バリデーションを構築する負担を軽減する。

参考記事: 薬機法(医薬品物流)とは?GDPガイドラインへの対応と実務者が押さえるべきポイント

参考記事: 温度帯管理とは?3温度帯・5温度帯の違いと現場で役立つ選定・運用のポイントを解説

医薬品サプライチェーンの各プレイヤーに生じる影響

製薬メーカー・バイオベンチャー・研究機関

治験薬やバイオ医薬品を取り扱う製薬企業や研究機関では、超低温フリーザーの設備投資やドライアイスの日常管理に関わる固定費を削減できる。出荷頻度が不定期なバイオベンチャーにとって、自前で調温設備を維持することは設備稼働率の低下を招きやすい。集荷時に調温済みのBOXが届く体制を利用することで、変動費化への移行が可能になる。

また、航空便を用いた緊急輸送時において、ドライアイスの積載上限規制を回避できるため、航空機の搭載スペース確保や危険物申告に伴うリードタイムの遅延を防ぐことができる。

参考記事: 航空輸送とは?海上輸送との違いから容積重量の計算・緊急手配のポイントまで徹底解説

医療機関・検査受託会社

納品先となる大学病院や臨床検査機関では、納品後の容器管理スペースが不要となる。都市部の医療機関や研究所ではバックヤードの保管スペースが限られており、返送待ちの通い箱が作業動線を圧迫するケースが見られた。

ドライバーが荷物受領と同時に容器を持ち帰る運用により、現場スタッフが容器の梱包を解いて返送伝票を起票する間接業務が解消される。

医薬品物流を担う倉庫事業者・3PL事業者

ヘルスケア領域を強化する3PL事業者にとっては、単なる輸送スペースの提供から「資材・調温・回収一体型のフルフィルメント」へのシフトが求められる基準となる。GDPガイドラインへの準拠が取引条件となるなか、車両側の冷凍機性能に依存するだけでなく、梱包資材側で厳格な温度保証を完結させるパッシブ型輸送モデルの重要性が高まっている。

参考記事: コールドチェーンとは?仕組み・メリットと現場のDX実装ポイントを徹底解説

LogiShiftの視点:容器回収モデルが示すヘルスケア物流の変革

今回の「定温マルチBOX Premium」が示す物流の転換点は、高性能な保冷容器の販売にとどまらず、「集荷時の調温済み資材提供」と「配達時の即時回収」を配送ネットワークに組み込んだ点にある。

医薬品や再生医療等製品の物流現場では、温度管理の厳格化に伴い、高価な断熱資材やIoT温度ロガーの採用が進んでいる。しかし、資材が高性能化するほど「通い箱の回収率の低下」や「返送コストの増大」が荷主の採算を圧迫してきた。納品先で貨物を手渡しした瞬間に資材を回収するオペレーションは、紛失リスクを最小化し、資材の回転率を高める運用設計といえる。

今後、再生医療等製品や遺伝子治療薬の流通量が増加するにつれて、物流事業者が担う役割は「運送」から「調温や資材管理を含む品質保証代行」へと拡張していく。荷主企業は、自社で調温インフラを抱え込む方針を維持するのか、こうした資材・運用一体型のアウトソーシングを活用して固定費を抑制するのか、サプライチェーン全体のコスト構造を再評価する局面に直面している。

まとめ

日本通運の「定温マルチBOX Premium」は、ドライアイス調達の運用負荷と過冷却リスクを排し、出荷元・納品先双方の付帯作業を最小化するサービスモデルである。

明日から意識すべき実務ポイントは以下の2点である。

  1. 自社の超低温帯(-80℃~-40℃)出荷における、ドライアイス調達・調温設備維持・返送手配の総コストを算出し、外注サービス利用時のコストと比較すること
  2. 医療機関や研究機関など納品先における空き容器の滞留状況を把握し、即時回収による現場負荷の削減余地を検証すること

出典: LOGI-BIZ online

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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