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Home > 物流DX・トレンド> 日立製作所とケーエスケーが代行配送工数60%削減|11月に動的再編稼働
物流DX・トレンド 2026年10月23日

日立製作所とケーエスケーが代行配送工数60%削減|11月に動的再編稼働

日立製作所とケーエスケーが代行配送工数60%削減|11月に動的再編稼働

日立製作所と医薬品卸のケーエスケーは2026年10月22日、物流効率化支援ソリューションを活用した医薬品配送業務DXの実証実験を完了し、欠員発生時に配送ルートを自動編成する機能を2026年11月より順次本格稼働させると発表した。平常時の固定ルートを維持しながら欠員ルートのみを自動再配分する運用モデルを構築し、営業担当者が担っていた代行配送工数の60%削減を実証した。

欠員発生時の代行配送工数を60%削減した実証実験の全容

医薬品卸の物流現場では、日々の確実な納品を担保するために配送担当者がエリアごとの固定ルートを走行することが通例となっている。しかし、急な体調不良や退職などによって欠員が生じた場合、地理や納品先のローカルルールに詳しい営業担当者が本来の営業活動を中断し、手作業でルートを組み直して配送を代行するケースが多く、多大な現場負荷となっていた。

日立製作所とケーエスケーは、日立の物流効率化支援ソリューション「Hitachi Digital Solution for Logistics(以下、HDSL)」を基盤とし、突発的な欠員が発生した場合でも配送を止めることなく業務を平準化する実証実験(PoC)を2026年9月末に完了させた。

協創の経緯と各支店への展開スケジュール

両社による物流DXの取り組みは、2025年9月からの協創開始を経て段階的に進められてきた。これまでの検証経緯と今後の展開スケジュールは以下の通りである。

年月 実施内容・マイルストーン 対象拠点・主な検証項目
2025年9月10日 医薬品配送業務DXに関する協創開始を発表 大阪支店にてHDSLと統合物流管理システム「HITLUSTER」を連携し、荷合わせ検品・電子受領および自動配車計画の試験運用を開始
2026年9月末 概念実証(PoC)の完了 急な欠員発生時に配送ルートを自動編成する「ポイントダイナミック機能」の有効性と実行性を検証
2026年10月22日 PoC完了および本格運用の開始を発表 営業担当者による代行配送工数の60%削減を確認
2026年11月〜 各支店へ順次本格稼働を開始 ケーエスケーが展開する全32支店を視野に順次展開を推進
将来構想 サプライチェーン全体の自律化推進 受注・リソース情報と倉庫内設備・作業情報の連携、フィジカルAIの導入検証

日立製作所の発表によると、世界のデジタル物流市場規模は2025年の376億4,000万米ドル、2026年の438億9,000万米ドルから、2034年には1,552億9,000万米ドルへと拡大し、年平均成長率(CAGR)は17.10%に達すると予測されている。今回の取り組みは、成長が続くデジタル物流市場において、厳格な品質管理が求められる医薬品流通のラストワンマイルを対象とした実践的な適用事例となる。

固定ルートと動的再編を両立する「ポイントダイナミック機能」

今回の実証で中核となったのが、HDSL上で稼働する「ポイントダイナミック機能」である。

従来の動的配車アルゴリズムは、日々の受注量や配送先に応じてルートをゼロベースで毎日再計算する設計が一般的であった。しかし、医薬品配送では病院や調剤薬局ごとに「納品口の解錠手順」「指定の納品棚」「守衛所での受付ルール」といった極めて詳細な現場ルールが存在するため、毎日担当ドライバーや訪問順序が変わる運用は誤配送や納品遅延のリスクを高める。

ポイントダイナミック機能は、平常時はドライバーが走り慣れた固定ルートを維持し、システムが欠員を検知した緊急時のみ最適化エンジンを起動する。その際、単に距離の近さだけで割り振るのではなく、以下の制約条件を複合的に照合して代替ルートを割り出す。

  • 配送先ごとに定められた厳格な納品時間枠(タイムウィンドウ)
  • 納品先施設の駐車スペースや車両高さ・重量制限による車両入場可否
  • 当該車両の積載可能重量および容積(荷量制限)
  • 稼働中である別ルートの残余時間および積載余力

これらの条件を自動照合し、欠員が発生したコースの配送先を稼働可能な他ルートへ自動配分することで、営業担当者が紙の地図や伝票をもとに数時間かけて行っていたルート再編作業と代行運転を最小化し、工数60%削減を実現した。

NFCカード連携による誤受領防止とペーパーレス化

配送計画の最適化と並行して導入されたのが、NFC(近距離無線通信)カードを活用した電子受領機能である。

医薬品は人命に直結する特性上、誤配やなりすましによる不正受取の防止が求められ、従来は紙の納品伝票への押印・サイン回収が行われていた。この運用では、帰社後の伝票回収、ファイリング、支店での照合作業に多大な工数が割かれていた。

今回の仕組みでは、納品先の病院や薬局に固有のNFCカードを配備し、配送担当者が所持するスマートフォンの専用アプリでカードを読み取る。読み取った瞬間に事前登録された受領先データと突合が行われ、受領日時や位置情報がサーバーへ自動送信される。これにより、紙伝票の印刷・管理コストを排除するとともに、受領エビデンスの即時データ化を達成している。

参考記事: 配車計画とは?効率化の仕組みやシステム選定・改善ステップを解説

医薬品流通と物流DX市場に与える3つの影響

日立製作所とケーエスケーによる実証成果は、輸配送管理システム(TMS)の運用設計や医薬品卸の事業構造に影響を与える。

医薬品卸・流通業者:固定ルートの習熟度維持と営業リソースの防衛

医薬品卸各社にとって、ドライバーの欠員時に営業担当者が代行配送を行う慣習は、本来注力すべき新薬の情報提供や医療機関への提案活動を阻害する要因となっていた。今回の仕組みは、配送体制の持続可能性を高めると同時に、営業リソースをコア業務へ集中させる効果を持つ。

固定ルートの習熟度を損なわずに非常時のみ動的再編へ切り替えるアプローチは、ドライバーの退職や急病が発生しても配送網を破綻させない事業継続計画(BCP)の手段として機能する。

SaaS・物流テクノロジーベンダー:特化型制約条件アルゴリズムの実用化

配車管理システムを開発・提供するベンダーにとって、本件は「業界特化型の制約条件を組み込んだアルゴリズム」の重要性を裏付ける結果となった。

汎用的な巡回セールスマン問題(TSP)を解くだけの配車エンジンでは、駐車規制、搬入口の高さ制限、納品時間の指定といった現場の物理的制約に対応しきれない。日立が実証したように、スマートフォンのNFC読み取りといった現場デバイスと配車エンジンを密接に連携させ、現場の受領ステータスを即座に動的ルートへ反映するアーキテクチャが、今後の物流SaaSの差別化要素となる。

配送ドライバー:属人的判断の解消と現場検品・受領の負荷軽減

現場の配送員にとっては、急な同僚の欠員に伴う荷物の引き受けが客観的なデータに基づいて割り振られるため、特定ルートへの過剰な負荷集中が抑止される。

また、紙伝票の紛失リスクや帰社後の仕分け作業がNFCカードによる電子受領で解消されるため、日々の拘束時間削減につながる。スマートフォン上で納品完了が即座に記録されることで、納品先との受領トラブルや確認の問い合わせも抑制される。

参考記事: TMS(輸配送管理システム)とは?WMSとの違いから導入効果・失敗しない選び方まで解説

LogiShiftの視点:ハイブリッド型ルーティングと自律型サプライチェーンへの布石

今回の実証から読み解くべき構造的変化は、配車計画における「完全固定ルート」か「完全動的ルート」かという二者択一からの脱却である。

「固定か動的か」の二項対立を脱するハイブリッド配車の実効性

物流DXの現場では、長年にわたり「コスト最適化を狙う動的配車」と「現場の作業精度を重んじる固定ルート」の対立が続いてきた。特に医薬品物流のように納品先のローカルルールが複雑な業界では、動的配車ツールを導入しても「ドライバーが道を覚えられない」「納品手順を間違える」という反発が生じ、導入が頓挫するケースが散見された。

ケーエスケーが採用した「ポイントダイナミック機能」は、平常時の習熟メリットを固定ルートで最大化しつつ、欠員発生時という例外処理に限定して動的最適化エンジンを適用している。現場の受容性を担保しながらシステムの計算能力を危機管理へ振り分けるこの「ハイブリッド型ルーティング」は、人手不足に直面する他業種のルート配送にも応用可能な運用モデルである。

倉庫内データとフィジカルAI連携がもたらす自律物流の実現性

両社が将来展望として掲げている「倉庫内の作業・設備情報との連携」および「フィジカルAIの活用」は、輸配送管理システム(TMS)と倉庫管理システム(WMS)の境界線を再定義する試みと言える。

従来の物流改善では、倉庫内の自動化設備と外に出て走る配送車両の最適化は別個のシステムとして分断されていた。しかし、配送ルートが欠員によって動的に再編された場合、倉庫側のピッキング順序や荷合わせ作業、トラックバースへの接車順もリアルタイムに変更されなければ、倉庫内で荷待ちや出荷遅延が生じる。

フィジカルAIを活用して倉庫内の自動搬送機器や作業ロボットが配送側のルート変更を自律的に検知し、荷揃え工程を自動追従させる構想が実現すれば、サプライチェーン全体のダウンタイムは大幅に圧縮される。全32支店への展開を通じて蓄積される運行・受領データは、配送計画だけでなく物流拠点全体の自律制御を支える基盤データとなる。

参考記事: フィジカルAIが拓く10.5兆円の自動化潮流と中小物流の生き残り策

明日から現場で意識すべき業務プロセスの見直し

日立製作所とケーエスケーの取り組みを参考に、ルート配送網を抱える事業者が直ちに着手すべき実務のポイントを整理する。

  1. 納品先ごとの物理的制約条件をマスタデータ化する

納品時間帯だけでなく、車両の進入制限(車高・車長)、荷捌きスペースの有無、指定受領手順などのローカルルールをドライバー個人の頭札から引き出し、配車システムが参照できる形式でデータ化する。

  1. 欠員・車両トラブル時の例外処理ルールを定量的に定義する

急な欠員が発生した際、どのルートにどの程度の余力(時間・積載量)があるかをリアルタイムに把握できるよう、日々の配送ステータスや作業進捗を可視化する体制を整える。

  1. 受領確認のペーパーレス化によるエビデンス管理の移行を進める

紙伝票による押印受領から、NFCやQRコード、スマートデバイスを活用した電子受領への切り替えを検討し、帰社後の照合作業工数と伝票保管コストの削減を先行して進める。


出典: LOGI-BIZ online
出典: 日立製作所 ニュースリリース(2025年9月10日)
出典: マイナビニュース TECH+

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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